一期一会

日々是好日な身辺雑記

「オペレーションZ」 真山仁

2017年11月03日 | 雑記


基本的に本は図書館から借りて読んでいるが、7月から「ローマ人の物語」を読み続けていたので、
予約中の本も村上春樹と川上未映子の対談本「みみずくは黄昏に飛びたつ」と真山仁の「標的」の2冊だけになり、
手元に読む本が無くなった。

そんな中、日経新聞で真山仁の新刊本「オペレーションZ」の広告を見て、
内容が財政赤字による国家破綻というものだったので興味を覚え、早速図書館の検索をしたが、
さすがに1週間前の発売だったので、まだ蔵書になっていなかった。
「ハゲタカ」シリーズで知られる真山仁の本は、経済のジャンルが多いが、
地熱発電を扱った「マグマ」のような社会問題を扱った小説もある。
どの本も新聞記者だったこの人らしく、取材に基づいたリアリティのある筋書きと人物描写が特徴だ。
日曜日が台風上陸だったので本でも読んで過ごそうと、書店に行って「オペレーションZ」を買ってきた。
この本は1000兆円という財政赤字を背景に、日本国債を市場が吸収出来なくなり、
ヘッジファンドから売り浴びせられ時に、デフォルトが起きる可能性に危機感を抱いた総理が、
国家予算を半減するオペレーションZの実行を決断する。

歳出の半減というのは、日本の国家予算の1/4は国債の償還費と利払いなので、
100兆円の国家予算からすると、実際に使える予算が25兆円位という事なので大変な事態だ。
官僚の抵抗、世論の反発、メディアの攻撃、同じ政党内部からの反乱、野党からの不信任決議となる。
国家破綻の前に地方都市の破綻として、北海道夕張市をモデルとした市や、国家予算半減を決断した江島総理の前総理として、
カジノミクスを推進した梶野総理等、モデルを連想させる人物が登場する。
真山 仁の本はフィクションと言いながらリアリティがあり、エンターテイメント小説として一気に読める。

そんな「オペレーションZ」を読み終えたら、火曜日の日経新聞のコラム(大機小機)に、
(日本の財政破綻は考えられない)という記事が載っていた。
財務省が2002年に外国格付け会社宛に提出したもので、今でも財務省のホームページで見る事ができ、
執筆者は当時の財務官、現日銀総裁黒田氏らしいが、日本は世界有数の経常黒字国、債権国であり、
外貨準備高も世界2位なので日本のデフォルトはない、との趣旨のレポートらしい。
マクロ経済に対する知識があるわけでもないので、このレポートが正しいかどうかは分からないが、
600万円の年収で1000万円の生活をするというのは、どう考えてもおかしいだろう。
この借金生活から抜け出すには(入りを図って出るを制す)が家計の基本のように、国の財政も税収増を図るか、
歳出減で出るを制するしかないと思うのだが、それを政治家が言わない。

債権保有国と言っても、財政赤字解消の為にアメリカ国債を売るという事が出来るのか。
90年代の日米自動車摩擦の時に、当時の橋本龍太郎通産相が(アメリカ国債を売りたい衝動にかられる)と発言して物議をかもしたが、
債権として保有していてもアメリカ国債は売るに売れない、切るに切れないカードなのだ。

去年の7月には三菱東京UFJ銀行が日本国債の入札のプライム・ディラーの資格を返上している。
この資格は国債の安定消化に向けて財務省が導入したものだが、証券会社や銀行ら22の
機関投資家がその資格を持ち、それぞれ発行予定額の4%以上を応札する義務がある。
この資格返上の背景には、日銀が進めるマイナス金利政策やバーゼル規制との関係があるようだが、
損失リスクを抱えた国債を義務的に買うのは株主に説明がつかない。
民間企業としては資格返上は当然の合理的判断だ。

「オペレーションZ」を読んでから、日経新聞を注意深く見てたら月曜日の記事に、
出るを制す政策の(診療報酬マイナスに、薬価大幅下げ厚労・財務省方針)と載っていた。
国家予算に占める医療費の割合が増え、財政運営上の問題となっている事からの施策だろうが、
診療報酬の方は自民党と日本医師会との歴史的な関係もあり、実現性は分からない。
例によって族議員が日本の財政事情も考えず反対の声を上げるだろう。

薬価引下げの話題で必ず出るのが小野薬品のオプジーボで、2年に一度の見直しにも関わらず、
該当年でもない今年に半額の大幅値下げをされ、株価も大きく下げた時に逆張りで小野薬品の株を買った。
メルクとの特許権侵害訴訟に勝ち、ロイヤリティ収入を見込めたのと、
上半期の業績発表後の上げで目標株価に達するだろうと読んだのだが、6日がQ2の決算発表だが、さてどうなるか。
オプジーボは来年の薬価引下げでも25%位の引下げが予想されているが、各国でもガン抑制薬としての承認が相次いでいるし、
何より世界的製薬会社のメルクやブリストルマイヤーズからロイヤリティを取れる薬品だというのが、日本人として応援したくなる。
ただ30日の日経朝刊の記事を受けて、この日の小野薬品の株価は69円安と大きく下げた。

「オペレーションZ」のテーマとなっている、国債発行額の増加については、国内で消化しているから大丈夫との意見もあるが、
海外の日本国債保有率が10数パーセントになっているという情報もある。
良く分からないので、経済学者の議論を聞いてみたいが、そんな番組はBSフジのプライムニュースしかない。
その時は御用学者というかエセ学者は外してほしいものだ。