物部の森

日常感じたこと、趣味のこと、仕事のこと・・・等々
日記風に書いてます。

M-1グランプリ2022評

2022年12月18日 | Weblog
M-1グランプリ2022は、ロングコートダディ、カベポスター、男性ブランコ、真空ジェシカ、キュウ、ヨネダ2000など、私好みの芸人が多数出演。期待どおりのハイレベルな戦いだった。
そんな中、伏兵のウエストランドが、ファーストラウンドのラスト10組目に登場。持ち味の毒舌漫才が思いのほかハネて、最終決戦進出圏内の3位に食い込む。最終決戦も、その勢いを保ったまま、最後7人の審査員のうち6票を集め断トツで優勝。波乱の幕切れとなった。
ではいつものように、ネタ順にコメント。

■カベポスター
関西の賞レースで勝ってきている期待のコンビがトップバッター。永見のまったりとしたボケは会場の空気が温まっていない段階では不利かと思ったが、「大声コンテスト」のネタを持ってきたのは正解。最後はちゃんとオチが付いて、非常に彼ららしい緻密に計算された4分間だった。審査員が軒並み90点超えを付ける中、初審査員の山田邦子だけ84点と、他に比べて著しく低い点数。これまでは「トップバッターは様子見」で、普通に出来てたら85点くらいを付けるのが通常だが、あのクオリティで84点は気の毒である。ただ、仮に邦ちゃんがあと10点高く付けたとしても、上位3組には入らなかったので(実際のスコア634点+仮で10点=644点<3位のウエストランド659点)、これはどうしようもない。

■真空ジェシカ
去年初めて観たときに、ボケの数とワードセンスに感心した。今回のネタも「シルバー人材センター」という現実離れした設定の上で、変な人物が次々出てくる。冒頭、センターの名前が「ヘブンズゲート」だったのもブラックで私にとってはツボ。ただ観客は笑う前にワンテンポ間(ヘブンズゲート→天国への入り口→老人をイジってる、という脳内転換までの時間)があった。彼らはインテリなので、ワードチョイスやひねりが少し高尚なのだ。それが逆に弱みになってしまうところがある。ストレートでバカバカしいボケと、理解に少し時間がかかるようなインテリジェンスの高いボケを上手く取り混ぜ、できれば後者は何らかの伏線回収になっているようなカタチにできたら理想だと思う。

■オズワルド
敗者復活組がわりと早い順番で登場。昼の敗者復活戦をチラっと観たとき、あまり強いメンバーがいなかった幸運もあり、順当に勝ち上がってきた。ただ、寒空の中で長時間待たされて体が冷えていると、彼らのテンション低めの漫才にとっては体調面で不利にはたらく。案の定、スタートのやりとりがふわふわしていて、場内の空気をつかみきれないままに、本ネタに入っていった。入りが悪かったので、聴いてる方も、畠中の「夢と現実が錯綜している」という設定にしっかりとはまり込めなかった。二人も、昨年の二本目同様「これはダメだ…」と思いながら演じていたのかもしれない。単純に実力を出し切れなかった。でもこれだけ売れてTVや劇場に出まくってる中で、きちんとネタを作ってきてM-1に挑戦し続ける二人を、私はリスペクトする。

■ロングコートダディ
ここ最近の活躍ぶりから優勝候補と目されていた二人。最初のマラソンのネタは、漫才の型を完全に崩し相当攻めた内容。次々と面白いランナーが登場する中で、最後は兎が素で「太った人」として出てくるという意表を突いた展開。そして最後はスタート時の「一緒に走ろう」といってきた変な外人ランナーが再び現れるという、計算しつくされたオチ。まるで4分間の壮大なスペクタクル。見ているこちらも「おおっ!」と感心しながら笑った。最終決戦のタイムマシーンのネタも、去年の「生まれ変わりが肉うどん」のネタと同じような構成で面白かったが、ウエストランドとさや香の勢いには勝てなかった。このコンビは本当にボケとツッコミのバランスが良い。まだまだ伸びしろアリ。

■さや香
5年ぶりの決勝進出。関西を拠点に活躍しているのでMBS『せやねん』はじめ、お茶の間ではよく観るのだが、前回の決勝からずいぶん時間が経っており、M-1では「過去の人」になりかけていた。ただ、家族やまわりから「さや香は予選でめちゃくちゃウケてたらしい」との情報も聞いていた。またミルクボーイのABCラジオ『煩悩の塊』で「5年ブランクあって、審査員をまた自分たちに振り向かせるのはめちゃめちゃ難しい」と内海君が非常に評価していた。相当、漫才をブラッシュアップさせたのだろう。一本目を観たが期待に違わず超面白い。「若いうちに免許を返納する」というわりと平凡な設定だが、二人の掛け合いがテンポよく、話が転がる転がる。正統派のしゃべくり漫才を堪能した。ファーストラウンドは1位通過。二本目も良いネタを持ってきたら十分優勝できるチャンスはあったが、いかんせんウエストランドが波に乗ってしまった。個人的にはさや香の勝ちだと思ったが、審査員の評価には文句なし。

■男性ブランコ
昨年のキングオブコント決勝に出てから、ずっと気になっている二人。TBS『ラヴィット』でもレギュラーに抜擢され、毎回存在感を出している。今回のネタは「音符を運ぶ仕事」という奇天烈な設定だが、巨大な音符や五線紙が目に浮かんでくる。また、浦井の運んでいるものに当たったり切られたりしたときの倒れ方と、平井が横でアワアワしているうろたえ方の動きのコントラストが絶妙だった。そのあたりは、演劇畑出身で基本はコント師である二人の強みを活かせている。10組目ウエストランドが出てくるまで暫定3位、このまま最終決戦に行くのだろうと思ったら、まさかの逆転。残念だったが、ウエストランドがはまりすぎた。いずれ何かのビッグタイトルを取ってほしい。

■ダイヤモンド
2021年元旦の『ぐるナイおもしろ荘』で優勝したときには、いずれブレイクするだろうと思っていた。その後、あまり見かけなくなり、その存在を忘れていたときに今回の決勝進出。「ああ、ちゃんとネタやってたんやな」と少しホッとした。「半身浴」という言葉が出てきたことで、これまでの入浴を「全身浴」と呼ぼう、みたいな言葉遊びのネタ。なるほどと思うようなワードが次々と出てきて、いかにも彼ららしい内容だが、いかんせん一本調子。中盤以降は単なる屁理屈の羅列みたいに感じてきて、飽きてきた。審査員の点数も低く、松ちゃんも「『ダイヤモンドの原石』に名前変えたら?」とぼける。それに対する返しが二人ともムッとした表情で、観てる側もヒヤっとした。もちろん単純に力量不足で、上手く返せなかったということなんだろうけど。

■ヨネダ2000
今の女性芸人では天才ピアニストの次に好きなのがヨネダ2000。どんな場面でも徹底的にボケ倒す。GYAO!の決勝進出者発表の配信番組では、他の男性コンビ8組がきちんとスーツなど着てインタビューに臨んでいる中で、誠だけは頭に針金ハンガーを被り「ハンガースーパーフライです」とボケて司会のかまいたちを困惑させていた。一週間前に、同じく決勝に進んだ「THE W」では愛のウンコのコスプレから最後ミュージカル調に発展するわけのわからないネタをやっていたが、今回も海外で餅つきをしながら、最後は、漫才の台詞もなくリズムネタになっていくという超シュールな審査員泣かせの内容だった。出場10組の中にこういうのが居てももちろん悪くないが、さらに女芸人というところが出色。お笑い界のダイバーシティである。

■キュウ
決勝初進出。2~3年前の敗者復活戦で観たときに面白いネタをやるなと思っていた。着眼点がマニアックな、ロコディやカベポスターなどと同じカテゴリーに属する技巧派漫才。今回も期待していたが、順番の妙もあるのだろう、ネタは確かに彼ららしく面白かったが、会場はあまり笑いが起こっていなかった。キュウのゆったりとしたテンポの漫才では、ウケていない空気を打ち破るのが難しい。最後までかみ合っていない感じがした。もちろん周りが強すぎるというのもある。こういった漫才でM-1決勝の舞台で大笑いを取るのなら、テンポを速めていくとか動きを入れるとか、後半にいくにしたがって笑いが足しこまれていくような構成にしないと難しい。好きなコンビだけに今後の自己研鑽に期待したい。

■ウエストランド
個人的には一番期待していなかったコンビである。井口の毒舌は昨今のお笑い番組ではリスクが高い。しかも観客も審査員もお茶の間も疲れている最終10組目。ところが、なぜか今回は「あるある漫才」として聴き手の共感を得られた。さらに志らくが審査時に毒舌を容認するような発言をしたので、ファーストラウンド10組目、続けて最終決戦1組目と、連続してネタを披露する流れは、より彼らに有利に働いた。結果、面白かったし、会場もウケていた。私個人的には、最終決戦は、さや香のできが一番良かったと思うが、これも勝負の絢。ウエストランドが選ばれたことに文句は無い。おめでとう。ただ今後色んな番組に呼ばれるだろうが、平場のトーク力が弱いので苦労すると思う。…って、今日の彼らの漫才で毒舌かまされていた「ネタの分析するウザいお笑いファン」の意見ですけど(汗)。

以上、55歳にもなってこんなことを真面目に書いている自分がつくづく情けなく、かつ、わりと好きだったりする。
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする