行政書士・社会保険労務士 大原事務所

人生も多分半ばを過ぎて始めた士業。ボチボチ、そのくせドタバタ毎日が過ぎていく。

お盆にゃ帰る

2016-07-08 00:22:53 | 社会保険労務士・行政書士

  平成19年だったと思うが、年金の記録がないと騒がれたことがある。その頃、社会保険労務士の無料相談というと、年金の相談ばかりだった。
  直接事務所に相談にくる人もいた。但しこっちは有料。大抵は記録がないという相談。複雑なものも多いが、厚生年金に関しては、制度的な問題は別にして、社会保険事務所の間違いで記録がおかしいというのは案外少なかったと思う。
 ある日、亡くなったご主人の相続の相談を受けていた高齢の女性からご主人の年金の記録がおかしいという相談。遺族年金の手続きで調べたらご主人の勤めていた会社の記録が二、三年少ないという。
 色々調べて、確かに奥さんの記憶とは違うが、社会保険事務所の記録におかしなところは無い。もう何十年も前の話。その会社はすでに解散していたが、同じ場所で同じ商号の個人営業の店舗がある様子。電話番号も分かった。
 早速電話。年金の記録の件でというと、最近は何処でも詐欺電話も多いので胡散臭いと思ったのだろう。
 「何だてめえ、おれおれ詐欺なら止した方がいいぞ。息子がぼこぼこにされようが、娘が売っ飛ばされようが金は出さねえ!もっとも娘はいねえが」
 と怒鳴られた。江戸っ子か?住所は下町。
 「いえ、そうではなくて、私は社会保険労務士で、年金の事を調べてまして、多分以前その場所にあった株式会社○○に勤めていた××さんの事で調べてるんですが、株式会社○○さんはご存じないですか」
 「株式会社○○は婆さんがやってた会社だけど、とっくにやめたよ」
 「社長さんはいらっしゃいますか?」
 「社長って、婆さんのことか」
 「多分。○○○子さんって方ですが」
 「ああ、じゃあ婆さんだけど、今いないなあ」
 「いつ頃お帰りになります?」
 「さあなあ、何時って言われても、今日明日には帰んねえよ。遠くに行っちまったからな。でも多分盆には帰ると思うよ。毎年帰って来てるみたいだから。もっとも何年も口きいた事はないけどな」
 御伝言お願いできますか?と言おうとして、止した。手元の資料から推測するに、その元社長さん多分100歳近い。もしかすると超えているかもしれない。お盆に帰ると言うのはもう亡くなったと言うことだろう。洒落たことをいう。
 でも亡くなったんですかとも聞きにくい。察したのか相手が話を継いでくれた。
 「ことづけがあるなら線香でもつけて送っときな、仏壇に供えといてやるから、・・・・・・・でも返事は知らねえぞ。あんたいくつか知らねえが、あっち行ったとき自分で訊きな」
 年金の調査も偶にはこういう面白いのもあった。 

 尚、私があっちへ行くまでもなく、その婆さんという人も息子さんかお孫さんかも几帳面な人で、確実な資料が殆ど全部残っていて、社会保険事務所の記録と照合して間違いはなかった。依頼人も了解して終わった。

 



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