行政書士・社会保険労務士 大原事務所

人生も多分半ばを過ぎて始めた士業。ボチボチ、そのくせドタバタ毎日が過ぎていく。

ニット帽

2012-12-18 00:29:43 | 日記・エッセイ・コラム

 

 私は帽子が似合わない。第一殆どの帽子は小さくて合わない。頭も顔も大きいからだ。

 小学校の頃からそうだ。でも、子供のうちはなんとかなる。同級生に比べて大きいサイズのものを被ればよかった。高校に入学した時は一番大きいのでもきつくてやばいと思ったが、登校する時、学校の門の100メートル手前から門をくぐって校舎の入り口までと、下校時にやはり同じ区間は教師が見ているので被るが、それ以外は殆どかぶらなかったし、半年もすると男子の帽子はみんなクタクタになって、それはかぶるというより、乗っているだけという感じになってしまったので、頭の大きさとか、似合うとかいうレベルの問題ではなかった。まあ、絶対に似合ってはいなかったと思うが。

 高校を卒業してからというもの、夏の海での麦綿帽子もかぶったことがない。それが先日ニット帽をかぶった。0.5ミリで坊主にしたからだ。坊主にしたのは禿げてきたからだ。50歳を過ぎてからだんだん薄くなってきた髪は、ここにきて頭頂部を中心に限界を超えた。他の区域はまだまだ森林なのに、頭頂部から前頭部にかけての区域は冬の雑木林のようだ。はげて薄くなったところに、まだあるところの髪の毛を長くしてもってくることだけはしたくない、と思っていた。何故ってあれは変だ。あんなことをしたら余計禿が目立ってしまう。そこで坊主にした。まだ剃ってしまう勇気はない。

 「1番短いのって1ミリ?」

 「0.5ミリってのがありますよ」

 「じゃ、それで」

 「いいんですか?殆ど剃った感じになりますよ」

 「いいんだ。その方が禿が目立たないから」

 ということであっという間に坊主になった。
 床屋から外に出たら、やたら寒い。見た目は覚悟していたからどうでもいい。でもここまで寒いのは予想外だった。寒気が頭から背中と言わず胸と言わず全身を這い降りてくる。私はいま心臓の薬を飲んでいる。風邪をひくと面倒だ。急いで家に帰って、タンスの奥から女房のニット帽を引っ張り出してかぶってみた。鏡を見ると似合わないこと甚だしい。思わず自分で吹き出してしまった。しかし温かい。これはいい。でも女房のではみっともない。第一あの女は怒る、と思ったら奥に息子のニット帽があった。息子は私に似て頭がでかい。中学の頃被っていたものだ。大人用だ。かぶってみると似合わないのは同じだがサイズは丁度いい。

 用があったので、それを被って外に出ようとして、トイレから出てきた息子と出くわした。

 「そのニット帽被って、外出るの?」

 「ああ、ちょっと貸してくれ。床屋へ行ったら寒くなった」

 「そんなのあげるけど、仕事?」

 「ああ」

 「鏡見てからにした方がいいと思うよ」

 「似合わないか?」

 「うん。とっても!」