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宇宙のはなしと、ときどきツーリング

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【冥王星探査】これまでより「大きくなった」冥王星

2015年08月03日 | 冥王星の探査
NASAの冥王星探査機“ニューホライズンズ”の
望遠撮像装置“LORRI”による観測データから、
もっとも大きな謎のひとつ、冥王星の大きさが明らかにされたんですねー

その直径は2370キロで、
これまでの推定値より、やや大きな数値になったようです。
冥王星と衛星カロン。望遠撮像装置“LORRI”による白黒の観測データに、
可視光・赤外線撮像装置“Ralph”によるカラーデータを合成したもの。
2つの天体の明るさや色の違いがハッキリと分かる。

実は、この結果は推測されていたことだそうです。

今回の観測で分かったことは、
冥王星が、海王星以遠の天体の中で一番大きいこと。

これまで冥王星の大きさについては、議論が続いていたのですが、
やっと終止符が打たれたことになります。


大きくなるとどうなる

冥王星が少し「大きくなった」ことで、
これまでの想定よりも密度は少し低くなり、内部の氷の割合は高くなりました。

冥王星の大きさが数十年間も謎になっていた理由は、
大気という複雑な要素のためでした。

一方で、最大の衛星カロンには大気がないので、
地上の望遠鏡からでも簡単に直径が分かったんですねー

“ニューホライズンズ”の観測により、
これまでの値(直径1208キロ)が再確認することができました。
地球、冥王星、カロンの大きさの比較。冥王星は地球の18.5%、カロンは9.5%。


近づいて分かってきた冥王星の衛星たち

望遠撮像装置“LORRI”は、
冥王星の小さな衛星ニクスとヒドラにも焦点を合わせています。

ハッブル宇宙望遠鏡によって2005年に発見されたニクスとヒドラは、
ハッブルの能力を持ってしても、小さな光点にしか見えませんでした。

なので“ニューホライズンズ”が、
冥王星最接近を迎える最終週に行われる観測が待たれていたんですねー

ニクスの大きさは約35キロ、ヒドラは約45キロで、
表面がひじょうに明るいので、氷が存在しているのかもしれません。

また、さらに小さい衛星ケルベロスとステュクスの大きさについては、
今後送信されてくるデータを待つことになります。

カロンについては、さらに新しい画像が公開されています。

広く深い谷のような地形が明らかになっていて、
これはグランドキャニオンよりも大きいんだとか。

周囲に明るい物質が飛び散ったように見える、
衝突クレーターと思われる地形や、北極領域の暗く不思議な模様も見えています。
7月12日に250万キロから撮影された衛星カロン。


ライブ・コンピュータ・シミュレーション

NASAは“ニューホライズンズ”のライブ・コンピュータ・シミュレーション
Eyes on Piuto”(英語のみ)をウェブ上で公開しています。
“Eyes on Piuto”のトップページ。
冥王星とその背景にある衛星カロンに最接近する“ニューホライズンズ”(イメージ図)。

LIVEモードを選ぶと、
冥王星までの距離や“ニューホライズンズ”の速度、最接近までの時間などが、
リアルタイムで変化するようすを見ることができたそうです。

他にも、探査機がどの搭載機器を使用して、どの天体を観測しているかも分かるようですよ。


こちらの記事もどうぞ ⇒ 冥王星に氷の山脈を発見! 探査機“ニューホライズンズ”が最接近直前に撮影

大質量原始星候補から噴出する水蒸気ジェットの変動を追跡

2015年08月03日 | 宇宙 space
VERAと北海道苫小牧11メートル電波望遠鏡を組み合わせた観測により、
世界で始めて、大質量原始星からのジェットの間欠的な時間変動が、
直接とらえられました。

ジェットは不連続に繰り返し噴き出していて、
4年間で4度観測されるうちに、
根元の構造が変化していることも確認されました。


VERAプロジェクト

国立天文台では口径20メートルのパラボラアンテナを、
水沢局(岩手県)、入来局(鹿児島県)、小笠原局(東京都小笠原)、
石垣島局(沖縄県)の4局に設置しています。
VERAの観測アレイと観測局

これら4つのパラボラアンテナの特徴は、
同時に2つの天体を観測できる2ビーム電波望遠鏡であること。

ひとつの受信機の視野を観測天体に、
もうひとつの受信機の視野を観測天体の近くにある参照天体に向けて、
同時に観測することによって大気揺らぎを補正し、
天体の位置決定制度を向上させることができるんですねー

この観測手法を相対VLBIと呼びます。

VERAプロジェクトとは、
相対VLBIの手法を用いて、銀河系の3次元精密立体マップを作成する、
国立天文台の電波観測プロジェクのこと。

4基のパラボラアンテナを用いて、
銀河系内に存在するメーザー天体の位置と運動を精密に測定し、
銀河系の構造と運動について研究を行っています。

これまでの観測で、銀河系構造の大まかなことは分かりました。

でも、正確な電波源の位置や運動について、
大規模な研究は行われてきませんでした。

VERAプロジェクトでは、
相対VLBIと地球の公転による年周視差の測定を合わせて、
より精密な電波源の位置及び運動を観測。

これによって、
「銀河系の構造や銀河系の進化を解き明かす」
ことを目的にしています。


水メーザーを観測
北海道大学苫小牧11メートル電波望遠鏡

そして、今回の研究で用いられたのが、
VERAと北海道大学苫小牧11メートル電波望遠鏡。

これらの長期モニター観測により、
大質量原始星候補“G353.273+0.641”から噴き出す双極ジェットの、時間変動を詳細にとらえることに成功したんですねー

さそり座に方向に位置する“G353.273+0.641”は、
太陽の10倍程度の質量を持つひじょうに若い大質量原始星です。
“G353.273+0.641”の中間赤外線画像。
中心の明るい点が原始星候補天体。
白い等高線は星間チリからの
サブミリ波電波強度を表す。


これまでの研究でも、
ひじょうに高速の双極ジェットを噴き出していることは分かっていました。

そして今回の研究が行われたのは2008年から2012年。

VERAと北海道苫小牧11メートル電波望遠鏡を組み合わせ、ジェットに付随する水メーザーの長期モニターを行って、時間変化のようすを追っています。

その結果、“G353.273+0.641”に付随するジェットが、
不連続に繰り返し噴き出していることが明らかになるんですねー
“G353.273+0.641”から吹き出す双極ジェット。
色付きの点は、ジェットに付随する水メーザー源の分布と、
視線速度を表している。
等高線は中心星周囲に分布する高温の星間チリからの放射。

噴き出しは4年間で4度観測され、
その度にジェットの根元付近の構造が変化していることが、
確認されました。
VERAによって得られたジェット根元の空間構造。
2008年から2012年の間に4度の吹き出しがとらえられていて、
その衝撃波によってシェル状に水メーザーが、
繰り返し形成されている様子が見られる。

また、中心星の近傍約150億キロ程度の領域で、
定常的に水メーザージェットの加速が起こっていることも判明。

大質量原始星からのジェットで、
このような間欠的な時間変動を、直接とらえたのは世界で初めて。

今後の詳細観測によって、
ジェットの駆動・加速機構や星周環境への影響、
ジェットの駆動源となる降着流の性質などについて、
理解が進むと期待されています。
北海道大学苫小牧11メートル電波望遠鏡によって、
とらえられた水メーザージェットの加速。
縦軸はジェットの速度、横軸は2008年初日から数えた観測日を表す。
(グレーの縦縞は望遠鏡のメンテナンスなどで観測データがない期間。)


こちらの記事もどうぞ ⇒ 太陽系の回転速度分かったようです。