宇宙のはなしと、ときどきツーリング

モバライダー mobarider

かみのけ座銀河団に見つかった800個以上の“超暗黒銀河”

2015年08月12日 | 宇宙 space
すばる望遠鏡アーカイブデータの解析から、
かみのけ座銀河団の中に、854個もの“超暗黒銀河”が発見されました。

これにより銀河団内での超暗黒銀河の分布や、
銀河の中にある星の種族が明らかになってきたんですねー


星を作るのをやめた銀河

国立天文台ハワイ観測所では、
1999年の観測開始から、すばる望遠鏡で得られた全ての観測データを保管し、
観測後1年半以上経ったデータは全て公開しています。

今回の研究では、そのアーカイブデータの中から、
かみのけ座銀河団中に854個もの“超暗黒銀河”を発見しています。
かみのけ座銀河団の中心付近。
すばる望遠鏡によるB、R、iバンド画像を合成した擬似カラー画像。
黄色の丸は、昨年末に見つかった47個の“超暗黒銀河”のうちの2つ、
緑色の丸は、すばる望遠鏡アーカイブデータから発見された“超暗黒銀河”。

“超暗黒銀河”は、
星の光だけ見ると天の川銀河の1000分の1しかありません。

にもかかわらず、
大きさは天の川銀河と同程度にまで広がっている、
ひじょうに淡い銀河なんですねー

光で見える物質の質量は、
宇宙の平均と比較しても極端に低い、わずか1%以下…

その理由は、銀河形成後に何らかの形で星の材料になるガスが失われ、
星を作るのをやめてしまった結果だと考えられています。

“超暗黒銀河”が銀河団に特に多く存在するのは、
ガスが失われた原因が、銀河団が持つ特有の環境にあるのかもしれません。


銀河形成の研究に重要な天体

銀河内部の星の分布や色を測定した結果、
“超暗黒銀河”は古い天体だと分かります。

さらに、銀河団内での“超暗黒銀河”の分布は、
他の銀河と同じように中心に集中していました。

なので“超暗黒銀河”は、
銀河団内に古くから存在していたのかもしれません。
(左)すばる望遠鏡の観測領域。水色の領域が1枚目画像の範囲。
(右)青と黒の丸は、今回の研究で見つかった“超暗黒銀河”。
(青は特別に大きいサイズのもの)
赤い×印は、昨年初めて発見された47個の“超暗黒銀河”。

“超暗黒銀河”の大量発見は、銀河形成の研究に重要な天体になると期待され、
「お宝発掘」として世界中の研究者の注目を集めています。

今後は、分光観測によって星形成の歴史を研究し、
“超暗黒銀河”の形成過程を探っていくそうです。

また、“超暗黒銀河”中で99%以上を占める暗黒物質の分布は、
銀河内の星の運動を測定して探ることができます。

でも、“超暗黒銀河”は淡く広がっているので、
すばる望遠鏡をもってしても、星の運動の観測はひじょうに難しくなります。

日本など5か国の協力で建設が始まっている
世界最大級の直径30メートル巨大光学望遠鏡。

この次世代超大型望遠鏡TMTに大きな期待がかかりますね。


こちらの記事もどうぞ ⇒ 世界最大級の巨大望遠鏡をハワイに建設!

太陽1億4000万個分もある!? 銀河中心の超大質量ブラックホール

2015年08月12日 | 宇宙 space
アルマ望遠鏡による観測を元にしたモデル計算により、
棒渦巻銀河“NGC 1097”の中心に存在する超大質量ブラックホールの質量が、
太陽の1億4000万倍もあることが分かりました。

銀河と超大質量ブラックホールは、共に進化してきたと考えられています。

なので、この関係を議論する上で、
ブラックホールの質量は、ひじょうに重要な情報になるようです。


銀河と中心ブラックホール

銀河の中心には、
高い確率で、巨大なブラックホールが存在すると考えられています。

その中でも、太陽の数百万倍から数百億倍もの質量を持つものは、
超大質量ブラックホールと呼ばれます。

これまで、超大質量ブラックホールの質量と、
それを含む銀河の中心部の質量や明るさとの間には、
相関関係があることが分かってきています。

そう、銀河の成長や進化には、
超大質量ブラックホールが大きく影響しているんですねー


ブラックホールの影響を受けた分子ガスの運動

この関係を調べるには、
超大質量ブラックホールの質量を求めることが重要になります。

質量の推定は、
ブラックホールの重力の影響を受けた天体の動きを、
測定することで可能になります。

でも、高解像度の測定が必要だったり、
ブラックホールの重力以外の影響を考慮する必要があったりするので、
算出は容易じゃないんですねー
ヨーロッパ南天天文台の大型望遠鏡“VLT”が、
可視光線で観測した“NGC 1097”

今回の研究で対象となったのは、
ろ座の方向約5200万光年彼方にある棒渦巻銀河“NGC 1097”。

この銀河の中心にある超大質量ブラックホールの質量を導き出すのに、
アルマ望遠鏡で観測したデータを使用しています。

銀河中心付近の分子ガスの分布と運動の様子を、
電波観測から精密に測定するという手法なんですねー

分子ガスは周囲の影響を受けにくいので、動きが測定しやすく、
ブラックホールの質量を求めるのに有効な手段になるわけです。
アルマ望遠鏡で観測した“NGC 1097”の中心部。
シアン化水素(HCN)の分布を赤、ホルミルイオン(HCO+)の分布を緑で、
表現し可視光線の画像に合成。
黄はHCNとHCO+の両方が存在する領域。

観測結果を元に天体モデルを作成し、
分子ガスの動きを再現して調べた結果、
“NGC 1097”の中心にある超大質量ブラックホールの質量は、
太陽の1億4000万倍であることが分かります。

渦巻銀河や棒渦巻銀河に対し、
この方法で超大質量ブラックホールの質量が測定されるのは、
今回が初めてのこと。
アルマ望遠鏡で観測したHCNガスの運動を色で表した画像。
赤はガスが私たちから遠ざかる方向、
紫はガスが手前に近づく方向への運動を表す。

アルマ望遠鏡は、わずか2時間ほどの観測で、
“NGC 1097”中心部のガスの運動データを得ることが出来ました。

銀河とその中心にある
超大質量ブラックホールの関係を明らかにするには、
多くの、そして様々なタイプの銀河で、
ブラックホールの質量を求める必要があります。

でもアルマ望遠鏡を使えば、
現実的な時間で多くの銀河の観測が行えるんですねー
今後の観測に期待が持てますね。


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