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“江戸患い”が静かに流行しています。ジャンクフード多食者は脚気(かっけ)にご用心あれ。

2013年06月22日 | 正しい栄養学

“江戸患い”が静かに流行しています。ジャンクフード多食者は脚気(かっけ)にご用心あれ。

 うっとおしい梅雨。食欲が失せます。白米飯のお茶漬けサラサラ。
 これを続けていると、足がむくみ、痺れ、そして最後には心不全でご臨終に。
 これが、豊かになった江戸町人を悩ませた「江戸患い=脚気(かっけ)」で、これが元で亡くなるのを「脚気衝心(しょうしん)」と言いました。
 年中あったようですが、特に梅雨時に多かったようです。
 これは、平和で豊かになった元禄時代以降、江戸町人に限らず、大坂町人にもあったようですし、将軍家でも起きたようです。第13代徳川将軍・家定、第14代家茂と正室の皇女和宮が
脚気衝心で亡くなったと言われています。

 いずれも、白米の多食によるビタミンB1不足が原因しています。これを防ぐには麦飯に限るのでして、江戸詰めの地方の武士が江戸では脚気の症状を呈しても、藩に帰れば麦飯になって症状が消えました。こうしたことから、脚気になったら麦飯を食べればよいことが当時から分かっていましたが、どれだけも守られなかったようです。

 グルメ文化の怖いところがここで、白米飯に馴らされてしまうと、“こんな美味いものはない”となってしまい、容易には麦飯に変えることはできないのでしょうね。
 もっとも、現代においては、その白米飯がまずくなっています。
 原因は2つ。有機肥料を使わなくなったことと、機械乾燥させるからです。有機肥料を使えば甘味が出ますし、ハサ掛けなどで自然乾燥させると稲の葉や茎から籾にうまみ成分がまだまだ入り込みますから米が美味しくなるのです。
 横道にそれますが、5月半ば過ぎに久し振りに絶品の白米飯に巡り合いました。
 昼神温泉に泊まったときです。仲居さんが地元の農家から直接仕入れた米と言っておられましたが、きっと昔ながらのやり方で栽培し収穫されたものでしょう。かつ、収穫時期から半年以上経っていますから、籾摺りせずに脱穀したまま(籾の状態)で保管し、必要な分だけ籾摺り・精米されたのではないかと推察されます。
 なんせ、おかずなしで白米だけで“美味しい美味しい”と、お代わりまでして食べたくらいですから。魚沼産のコシヒカリの新米を時々いただくのですが、それより上でした。
 こうしたことを考えると、昔の白米食はきっと今よりもずっと美味しく、おかずなしで食べられたことでしょう。
 よって、ビタミンB1不足となり、脚気が多発したものと思われます。

 明治になって富国強兵政策が取られ、農家の次男坊、三男坊を兵隊募集します。1日2食(昼と晩)で主食が雑穀米(良くて麦飯)であった彼らにとって「日に3度、白い飯が腹いっぱい食える」という殺し文句の募集案内に大いなる魅力を感じて、質実剛健な若者が兵隊募集に殺到したことでしょう。
 ところが、軍隊で脚気が大発生し、4人に1人が罹患する事態に至ります。
 原因不明(ではなかったのですが、軍はそう言っていました)なるも、明治18年に麦飯にしたらピタッと止まりました。
 そこで、海軍は麦飯(当初はパン)を続行しましたが、陸軍は明治27年の日清戦争から、何と白米食に戻してしまいました。理由は定かでありませんが、兵隊が麦飯を嫌ったことと、戦地への輸送・管理は白米が楽であったからのようです。
 当然、戦地で脚気が再び大発生します。
 
                                 
 日清戦争での病死者は定かでありませんが、約4千人とも言われています。
 陸軍ではその後も白米食が続けられ、日露戦争では病死者が約2万数千人にものぼったと言われています。また、乃木大将の突撃命令で203高地を駆け上がろうにも剛健な兵士は皆無に等しく、1万人近い戦死者を出しています。
 ドイツ医学の権威者で陸軍軍医のトップ(訂正:戦争中までナンバー2、戦後にトップ)の座に就いていた森鴎外が「脚気伝染病説」と白米万能の「陸軍兵食論」に固執し続けたのです。部下の軍医が「麦飯を」と進言しても、聞く耳持たず、でした。加えて、森鴎外に絶対的信頼を置いていた乃木大将も兵食を変えようとせず、その結果、大悲劇を生んだのです。
 乃木大将はその後責任を取って自刃しましたが、森鴎外はその後、のうのうと文筆活動を行い、今日でも偉大な文化人として評価されているのは何とも理解に苦しむところです。
 こんなことがまかり通る日本ですから、薬害問題もあとを絶たないのでしょうね。日本の薬害問題の第1号とも言える森鴎外です。恐ろしいことです。
(この段落で訂正したのは、2017.6.29にNHKで本件について放映された事実に基づくものです。よくぞ放映したNHK、ご立派。番組名:フランケンシュタインの誘惑(科学史 闇の事件簿)「ビタミン×戦争×森鴎外」 <BS再放送 7.26 23:45 >)

 脚気は、米糠や胚芽に多く含まれるビタミンB1不足で起こる過去の病気となっていますが、どっこい静かに増え始めています。それは1975年以降です。
 
国民栄養調査によれば、ビタミンB1は高齢者は足りているようですが、若い人となると不足気味のようです。でも、この調査は毎年11月(食欲の秋)に行われていますから、梅雨時から夏場は当然に多くの人が不足します。
 ビタミンB1はエネルギーを燃やすのに必須のものですが、ミネラルの1種、マグネシウムも同時に必要です。今日、このマグネシウムも不足し始めました。


       
 そして、ビタミンB1とマグネシウムはもとより、これを補助する各種ビタミン・ミネラルも同時に必要となります。
 今日では、昔のような白米の多食はなくなりましたが、麦・ソバも精白すれば各種ビタミン・ミネラルの多くが失われます。精白された穀物は色がきれいで味に癖もなく、一定の味が出せて品質管理が容易です。よって、食品加工で多用されています。
 可能であれば、極力、無精白の穀類を取りたいものです。

 さて、近年、再び発生し出した脚気は、今、申しましたことも影響していますが、大きな原因となっているのが「ジャンクフード」です。
 
 「ジャンク」とは「がらくた、屑」の意味で、カロリーは高いがビタミン・ミネラル少ない「インスタントラーメン、スナック菓子など」を指します。
 こうしたものを多食する若者(そうでない方も)に脚気の症状が発生し出したのです。

 これからの時期、普通の食事ではどうしても不足がちとなる各種ビタミン・ミネラルですから積極的に補給して、梅雨を乗り切りたいものです。
 朝起きたときに、体がだるいと感じたら、ビタミン・ミネラル不足と思って良いでしょう。

 参考までに、「ジャンクフード」と似たものとして、「ファ(ー)ストフード」というものがあります。これは、短時間で調理できたり、注文してすぐ出てくる手軽な食事を言い、ハンバーガー、フライドチキン、牛丼といったものです。これは「ジャンクフード」ほどではありませんが、やはり各種ビタミン・ミネラルが不足がちになる恐れがあります。
 なお、「ファ(ー)スト」は英語の「fast」で「早い」と言う意味があり、「ファースト = first」(最初の、一番)とは別物です。また、「ファスティング = fasting」となると、これは「断食」という意味になってしまいます。この際、ついでに覚えておいてください。

(本稿は、当店「生涯現役新聞」2005年7月号を一部改定し、補足したものです。)


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1 コメント

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江戸わずらいについて (木村)
2013-08-28 18:34:00
 昼神温泉のお米の話とても参考になりうれしくなりました。自家と同じお米の栽培方法です。ますます米作りが楽しくなりました。ジャンクフードの話も勉強になります。有難うございました。
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