薬屋のおやじのボヤキ

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健康診断は毎朝の自己検診に勝るものなし

2017年05月09日 | 健康診断の罪悪

健康診断は毎朝の自己検診に勝るものなし

 毎年、新年度に入ると職場検診や住民検診の準備が進められ、いずれや検診の案内が来ます。そして、これを半強制的に受けさせられます。
 特に職場においては、メタボ検診制度ができてからは、健康保険組合は受診率が一定基準以下になったり、メタボ患者が増えたりしたら、補助金が削減されるといったぺナルティーが科せられますから、やれ受診しろとか、基準値をオーバーしたら医者でちゃんと措置してもらえとか、相当うるさくなってきているようでもあります。
 ひどいところでは、建設業界にあっては血圧が一定値以上だと作業現場に入らせてもらえないとか、スーパーマーケット業界にあって毎年雇用契約のパートの方は基準値オーバーだと再契約
に当たり医師の“労働に支障なし”の診断書を求められるといった、とんでもない仕打ちをされています。そして、こうした基準値をクリアするために、飲みたくもない薬を飲まざるを得ない方がけっこういらっしゃるようでして、そうした薬を飲むと副作用が出て恐くてしかたがない、どうしたらよいか、という相談も複数受けています。
 実に困った
メタボ検診制度です。政府は、これでもって“医療費が大幅に削減される”と言ってメタボ検診を始めたのですが、“多少の基準値オーバーなんて放っておけ”で済まされたものが、今や“薬を飲まねば仕事もさせてもらえない”ようになったのですから、かえって医療費が増えてしまう状態になっているのではないでしょうか。
 そもそも健康診断の基準値というものは意味のないものがほとんどですし、恣意的に改悪されてきた経緯があります。よって、健康診断は受けても無駄なのです。
 このことについては、過去記事で書きました。

 健康診断の“検査”で病気が発見できる? 無駄な上に害(放射線)になるだけです!

 健康診断をなぜやるかといえば、それは生活習慣病のチェックでしょう。
 世の中が豊かで便利になれば、皆、動かず歩かず、美食飽食するに決まっています。必然的にメタボになるのは誰しも分かりきっています。かと言って、何もかも人力で行い、遠い距離を歩いて通い、粗食少食で毎日我慢する、といった戦前の生活なり江戸時代の生活に戻すなんてことは絶対にできっこありませんし、また、せっかくの高度文明社会の恩恵を受けずして何が楽しい、ということになってしまいます。
 人生を楽しく愉快に過ごすのが何より大切なことですから、ここは開き直って、生活習慣病のどこが悪い、生活習慣病を甘んじて受け入れようじゃないか、基本はこれでいいのではないでしょうか。
 一切の生活習慣病を患うことなく人生を終えようと考えるなら、そして、そこに価値観を見出そうとするなら、世捨て人になってランプ生活でもするしかないでしょうね。

 豊かで便利なこの世の中にあっては、先ずは生活習慣病を素直に受け入れることです。ここからスタートしないことには対処法はありませんからね。
 軽度の生活習慣病は“高度文明病”であって問題なしとする、としましょうよ。これは青信号。中度の生活習慣病になって黄信号、重度で赤信号、と捉えていいのではないでしょうか。放置すれば順次信号の色が変わってきますが、それも加齢が最大要因ですから、そうジタバタすることもないでしょう。
 やがて人は例外なく死にます。死因は、がん、心疾患、肺炎、脳血管疾患、老衰の順になっています。うち肺炎は大半が誤嚥性ですから、これは寝たきりが原因です。寝たきりになる原因は、脳卒中、認知症、高齢による衰弱、骨折・転倒、関節疾患の順です。以上に列記した疾患のうち肺炎と老衰を除く疾患が生活習慣病で、これだけを頭に置いておかれればいいのではないでしょうか。ただし、糖尿病は重度に悪化して合併症を引き起こし、その疾患名で統計に上がってくることが多いですから、糖尿病もお忘れなく。
 疾患名がゴチャゴチャしましたので、生活習慣病として留意せねばならないものを整理しますと、次のようになります。
  第1グループ[がん、血管性疾患(心疾患・脳卒中ほか脳血管疾患)、糖尿病]
  第2グループ[骨折、関節疾患]
  第3グループ[認知症]

 これらの疾患を頭に置いて、未病の予防ということを考えてみましょう。
 まず、第3グループ[認知症]ですが、これは“高度文明病”の最たるもので、豊かさ、平和さの象徴と言えるものです。何もしなくても食っていけるという日長ボンヤリ生活を繰り返していてはボケるのは当たり前です。
 でも、ボケは、何とかして防ぎたいものですね。
 対処法は1つしかありません。朝、目を覚ましたら、“あれもしなきゃ、これもしなきゃ、毎日そうしないことにはおまんまが食わせてもらえねえ”という適度にストレスのかかった生活をし続けることです。これで、ボケは逃げていきます。予防法は実に簡単なことですが、でも、老体に鞭打たねばなりませんから、相当な覚悟がいりますが。
 次に、第2グループ[骨折、関節疾患]ですが、昔は働きすぎて疲労骨折、関節の油切れということがあったでしょうが、現代は逆で、使わな過ぎて骨がもろくなって骨折し、関節が固まるのですから、これは、面倒がらずに小まめに体を動かせば済むことです。ボケ防止と兼ねた対処法で防げます。

 さて、問題になるのは、第1グループ[がん、血管性疾患、糖尿病]です。
 これは第2、第3グループと違って症状が表に現れにくく、自覚症状も感じにくいものです。そして、誰もが加齢とともに大なり小なり患うこととなる疾患ですし、やがて死ぬときは第1グループの疾患が死因となることが大半ですから、基本的には、これが原因して死ねれば本望と捉えたいものです。
 そこで、未病の予防について述べる前に、これによる死亡について考えて見ましょう。
 
まずは、がんですが、老衰死の場合、解剖すればその8割ほどに何らかのがんが見つかると言われており、こうしたことからも、がんは仲良く付き合っていけるものですし、また、がんは苦しまなくて死ねる代表的なものですから、恐れるに足らず、です。
 このことについては下記ブログで説明しましたので、ご覧になってください。
  楽に死ぬには、がんに限る。がんは放っておけばいい!
 次に、血管性疾患ですが、これでもって頓死(とんし)できれば本望ではないでしょうか。究極的には、長野県が進めているPPK(ピンピンコロリ)運動の中で、お年寄りたちの合言葉となっている「脳血管障害で95歳で死のう!」というものでしょうね。
 このことについては下記ブログで説明しましたので、ご覧になってください。
  TPPとPPK、無関係のようですが関連あり
 3つ目の糖尿病は少々困りますね。合併症を引き起こして死亡することになるのですが、早々に血管性疾患が訪れてくれればいいものの、失明・足の壊疽(えそ)・認知症併発といったものが先行すると何ともなりません。

 何ともならないものは他にもあります。先に言いました血管性疾患でピンピンコロリと逝けずに生き長らえた場合です。けっこうな頻度で脳障害なり半身不随などの運動障害といった重い後遺症で苦しめられます。
 これらを未然に防ぐ、つまり未病の予防ということになると、つい検査したくなりますが、糖尿病以外は冒頭で申しましたように検査で発見することは不可能に近いです。
 近代医学はめざましく発展し、検査機器でかなりのことが分かるようになったやに思われていますが、まだまだほんの一部でしかなく、今後いくら検査機器が発達したところで、どれだけのこともないのは確かなことです。
 逆に、放っておいてもいいものまで治療対象にされますから、かえって健康を害することにもなりかねません。現状はこちらの傾向が強いように感じられます。
 血管性疾患に関しては、誰もが加齢に伴い動脈硬化が進み、血栓ができやすくなります。血管壁にコレステロールや中性脂肪が沈着するのです。体細胞が栄養満タン状態になっていて、栄養を引き受けてくれないから栄養が血液中をさまよい、やむなく血管壁で貯蔵するしかないのです。その昔は、貧栄養により血管細胞の接着剤であるコレステロールや中性脂肪が不足し、血管が破裂することが多かったのですが、今は逆に詰まるのです。ですから、血管性疾患の危険性を大きく減ずるには、その中庸が望まれ、今と昔の中間の生活習慣にするということになりますが、言うや易く行い難しとなりましょう。

 じゃあ、どうすりゃいいの。特に、中高年の方で仕事とか家庭の都合で、まだまだこの先〇〇年は死んでも死ねない、バリバリ仕事をせねばならぬ、という状況下に置かれることが往々にしてあります。そういう方に知っておいていただきたい体調の急激な変化、これは何だ?という疾患について紹介しておきましょう。
 朱書きした箇所はしっかり頭に入れておいてください。

 まず「脳梗塞」ですが、突然次のような症状が一つでも感じられたら、脳のどこかの機能分野で血管の詰まりが生じた恐れが多分にあるというものです。
 ・なんでもないのに転倒したりふらつく
 ・片方の手足あるいは顔面片側の麻痺やしびれ、視野が半分欠ける
 ・ろれつが回らなかったり、言葉が理解できなかったり、物が言えない
(参考)脳出血となると、これらの他に、次の症状を伴うことが多いです。
 ・頭痛・吐き気 

 次に「心筋梗塞」ですが、突然次のような症状が感じられたら、心臓を取り巻く血管に詰まりが生じた恐れが多分にあるというものです。
 ・強い胸の痛み、
呼吸困難、吐き気、冷や汗
 なお、一時的な軽い心筋梗塞と言えるのが「狭心症」です。通常数分程度で回復するようですが、程度の大小により、次のような症状が一つ二つ三つと感じられます。
 ・のどをゼイゼイ鳴らす、胸がざわざわする
 ・左肩、背中の痛み、左手小指の痛み、奥歯や下あごが痛む
  (多くは、点ではなく、面で痛みを感じます。)

 3つ目が「糖尿病」ですが、だんだん次のような症状を感じるようになります。
 ・やたらと口が渇くようになる
 ・食後すぐではなく数時間後にだるさや眠気がくる
 ・尿が泡立つ
 ・多食すれど体重は減少していく

 体調の急激な変化に関しては、以上のことを知っておかれれば十分でしょう。これでもって主要な疾患に緊急的に対処することができます。
 でも、これだけでは不十分と思われる方も多いことでしょう。肝臓疾患も腎臓疾患も起きてはならぬ。あらゆる未病を予防し、元気いっぱい働きたい。そのために人間ドッグに入って健康診断を定期的に受診しよう、ということになってしまいますが、ちょっとお待ちください。こうした方に読んでいただきたいのは次の記事です。
 人間ドックは病人を仕立てるためのワナ。人間ドックという奇習があるのは日本だけ。

 じゃあ健康診断をどうやってやればいいの?ということになりますが、こうした検査機関の検査機器より数段上をいき、毎日簡単にチェックできる機能を持ち備えたものがあります。それは、自分自身の感覚です。ヒトの体には様々な幾つものセンサーが張り巡らされており、時々刻々、異常を感知したら知らせてくれるようになっています。
 これに勝る検査方法は他にありませんから、これを重視したいです。
 普段は感じない、とんでもない異常の感知は先に述べたとおりですが、何となくちっと変だ、という感覚は誰しも時々経験することであり、その原因も察しが付くことが多いですから、自分でけっこう対処できます。 

 随分と前置きが長くなりましたが、じわじわとやってきて、罹患したのかどうか、その恐れが高くなってきているのかどうか、なかなか気づかない未病というものも数多くあるのですが、それらを早期発見できる自己検診というものも、また、ちゃんとあるのです。
 それは、毎朝、目覚めてから身支度を整えるまでの間に行う自己検診です。
 <自分
の体のセンサー6項目チェック>
  目覚めたとき     →・すっきりした目覚め
  トイレまで歩くとき   →
節々・筋肉スムーズ
  小便をしたとき    →・排尿すっきり
  朝食を食べたとき  →・胃の不快感なし
  大便をしたとき    →・排便すっきり
  身支度をしたとき   →むくみ無し
 以上、時系列に沿って検診項目をあげましたが、覚えやすいのは排尿・排便を統合した次の5項目です。
  ・すっきりした目覚め
  ・排尿・排便すっきり
  ・節々・筋肉スムーズ
  ・胃の不快感なし
  ・むくみ無し
 さらに足腰に自信のある方は節々・筋肉をカットして、次の4項目となります。
  ・すっきりした目覚め
  ・排尿・排便すっきり
  ・胃の不快感なし
  ・むくみ無し

 ここで、上の4項目について少々解説します。
 まず「すっきりした目覚め」。
 これでもって、あらゆる臓器の健康度がいっぺんに全部推し量れるというものです。
 なかなか起き上がれない、体が重もだるい、頭がぼーっとする、などなど何らかの違和感があれば、どこかの臓器がお疲れさん状態にあるということになります。
 原因が睡眠不足や過労など思い当たる節があれば問題なしです。この場合は、どこかの時点で心身を休ませてあげることです。
 すこぶる健康体となると、例えば明治維新時代の西郷隆盛が有名ですが、目が覚めた途端に“蒲団を蹴り上げてガバと起き上がり、タタッと足が動く”ということになるのですが、現代人はなかなかこうはいきません。
 しばし蒲団の中でまどろみ、目を擦り、大きく伸びをして、やっと起き上がる。これでもって、“ああ、すっきりした目覚め”と判定してしまいます。
 恒常的な疲労は気にならなくなるもので、これでもって健康と錯覚してしまうのですが、こうした場合は、健康度は100点ではなく7、80点程度と考えたほうがいいでしょうね。
 現代人はたいていの方が飽食が元で肝臓が恒常的にお疲れさん状態になっていますが、これが普通だと思い込み、自己採点が甘くなりがちです。
 2つ目の「排尿・排便すっきり」は説明するまでもないでしょうが、色や臭いも観察対象です。そして、排便は毎日スムーズにすっきり、残便感なしであって当たり前ぐらいに捉えてください。腸内細菌の健全さがヒトの健康を支えてくれているのをお忘れなく。
 3つ目の「胃の不快感なし」も説明するまでないですが、どれだけかの異常があって、それに心当たりがないとすると、それは無意識下に存在する精神的ストレスの可能性が高いです。精神的ストレスも恒常化すると意識できなくなる性質のものですが、それを胃が教えてくれます。
 4つ目の「むくみ無し」は案外見過ごしがちです。女性の場合は、疲れなどで顔や足にむくみが出やすく、気にしておられる方が多いようですが、男性でむくみをチェックされる方はまずないでしょうね。よく知られたことですが、立ち仕事が多い方は夕方に足がむくんでくる傾向にありますが、朝、むくみがあるかどうかをチェックするのが肝腎です。
 手指のむくみ=曲げ伸ばしがスムーズにいくか
 心臓のむくみ=次の方法で静脈をチェックすることで、おおよそ分かります。
  1.左手の甲の静脈を見る(見えない人は手の甲を叩く、叩くと膨れてくる)
  2.左手を心臓より下に持っていく→しばらくすると静脈が拡張する
  3.左手を肩の高さまで上げる→静脈が消えていく
    これが、5秒以上消えない人は心臓が少し弱っている可能性があります。
 (心臓のむくみ:<出典>「世界一受けたい授業」:帝京大学医学部外科准教授 新見正則先生)
 (備考:手指は毎朝、心臓(静脈チェック)は疲れがあるときなどたまにでよい)
 むくみは、血液やリンパの流れが悪いことによる場合が大半で、少し運動したり、ストレッチをやれば解消することが多いのですが、健康体であれば朝のむくみは一切ないですから、むくみがあれば未病があると判定なさってください。なお、朝のむくみは血流が悪くなっている証拠でもありますから、血流改善に心がけたいものです。
 なお、異常なむくみが長く続くようなら、心不全、肝硬変、腎不全、甲状腺障害などなど重い疾患へ向かっている恐れが疑われますから、要注意です。
(参考)むくみについての参照サイトとして次のものがあります。
  Mukumii(くむみぃ)

 以上、毎朝の自己検診で「異常なし。今日も楽しく元気でいこう!」といきたいものです。

(補記)
 愛煙家の方は、朝の一服が自己検診の非常に有効な手段となります。
 その昔、専売公社がコマーシャルで「今日も元気だ、たばこが旨い」とか「たばこは健康のバロメーター」とやっていましたが、正にそのとおりです。
 たばこがまずくなったら、どこか体がおかしいということになります。

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日本人間ドック学会の“新基準値”の評価:コレステロール値は合格だが、血圧は操作されている

2014年05月06日 | 健康診断の罪悪

日本人間ドック学会の“新基準値”の評価:コレステロール値は合格だが、血圧は操作されている

 4月4日、日本人間ドック学会は、今後の「新たな検診の基本検査の基準」の元になる数値を発表しました。2年間かけた健康保険組合連合会との共同研究の結果です。そして、今後5年間かけて追跡調査をすることになっているとのことです。
 ところが、発表の3日後、4月7日に何やら怪しげなペーパーを追加発表しました。
 この2つの発表は日本人間ドック学会HPでご覧になれます。
 → http://www.ningen-dock.jp/other/release
  (2017.7.30 久し振りにアクセスしてみたのですが、4月4日の分も7日の分も消されていました。)
 4月7日の発表内容で、気になるのは次の文章です。(太字、下線は原文のまま)
 今すぐ学会判定基準を変更するものではなく、厚生労働省には特定検診の保健指導基準が性別、年齢によって数値が違うものがあるという事実をご報告した段階であることでご理解をいただきたいと考えております。

 こうなると、人間ドック学会の判定基準値が定められるのは5年先になりそうな雰囲気がしますし、データ解析して得られた素直な数値ではなくて、何やかや屁理屈をつけて歪められた数値が基準値になりそうな気配もします。
 そもそも、日本人間ドック学会と健康保険組合連合会の2機関がこのような共同研究をなぜやったのか(あるいは、やらせてもらえたのか、やらされたのか)、その理由はどこにあるのか、ということを考えねばなりません。そして、次に、発表された数値は客観的に正しいと言えるかどうか、何か操作されてはいまいか、というチェックをかけねばなりません。
 加えて、3日後に、4日に発表済みの断り書きに、わざわざ確認を込めて補足するということをなぜしなければならなかったのか、これは実に不可解です。どこかの団体が、これでは困るからと、骨抜きにしようと圧力をかけたのか?

 それはそれとして、今回発表された数値の出し方をまず概説しましょう。
 元データは人間ドック受診者500万人のうち健康な人150万人。これほど多い標本からの解析は初めてのことです。その中から一次除外を行って34万人に絞り込みます。その方法は国際的に認められている米国の検査標準CLSIに準拠し、不健康と考えられる人を除外するのですが、今回の場合、重大な病気の既往歴がない、高血圧や糖尿病の薬を服用していない、喫煙習慣がない、飲酒は日本酒換算で1日1合未満、などなど、かなり厳しいものです。
 次に、人間ドック受診年齢に偏り(30代は少ない)がありますから、中高年の一次除外で絞り込まれた者をアトランダムで抽出し、標本数をそろえます。
 最後に、二次除外として、潜在異常値除外法<ある項目について異常な数値を示す者(100人中5人の割合)は、他の項目の基準値算定に使わない。>という方法でもって、「超健康人(スーパーノーマルな人)」<発表資料にこのような聞きなれない表現がしてあります。>に絞り込み、各検査項目とも1万~1万5千人程度の標本を元にして基準値をはじき出しました。
 標本からの基準値の算出方法は一般的な方法でして、標準偏差の手法を使うのですが、分かりやすく言えば、膨大なデータを全部並べて両極端の数値各々2.5%をカットし、残りの95%の人の上限値と下限値を示したものです。
 ここで、お断りをしておきますが、発表資料の中で「超健康人(スーパーノーマルな人)に絞り込み」と書かれていますが、たとえ基準値内に納まっていても、ひょっとして何か病気が潜んでいるかもしれませんし、逆に、両極端の各々2.5%にはみ出したからといって不健康だというものではありません。はみ出した人は、該当する項目に関する疾病に罹患する確率がどれだけか高い可能性があるというだけのことで、長年ずっとはみ出していても、いたって健康という人の方が多いのが現実です。そうしたケースは、その人の体質によるもので、基準値はみ出しであってはじめて「正常」なのです。
 検査の基準値というものは、まずはそうしたものであることをしっかりと頭に置いておいてください。
 よって、検査データの活用法は、自分が全体の中で基準値内にあるかどうかではなくて、自分の検査データがどのように経年変化してきているかを見ることです。
 その数値が年々明らかに上がってきたとか下がってきたとかした場合に、生活習慣などに変化がなければ、これは該当検査項目に関係する何らかの疾患があるのではないかと疑われます。
 従って、基準値との比較が意味をなすのは、性別年齢階層別の基準値が明らかに異なる項目に限られます。基準値が年齢とともに上がるのであれば、自分の検査データが上がっていって何ら問題ないと判断されるのですからね。

 前置きが長くなりましたが、日本人間ドック学会の今回の発表で注目を集めた2項目について、小生の見解を述べることにします。
 まず、コレステロール。
 従前の基準値はおかしいということが何年も前から言われ続けています。
 基準値の値は厳しすぎる、男女差がある、特に女性は閉経によって急上昇する、加えてコレステロール値は高いほど健康だ、といったもので、これは健康診断のデータ解析や疫学調査で証明もされていました。
 最新(と言っても2004年)のもので、十分な標本数から算出された信用のおけるものとして、東海大学大櫛名誉教授が発表された男女別5歳きざみの基準値があります。
 これは、2013.7.25「 健康診断の“検査”は“病人”を作り出すだけのもの… 」の記事で紹介しましたが、日本人間ドック学会のものと非常に良く似た値になっています。
(注:2014.1.8 大櫛名誉教授が発表された詳細なデータは当初東海大学HPへアクセスして閲覧できたのですが、残念ながらアクセスできなくなりました。非公開資料に?)
 東海大学大櫛名誉教授のその数値を、今回の日本人間ドック学会がまとめた年齢階層と整合させるために5歳きざみを単純平均して得られた値と比較してみましょう。

LDLコレステロール
  (上限値)
     男         女
              (30∼44歳)(45∼64歳)(65∼80歳)
東海大学(大櫛)   180  147   185   192
日本人間ドック学会  178  152   183   190

コレステロール
  (上限値)
     男         女
              (30∼44歳)(45∼64歳)(65∼80歳)
東海大学(大櫛)   263  240   278   279
日本人間ドック学会  254  238   273   280

 2機関ともに統計学的に有意な標本数から解析したものですから、当然の帰結となり、十分に納得のいくものです。
 しかし、日本人間ドック学会の女性の年齢きざみには、不満があります。十分すぎる標本数があるのですから、5歳きざみで示してほしかったです。そして、閉経前か後か、更年期障害が伴なっている時期か否かといった区分での基準値算定も可能であったことでしょうから、それも示してほしかったです。そうすれば、女性の場合、経年変化によるコレステロール値の高まりが適正か否か判断できようというものです。
 欲を言えば、男の場合も30歳代は低めで、40歳からは安定し、後期高齢者となると少し落ちるという結果(数値に15~20の差)が東海大学では出ていますから、年齢階層別の基準値を示してほしかったです。

 次に血圧。
 これは解せません。血圧(上:収縮期)は年齢とともに上がっていくことは、過去の健康診断のデータ解析や疫学調査ではっきりしています。
 それが、性差・年齢差は有意には認められないとして、性別無関係・全年齢平均で血圧(上)の上限値は「147」として発表しました。これはどうしたわけでしょう?
 発表資料の中で、各検査項目の性差・年齢差が有意か否かの判定は標準偏差率(SDR)が原則として0.
4以上としており、血圧(上)の年齢差のSDR値は、男0.00、女0.20とあります。また、血圧(上)の性差のSDR値は、0.36と出ています。ちなみに、LDLの年齢差は、男0.00、女0.53になっていて、LDLの女の年齢差が0.53と大きいですから、先にあげたように男女別にし、女性は階層別3区分で基準値が示されています。
 このことからすると、血圧(上)の性差は0.36とけっこうあるものの0.4に届かないから、あえて男女別の基準値を示さなかった、ということになりますし、年齢差にあっては、男は「0.00で、まるっきり差がない」、女は「0.20で、大した差はない」との解析データが出ているという話です。
 こんなことって有り得ますか!

 東海大学大櫛名誉教授の算定値:血圧(上)の上限値
 年齢 40~ 45~ 50~ 55~ 60~ 65~ 70~ 75~
 男 148  150  155  161  164  165  168  167
 女 138  142  151  159  159  164  165  166

 どうでしょう。コレステロールでは非常に良く似た値になっているのに対して、この血圧(上)の上限値の違いは何でしょう。
 どちらも標本数は十分にあって統計学的に有意な値がはじき出されるのですから、非常に良く似た値にならねばならないのです。
 参考までに、東海大学大櫛名誉教授の5歳きざみの算定値を単純平均(これは日本人間ドック学会の今回の手法)すると、次のようになります。

  血圧(上)の上限値 男:157 女:151
  [日本人間ドック学会:男女ともに147]

 こうなると、東海大学大櫛名誉教授の調査報告書と日本人間ドック学会の今回の発表のいずれかが、“おかしい”ということになります。
 従前の他の調査研究と東海大学大櫛名誉教授のものとは整合性が高いのに、日本人間ドック学会の発表だけは異質です。
 よって、日本人間ドック学会、“これはおかしい”となります。
 小生思うに、日本人間ドック学会は、きっと“始めに結論ありき”であったことでしょう。それと整合させるために、中高年の一次除外に何らかの作為があったのか、二次除外の潜在異常値除外法に作為があったのか、その両方をしたのか、そのように疑われます。
 また、先ほど取り上げました血圧(上)の性差のSDR値が0.36とけっこう大きいにも関わらず、これを無視したのは、男女別で基準値を別々にはじき出すと、明らかな違いが出てしまい、男の場合は現在の基準値との差が大きくなり過ぎてしまい、困ったことになるのは必至だからです。

 小生の推測になりますが、現在の基準値の設定、特にコレステロールと血圧(上)は余りにも厳しすぎる上に、基準値をオーバーすると、日本の場合は欧米とは全く違って、即、投薬傾向にあって医療費が嵩みすぎ、政府としては、医師会の抵抗はあろうが、これにブレーキをかけるために基準値を少々上げざるを得ない、ということになったのでしょう。
 また、人間ドックの検査結果のカウンセリングにおいては、受診者が真の情報をだんだん知るようになってきて、今の基準値でカウンセリングを行おうと思っても受診者を納得させられなくなり、受診離れが進む恐れがでてきて経営難になる、これでは困る、ということもあったのではないでしょうか。
 そこで、きっと、各界で次のような事前合意がなされたことでしょう。
 コレステロール降下剤は副作用が大きく、全世界の6、7割を日本だけで消費している現状からして、将来的にはこれは改めざるを得ず、コレステロール値は正直ベースで基準値を示し、今後しばらくしてから、それに沿って改定せざるを得ない。しかし、降圧剤は開業医の死活問題になるから、そういうわけにはいかない。現在の血圧(上)の上限値は50歳未満「129」、50歳以上「139」としているから、稼ぎの中心となる50歳以上の「139」は改定するにしても「プラス10」を上回ってはならぬ。「149」より小さい数字で発表せよ。それが難しければ、現在の2階層年齢区分を止めて良い。全年齢平均にすれば数値は自ずと小さくなるではないか。
 いかがなものでしょうか。
 小生の推測どおりにはたして事が運ぶかどうか。しかし、それも危ういのは、4月7日に追加発表された怪しい文書が暗示していますし、過去において、コレステロール値の基準値緩和がたしか循環器学会から出されたのですが、それが潰されたりしていますから、容易には基準値改定には進まないような気がします。
 そして、日本人間ドック学会の今回の発表は、「超健康人(スーパーノーマルな人)」に絞り込んで基準値を算出したのだから、一般人向けの基準値とは別のものであり、基準値は、“一般人と超健康人の2本立てで行く”ということになりそうな気もします。
 なお、日本人間ドック学会は、今回の研究について5月を目途に最終報告書を発表すると言っていますから、どんなものが出てくるのか、それを一先ず注目したいです。 

(2014.5.13追記)
 週刊現代5月24日号に、日本人間ドック学会理事長:奈良昌治医師(脳卒中の専門医:83歳)のインタビュー記事が載っていました。
 その抜粋は以下のとおりです。なお、血圧を中心にした内容となっています。

…今すぐ基準値を変えるべきだと言うつもりはありません。これから5~10年かけて、追跡調査を積み重ねて…最終的な結論…。
…各専門学会が個別に設けている従来の基準値をこれまで通り守っていくべきだということは明言しておきます。
…診断基準がどんどん厳しくなっているのは事実です。多少大げさに脅かしたほうが効果がありますし、…肥満の人が増えている現状にあり…、現在の学会の基準が必ずしも厳しすぎるとは思っていません。
…現時点では時期尚早ですが、ゆくゆくはそれぞれの学会と数値をすり合わせる必要もでてくるでしょう。                             (抜粋ここまで)

 何ともお粗末な発言でありました。小生が予想した以上に悪い。
 これは、かなりかなり外圧がかかったからのことでしょうね、きっと。
 ちなみに、奈良昌治医師は、長年の経験に基づいて、脳卒中に関する個人的な意見をインタビューの中で語られています。それも以下に抜粋します。

…吉田茂元総理は…マッカーサー元帥と交渉していた頃、血圧が300を超えることがあったそうです。…総理を退いたとたんに一気に150まで下がったそうです。
 私も…院長だった頃はいつも血圧が180前後で、心配事があると200を超えることもありました。でも、院長を辞めてからかなりよくなりました。…
 確かに以前は、高血圧は怖かったですよ。…60年前は日本人には脳出血が非常に多かった。ところが、今では栄養状態がよくなって血管が丈夫になり、血圧が上がってもそう簡単には血管は破れなくなった。むしろ血圧が下がったときのほうが危ないこともあるのです。                                 (抜粋ここまで)

 公的な発言と私的な意見、食い違いが大きすぎますよね。これじゃあ、だめだ。
(再追記:追記投稿の前日の2014.5.12に
、日本人間ドック学会は「週刊現代の記事は歪められた内容だから抗議する」旨のペーパーを発表していました。奈良昌治医師の個人的な意見に関する記述についてです。なんとも見苦しい発表ですよね。冒頭のHPのURLをクリックすれば、ご覧になれます。)
 →(2017.7.30 久し振りにアクセスしてみたのですが、この抗議文も消されていました。)

(2017.7.30追記)
 2014.4.4日本人間ドック学会が今後の「新たな検診の基本検査の基準」の元になる数値を発表して大きな波紋を呼び、その後の動きに注目していたものの、何のアクションもありませんでした。あれから3年も経ち、忘れ去られかけた2017.4.26に2つの資料(と言っても2014.4.4発表の基礎データ表であって、今頃なぜ?)がプレスリリースされ、2015年度からは何やら新たな動き出しが見えるやに思われますが、それから既に2年以上も停滞していますので期待薄の感がします。

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健康診断の“検査”で病気が発見できる? 無駄な上に害(放射線)になるだけです!

2013年07月30日 | 健康診断の罪悪

健康診断の“検査”で病気が発見できる? 無駄な上に害(放射線)になるだけです!

 前号「 健康診断の“検査”は病人を作り出すだけのもの 」で、基準値の設定の仕方で健康な人まで“病人”にされてしまうことを述べました。
 そして、本来の基準値とは、健康な人の検査値の両極端それぞれ2.5%をカッとした95%のデータの上限値と下限値を示したものであることを強調しました。
 ところで、本来の基準値からはみ出しているとなると、本当に何か病気が潜んでいると言えるかどうか。これが大きな疑問でもあります。

 つまり、それぞれの検査項目は、病気の発見につながる確かな指標と言えるかどうかです。検査をやる意味があるかどうかという根本的な問題です。
 これについては、過去から医療業界でも多くを疑問視する声が上がっていました。
 10年ほど前に、この疑問が医療業界で高まったのですが、現在では、完全無視の状態になってしまって、無駄な検査が大手を振って続けられている状況にあります。
 10年ほど前のこのことを本稿で紹介することにします。

 1990年代に欧米で健康診断の有効性について多くの研究がなされ、そのなかで最も高い評価がなされているのが次の報告です。
 米国保健省の独立機関である「米国予防医療研究班」が1990年代後半(正確な年は不詳)に行った健康診断に対する5段階の勧告ランク。
 これを元にして行われたと思われます日本における次の調査報告。
 1998年公益財団法人労働問題リサーチセンターの「Evidence Based Medicine(科学的根拠に基づく医療)による産業保健活動」(研究メンバー代表:村田勝敬帝京大学医学部助教授)
 2005年度厚生労働省科学研究費補助金による特別研究事業「最近の科学的知見に基づいた保健事業に係る研究」(班長:福井次矢聖路加国際病院長)

 以上の3つの報告の中で最も新しいもの「2005年:福井班長報告」の結論を下表に示します。

 いかがでしょうか。早期発見・早期治療につながるものは何かあるでしょうか。
 有効とされたもののうち、「血圧・体重・身長」は自宅で測定できますし、「飲酒喫煙」と「うつ病」に関する問診はチェック表が手に入れば自分で判定できます。
 「血液検査、尿検査、心電図検査」などは、病気発見に「根拠なし」の判定ばかりです。
 これらは、やっても無駄、ということを報告書は言っています。
 しかし、それでも市区町村は住民集団検診を熱心にやり、企業には企業検診を義務付け、政府は悪乗りしてメタボ検診までやらせるようにしているのです。
 何の根拠もなしにです。

 ところで、条件付きで有効とされた「糖尿病検査糖負荷試験」ですが、これにはわけがありそうです。
 若い女性はスイーツを食べる機会が多く、空腹時の血糖値が正常であっても、ブドウ糖の負荷試験をすると、20代から30代の女性の6割程度に異常が見つかったという報告があり、これは正に隠れ糖尿病の状態にあると言えるからです。単なる空腹時血糖の検査では見逃されてしまうというものです。
 なお、C型・B型肝炎検診が「判定保留」とされた理由は、報告書の本文が入手できていませんので分かりませんが、その昔のノーチェックの輸血や注射針の使い回しがなくなって新たな患者はまれであることも一因しているかと思われます。

 ここで、念を押しておきますが、血圧とて高くっても問題ないことは前号で述べました。問題になるのは、数値が急激に経時変化してきたといった大きな変動の場合だけです。
 そして、飲酒が健康に悪いのは肝臓病を引き起こすからと言われていますが、アル中になるほど飲めば体を害するものの、豪傑と言われる人が毎日酒を浴びるほどに飲んでも肝臓病になるものではありません。と言いますのは、アルコール性肝炎なるものは本質的に存在せず、B型かC型あるいはそれ以外の型が違うウイルスによる発症に過ぎないからです。
(アルコール性肝炎に関係する記事は、次のとおりです。興味がある方はご覧ください。)
  肝臓病の元凶は飽食暖衣 
 なお、その記事の中でも申しましたが、肝機能検査の数値は肝臓の細胞の破壊程度を示すもので、この数値が大きければやがて肝炎、肝硬変、肝がんへと進む恐れがあるのですが、発症しない人も多くみえますし、また、進行するにしたがって数値が正常に戻ることがありますから、「2005年:福井班長報告」でも「実施の意義を再検討すべき」とされているのでしょう。 
 ついでに、喫煙は百害あって一利なしと一般に言われますが、喫煙、副流煙による肺がんの発生は科学的根拠が一切なく、単に周りの非喫煙者の迷惑になるだけのことでして、健康問題とは別物です。
(喫煙に関しては、このブログのカテゴリー「たばこと健康」の欄に数本の記事を入れておりますので興味がある方はご覧ください。1本目はベータ・カロチンについて、2本目から肺がんとの関係について書いています。)

 こうしたことから、「2005年:福井班長報告」の結論から検査項目をチェックすると、体重は体重計に乗らなくても増減が自覚できますし、うつ病は本人が自覚できなくても周りの者が知ることができ、また、糖負荷試験の異常は砂糖摂取過剰が原因ですからスイーツなどを常日頃控えていれば問題は生じません。
 つまり、健康診断の“検査”は何もする必要がないということになってしまうのです。
 よって、小生は、もう15年以上、住民集団検診を受けたことがありません。つい最近、役場からワンコイン(500円)検診の案内が今年も来ていましたが、中も見ず、資源回収ボックスに納めたところです。
 ちなみに、反骨の医師、近藤誠慶応大学医学部講師は、もう30年以上健康診断を受けておられません。無駄な上に害(放射線)になるだけであることをよく知っておられるからです。

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健康診断の“検査”は“病人”を作り出すだけのもの、特に「血圧」と「コレステロール」が悪質

2013年07月25日 | 健康診断の罪悪

健康診断の“検査”は“病人”を作り出すだけのもの、特に「血圧」と「コレステロール」が悪質

 元気で長生きしたいから、“早期発見・早期治療”につながる健康診断の“検査”を定期的に受けている、という方が圧倒的に多いのが、日本人に特徴的な健康管理法です。
 こんな国は世界中探してもありません。
 特に、米国やフィンランドでは、健康診断の“検査”は、やる意味がないし、寿命が延びることもないという、明確なデータがちゃんと公表されていますから、健康な人は
“検査”を受けるのはまれですし、ましてや“検査”結果を重視するというような考え方は持っていません。
 また、欧米諸国では、日本のような住民集団検診や企業検診制度はないです。これは、個人の健康は個人で管理するのが当たり前という、個人個人のしっかりした考え方が強いお国柄からとも言えますが、各国政府は、そんなことを行っても“早期発見・早期治療”につながらず、決して生活習慣病が減らないことを知っていますから、多額の税金を投入してまで制度化するなんて全く考えもしないのです。

 その健康診断“検査”の基準値というものが、万人に当てはまる正しい指標であれば、まだ許されるのですが、日本では、時代の経過とともにころころ変わりますし、たいていは男女差が無視され、年齢差も無視されたり、あったとしても実に大ざっぱな設定しかなされていません。
 日本とは違って基準値を重視することがない欧米の方が、男女差や年齢差を踏まえて、かえって基準値がしっかりしたものになっています。
 そして、日本では、その基準値も統一されたものではないです。各学会のガイドラインはあるものの病院・クリニックによって若干の違いがあります。
 日本における基準値がこのような形になっている原因は、実は健康な人の数値が幾つなのか、これがどんな調査方法を取ったとしても算出不可能だからです。
 でも、日本の政府も医師会も、基準値はさも正しいような言い方をしています。

 そして、日本では、国をあげて、“早期発見・早期治療”そのために健康診断を定期的に受けましょう”の大合唱で、人間ドッグが大流行りとなり、まずは“検査”をすることが健康確保の第一にされてしまっています。酷い企業は強制的に社員全員に人間ドッグを受けさせて、その“検査”結果を勤務評定に加えることまでしています。
 あきれて物が言えない日本の健康診断“検査”の扱い方です。
 この日本独特の健康診断制度は、個人主義が未発達という土壌にあることと、戦前の学童体力向上対策や疫病・感染症対策のやり方が尾を引いているのでしょう。
 皆が同じ検査をし、皆が同じことをやり、皆が揃って病気を防ごう、というものです。
 現代社会になって、日本人もかなり個人主義的になってきていると思われるのですが、どっこい健康診断“検査”だけは時代に大きく逆行し、メタボ検診がいい例ですが、どんどん強化されてきています。
 そして、“検査”はいいことだ、“検査”は補助によってタダか少しの負担で済むからと、皆が“検査”を進んで受け、それでもって“検査”結果に一喜一憂させられているのです。

 こうした“検査漬け”によって、あるとき、たまたま“検査”の数値が基準値から上にはみ出しでもすれば、医者は、高血圧“症”、糖尿“病”、脂質“異常症”といった診断結果を被検者に告げ、病人を意のままに作り出し、薬を死ぬまで飲ませ続けるのですから、これはもう「医は医術にあらず算術である」としか申しようがありません。
 日本では、医師により差はあるものの、基準値をオーバーすると“とりあえずお薬を出しておきましょう。”となってしまうのが通例ですが、欧米では“まずは生活習慣の改善をしましょう”という指導がなされるだけで、即投薬ということはないです。
 ちなみに、コレステロールを下げる薬は日本人が何と世界の生産量の6、7割を消費しています。それも、大半が更年期過ぎの女性をターゲットとしたものです。これは、のちほど説明しますが、日本の基準値が際立って厳しすぎる上に即投薬傾向にあるからです。
(2014.1.18追記)
 米国の基準値は日本とあまり大きな差はないようですが、単なる指標としてしか捉えられていないようでして、即投薬には決してなりません。コレステロールについては更年期過ぎの女性はだれでも数値がグーンと上がりますから、米国では基本的に投薬しないことになっているようです。また、高血圧は州や保険会社によって違いがあるようですが、180を超えた場合に初めて投薬対象になるようで、それがカリフォルニア州では最近10アップされたとのことです。なお、このように投薬に慎重になるのは、投薬による副作用が大きいと医療訴訟で敗訴することが多いことも背景にあるようです。
(追記ここまで:高血圧についてはLA在住の日本人の方からいただいた情報です。)

 “検査”の結果が基準値からはみ出したからといって、それは“症”でも“病”でもないです。単に、高血圧状態、高血糖状態、高コレステロール状態といった単なる状態にあるというだけのことであり、加えて、そういう状態であっても健康体の方の数値には個人差がかなりありますから、それはそれで正常だ、という場合の方が圧倒的に多いのです。
 逆に、基準値の範囲に納まっていても、発症する場合が往々にしてあります。痛風がいい例で、尿酸値が基準値をオーバーすると痛風予備軍の扱いを受けますが、痛風の発症は体質が大きく影響し、基準値の範囲内であっても発症しますから、“検査”の数値は無意味なものになっています。
 なお、基準値の上限値と下限値の算出方法については、のちほど説明します。

 さて、「医は算術」と申しましたが、医師になることを志し、大病院で体を酷使して患者の命を救うために日夜働くものの、ある程度の年齢になると体力の限界を知り、マイペースで仕事ができる開業医となるのが一般的で、開業医が年々増えてきています。
 開業には初期投資として多額の資金が要りますから、それを回収し、加えて子息を医者にしようとなると、これまた教育費が高額なものとなりますので、開業医が食っていくためには多くの患者を抱え込み、“検査”と薬の処方箋で保険点数を上げねばなりません。
 ここに、日本の医療制度の大きな病根があるのです。
 ますます増える開業医の生活保障をするために、開業医の既得権益を守ることに重点を置いている日本医師会が、政府を抱き込み“検査漬け”と“薬漬け”を正当化していると言えます。こうして、健康な人があたかも病人であるかのように扱われているのが日本の医療の現状なのです。

 「医は算術」であることの例を幾つか紹介しましょう。
 先ずは、高血圧“症”。その昔は最高血圧の標準値(平均値)は「年齢+90」でした。その後、基準値の上限設定が定められ、上限値160が長く続き、2000年に140にされ、2004年には老人を除き130にされてしまいました。
 2000年の改定で、それまでの高血圧“症”の患者数は1500万人が、3700万人に。
 次に、糖尿“病”。血糖値の上限は、その昔は140だったものが、1999年に126に、その後110に引き下げられています。新潟大学名誉教授の岡田正彦氏によれば、基準値の上限を10下げると、はみ出しが2.5倍増えるとのことです。
 また、血糖値の過去1、2か月の指標となるヘモグロビンA1cの基準値上限は以前は5.8であったものがメタボ検診の始まりとともに5.2に。これだけで、何百万人もが糖尿“病”にされてしまいました。
 3つ目が、脂質“異常症”。1987年までは総コレステロール値の上限は250でした。それが意図的に220に改定されたのです。これによって、50歳以上の女性の55%が当時の呼び名である高脂血“症”という患者にされてしまったのです。それが今や“異常症”と改悪改名されました。加えて、総コレステロール値の基準値設定に多くの批判がでてきたことから、総コレステロール値は診断基準から除去してしまい、悪玉と善玉に分けて基準値を新たに設定し直すという、煙に巻く方法に切り替えています。この新しい基準値になって、患者数がどうなったかというと、決して減ることはないようです。

 ここまで質が悪い基準値設定ですから、「病院で殺されないために」とか「病人はこうして作られる」といった本が書店の棚に幾冊も並び、雑誌でも頻繁に記事にされています。
 医師は、このことを知っていても、黙して語りません。なぜならば、自分で自分の首を絞めることになりますからね。生活習慣病“治療薬”は安定した最大の収入源なのです。
 実は、お医者さんもかわいそうです。日本特有の薄利多売方式の保険点数では、開業医は生活習慣病患者を数多く呼び込まないことには食っていけないからです。
 また、多くの患者は、基準値は正しいものと思い込まされていて、素直に医師の指導に従ってしまいますし、加えて、患者の中には基準値はおかしいという情報を得て基準値に疑問を持ちながらも、医師を前にすると、疑問の思考回路をバッサリと切断し、医師に頼りきっていまうという愚かな行動に出てしまう人がけっこう多いです。これも、欧米人とは違った、日本人に特有の特徴です。一言で言えば、ひ弱な精神ということになりましょうし、最近話題になっている言葉を持ち出せば「空気に従う」ということになりましょう。

 健康診断の一番正しいやり方は、自分で自分をチェックする以外になく、毎朝、起きたときの体調がどう感じられるとか、便の状態は良いか悪いか、といったチェックをしてみたり、日中にちょっと動いただけで動悸がしてきたとか、疲れを感じるといった体調の変化に注意して、それを自分自身で感じ取ることです。中高年であれば、これは可能でしょう。
 これらの体調変化は、たいてい原因に心当たりがあるものであり、それを是正すれば良いのですし、また、明らかに加齢が原因していると判断されるものも多いです。
 とんと原因が分からないとなったら、そのときには医師の診察を受ければ良いでしょう。まれにとんでもない病気が発症しており、即治療が必要となる場合がありますからね。
 ちなみに、小生(間もなく65歳)はもう15年以上住民検診を受けたことがなく、検査値がどういう値なのか全く知りません。
 なお、日本に唯一住民集団検診を行っていない自治体があります。それは長野県の泰阜(やすおか)村です。やらない理由は、冒頭で述べた欧米諸国と同じ考え方に基づいています。もう20年以上前からのことですが、歴代の村長に引き継がれており、最近の泰阜村長の考え方を紹介しておきましょう。
 泰阜村長のBLOG 私はこう考えます。
 http://blog.st203.net/soncho/
 「2012.10.30 日本脳炎の予防接種での死亡」の記事の中段辺りにあります。

 ここまで、“検査”は無意味で、基準値は間違っていると述べてきましたが、強制的に“検査”を受けさせられて、検査データをまざまざと見せ付けられ、それでもって指導を受けると、多くの方は不安になるのが正直なところでしょう。
 そこで、下記に、多少はましな、客観的な計算方法で算出された基準値を紹介しておきます。男女差、年齢差をしっかり加味したものですから、現在の基準値とは随分異なっています。
 ただし、この基準値も、この範囲内に収まっておれば「正常」というものではないです。
 基準値とは何かというと、大ざっぱに言えば、健康でどこも悪くないという人の膨大な検査データを全部並べ、両極端の数値それぞれ2.5%をカットした、残り95%の人の上限値と下限値を示したものです。
 これが、通常、基準値と呼ばれるもので、たいていの検査値はそうなっていて、検査機関ごとに独自で調査することがありますから、検査機関ごとに基準値にバラツキが生じます。また、検査機関によっては検査法が異なることがあり、数値の出方に差が生じます。
 基準値というものは、ただそれだけのものであって、両端からはみ出したそれぞれ2.5%の人が不健康というものでは決してないです。
(注:下表の基準値は、東海大学名誉教授大櫛陽一氏が2004年に発表されたもので、算出方法は、ある特定の検査法で行われた検査データの全体を非線形最適化法を応用した新手法で解析するというもので、基本的には、平均値と標準偏差から95%信頼範囲を計算するというものですが、大雑把に申せば、両極端2.5%カットと思っていただいてよいです。)
 よって、基準値というものは、それを外れていても、今現在健康であって、どってことないが、ひょっとして何か病気が潜んでいるかもしれないから、精密検査をした方がいいかもしれない、といった程度のことです。
 下記の基準値も、そうしたものであることを頭においてご覧になってください。
 そして、あなたの過去の検査データと見比べてください。なお、下限値は記載を省略しましたのであしからずご容赦ください。


 詳細は、下記サイトをご覧ください。検査項目20程度載っています。
 東海大学医学部医用工学情報のホームページ
 http://mi.med.u-tokai.ac.jp
 開いたら、10行目ほどの所に「男女別・5才ごと基準範囲数値」があり、それをクリック。
(注:2014.1.8 残念ながら、このホームページは開けなくなっていました。東海大学HPから検索をいろいろかけてみたのですがダメでした。非公開資料に?)

 なお、たいていの方は、定期的に“検査”をなさっておられ、ここに示した本来の基準値から毎回はみ出しになる方が5%おみえです。それでも健康と感じられるのであれば、それは、あなたの体質が基準値はみ出しであってはじめて「正常」なのです。
 そうした人は、20人に1人はいると考えて良いでしょうね。無理して検査値を落とし、残りの19人の仲間入りする必要はどこにもありません。
 そして、そうした方が高血圧”症”だからといって降圧剤を飲み続ければ、必要な血流が生み出されなくなり、全身の酸素欠乏が生じますし、脂質“異常症”だからといって血中コレステロールを下げる薬を飲み続ければ、エネルギー代謝が阻害されて老け込んでしまいます。どちらも、老化を促進させ、余計な病気を呼び込む元になるのです。
 いい例が老人医療専門病院ですが、こうした薬をほとんど出さない病院があり、その病院では、元気なお年寄りの患者が大変多いそうです。

 ところで、ただ一つ、定期“検査”のメリットがあります。
 例えば、今まではいつも数値が低かったのに段々と上がってきた、
あるいは、今までずっと数値が高かったのに段々と下がってきた、といった数値の大きな経時変化が見られたときは、単なる加齢で片付けるのは危険で、何か大きな別の原因があることを検査データが物語っているのです。
 最近、毎日運動をするようになったからという場合などは別ですが、何か思い当たる節があれば、その対応をせねばならないことになりますし、そうでなければ医師の診察を受け、潜んでいる病気の発見をせねばなりません。
 いい例が、基準値内であっても血糖値が段々上がってきたという場合は、明らかに膵臓が疲労困ぱいしていると考えられます。その場合は、既に糖尿病の初期は過ぎていると考えた方がいいと思われますからね。でも、糖尿病の改善は、少食と断食で膵臓を休ませ、自然治癒力を発揮させるしか方法はないですから、薬では何ともしがたいですが。

 ここまで「健康診断の“検査”は“病人”を作り出すだけのもの」と題し、生活習慣病に関して長々と“検査”やその基準値の無意味さを述べつつ、かつ、基準値内であっても既に病気であると脅したりして、読者の皆様方にはたいそう気分を悪くされた方がきっと多いことでしょう。
 その点、あしからずお許しください。
 でも、現在の基準値というものは、どういうものであるのかを、この際、しっかりと理解していただきたいです。また、健康になるための健康管理は、毎日自分で自分の体をチェックする以外に方法はないことも理解していただきたいです。
 そうしたチェックを欠かさなければ、あなたはいつまでも健康でいられることでしょう。
 そして、それが健康寿命をうーんと延ばし、ピンピンコロリと天寿を全うするための近道となりましょう。

(2014.5.6追記)
 日本人間ドック学会が、ドック受診者150万人のデータから、“新基準値”の元になるものを4月4日に発表しました。コレステロール値は素直に算出されているようで、上に掲げた東海大学のものと酷似していますが、血圧は大きな違い(学会の数値はかなり低い)があり、これは標本抽出が操作され、捏造されたものと言わざるを得ません。
 詳細は、「 人間ドック学会の“新基準値”の評価 」をご覧ください。

<関連記事:こちらもご覧ください。>
 高血圧は健康で長生きできます。血圧の薬は飲んじゃだめ。
 コレステロール降下剤は毒薬
 高くても安心。コレステロール値(その1)(その2)
 
 人間ドックは病人を仕立てるためのワナ
 健康診断の“検査”で病気が発見できる?

 

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人間ドックは病人を仕立てるためのワナ。人間ドックという奇習があるのは日本だけ。

2012年04月10日 | 健康診断の罪悪

人間ドックは病人を仕立てるためのワナ。人間ドックという奇習があるのは日本だけ。

 日本で人間ドックを受ける人は毎年300万人。その受診者の9割に異常値が出ています。いきがい療法で知られる昇幹夫医師は「人間ドックとは一種の脅迫ビジネス」と言い切ります。なんせ、9割の人に異常値が出るということは、数値が異常だからです。
 つまり、健康な人を病人に仕立てて病院に送り込む、それが人間ドックの本来の役目なのです。
 この人間ドックは、早期発見、早期治療を目的としたものですが、人間ドックという大掛かりなものでなくても定期健診そのものもまた同様で、何ら効果が認められません。
 例えば、検診で血圧が高いと出たとしても、高血圧はその昔は180以上とされていたものが、今は130(老人は140)と基準値が大きく下げられており、これは病人を作り出すためのものと言わざるを得ないのです。
 
血圧が常時180あっても何ら健康上害がない人がたくさんいますし、その人にとっては、それが適正血圧なのです。コレステロールとて同様です。

 定期健診神話はどこから来たかと言いますと、150年前の欧米に由来します。
 定期健診を受けさせて、早期発見、早期治療を目論んだのですが、しかし、全く効果が上がらない。多くの研究者の調査結果に、ことごとく、“人間ドックや定期健診を受けた人の方が健康で長生きできる”という証明ができなかったのです。
 
そこで、100年以上前に欧米では、各国政府・医学界ともに、定期健診は有効性を示す証拠がないという判断を下したのです。そして、今や、欧米には、公的な健康診断制度は存在せず、また、人間ドックという奇習もないのです。
 それが日本ではどうかというと、法律で企業に定期健診を義務付けさせ、メタボ検診にあっては、これを行なわないとぺナルティーを課すまでになっています。
 政府・医学界あげて病人づくりを推し進めている日本。

 これに輪をかけて怖いのが、人間ドックやガン検診で浴びる放射線の害です。
 このことについては、前日の記事「放射線瞬間被曝とだらだら被曝とでは大違い」で紹介しましたが、有り余っているCT機器を有効活用せんと、やたらとこれを作動させ、強い放射線を浴びせまくっているのです。
 この検査被曝によるガンの発生は無視できないところまで来ているのです。
 こうして、今や、定期健診や人間ドックは、無効どころか、ガン患者を増産するまでになったのです。
たまったものではありません。

(以上、「新がん革命」(安保徹ほか著)(ヒカルランド)からの抜粋を要約して紹介しました。必読の1冊です。)

(2014.5.6追記)
 日本人間ドック学会は、4月4日に“新基準値”の元になるものを発表しました。それによると、コレステロール値は素直に算定されていると考えられるのですが、血圧については標本を操作し、捏造されたと言わざるを得ません。詳細は次の記事をご覧ください。
 2014.5.6 日本人間ドック学会の“新基準値”の評価

(関連記事)
2013.7.25 健康診断の“検査”は“病人”を作り出すだけのもの
2013.7.30 健康診断の“検査”で病気が発見できる?

 
  

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現代医療にまたまた問題点“検診は無意味いや罪悪”

2012年03月03日 | 健康診断の罪悪

現代医療にまたまた問題点“検診は無意味いや罪悪”

 現代医療の問題点、特に生活習慣病については、過去記事の中で幾度か取り上げました。主なものは、次のとおりです。
 2010.10.23~27 岡本裕著「9割の病気は自分で治せる」を中心に、8本の記事
 2011.2.15 西原克成著「究極の免疫力」などから、アトピーに関する4本の記事
 2011.9.13~15 土橋重隆著「ガンをつくる心 治す心」から、3本の記事
 2011.12.28 新聞記事より「癌に関連して…“老いは病”か“病は老い”か」

 いずれも現代医療の問題点を痛烈に批判したもので、それを紹介させていただいたのですが、そうした論述を展開される医師が近年大変多くなってきました。
 これは、現代医療がどんどん望ましくない方向に向かっている証しでしょう。
 今日の厚生労働省の施策や医師会の取組み方に大きな問題点があるのです。

 今回、小生が師とする同業者から、またまた現代医療の問題点を指摘する良い著書が出版されたとの情報を得ましたので、ここに紹介することにします。
 それは「新がん革命」、著者は安保徹医師ほかです。安保氏は、その著「免疫革命」(2003年)で一躍有名になった方で、その当時から現代医療のあり方を批判しておられ、その後幾冊も出版され、この度2011年8月に本書を共著されたものです。
 必読の1冊でして、小生も近日これを入手しますが、その要点を既に師が顧客向け通信で分かりやすく紹介してみえますので、それを以下に寸借させていただきます。

 主治医はあなた
 現代医療の多くは、病気の根本原因が分からないまま、対処療法の薬が大量に処方されています。“対処療法を長期間続けて病気が治る”ということはあり得ないので、近年、医療不信が生じてきているわけです。
 多くの病気は、「生き方の無理」や「食事の偏り」が原因であることを自覚し、病気は「自分が主治医となって治していく」時代になってきました。

 定期健診=人間ドック(年1回検診)を受けても、健康で長生きはできない?!
 欧米では、随分前から「人間ドックを受けた人」・「受けなかった人」の追跡調査を行い、その結果、“受けた人の方が健康で長生きをしている”ということが証明できないので、「人間ドックは無意味だ」というのが常識です。
 あるのは日本だけ。
 日本では、年間300万人以上が「人間ドック」を受けて、その結果、9割の人が何らかの「数値異常」と診断されています。
 メタボ検診と同じように、わざとハードルを低くしているから、ほとんどの人は引っかかります。これは、「人間が異常」なのではなくて、「数値が異常」なのです。

 がん検診、受けた人ほどがんになり、死亡率が高くなる?!
 がんは「早期発見」・「早期治療」により、“がんは撲滅できる”と言われて久しくなりますが、しかし毎年がんで亡くなる方は確実に増えています。
 それはなぜか。
 1つには、繰り返し行なわれたレントゲン撮影やCT検査による放射能の被曝によって新たながんが発生すること。2つ目には、放置してもかまわないがん(がんもどき)が多かった可能性があり、余計な治療で亡くなったこと。3つ目には、がん治療で必要のない治療を受けたことで、体の抵抗力が落ちて、他の病気が増えたこと。

 抗がん剤ががんを治せないどころか、新たながんを発生させる?!
 多くの抗がん剤には強い副作用があります。
 それは、抗がん剤が「大変な猛毒物質」だからです。
 さらに、抗がん剤が「新たながんを発生させる」こともある…これは製薬会社も厚生労働省のお役人も、そしてがんの専門医も皆知っている…ことで、知らないのは、我々一般の国民だけ。
 では、なぜそんな効かないどころか、発がん性のあるものを使うのか。
 それは、日本の医療費は今35兆円と言われていますが、がん絡みの医療費は約20兆円だそうで、ここに大きな答えがあるようです。

 症状とは病気が治る証しである?!
 例えば、風邪を引いたときに、熱・咳・くしゃみ・鼻水・下痢・頭痛などの症状が出ます。
 これは、「自然治癒力」が働いて、体内に侵入した細菌やウイルスを撃退するための現象でして、「体が治ろう」としている証拠でもあります。
 東洋医療は、「病気」と「症状」を分けて考えます。
 「症状」が現れるのは、「病気」が治ろうとしている証しでして、むしろ好ましいことであって、それを手助けすることを考えます。
 ところが、西洋医療の薬物治療は、両者を同一と考えて、「症状」を一つでも攻撃して潰していけば「病気」は治る、と考えます。
 どちらが良いのか、子供でも分かりますよね。
 今回の内容は、とてもとても一薬剤師(小生の師)であるオヤジが言えるものではありません。(でも、とても共感しています。)先に紹介した本を、ぜひお読みになってください。

 ということです。皆さん、どう感じられましたでしょうか。
 ここで、師の弟子である小生から、少々補足させていただきます。
 
西洋医療の考え方である“症状を攻撃して潰していけば病気は治る”という観念は、どこから来ているかについて、10年ほど前に、興味深いお話を聞く機会がありました。
 講師は、元某テレビ局のニュースキャスターをされていた方で、演題は経済関係のものでしたが、西欧人の「物の考え方」の参考になるからと、自身が家族連れでドイツへ赴任していたときに、ご子息を病気で亡くされた件について、触れられたものです。

 ご子息がお亡くなりになった原因は、西欧医療の本旨に基づき、“症状を強烈に攻撃した”(具体的には、高熱が出たから全身を水風呂に漬けて冷やした)ことにより、それに耐えるだけの抵抗力がなかったことによります。
 そして、担当医師からの次のように説明を受けたとのことです。
 「ご子息は、対処療法に耐えることが出来なかった病弱な体でした。もし、一命を取り留めていたとしても、このような病弱な体では、これから先、幾つもの病気にかかるに決まっています。生涯、病気で苦しみ続け、不幸を一生背負っていかねばならないでしょう。若くして他界できて、かえって良かったのではないでしょうか。」

 そこで、講師のお話。
 「西欧は、“弱肉強食、適者生存”が当たり前の文化になっている世界ですから、日本人が西欧で病気にかかったら、急ぎ日本にとって帰り、日本の病院に駆け込まなくてはいかんですよ、皆さん。そうしないと、殺
されかねませんよ。」

 そこから先は、小売業界一般の日欧比較の話になりましたが、ところで、今日、日本の病院に駆け込んで望ましい治療が受けられるかとなると、講師のご子息のように殺されるようなことはないにしても、その治療方法は、大同小異のような気がします。
 日本の文化も西欧型になりつつありますから、抗がん剤治療のように、“がんが先に死滅するのか、母体が先に死んでしまうのか”、そのせめぎ合いをさせられることになるのですからね。

 その西欧文化は、“弱肉強食、適者生存、そして自然淘汰”の考え方になりきっていますが、これは、皆さん、どこかで耳にされた言葉でしょう。
 そうです、ダーウィンの進化論です。
 でも、これは何も生物学の世界の言葉ではなく、ダーウィンが「種の起源」を発表した頃は産業革命が真っ盛りの時代で、当時の経済論が、そのような論点に立って展開されていましたから、ダーウィンが生物界も同じ論理が成り立つと見誤っただけのことです。
 このように、弱肉強食、適者生存、自然淘汰”という捉え方は、西欧社会のあらゆる分野で根深くはびこっている文化なのです。
 こうしたことから、医療においても、「病気に勝てない虚弱な人間は淘汰されるしかない」という論法になってしまい、治療に当たっては、質実剛健な人間の「症状を消せば良い」ということになるのでしょう。

 ところが、日本には、この西洋文化とは真逆の“弱者救済、共存共栄、敗者復活”の文化がまだまだ根強く残っています。
 それだけ日本列島は平和が長く続いたからでしょう。その背景は、西欧と違い、異民族間の相互侵略の嵐に巻き込まれることがなかったからと考えるしかありません。
 よって、「弱肉強食することなく弱者に救済の手を差し伸べ、適者生存ではなく共存共栄を目指し、自然淘汰させることなく敗者を復活させてしまう」という、実に心豊かで心穏やかな文化が、日本列島には長く生き続いてきていると考えられるのです。

 こうしたことを踏まえますと、日本の本来の医療というものは、「どんな病気に対しても、まずは虚弱体質を改善するために滋養強壮になる生薬を与え、何らかの症状が出ても、病気と仲良く付き合うしかないとして、対処療法を行なわず、症状即療法でもって自然治癒するのを待つ」という考え方が育ってきたものと、小生には思われます。

 さて、小生の師とする薬剤師さんやうちの店が、どういうスタンスでお客様に対応すれば良いのか。
 質実剛健な人に対して
対処療法で症状を消してあげるのか、それとも、虚弱体質の人に対して滋養を付け自然治癒力を高めてあげるのか、いずれかの選択を迫られるのですが、師も小生も、当然にして後者であるとして、接客しているところです。

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