薬屋のおやじのボヤキ

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脂肪摂取基準P/S比は真逆。動物脂肪を増やし、植物油を減らすべし。

2019年12月19日 | 正しい栄養学

脂肪摂取基準P/S比は真逆。動物脂肪(飽和脂肪酸が多い)を増やし、植物油(多価不飽和脂肪酸:主にリノール酸が多い)を減らすべし。              

 P/S比とは(日本脂質栄養学会のサイトでの用語解説より)
 Pは多価不飽和脂肪酸(Polyunsaturated fatty acids)、Sは飽和脂肪酸(Saturated fatty acids)の略で、P/S比とは多価不飽和脂肪酸量(主にリノール酸)を飽和脂肪酸量で割ったものです。食事中のP/S比を高めると血清コレステロール値を低下させ、低くすると血清コレステロール値を増加させることから、食事中の油脂の質をあらわすための指標として用いられてきました。しかし、脂質栄養の研究が進むにつれて、Pのなかでも健康に対して異なった影響を及ぼすさまざまな脂肪酸があることがわかり、リノール酸だけをPの代表としてあらわすことができなくなってしまったこと、また、血中脂質レベルを調整することだけで、簡単に心疾患や脳血管疾患発症の軽減をはかることはできない、などといったことが明らかとなってきたのです。以上のような理由から、最近ではこの指標はあまり使用されなくなっています。
(引用ここまで)
(注)血清コレステロール値が高くても血管性疾患を悪化させないことを、日本脂質栄養学会は主張しています。これについては既投稿の次の記事の中で解説しました。
 コレステロールの薬は百害あって一利なし、絶対飲まないことです

 上の「P/S比」用語解説では、日本脂質栄養学会はわりと控え目な表現をしていますが、最近発刊された同会の下記文献(本書)によれば、表題のごとき、逆の摂取が強く勧められています。その理由を本書から抜粋・引用しながら説明することとしましょう。

参考文献:2019.9.8 発刊「日本人は絶滅危惧民族 ー誤った脂質栄養が拍車ー 」
<裏表紙:糖尿病 慢性性腎炎 骨折 脳・心血管病 認知症 少子化の予防を目指して>
(日本脂質栄養学会 食品油脂安全性委員会 糖尿病生活習慣病予防委員会 編著者:奥山治美)
※この「日本脂質栄養学会」は信用が置けるか否かですが、これについては下記の記事で小生の受け止め方を書いています。ポイントとなるのは「利益相反開示」です。
 久しぶりに本を買い、食の見識を新たにする

(本書の前書き:編著者 名古屋市大名誉教授 奥山治美)
 はじめに
 脂質栄養はおもに生活習慣病・慢性疾患に関わっており、多くの学会がこの課題に取り組んでいる。1992年、すでにいくつかの栄養関係学会が存在するとき、あえて脂質栄養を専門とする日本脂質栄養学会を発足させたのは、「リノール酸の摂りすぎの害やオメガ3脂肪酸の有効性が既存の学会で軽視されていること」に起因していた。その後、魚油EPAやDHAの有効性については医療分野で広く認識されるようになったが、植物油脂と動物油脂の摂取については、今も推奨内容が真っ二つに割れている。
 世界保健機構(WHO)やその傘下…は、今でも動物性脂肪を植物油で置き換えることを強く勧めている。これに対し、日本脂質栄養学会や世界の限られた数の関連学会、グループはこれを誤りとしている。そして筆者らは、「数種類の植物油脂が驚くほど多様な生活習慣病の発症に関わっている」とし、そのメカニズムを明らかにし、数種類の植物油脂の摂取を極力減らすよう提言してきた。ところが、国内においても、産業界・医療界・行政・一部学者はわれわれの提言を無視し続けており、WHOや米国発のガイドラインを国民におしつけている。…
 医療界や国の施策にもかかわらず生活習慣病予防の成果が上がっておらず、むしろ悪化の道を進んでいる原因として、誤った脂質栄養指導にあると筆者らは主張してきた。…
 WHOの予算の7割は企業からの寄付によっているといわれ、米国の省庁・学会・学者は、油糧種子輸出国の利益という面で、脂質栄養と深いつながりがある。すなわちこれらの機関から発信されるガイドラインには、利益相反問題が深くかかわっており、エビデンスに基づくガイドラインになっていないことを知る必要がある。
 …脂質摂取の質と量の変化が、“こころ”と“からだ”の病気に関わっているメカニズムが明らかになってきた。バター食文化が残っている欧米に比べ、植物油食文化がすすんだ日本や東アジアでは、…(問題はより深刻である)…。

「脂肪摂取基準P/S比は真逆。動物脂肪を増やし、植物油を減らすべし。」の根拠一例
<2010年厚労省コホート調査(JACCスタディ,JACC研究)>
(P.26)飽和脂肪酸の摂取量によって5群に分け、14.1年追跡すると、全脳卒中、出血性脳卒中(くも膜下出血を除く)、虚血性脳卒中ともに、動物性脂肪の摂取が多い群の死亡率が低かった(資料9:下図)。そして、動物性脂肪の摂取が多い群でも虚血性心疾患死亡率は高くなく、総心血管死亡率はむしろ低かった。内科医学界はこれらの結果を受け入れようとせず、(旧態依然のまま)“飽和脂肪酸やコレステロールの摂取を減らす”という栄養指導を続けている。…
 
(引用者:注)下図中のP値は、大ざっぱに言うと「このような値が偶然に出る確率」です。一番左の全脳卒中のハザード比(約0.7)という値が偶然に出る確率(P=0.004)は、た
ったの0.4%しかないということになり、統計学的に十分に有意ということが言える、となります。なお、くも膜下出血:ハザード比(約0.9)のP値は0.47ですから、偶然に出る確率は47%となり、これには有意性はないということになります。
 一般にP=0.05ないし
P=0.01で有意性ありと判定されるようです。

(P.112)沖縄県の長者番付の低下について
 沖縄の施政権が日本に返還された1972年当時、…沖縄は長者番付のトップ…でした。…豚肉文化…すなわち動物性脂肪の摂取が多く、このため脳卒中死亡率が本土に比べて低く、これが最長寿の主因になっていたと考えられます(Okuyaka H,1996;柴田博,2018)。そのころ本土に働きに出た多くの沖縄の若者がU-ターンしたそうです。当時は本土のほうが植物油摂取は多かったので、また、世界的な趨勢から沖縄医師会では「動物性脂肪を減らして植物油摂取を増やす方向に舵を切った」といわれます(沖縄医師会メンバー談,Okuyama H,1996)。その結果、動物性脂肪の摂取に代わり植物油の摂取が増えました。それに伴い沖縄県民の長寿番付の急速な低下が始まりました。筆者らは摂取油脂の植物性/動物性の比の上昇をその原因であると解釈しました(Okuyama H,1996)。
 それは、欧米で行われた「動物性脂肪を減らして植物油摂取を増やす」という介入試験の結果、予想に反して癌や心臓病、総死亡が増え、若者の不慮死が増えたことによります(Strandberg TE,1991;Muldoon MF,1990)。
 当時、リノール酸摂取が極めて多いイスラエル人に心血管疾患や癌が多く、この現象をイスラエルパラドックスと呼び、インドではギ―(羊脂バター)から植物油に転換して同様な変化が見られ(インドパラドックス)、筆者らは沖縄の例を沖縄パラドックスと呼びました(Okuyama H,1996)。
 これらから得られた「動物性脂肪を植物油に置きかえることは極めて危険である」という教訓は、油糧種子の関連産業界の利益と相反し、一般消費者に届きにくい状況になっています。一部の御用学者は今も、高リノール酸油の摂取増を勧めています。

(P.50)間違った脂質栄養指導が先行した久山町研究に学ぶ
 久山町(福岡県)は、九州大学との協調の下に古くから健康増進に取り組んできた実績がある。ところが、この町で糖尿病有病率が全国平均より高いことが指摘された。九大関係者は、「診断基準の差」によると反論し、インターネット上でホットな議論が展開された。…筆者らは久山町の栄養摂取量を調べ、各種疾患の有病率、死亡率などを比較し、糖尿病に関しては次のような結論を得た(奥山治美、2017)。
①久山町は全国平均に比べ、糖尿病有病率は2倍近く高いが、これは診断法の差ではなかった。(引用者:注)図の下の解説文にあるとおり男性のみの比較
 

②久山町民の糖質摂取量は全国平均と大差ないが、植物油の摂取量が多く、動物性タンパクの摂取量が少なかった(ともに脳卒中の発症を促進する要因である)。摂取油脂の植物性/動物性の比は、全国でほぼ1:1、久山町では2:1となっていた。…久山町民に対する九州大学の脂質栄養指導は、WHOや国のガイドラインに沿っており、脂肪酸の多価不飽和/飽和の比を上げること、日本人のトランス脂肪酸の摂取量は少なく、とくに留意する必要はないこと、などの解釈に基づいていた…。
③(略)
④菜種油、水素添加植物油など数種類の植物油が、VK2-オステオカルシン・リンクを阻害して、糖尿病などを増やすメカニズムを明らかにした(Okuyama H,2016)。…

(P.53)…糖尿病の主因は糖質摂取過剰ではなく菜種油など数種の植物油脂の摂取過剰であった…。国や専門学会のガイドラインに忠実に、植物油脂/動物性脂肪の摂取比率を上げる栄養指導を強力に勧められたことが、久山町民の最初の悲劇であろう。筆者(H.O.)はこの誤りを指摘する文書を久山町研究の指導に当たっている人たちに送ったが、彼らは国や専門学会の指導のほうを採択したようであり、共同研究…の申し出には応じなかった。

(P.53)久山町では、脳卒中、認知症の増加でも先行している
 菜種油やパーム油などの摂取増は糖尿病のみならず、脳卒中など他の病気も増やしていると考えられる。動物実験では、人の摂取量で脳出血発症を促進し、寿命を短縮した。久山町では、くも膜下出血の頻度が異常に高い…。そして、久山町研究の脳卒中発症率は他の報告より高く見える…。ただし、…データの背景、診断基準などに多くのバイアスがあると考えられ、数値の直接の比較はできない。専門家の解析を待ちたい。
 …OECD引用の認知症有病率は久山町研究に基づいており、久山町の認知症有病率は極めて高いといえる。…
 健康寿命は生活習慣病予防における客観的指標の一つとなる。福岡県の健康寿命は都道府県の中で長いほうではない。ところが、久山町の健康寿命が異常に長いという記述があった(久山町研究のリーダーの一人)。しかし、よく調べてみると、「要介護2~5の認定者を除外して健康寿命を算定してもらった」と書かれている。この算定法は国と異なり、他府県の健康寿命と比較することは出来ない。このリーダーの「久山町の健康寿命は長い」という記述は虚偽であり、町民を欺くものであると解釈できる。
 このような解釈から、植物油脂/動物性脂肪の摂取比率を国や栄養関連専門学会のガイドラインにそって、長期にわたって上げてきた久山町民の健康状態が、全国平均に比べて良好であるはずがない。実際、何代か前の町長は、ある久山研究記念式典で、「こんなに努力してきたのに、最近ではむしろ病人が増えてきている」と記述し、「自分の健康は自分で守るもの」という表題の記事を発表されている…。
 わが国の行政・医療界・栄養専門学会などがWHOや米国医学界から発信された誤ったガイドラインを鵜のみにし、知識弱者を惑わせる記述をしてきた。久山町では権威筋の情報を選び、その誤りを指摘されても受け入れようとしないリーダーを推載したことが、町民の重なる悲劇を生もうとしている。

(P.116)まとめ(本稿の関係部分についての抜粋)
…本書では、「植物油脂/動物性脂肪の摂取比率を上げ、コレステロール摂取量を減らす」という過去半世紀に国際的に権威のある機関から発信されている誤った脂質栄養指導が、“こころ”と“からだ”を障害する結果となり、少子化、人口減少の一因となっているとする医療仮説を提起した。…われわれの医療仮説は、因果関係を示す多くのメカニズム研究とそれに合う観察医療(臨床)に基づいているが、ランダム化比較試験のデータがないことから仮説とした。しかしこの医療仮説以外に、少子化、人口減少をもたらしうる自然科学的要因は報告されていない。ストレス仮説があるとしても、その定量性と実験的根拠に乏しい。
 …本書で提唱する脂質栄養の実践においては、おおきなコスト増を伴うわけではない。①有害作用のメカニズムが分かった数種の植物油脂を食用ではなく工業用(※EUにおいては菜種油の総消費量939万トンの63%がバイオディーゼル用途(2011年))に転用し、②安全性の高いことが明らかにされている植物油の供給を増やし、③誤った脂質栄養学で食環境から避けられるようになった動物性脂肪を、過剰摂取(肥満)にならない範囲で食用に利用することである。…
(以上、引用ここまで)

 いかがでしょうか。本書では幾つものエビデンスに基づいて、「脂肪摂取基準P/S比は真逆。動物脂肪を増やし、植物油を減らすべし。」と強く主張されているのですが、これは引用文中に出てきました「数種類の植物油がVK2-オステオカルシン・リンクを阻害」することと深い関わりがあります。「数種類の植物油」といっても、たいていの植物油がこれに該当し、いまだ原因物質は特定されていませんが、その未知微量因子の毒性は極めて強いものがあり、これに関しては改めて別途記事にすることとします。
 なお、VK2-オステオカルシン・リンクを阻害する原因物質としては、植物油の水素添加の過程で副生するジヒドロビタミンK1が特定されており、これについては既投稿の下記記事で本書の解説を紹介しています。
 水素添加植物油脂はトランス型脂肪酸以外の毒物により食用に不適です

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