24節気の健康と食養:雨水から啓蟄まで
24節気を約5日ずつ3区分した「七十二候」というものがあり、気象の動きや動植物の変化を知らせています。「略本暦」に掲載された七十二候で、本節気は次のとおり。
雨水 初候 土脉潤起(つちの しょう うるおい おこる)
雨が降って土が湿り気を含む
次候 霞始靆(かすみ はじめて たなびく)霞がたなびき始める
末候 草木萌動(そうもく めばえ いずる〉草木が芽吹き始める
立春の次にやってくる24節気が雨水(うすい)です。毎年2月19日頃(2024年は2月19日)になります。氷や雪が融け、雨水が増えることから、雨水と言われます。
日増しに気温が上がり、日射しも強まってきます。大自然の変化で誰しも目に付くのは梅の花です。満開になっている所もあちこちにでてきます。
これによって、人は、気力が満ちて、やる気も起き、心がよりいっそう大きくなり、楽観的で前向き、喜びの気持ちが持てるようになります。
人の体は立春の頃以降、冬ごもりの態勢から、いのち生まれる、つまり新陳代謝を活発にする態勢へと生理変化しています。冬:腎の季節(厳密には冬の土用:脾の季節を経由して)から春:肝の季節への生理変化です。
前回、立春のときに、このことについて説明しましたが、今回も春の養生法全般について下記の記事を紹介しておきますので、参照なさってください。
春は肝の季節、肝臓は少食と運動を願っています。食味は酸味主体の三味で。
この時期は、まだ寒気団がやってくることもあり、急に寒くもなり、また暖かくもなり、体調不良を起こしやすいです。それに伴って精神状態も不安定になりがちです。
間もなく年度末の決算期を迎えることになり、ノルマ達成のために忙しく動き回り、心はあせり、不安にもなります。管理職であれば頭に血が上り激怒することにもなります。心身の季節は既に春になっていますから肝が高ぶってこうなりがちですが、ここは「激怒」するのではなくて「奮起」する程度に止めたいものです。
前回も申しましたが、ヒトの体は立春の頃に暖気運転を始め、雨水の頃に試運転し、啓蟄の頃に本格稼動に入り、春分以降はフル運転といったところでしょうか。このように、節気を一つ一つ迎える度に体が順々に動くようになる、と捉えていいのではないでしょうか。
そこで、前回、立春から朝起きて直ぐ行うとよい体操を一つ紹介しました。
“金魚体操”で内臓と背骨にも運動を
今回は、これと同じく既に戦前に編み出され、完成を見た「西式健康法」の一つで、今でも根強いファンが大勢いらっしゃる、おすすめの健康体操の2つ目を紹介しましょう。
暖気運転に続く試運転として朝の起き掛けにおやりになるといいでしょう。
毛管運動“ゴキブリ体操” はじめッ!
次に、雨水から啓蟄までの食養について、特徴的なものを一つ紹介することにしましょう。
春、一番最初に芽吹いてくる野草、それはフキノトウです。早春の最も代表的な野草で、雨水の頃にはすでに盛んに芽吹いています。なお、フキノトウは、どういうわけか春の七草に含まれておらず、なんとも不思議なことなのですが、これは強い苦味がために七草粥に馴染まないからでしょうかね。
フキノトウは、冬眠していた熊が最初にあさる食べ物と言われます。熊も人も雑食性ですから、人もこれを見習いたいものです。
フキノトウの栄養価なり薬効はいろいろ言われていますが、あまり定かではないものの、概ね次のようですから、春の食養として理にかなっているのではないでしょうか。
・カリウムを豊富に含み、ナトリウム(塩分)とのバランスを整え、血圧の正常化、むくみを取るのに効果的
・苦味成分はアルカロイドと抗酸化物質で、肝機能を強化し、解毒の促進、新陳代謝の促進に効果的に働く。
・苦味成分と芳香成分は、健胃薬として働く。
フキノトウは、栽培ものも出回っておりますが、野生のものとどれだけも有効成分量は違わないと思われますので、大いに食したいものです。
ただし、けっこう灰汁(あく)が強いですから、たくさん食べるときはどれだけか灰汁抜きが必要になるかもしれません。もっとも、てんぷらにすれば高熱でそれを殺せますから、その必要はないです。
この時期に入手が容易な葉物野菜で旬のものとなると、立春の食養で紹介しましたように、もう旬が終わりがけのものばかりですが、ホウレンソウ、小松菜、春菊そしてネギが主なものとなりましょう。それ以外の淡色野菜も免疫力をアップさせる力がありますから、大いにとりたいです。
これも立春の食養で紹介しましたが、春は肝の季節になりますから、5つの味「五味」についても頭に置いといてください。漢方では、五臓のバランスを整えるため、春は<主・酸味、従・甘味、添・苦味>この三味の組み合わせを最適としています。料理は、この三味を頭に置いて行っていただきたいものです。
おすすめの料理、これを紹介せねばいかんのですが、ネット検索するも、あまりらしいものがなくて、うちで作っている料理を参考までにあげておきます。春菊を少々混ぜたホウレンソウのおひたしにポン酢をかける、というものです。ポン酢の酸味、ホウレンソウの甘味、春菊の苦味という組み合わせです。
年中出回っているホウレンソウですが、本当の旬は真冬以降です。それを寒締めホウレンソウと言い、甘味が増していて一番おいしい状態になっています。当然に露地ものです。
ところで、市場に出回っているホウレンソウの中には、えぐみや苦味を感ずるものがあるようです。これは化学肥料の多用によるもので、なかでも苦味は、窒素肥料の撒きすぎで、溶けた肥料がまだそのままホウレンソウの中に残っていると考えていいでしょう。
柑橘類は、これからが旬の甘夏が出回ります。うちの畑に1本植わっており、すでに収穫を始めました。<主・酸味、従・甘味、添・苦味>この三味の組み合わせになっている甘夏です。皆さんも食後のフルーツにどうぞお召し上がりください。
次回は、「啓蟄」(3月5、6日頃)からの健康と食養です。
春は肝の季節、肝臓は少食と運動を願っています。食味は酸味主体の三味で。
2024年2月3日が節分で、4日は立春、これより春の到来です。
でも、春といっても、漢方の世界における春です。その春は、立春(2月4日頃)から始まって穀雨(4月20日頃)の4日ほど前の4月16日頃までです。
一般的に言われている春(3月~)よりも約1か月早く始まり、ど真ん中で終わりを告げます。なお、その後、4月17日頃に「春の土用」に入り、立夏(5月5日頃)の前日までの18日間ほどが「春の土用」です。漢方での「土用」とは季節の変わり目をいい、「春の土用」であっても「春」にあらずとなります。
ところで、これは中国の中心部での話です。日本列島では、おおむね九州から関東の平野部までが該当することになりましょう。北日本では遅い春となるのは当然で、桜(ソメイヨシノ)が散り、葉桜になってからが「春の土用」入りと考えてよいかもしれません。
さて、この春においては、自然界では順々にあらゆるものに命が宿りだし、活動を始めていきます。立春の頃には昼間の時間がけっこう長くなり、日射しも随分と強まってきています。すでに野山では所々で万物の息吹が感じられます。一部の草木が芽吹き、花を咲かせるものも出てきます。そして、雨水、啓蟄と節気が進むにつれ、梅が咲き出し、ツクシが勢いよく芽吹いてきます。春分を過ぎれば春爛漫、桜の開花を迎え、さらに清明、穀雨へと節気が向かえば、あらゆる草木はものすごい勢いで芽吹き、花を付け、春たけなわとなります。
この時期、自然界は、こうして猛烈な変化を遂げていきます。
人の体も同様で、冬ごもりの態勢から、順次、命まみれる、つまり新陳代謝(細胞の生まれ変わり)を活発にする態勢へと生理変化していきます。立春の頃には、まだ暖気運転といったところでしょうが、順次、試運転に入り、そして本格稼動に入っていくのです。
また、野山に本格的な春が来た、これを実感することによって、人は、気力が満ち、やる気も起き、心が大きくなり、楽観的で前向き、喜びの気持ちが持てるようになりますし、心がウキウキしてきます。
春も後半になった4月1日から日本では新年度となり、進学、就職、異動でがらりと生活環境が変わることが多いです。大いなる期待が持てる一方で、緊張し、不安にもなります。
この頃には「春眠暁を覚えず」という体調になったりします。体が重だるくて寝床からなかなか出られないのです。また、「木の芽時(きのめどき)は健康に注意を」と言われます。たびたび頭痛がしたり、目が充血(花粉症とは別)したりと、この時期に特有の症状が出ることも多いです。そして、イライラしたり、逆に落ち込んで鬱(うつ)になったりと、精神が不安定になるのも、この時期が圧倒的に多いです。
これら心身の変調の原因は、年度替わりによるものと捉えられる傾向にありますが、でも、この時期は年度の途中にある中国(9月が年度替り)でも、こうしたことが言われていますから、トラブルの原因は冬から夏に向けての生理変化にありそうです。
いずれにせよ、春は、精神の安定、心の健康に特に留意すべき時期ですから、その備えを怠らないようにしたいものです。
おすすめなのが、朝日を浴びてリズム運動をすることです。その御利益はたっぷりあります。次の記事をご覧になってください。
「幸せホルモン」セロトニンと「睡眠ホルモン」メラトニンを十分に出す生活習慣を
春は「肝」の季節です。これからの1年間を健康で過ごすために、肝臓が肝細胞をリフレッシュしようとして盛んに働こうとする季節、それが春なのです。
ところが、今までずっと肝臓が酷使され続け、お疲れさん状態になっていると、肝臓はウオーミングアップがうまくできず、盛んに働こうとしても空回りし、寝起きが悪くなったり、気分が沈みがちになったりするのです。でも、肝臓は、春が来たから頑張らなくっちゃと、必死に働こうとしますので、逆に精神が高ぶってイライラしたり、動悸がしたり、のぼせたり、寝汗をかいたりするようになるのです。
ここに挙げた症状がどれか一つでも感じられる方は、“肝臓が無理してくれているんだなあ”と、思ってください。この季節、肝臓は無理してでも、これからの1年間の生命維持を確かなものとするために、猛烈に頑張ってくれているのです。
肝臓は「沈黙の臓器」と言います。酷使されても決して音を上げるようなことはないのです。“肝臓さん、ごめんなさいね。毎日懸命に働いてくれてありがとう。これからの1年間よろしくお願いします。”と、感謝したいです。
そこで、肝臓さんに何か手助けをしてあげねばなりません。
肝臓さんが喜んでくれることは何でしょうか。
第1に、肝臓に無理をさせないことです。飽食が大敵です。
吸収された栄養は、全て肝臓に送られ、分解、再合成、解毒されてから、体中に配給されます。過食すれば、肝臓は大忙しになります。加えて、引き取り手がない栄養は、肝臓で蓄えるしかなく、脂肪肝になって肝臓の働きを悪くします。
春は、自然界には食べ物が極端に少なく、本来は断食の季節ですから、少食を心がけたいものです。
特に、春に特有の症状が出て、食欲が落ちたら、肝臓がオーバーワークで疲労困憊していると考えてください。その場合は極力少食とし、1日1食にしてもかまいません。
でも、いきなり1日1食にしては体を壊しますから、まずは朝食抜きをおすすめします。最初はこれまで取っていた朝食より消化によいものを少量食べるだけにし、それに慣れたら量を半分、これにも慣れたら一口だけ、といった塩梅で漸減させ、最後は朝食抜きにするのです。“朝食を抜くなんて身体に悪いんじゃないの?”と、一般に言われていますが、それは逆です。
(参照 → 朝食有害論の歴史的推移)
第2は、肝臓に酸素をたっぷり供給してあげることです。血液をサラサラにし、血流を良くするしか方法はありません。少食、断食で、これが可能となりますが、それ以外の方法もあります。そうです、運動です。外へ出て体を動かすのが一番です。新鮮な空気をおいしく感ずるということは、肝臓がたっぷりと酸素がもらえて喜んでいるからでしょう。
第3は、肝臓が欲しがる物を差し上げてください。春が旬のものなどを召し上がっていただくと良いです。これについては、このあと詳しく説明します。
春先の肝臓の最重要な仕事は、解毒です。冬の間に溜まった毒素を分解し、尿として排出できない毒素は汗として排出しようと、懸命に働き始めます。
なお、解毒を促進するためには、少食や断食が必要になります。
太古の人は、冬場は木の実や芋がまだ食べられたでしょうが、春になると、これらが底を尽き、芽吹きだした木の芽や草を食べるしかないですから、自然と少食になりますし、雨の日はじっとして何も食わず断食したでしょうから、よりいっそう解毒も進みます。
こうして、体全体がリフレッシュされ、特に肝臓が蘇ります。これで、これからの1年間を健康に暮らしていける体づくりの基本的な準備が整うというものです。
でも、現代においては、このような食生活は不可能です。じゃあ、どうしたらよいでしょうか。これは、いつの時期についても言えることですが、まずは旬の物をいただくことです。
でも、春先の野草で食べられるものは、フキノトウ、ツクシくらいしかなく、山菜はまだ小さくて採れません。野菜では、今は冬野菜となっている春菊くらいなものでしょう。
なお、これらは皆、灰汁(あく)が強い植物です。特に、ツクシや山菜は灰汁抜きが必要になります。でも、本来はあれこれ少しずつ食べるものですから、その必要はなく、かえってその灰汁が体に良いのではないかと、小生には思われます。
と言いますのは、「灰汁」とは、昔の人がうまく名付けたもので、「植物を燃やしてできた灰から溶け出したもの」つまり「各種ミネラル」であることが多いですから、これを捨ててしまうのは、いかにももったいないです。春の野草や山菜には、ミネラルがぎっしりと詰まっていると考えて良いでしょう。もっとも、灰汁抜きをしても、ミネラルがそれほど溶け出すことはなく、多くは可溶性のアルカロイドなどが溶け出すのでしょうが、そのアルカロイドなども大量に口にすれば、湿疹が出たり、胃を荒らしたり、下痢したりするものの、少量であれば何らかの形で有用な働きをすると考えて良いのではないでしょうか。毒も少量であれば薬になることが多いのですからね。
そうは言っても、これだけでは食べられるものが大幅に不足します。ゼロに等しいと言ってよいです。であるから、この時期に断食すると効果が高いのですが、飽食時代の今日にあっては、到底それは不可能なことです。
加えて、どんな食材でも年がら年中手に入る時代ですから、ここは、偏食に気を付け、露地物の野菜を中心にして、あれこれ食べるしかないですね。
これでは、一般的抽象的無内容なアドバイスになってしまい、お叱りを受けることになりますが、この春の時期に、肝臓がイキイキ元気に働いてくれる、良い食事、調理法を漢方栄養学からお話しましょう。
肝臓が欲しがるものは、酸味です。
この時期、酸っぱいものを意識的に摂るようにしたいです。梅干を朝にぜひ1粒いただきたいものです。そして、とっておきの果物があります。それは、この時期が旬となる柑橘類の甘夏あるいは夏みかんです。
もっとも、当然にして限度というものがあって、過ぎたるは及ばざるが如しでして、酸度が強すぎれば、胃を荒らすことになりますから、ご注意を。
いずれにしても、酸味は胃に負担をかけますから、胃を守るために少々甘みのある食材を足すと良いです。これに苦味のある食材を添えるとより良くなります。
こうすると、体全体の臓器のバランスを整えることができるからです。
避けたいのは辛味です。肝臓は、辛味でダメージを受けやすいからです。
なお、塩味は、ほどほどであれば気にする必要はありません。
ここに漢方の五味(ごみ)を登場させましたが、これは日本料理の調理法の基本にもなっています。隠し味と呼ばれるもので、酢の物であれば、酸味が強いですから、甘味を少々足し、苦味のあるものがさりげなく添えられます。
春は、<主・酸味、従・甘味、添・苦味>この三味の組み合わせを最適とします。料理は、この三味を頭に置いて行っていただきたいものです。なお、この三味の組み合わせを覚える方法をご伝授しましょう。春に旬となる柑橘類の代表は甘夏であり、その味は、まず酸っぱさが際立っており、ついで甘味があり、薄皮には少しばかり苦味がありますよね。甘夏は、自然にできている最適な三味の組み合わせになっているのです。これを思い出して料理の味付けをなさるといいです。
以上3つの対処をしていただけば、肝臓の働きに余裕が出てきて、さわやかに目覚め、新鮮な気持ちになり、心の奥底から楽しくなることでしょう。
それでも体調が思わしくないという場合には、漢方薬の助けを借りたいものです。肝のエネルギーがぎっしり詰まったのが胆石で、牛の胆石「牛黄(ごおう)」が、肝臓にとって最高の滋養強壮になります。また、弱った肝臓には田七人参が機能回復の大いなる助けになります。
(追記)
ところで、春は長いです。そこで、「24節気」ごとの健康と食養について紹介しています。併せてお読みいただければ幸いです。
24節気の健康と食養:立春から雨水まで
24節気の健康と食養:雨水から啓蟄まで
24節気の健康と食養:啓蟄から春分まで
24節気の健康と食養:春分から清明まで
24節気の健康と食養:穀雨から立夏まで(春の土用)
(備考)本稿は、次の過去記事を2016.2.3に編集し統合しました。これにより次の過去記事は消去することにします。
2011.3.11 春、肝臓の季節です。肝臓が欲しがる食品を少量ずつ食しましょう。
2011.3.29 春、肝臓が求めているものは?肝臓は少食と運動を願っています。そして、肝臓にいい食品。
なお、2017年から、毎年部分修正をかけていきます。
五行配当表
(下図)各ブロックの端に味が表記されています。
「水」・「冬」のブロックの左端が味の「鹹」ですが、塩のことです。
24節気の健康と食養:立春から雨水まで
24節気を約5日ずつ3区分した「七十二候」というものがあり、気象の動きや動植物の変化を知らせています。「略本暦」に掲載された七十二候で、本節気は次のとおり。
立春 初候 東風解凍(こち こおりを とく)東風が厚い氷を解かし始める
次候 黄鶯睍睆(うぐいす なく)鶯が山里で鳴き始める
末候 魚上氷(うお こおりを いずる)割れた氷の間から魚が飛び出る
立春(2月4日頃:2024年は2月4日)は春の始まり。数日前に最低気温が底を打ち、気温が上がり始める時期が立春です。この時期、昼間の時間がわりと長くなり、日射しも随分と強まってきています。野山では動植物が早くも春の訪れをキャッチし、活発に活動を始めています。
人も、気力が満ちて、やる気も起き、心が大きくなり、楽観的で前向き、喜びの気持ちが持てるようになります。それと同時に、人の体は冬ごもりの態勢から、命まみれる、つまり新陳代謝を活発にする態勢へと順次生理変化します。冬:腎の季節(厳密には冬の土用:脾の季節を経由)から春:肝の季節への生理変化です。
これを踏まえた春の養生法を下記記事で紹介しています。参照ください。
春は肝の季節、肝臓は少食と運動を願っています。食味は酸味主体の三味で。
ヒトの体は立春の頃に暖気運転を始め、雨水の頃に試運転し、啓蟄の頃に本格稼動に入り、春分以降はフル運転といったところでしょうか。このように節気を一つ一つ迎える度に体が順々に動くようになると捉えていいのではないでしょうか。
そこで、まずは立春から朝起きて直ぐ行うとよい体操を一つ紹介しましょう。体全体の暖機運転をする、といった体操です。既に戦前に編み出され、完成を見た「西式健康法」の一つで、今でも根強いファンが大勢いらっしゃる、おすすめの健康体操です。
“金魚体操”で内臓と背骨にも運動を
次に、春の始まりである立春から雨水までの食養について、まず特徴的なものを一つ紹介することにしましょう。
七草粥(かゆ)というものがあります。今では西暦の1月7日に7種類の野草を入れた粥を食べる習慣ができていますが、これから冬本番という時期にそうそう何種類もの野草が野山で手に入るわけがありません。ちょっと時期がずれています。
七草粥の起源は、中国の華南で旧暦の正月七日に野草を摘む習慣があり、5世紀頃に書かれた歳時記に「正月七日…七種の菜を以って羹を為る」とあります。
つまり比較的温暖な地域にあっては、この頃に幾種類かの野草を摘んできて、これを入れた羹(あつもの:熱い汁物orとろりとしたスープor雑煮)を食べていたというものです。一般に野草は葉が硬くて消化に悪いですから、これをすり潰して他の食材に混ぜた雑煮(必ずしも餅が入ったものではない)を食べていたのではないでしょうかね。そんなふうに思われます。
旧暦の正月七日は、年によって随分と変化しますが、大ざっぱに言って節分や立春の前後になります。季節感からすれば、節分に七草粥を食べたいものです。最近流行っている、飽食のすすめになってしまう恵方巻なんてもってのほか、です。
七草粥は、早春の食養として理にかなっています。
野生の動物で、草食性なり雑食性であれば、冬越ししている野草なり、早々に芽吹いてきた野草の葉や芽を食べるのは当たり前のことであり、これでもってイキイキ元気になっていくのです。
ヒトは、本来は草食性で、その後に雑食性になりましたが、原始人は季節折々の旬の野草を盛んに食べていたに違いなく、5世紀の中国華南の人たちと同様に現代人も、これを見習うことによって、はじめて健康になれると言えましょう。
そして、野草は現代栄養学で言えば、ビタミン・ミネラルが濃厚ですから、新陳代謝の大いなる助けになりますし、ミネラルは肝臓での解毒作用を促進してくれます。また、近年注目されるようになったポリフェノールなどのフィトケミカルが春の野草には多く含まれ、抗酸化作用など有用なものが多いです。なお、アルカロイドを含むものもけっこうあり、これは適量なら薬になります。
漢方の面から言えば、この時期の野草は苦味があるものが多く、総じて健胃薬になります。また、野草の中には酸味があるものもあり、特に春は肝の養生に酸味が必要ですから、これが最適なものとなりましょう。
今日では野山の野草はめったに手に入るものではなく、入手が容易な葉物野菜で立春の時期が旬のものとなると、もう旬が終わりがけのものばかりですが、ホウレンソウ、小松菜、春菊そしてネギが主なものとなりましょう。
この中で、最近の中医学(中国)で立春に最も適したものとしてすすめられているのが、ネギ、加えてニラです。「ネギは、発汗して邪気を取り除き、寒を散じて陽を通わし、殺菌解毒、血液循環を促進し、消化液の分泌を増やし、食欲を高める。ニラはまたの名を起陽草と言い、古くから長寿の野菜とされ、肝臓を温め、陽を助け、精を固め、脾臓や胃を強め、逆気を降ろし、鬱血を散じ、元気をつける。」と言われます。
こうした葉物野菜や、それ以外の淡色・白物野菜もこの時期は大いにとりたいです。と、申しますのは、前回の「大寒から節分」で書きましたように、この時期も厳しい寒さがためにインフルエンザ(今年はしつこく新型コロナも)に罹患することがまだまだ多くなりますから、免疫力をアップさせること、体の抵抗力を落とさないこと、これが重要になり、そのためには免疫力をアップさせる力がある淡色・白物野菜が大切な食材になってくるのです。
さて、立春から春となり、肝の季節ですから、5つの味「五味」についても頭に置いといてください。漢方では、五臓のバランスを整えるため、春は<主・酸味、従・甘味、添・苦味>この三味の組み合わせを最適としています。料理は、この三味を頭に置いて行っていただきたいものです。
特に、酸味は肝に効き、肝が喜びますから、酸っぱい梅干を朝に1粒いただきたいものです。梅干が広まったのは鎌倉武士からです。「梅干を1個食べ、いざ出陣!」 これで、活動的になれます。春、活発に動き回るようになるのですから、おすすめです。梅干の主成分であるクエン酸は、血液をサラサラにして血流を良くし、エネルギー産生回路に働いてエネルギー産生を円滑にし、活動的にしてくれるのですからね。
ところで、鎌倉武士は出陣に当たって「腹が減っては戦ができぬ」とばかり、梅干入りのおにぎりでも食べたのでしょうか。いえいえ、胃の中を空っぽにして、つまり空腹状態で挑んだのです。当時は武士も庶民も1日2食の朝食抜きでしたから、前の晩に食べて以来、何も口にせず、そうであっても少なくとも午前中は目一杯の活躍ができたのです。
これは現代人にも言えることであり、そうしているスポーツ選手もいます。下記記事で、それを紹介していますので、ご覧ください。皆さんにおすすめします、朝食抜き。
不謹慎ですが、被災は断食のチャンス
次回は、「雨水」(2月19日頃)からの健康と食養です。