薬屋のおやじのボヤキ

公的健康情報にはあまりにも嘘が多くて、それがためにストレスを抱え、ボヤキながら真の健康情報をつかみ取り、発信しています。

人類の直立二足歩行は今でも内臓疾患の元凶となっている

2021年10月12日 | 人類水生進化に起因する疾病

 先日、このブログで今は亡き西丸震哉氏(1923年生まれ、2012年没)が1981年に書かれた「食生態学入門」という書から、その一部を抜粋して紹介しましたが、氏の論調は実に愉快で面白いです。そうであっても、的を得た、これぞ真実といった内容になっています。小生、この本をもう10回周りぐらい読んだと思うのですが、いつもアッハッハと吹き出してしまう面白い箇所があります。それを紹介することにしましょう。

第2章 人類の起源
直立歩行がもたらしたもの
 人間の先祖が直立歩行をはじめて、そのおかげで人間ができあがったことになるが、直立歩行が人間に対して絶大なプラスの作用を与えたと手ばなしで感謝していいかどうか。なんらかの方向に効果があったといえるとき、必ず足をひっぱる面がどこかに発生して、歪となって影響してくるはずである。
 四足で、四つんばいで生活している動物たちの場合には、内臓諸器官はすべて背骨からぶら下げられた、つるし柿のような状態となっているから、それぞれが独自の空間を占めていられて、隣に影響を与えることはなく、内臓の重みや、とんだりはねたりの衝撃のために、つるしている筋がゆるんでもただ下にたれ下がるだけで終わる。駄馬のおなかが下にダブンとたるんだ状態だ。
 ところが背骨が直立したときには、上の臓器は下の臓器をおさえつけ、パパイアの木に実が鈴なりになった形となり、下降を抑える面が当分出てこなければ内臓を支える筋はますます伸ばされてしまう。臓器がみんな下腹にたまって、いわゆる中年の体形ができあがっていく。何十年も地球に下からひっぱられたあげく水滴形ができるのだ。
 胃の次に腸があって、という順序が崩れて、胃はどんどんたれ下がり、胃の検診医がモタモタする。私の胃はもっと下ですよ、もっと、そう骨盤のあたり、ネ、あったでしょ? なんて毎回いわなければならなくなる。
 食事をすると胃がふくれる。そうすると隣から文句が出る。おれは膀胱だが、そう押すなよ、お前だれだ?おれ胃。
 そこで食事をすると小便がしたくなるような反応が出てくる。ふつうは胃に食物がはいると便意をもよおすもので、これを胃・大腸反応というが、胃・膀胱反応なんていう新語も出なければならなくなるだろう。
 この先はもうただの空間というところに肛門があるが、上からやたらと圧迫されつづけると、抵抗しきれなくなって脱肛になりやすくなる。痔疾の原因はそんなものじゃないといわれるだろうが、イヌ、ネコその他四足獣には未だかつて痔で悩んだ個体はないのに、人間だけがこの苦痛を背負わされる根本原因がここにあるのだと考えねばなるまい。
 このほか、急に立ち上がって脳貧血になるのも、1000万年程度の歴史的経過の中では、まだ適応しきれていない面の現われであろう。
(引用ここまで)

 いかがでしたでしょうか。
 「胃が骨盤当たりまで下がる」なんて冗談だろうと思っていましたが、EPARK病気スコープの解説によると「胃を支える筋肉の低下などさまざまな理由によって…胃が骨盤の位置まで下がってくることもあります。」とあり、ウソではないです。
 その原因として、同解説では「痩せすぎにより、腹壁の筋肉や脂肪が少なく、腹部の圧力が低下するためにおこるといわれています。体質的な理由のほかに、悪い姿勢や動作によって内臓が下がり、不自然な腹圧がかかることによって胃が下がるともいわれています。出産経験を多くしている人にも多くみられます。妊娠によって緊張していた腹壁が出産によって緩んでしまうことから胃下垂がおこります。」とのこと。

 よって、同解説で「胃下垂だけではとくに病気というわけではありません。」と言わしめてしまっているほどに、人間の内臓はいまだ直立歩行に伴う“パパイアの実”状態なんです。

 直立歩行する人間と四足動物の違いを別のたとえで解説したものがあります。どなたが言いだされたのか知りませんが、これも面白いです。
 四足と二足の違いは、“洗濯物干し”に例えられます。四足ですと、洗濯竿に相当する背骨に、きれいに内臓が吊るされ、押し合うことも癒着もありません。それが、竿を垂直にすると、洗濯物が下に固まるように、背骨の役割が消えてしまい、内臓は押し合い、癒着し、垂れ下がる一方で、臓器はその能力を十分に発揮することができなくなるのです。

 病の器といわれる人間の、そもそもの原因は、どうやら直立したことによるようです。この構造的欠陥は四足に戻らないことにはどうしようもない、もう無理ですが。


(関連記事)
2012.5.16
直立二足歩行する裸の猿・ヒトは人類水生進化説に基づき的確な健康対策を
2012.2.3 人は病の器であり、その最大の原因は直立二足歩行

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24節気の健康と食養:寒露から霜降まで

2021年10月07日 | 24節気の健康と食養

24節気の健康と食養:寒露から霜降まで

 24節気を約5日ずつ3区分した「七十二候」というものがあり、気象の動きや動植物の変化を知らせています。「略本暦」に掲載された七十二候で、本節気は次のとおり。
 寒露 初候 鴻雁来(こうがん きたる)雁が飛来し始める
    次候 菊花開(きくの はな ひらく)菊の花が咲く
    末候 蟋蟀在戸(きりぎりす とに あり)蟋蟀が戸の辺りで鳴く

 秋分の次にやってくる24節気が寒露で、毎年10月8日頃(2021年は10月8日)になります。朝は冷気により寒々とした露がたくさん結ぶようになり、秋もいよいよ本番となります。1年で一番過ごしやすい時期ではないでしょうか。
 
でも、日中に汗をかいて日が落ちるとスコッと肌寒く感じて風邪を引いいてしまう、ということになりやすいですから、十分に用心なさってください。

 さて、前回(秋分)で申しましたが、朝晩の涼しさを感ずると同時に、体のけだるさを感ずるようになることがあります。これが本来の「夏バテ」で、秋本番となっても残ることが往々にしてあります。その対処の仕方は、「何でも“夏バテ”にされては困りもの。暑気当たり=“夏負け”とは区別して対処しましょう。」で詳細に記しましたが、ミネラル不足が原因であることが多いです。
 ミネラルの補給には、まずもって緑黄色野菜や小魚を丸ごといただくということが重要です。前々回紹介しました秋刀魚(サンマ)(今年はチョウ不漁でだめですが)、前回紹介しましたイワシが旬になっています。焼き魚にして脂を切ってはらわたや骨まで食べるのが理想的です。もっともサンマの場合は骨は硬いですから焼き直す必要がありますが。
 野菜を多く摂ってミネラル不足を解消するのが一番ですが、市場に出回る野菜は昔に比べてミネラルが随分と減っていますから、不十分になりがちです。まだ夏バテしている方は総合ミネラル剤で不足分を充足させる必要がありましょう。

 本格的な涼しさの訪れとともに食欲がぐんと出てきます。食欲の秋の到来です。馬肥ゆる秋です。前回(秋分)にも申しましたが、四季がある地域に住む動物は、冬の食糧不足と寒さ対策のために、この時期に限って飽食します。ヒトも同じ動物ですから、秋に飽食したくなる体質になっており、大いに食欲の秋を満喫していいのではないでしょうか。
 ただし、冬になったら、そして夏も、腹八分かそれ以下にすべきですが。
 参考までに、飽食して太ったらその後はダイエットして一時的に痩せると健康にとてもいいです。それはどうしてか。「
冬ヤセ、夏ヤセで毒だし!おすすめします1日断食の繰り返し」をご覧ください。

 この時期、小生が魚釣りに行った帰りに時々買い求めるのが「サバの浜焼き」です。サバのうち「マサバ」は日本近海で獲れる代表的なサバの種類。「秋さば」「寒さば」などと呼ばれるように、秋から冬にかけてが脂がのり、美味です。串刺しし、脂を切るため斜めに立てて炭火でじっくりと焼いた「浜焼き」ほど美味しいものはありません。でも、この正統な焼き方はほとんど姿を消してしまい、残念です。味が落ちます。
 ところで、“秋サバは嫁に食わすな”ということわざがあります。2説ありますが、ここは、“サバは非常に痛みやすいものだから食中毒でも起こしたらお腹の子にさわる”ということにしておきましょう。詳しくは、「秋ナスと秋サバは嫁に食わすな!」をご覧ください。

 気象は、これも前回(秋分)にも申しましたが、カラッとした大陸の空気が入り込むことが恒常化し、空気は乾いています。秋の臓器は肺で、肺は乾燥を嫌います。肺に潤いを与えてあげねばなりません。それには、食が大いに関係します。もっとも重要なのが「辛味」で、これが肺を潤してくれます。詳しくは、「立秋は秋の入り、五味を上手に秋食に取り入れましょう。まずは辛味が重要です。」をご覧ください。
 畑では露地物のピーマンやシシトウの収穫がピーク終盤となり、これからの時期は昔であればピリッと辛いピーマンやシシトウが多くなったのですが、今はすっかり品種改良されてしまい、これら皆、辛くないものばかりになりましたから、残念です。食卓に乗った料理には、唐辛子なり胡椒を気持ち多めに振りたいものです。
 また、これから旬となったショウガが採れはじめますから、料理に使いたいものです。
 そして、これも前回(秋分)で申しましたが、秋はカレーライスの季節です。この時期、辛いカレーライスがますますおいしく感じられます。でも、過ぎたるは及ばざるが如しでして、激辛は度が過ぎて肺を痛めつけることになりますから、ほどほどになさってください。
 ところで、カレーに入れる肉は、鶏、豚、牛、羊といったものがあげられますが、お年寄りの場合は牛、できれば羊がおすすめです。というのは、肉に含まれるカルニチンの量がこの順番でぐんと多くなるからです。カルニチンは、エネルギー代謝向上のほか「脳力」アップにとてもいいものです。詳しくは別立てブログの『アミノ酸誘導体「カルニチン」に意外な効能あり、それは「脳力」アップ』をご覧ください。

 果物では、梨、ブドウ、イチジクが終りかけ、これから旬となるのが柿です。
 “柿が赤くなれば、医者が青くなる”という言葉がありますが、トマトやリンゴも同様の言い方がされます。それだけ栄養価が高く、抗酸化力があったり、免疫力を付けたり、ということになりましょうが、毎日ほどほどの量を、ということになりましょう。特に、柿は冷性の食品ですから、食べ過ぎると体を冷やしますので、ご用心を。でも、旬のものですから、冷え症の方も少しは食べましょう。体にこもった熱や炎症で生ずる熱を取り去る力が柿にはありますから。

 次回は、「霜降」(10月23日頃)からの健康と食養です。

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日本という高度科学技術文明社会で生きていくにはどうすればいいの?

2021年10月05日 | よもやま話

幾本か立てているブログの過去記事に目を通していて、このブログの趣旨にも合うものがアメブロにありましたので、それにこのブログの過去記事の一部をつぎ足し、皆様に紹介することとしました。かなりの長文で申し訳ありませんが、ご一読いただけると幸いです。

日本という高度科学技術文明社会で生きていくにはどうすればいいの?

 「食生態学入門」という書があります。1981年発刊ですから、もう40年が経っており、随分と古い本ですが、現代にもずばり当てはまり、興味深いものがあります。著者は亡き西丸震哉氏(1923年生まれ、2012年没)で、氏が58歳のときに書かれたものです。
 なお、食生態学という学問は、氏が建てられたもので、その経緯を次のように語っておられます。
(以下、本書より引用)
 日本でただ一つの国立研究所官能検査研究室を私が担当したとき、守備範囲を単なる統計的手法による、人間に好まれる食品の開発にとどめず、動物としての人間とエサとの関係、あらゆる条件下での人間の思考と行動の範囲と限界の追究にまで進めた。
 そしてこの分野に食生態学という呼称を与えることにした。今ではこの名の講座をもつ大学もあるようになったが、残念ながら「食」にこだわりすぎている。食を基本とする人間そのものの研究、人間はいかに生きてきて、現在の様相がどの程度に良いのか悪いのか、将来どうあればよいのかというあたりまでを徹底して考えるようにしなければ、ほんとうの人間の存在に役立つものとはならない。
 自分の土俵にこだわり、他の分野から割り込んでくる勢力を警戒し、排他的であるのは自分の無能をさらけ出していることである。恩師の論説には指一本触れられない涙ぐましい師弟愛は人類にとって有害でしかない。
 人間社会も科学も人生も、すべては未知の部分を知りたい、より良い路線がどこにあるのかを、より適確に模索しつづけることで意味をもつ。そのためには探検精神がいつもあふれていなければならない。
 幸いにして食生態学には既成の土俵がなく、恩師も見当たらない。自分が水を飲みたければ自分で井戸を掘るしかない。…だれかが先に掘ってくれて役立つ井戸の水はありがたく頂き、よその庭の井戸も活用させてもらい、悪い水だったら悪いと言い、甘露だったら褒めそやし、自分の好みの水が欲しいときや、いい井戸が掘りたくなったら、みずからは井戸堀人夫になる。
(引用ここまで)

 ところで、氏は、農水省の異色官僚(中途退官)、エッセイスト、探検家、登山家など幅広い分野にも精通していた「変人」といってもいいでしょう。特に、ニューギニアの食人種族と生活を共にする調査に入られたのは圧巻である。
 以下、「食生態学入門」から、その一部をそのまま抜粋します。

 …すべての動物を責めさいなんできた最大の苦痛は飢えであった。この飢えから逃れるためには、動物はどんなことでも血相をかえて努力しないではいられない。
(ここで引用を一時ストップし、同著の中で、動物そして人間の食餌行動の解説がありますので、それを要約して以下引用します。)

 自然界では、餌の量は、良くてギリギリ、通常は不足するのが当たり前。
 人間ないし動物の生きる姿を生体維持の観点から眺めれば、
   休息ーー興奮ーー労働ーー食事ーー休息
という順序で事が進行し、この方式で少なくとも1千万年が経過した。このくらいの時間があると、動物の生理機構は、この順序どおりに進行するときにうまく機能するように適応させられていて、順序を変えると調子が狂い、生理機構が乱れ、天寿を全うできない。
 身体を生活の糧とする力士は、この順序どおりにしないと調子が狂う。夜は、休息であり、朝、たたき起こされてビックリという興奮を味わい、直ぐに稽古という労働が始まり、それが終わると食事が摂れ、その後、昼寝の休息時間となる。理にかなっている。
 ところで、先の順序は理想型であって、餌にありつけないことも多く、
   休息ーー興奮ーー労働ーー[食事×]ーー休息
という失敗型を常時体験していたから、この型も生理機構は正常として組み込まれていると考えて良い。丸1日絶食しても、どってことないのである。
 人間の原始社会では1日にどちらかの型を1回まわり取っただけであったが、農耕社会に入ると理想型が安定して取れるようになり、歴史時代になって分業化社会になると生活に余裕が出てきて、これを2回まわり取ることができるようになった。つまり、昼食と夕食の2食を摂るようになったのである。
 平和で豊かになると、さらに生活にゆとりが出てきて、今は、1日3食摂るのが普通になっている。1日に3回まわり理想型が取れれば、それで良いであろうが、はたして、その順序どおりに行っているか疑問である。特に、第1クールに問題がある。
 休息(睡眠)-興奮(目覚時計)-[労働×]-食事(朝食)ー[休息×]-労働(出勤)
 これでは、順序がメチャメチャで生理機構に合わず、体調を崩すのは当たり前である。   
 ここは、失敗型を採用して、朝食抜きにするしかない。
 なお、歴史的にみて、1日3食摂るようになったのは、ごく最近のことであり、1日2食へ戻すことによって、より生理機構に合う方向へ修正すべきであり、できることなら、1日1食ときどき断食して、生理機構を正常化すべきである。
(挿入した要約引用はここまで。以下、そのまま抜粋に戻します。)
 
 飢えから開放されたとき、身体は休息をとりたくなり、心は安らぐ。…
 飢えからの開放が一時的なものではなく、おそらく永続的にその心配がなくなったと期待できるとき、…安楽追求へと動き出す。エサを求めてかけずりまわることがごく当たり前のときは、かけずりまわることを苦痛とは意識しなかったが、労力を減らしてもエサが入手できるようになると、もはや労働を苦痛として受けとめるから、こんどは労働という苦痛から逃れようとする。
 安楽の追求とは、ひとくちでいえば横着をきめこむことで、人間の現在の文明化という路線は、横着を徹底して追及しようとする願望にほかならない。…
 人間が横着をしたいとき、使われる側よりも使う側のほうが楽であるから、使う側にまわりたがる。職員は役員に、庶民は貴族になりたがり、なにもしないで生きていける立場に自分を置きたいと考える。
 文明の方向には理念の追求や、精神面の開拓、芸術、美術などいろいろあるが、これらすべて、ひまができてはじめてその存在を認識できる。しかしいちばん人間にもてはやされるものは、横着を助長することを保証する科学文明という方向であった。…
 人間が生物としての基本的労働をやめて、余った力を自分の好みの方向に使うことになるかというと、楽になったところでとどまって、スポーツは見る側にまわって自らは動かず、旅行とは乗り物が動きまわるものとなり、ケーブルカーが山登りするのに便乗し、…スキーは登りをやめてしまって滑るという後半だけのものとなった。
 洗濯は洗濯機、それに脱水機がつけば新しいものに切り替えなければ気がすまず、かつては下僕にやらせ、後進国での宗主国人ならば土着民を雇ってすませたような仕事は、今の文明国では労働力がないので、しかたなしに機械にその肩がわりをさせることで埋め合わせをする。
 はじめのうちの機械は人間の能力のほんの一部でしかなかったから、御主人がそれにつきそって働かされていたが、ついにはワンタッチですむようにまで横着化は進んだ。ひと声命令すれば下僕が動くところまで、もう一息だ。
 何十人かの下僕にかしずかれた王様が、まったく自分では動く必要がなかったのにくらべると、返事をするかしないかのちがいだけで、労力的には王様と少しもちがわないことをやってもらえる大衆が存在するようになった。
 日本人の1億の大多数が王様であるなら、もしその下にかしずく下僕がいたら、日本の国土には何十億の人間がひしめくことになる。それがいなくてすむだけでもたいへんな幸せだという考え方ができる。…
 日本に住む1億人は、使用人は人間でなくとも、まちがいなく1億人の王様だ。…
 まわりじゅう王様ばかりなのだから、やたらとまわりが気になって、体面維持は容易なわざではない。むかしのほんとうの王様のまわりには王様などはどこにもいなかった。
 日本人から見ると、アメリカ人あたりは自分たちより王様ぶりがよく、キング・オブ・キングスがやたらと住んでいるから、せめてあの程度にならなくちゃあと考える。…
 日本人は野次馬根性がとくに強く、オッチョコチョイだ。他人のよさそうなところを、自分とのちがいを深く考えることなく直輸入して、その結果がおかしくなったとしても、気にしない。日本人にとっていちばん気になるのはアメリカ人の生活である。
 …低級な味のものをパッと食べることができるシステムを近代的だと信じ、カッコいいという気になると、それを食べなければ時代から取り残されるようなあせりを覚えて、まずくてもまずいと思えず、これで幸せなのだと自分を納得させ、そのあげくうまさの感覚をも自分でたたきつぶしてしまう。
 使い捨てが現代人のすることだと、だれかが叫ぶと、自分の収入がどうであれ、…景気よく捨てることで満足した気になれる。…こういうやり方をすれば、あくせく働いて…買い込まねばならないから、ゆとりを作る方向ではなくて、ますますかけずりまわって人よりよけいに働かねばならず、ゆったり遊ぶ気持ちも出てこない。その遊びも、一流文明人はこういう遊びをやるものだといわれると、自分の趣味がどうであれ、いっせいにその遊びに突進して、血相かえてレジャーに取り組む。日本人には、この路線が身動きできない終点に着くまでは、絶対に心の平静が訪れなくなった。…
 モノに取りかこまれ、人にもっていかれないようにいつも気を配り、人情がうすれ、そして人間の究極の幸せとはこれなのだと、だれかに断言されれば、なるほど自分は最高の幸福をつかんだのだと満足して死んでいける。こういう日本人と太刀打ちできる民族はどこにもないだろう…
(引用ここまで)

 西丸氏は、このように科学技術文明というものはどういうものかをとても面白く表現しておられます。“日本人1億人みな王様”とは恐れ入りました、です。本書が書かれてから40年が経っているのですから、それから随分と便利になった現代です。その当時は、ポケットベルを企業の営業マンが持ち始めた頃で、まだ全国で100万台しか普及していませんでしたし、テレホンカード式公衆電話はその翌年から設置が始まったという時代でした。
 現代は、携帯電話はすでに古く、スマホの時代になり、格段に便利になりましたが、それによってゆとりができたかというと、そうではなさそうです。
 40年前、電車の中では日本人は世界的に例がないことですが、多くの人が目を閉じて仮眠し、休養を取っていました。それが今では、スマホとにらめっこし、フェイスブック(いや、これは古い)、LINE(これも古そう)、最近はTwitter(ツイッター)、Instagram(インスタグラム)といったソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)で交友関係を持つ諸々の輩どもと頻繁に会合をもっておられる。電車内は様変わりし、居眠りする人がほとんどいないという世界標準の風景になりました。
 こうしたものを一切やらない小生。“皆さん、お忙しいなあ。家に帰ったらきっとパソコンも叩かねばならないだろうに。寝る時間を削るしかないのでは?”と心配させられます。
 皆が王様になって、煩わしい仕事を何もしなくてもよくなったであろうにもかかわらず、忙しくて寝る暇もない現代。40年前より格段に便利になったにもかかわらず、くつろぐ時間がうんと減ってしまった現代。どうなってるんでしょうね。この先が案じられます。
 そこで思い出しました。経済学者のE.F.シューマッハーが1973年(48年前)に言った名言を。

 「ある社会が享受する余暇の量は、その社会が使っている省力機械の量に反比例する。」

 このとおりでしょうね。将来、ますます余暇の量は減っていくことでしょう、日本の王様たち。
 もう一つ、西丸震哉氏の同著「食生態学入門」から、その一部を抜粋します。

 人間の心ーー適量の人数よりもはるかに多数が一定空間に生息すると、共同生活ができず、ぶつかりあってお互いにいらいらしてカラカラの世相となる。
 じつはこれは人間社会だけのことではなく、水槽内のグッピーの社会をみると、一定数になるまではふえつづけるが、限界を超えると親が子を追いかけまわして食うようになり、一定数以下になればこの闘争はやむ。…
 地球上に40数億人の人間が生存している…
 あまり聞かれない表現で、…人権を無視したと思われそうな方法だが、目方に換算してみると、約1億7000万トンとなる。単一の種の動物が地上にこれだけ生きているということは、生物の歴史のなかでごく当たり前のことだったかどうか。
 …クジラ類だが、…かつてもっとも多かったときにどのくらいの量になったかを推算してみると、全海洋で4500万トンぐらいであったと考えられる。つまり、人間の4分の1くらいでしかない。…
 (人間は)穀類を大量に作るようになったおかげで人口を増大させることが可能になって、これほどの人間量になったのだが、生物界でこれほどの量になるとき、その種の異常大発生という表現をする。イナゴやネズミの異常大発生は、一地域での特異的なものだが、今回の人間は全地球での同時大発生であるところにより大きな異常さがある。…
 …先進国が、さわぎとなるはるか以前に、人口を増やして、さんざん植民したあげく、後進国に人口を抑制しろといっても、その身勝手は反感をつのらせるばかりである。
 教育レベルを高めた大衆を保有する先進国で、その大衆が自発的運動として産児を減らそうとする傾向が増大するとき、人口増加率は減るが、人口が減るまでには20年以上を必要とし、…。
 後進国は生活レベルを上げながら、人口の増加率を落とすような器用な方法はなく、教育レベルを上げる努力が基盤にないかぎり、人為的に人口を調整することはできない。…
 人間の異常発生がもとで農業という作物の異常発生を極度に進め、病害虫の異常発生を起こし、農薬の異常多用によって人間の寿命にはね返らせるという循環によって、人間の異常発生が抑圧される段階が次に起こることになる。
(引用ここまで)

 西丸氏は、増えすぎた世界人口を「人間の異常大発生」と表現しておられます。そのとおりですよね。グッピーの社会と同じ。人間も一定数以下になればこの闘争はやむ、ということになりましょうが、中東やアフリカなどでの内戦は、とてもじゃないが一定数以下になりそうになく、永久に終わりそうにありません。
(なお、「農薬の異常多用によって人間の寿命にはね返らせるという循環」は、西丸氏の別の書「41歳寿命説」で述べられていますが、これは単なる警告であって、当の本人もそこまでのことは思ってみえなかったようです。)
 日本社会においても、ますます大都市への人口集中、つまり「人間の異常大発生」によって、「適量の人数よりもはるかに多数が一定空間に生息すると、共同生活ができず、ぶつかりあってお互いにいらいらしてカラカラの世相となる。」という現実があります。
 それに輪をかけているのがSNSで、これが人々の生活に深く入り込み人間関係をより複雑化し、ぶつかりあってお互いにいらいらさせているようでもあります。
 日本における「人間の異常大発生」の状態は永久に終わりをつげないでしょうから、日本人の精神疲労も相当なものになりましょう。

 これからの世の中、日本の王様たちが幸せに生きていくためには、いったん王様を止め、SNSを全部切ってしまい、過疎地へ逃げ込んで自給自足の生活でもするしかなくなってきたようです。そこまでのことはなかなか無理な相談ですが、少なくとも高度科学技術文明に振り回されるのではなく、それを最小限に上手に使いこなす、そうした生活を目指すしかないでしょうね。

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たった1つ!幸せの秘訣は…(三宅薬品・生涯現役新聞N0.320)

2021年09月25日 | 当店毎月発刊の三宅薬品:生涯現役新聞

当店(三宅薬品)発行の生涯現役新聞N0.320:2021年9月25日発行

表題:たった1つ!幸せの秘訣は…

副題:天高く過ごしやすい季節の到来。笑顔で楽しくいきましょう!

(表面)↓ 画面をクリック。読みにくければもう1回クリック。以下同様です。

   

(参考)同封した日本講演新聞の「笑顔共和国大統領」福田純子さんの記事

   

(裏面)瓦版のボヤキ

    文字書き遊びで楽しく長寿

   

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健康には何よりも美肌の腸壁づくり

2021年09月22日 | 生活習慣病一般

健康には何よりも美肌の腸壁づくり

(2015.4.15投稿の記事に、2021.9.22に関連する内容を一部加えて再投稿し直しました。)

 「腸内環境を良くして健康に」と、よく言われますが、「腸内」というと、これは「体内」と同じに感じてしまい、「腸内環境」という言葉は的確な表現ではないと小生は思っています。なお、ここで言う腸は大腸のことです。
 ですから、「腸内環境」に代えて「食物残渣滞留体外環境」とでも言うべきでしょうね。ヒトの消化酵素では体内へ吸収できなかった食物残渣が滞留している場所であり、ヒトの体の外側に位置する空間ですから。
 そうすると、ヒトの体外に生息する腸内細菌が活躍する場というイメージが高まり、ヒトと腸内細菌との共生の重要性が強く認識されることにもなるでしょう。
 しかし「食物残渣滞留体外環境」などという、小難しく長ったらしい言葉はとうてい受け入れられるものではなく、ここは止むを得ず「腸内環境」という言葉を使うことにします。

 さて、ヒトの体の外側から大腸を眺めてみると、どんな姿をしているでしょうか。これは実に興味深いものがあるようです。
 内視鏡外科の先駆者、新谷弘実氏は、こ
の分野の重鎮であり、たぶん世界一の臨床例(著書発刊時で日本人・米国人の胃と腸で合計30万例)をお持ちで、患者がどんな食事をしてきたか、その食歴をヒアリングし、それによって腸壁がどうなっているか(「腸相」の良し悪し)をつぶさに観察なさっておられ、その深い経験から導き出された有意義なお話が、その著書「病気にならない生き方」に載っていますので、それを詳しく紹介することにしましょう。
 なお、先に記事にしました「
胃薬を飲めば飲むほど胃は悪くなる(付記:お茶も薬のうち)」と一部重複する部分がありますが、胃と腸(さらには口=咀嚼)は消化器官として一体でとらえる必要がありますので、その点お許しください。
 かなり長い引用の連続となりますが、最後までよろしくお付き合いください。なお、引用に当たっては、本書の後ろの方の頁に書かれたものを一部関連する前の方の頁に入れ込んで編集しています。(以下、引用)

(人相と胃相・腸相)
…人間の顔に人相のよしあしがあるように、胃腸にも「胃相」「腸相」のよしあしがあります。人相はその人の性格が表れるといいますが、胃相・腸相にはその人の健康状態が表れます。…
 体に痛みや不調が生じていない「未病」の人に、「腸相が悪くなるから動物食は控えてください」といっても、素直に忠告に従って実践する人はあまり多くありません。…いちばんの理由は「見えないから」だと思います。
 体の表面に生じた変化には、人は比較的敏感に反応します。たとえば、髪の毛が抜けたり…すれば、大騒ぎでお金も時間もかけて対処します。しかし、自分では見えない腸の中の変化となると、「まあ、痛くなければいいか」と、驚くほどいいかげんな対処で終ってしまうのです。そして病気になってしまってから、後悔することになるのです。…
 しかし、私のように腸の中を知りつくしてしまうと、体の表面の変化よりも中の変化のほうが気になります。…

 健康な人の胃相・腸相はとても美しいものです。胃であれば、粘膜が均一のピンク色で、表面にでこぼこがなく、粘膜下の血管が透けて見えることもありません。また、健康な人の粘膜は透明なので、内視鏡が照らす光に粘液が反射し、キラキラ輝いて見えます。健康な人の腸も、胃の場合と同じようにきれいなピンク色をしています。さらに非常にやわらかく、大きくて均等性のあるひだが見られます。
 人間は誰でも子供のころはきれいな胃相・腸相をもっています。それが日々の食事や生活習慣によって変化していくのです。…

(肉食が腸相を悪くする)
 肉食が腸相を悪くする最大の原因は、食物繊維がなく、脂肪やコレステロールを大量に含んでいることにあります。肉食を続けていると、腸壁がどんどん厚くなりますが、これは食物繊維がないために便の量が極端に少なくなり、その少ない便を排出するために腸が必要以上に蠕動しなければならなくなるからです。つまり、過剰な蠕動運動により腸壁の大部分を構成する筋肉が鍛えられ厚く大きくなってしまうのです。こうして腸はかたく短くなっていきます。
 腸壁が厚くなると、内腔は狭くなっていきます。かたく狭くなった腸の内圧は高くなるのですが、動物性タンパクに加えて脂肪も大量に摂取して腸周辺の脂肪層が厚くなるので、さらに腸壁に圧力がかかります。こうして腸内の圧力が高くなると、中から外に向かって粘膜が押し出されるという現象が起きます。この現象が「憩室」と呼ばれるポケット状のくぼみを作り出します。
 こうなると、ただでさえ量の少ない便は腸の中を進むのがむずかしくなります。その結果、腸の中に長く停滞する「停滞便(宿便)」がたまってきます。その停滞便は腸壁にこべりつくようにたまるのですが、そこに憩室があれば、そのポケット状のくぼみに停滞便が入り込み、さらに排出されにくくなります。
 憩室やひだの間にたまった停滞便は毒素を発生し、その部分の細胞に遺伝子変化を起こさせポリープを作り出します。そしてポリープが生長し、ガン化していくのです。 
 腸相の悪化は、大腸ガン、大腸ポリープ、憩室炎などさまざまな大腸の病気を起こすだけにとどまりません。実際には腸相の悪い人の多くが子宮筋腫、高血圧、動脈硬化、心臓病、肥満、乳ガン、前立腺ガン、糖尿病などのいわゆる生活習慣病を発病しているのです。…

(アメリカ人の腸と日本人の腸の違い)
 私が…ニューヨークに渡り…1967年に(私が開発したのが)「コロノスコープ(大腸内視鏡)」の最初のものです。その後、長い(185cm)スコープが開発されるとすぐに購入、そのスコープを使って、アメリカ人の腸を初めて見たとき、私はその腸相の悪さに驚きました。肉を常食していたアメリカ人の腸は、日本人の腸よりも明らかにかたく、短くなっていたのです。さらに内腔が狭いうえに、まるでところどころ輪ゴムで縛ったようなリング状のでこぼこができていたのです。憩室も多く、そこに停滞便がたまっていることも少なくありませんでした。
 アメリカ人は腸にトラブルを抱えている人が多く、当時は10人に1人はポリープがあるといわれていました。…私はアメリカと日本を2対1の割合で活動してきたため、両国民の胃相・腸相の移り変わりをつぶさに見てきました。
 60年代に入り高度成長を迎えた日本は、アメリカに追いつき追い越せとばかりにあらゆるものをアメリカにならいました。…それまで野菜と魚が中心だった日本の食卓は、…動物性タンパクを中心とする高タンパク・高脂肪食が飾るようになってきました。…
…動物性タンパクをたくさん食べると人間の成長が早くなるということは事実です。…しかし、ここにも動物食の危険な落とし穴があります。それは「成長」はある年齢を超えた時点で「老化」と呼ばれる現象に変わるということです。…お肉を好んで食べている人は、それがあなたの健康を害し、老化を進めているということを覚えておいてください。
 一方アメリカでは、1977年の「マクバガン・レポート」を機に、国家をあげて食事改善が進められてきました。その結果は両国民の腸相に表れています。
 きれいだった日本人の腸相は、食生活の変化とともに年々悪化し、いまではすっかり肉を常食しているアメリカ人の腸相に似てしまったのです。それに対し、アメリカ人のなかでも真剣に自分の健康を考え、高タンパク・高脂肪食を改善した人たちの腸相は、みごとに改善されてきています。その結果、1990年以降は、大腸ポリープやガンの発生率も低下しています。…

(食歴と腸相そして病気との関連)
 私が「食歴」を患者さんたちに聞くようになったのは、スコープを使って胃相・腸相を直接診ることができるようになってから2年ほどたってからです。…
 ガン患者の食歴を調べていくと、動物食(肉や魚、卵や牛乳など動物性の食物)をたくさんとっていたことがわかりました。しかも、早い年齢で発病している人ほど、早くから動物食(特に肉、乳製品)を多く、そしてひんぱんにとっていたことがわかったのです。乳ガン、大腸ガン、前立腺ガン、肺ガンなど、発病したガンの種類はさまざまですが、この傾向だけは同じでした。
 そして、どんなガンを発病した人も例外なく腸相が悪かったのです。…
 食事が原因で起きる病気は、それを食べたからといってすぐに発病するものではありません。しかし体の中では、これまでの食生活が確実に蓄積されています。…
 新谷食事健康法では…「タンパク質が不足しませんか?」と聞かれることがよくあります。でも、心配はいりません。植物食でも、タンパク質は充分にとることができます。…もちろん、植物性タンパクもけっしてよいことではありません…。
…チンパンジーの食事を見ると、その95%は植物食です。…そんなチンパンジーの胃腸を私は内視鏡で見たことがありますが、胃腸を見ているだけでは人間かチンパンジーかわからないほど似ています。そしてなによりも驚いたのは、彼らがとてもきれいな胃相・腸相をしていることです。

(便秘薬は腸相をどんどん悪くする)
…便秘薬を常用している人の腸は、それが化学薬品でも漢方薬や自然のハーブ茶でも、腸壁が真っ黒に変色していくことがわかっています。そして薬を飲めば飲むほど腸の動きは悪くなり、動かなくなっていきます。そして動かなくなると、さらに停滞便が残りやすくなるので、腸相がどんどん悪くなっていってしまうのです。…

(腸内細菌の働き)
 腸内には絨毛と呼ばれる小さな突起がびっしりあるのですが、その絨毛の突起のあいだには善玉菌である乳酸菌が入り込んでいます。この絨毛の中には免疫システムにかかわる白血球やNK細胞…といったものが出てくるのですが、それらは、異種タンパクや細菌、ウイルスやガン細胞などの異物と戦うときに大量のフリーラジカルを出します。乳酸菌はその後始末ともいうべきフリーラジカルの除去に活躍してくれるのです。
 ちなみに、これはまだ私の仮説ですが、善玉菌の不足など何らかの理由で中和されきらなかったフリーラジカルが、非常にデリケートな絨毛に炎症を起こさせ、破壊していったのが潰瘍性大腸炎やクローン病ではないかと考えています。
 一方、悪玉菌は、不消化物などを破壊・崩壊させるような働きをするので、一般的には有害菌だと考えられているのですが、…異常発酵を起こし有害なガスを出させて腸を刺激し、ガスや便の排泄を促していると考えることもできるのです。
 ですから私は、腸内細菌というのは、本当は善悪がそんなにきっぱりと分かれているものではないのではないかと考えています。…
 人間に利益をもたらすものを「善玉菌」、人間に毒になるものをもたらすのが「悪玉菌」…と称するのですが、これはあまりにも身勝手な分類だと思います。…
 人間は悪玉菌を毛嫌いしますが、悪玉菌が増えるような腸内環境をつくり出しているのは、ほかならぬ自分自身です。自分の食生活の乱れや、悪い生活習慣を棚に上げて、微生物を責めることはできません。

(動物性タンパク質:肉と魚の違い、そして油に関して)
…「魚」であっても、過剰摂取が健康被害をもたらすのは同じです。
 ただし、私の臨床データによると、「肉食腸」と「魚食腸」には決定的な違いが一つあります。それは、魚中心の食事をしている人は、どんなに腸相が悪くても、「憩室」ができることはないということです。…
 こうした腸相の違いはどこからくるのでしょう。これは肉と魚、それぞれがもつ「脂肪」の質の違いではないかと、私は考えています。…
 牛や豚や鳥の体温は、人間よりも高い38.5~40度、鶏の体温は…41.5度です。こうした人間よりも高い体温の動物の脂は、その温度でもっとも安定した状態にあるということです。つまり、それよりも体温の低い人間の体内に入ったときには、ベタッと固まってしまう。この脂のベタつきが、血液をドロドロにしてしまうのです。…
 一方魚は…人間よりはるかに低い体温をしています。その脂が体温の高い人間の体内に入ると、…さらさらの液体になります。…魚がもつ脂が血液をサララサにし、悪玉コレステロールを下げるといわれているのは、このためです。…
 油はどのようなものであっても、…できるだけ調理には使わないほうがいいのです。…一般的には、ビタミンAを吸収するには、油を使って料理したほうがいいといわれます。しかし、脂溶性のビタミンの吸収に必要な油の量はごく微量なもの…ですから、…大豆やゴマなど脂肪を有している食物をほんの少し一緒に食べるだけで充分に吸収することができます。

(自然の摂理に従った食生活)
 人間の体はすべてつながっています。たとえば、歯が1本虫歯になっただけでも、その影響は体全体におよびます。充分に咀嚼されなかった食物が胃腸に負担をかけ、消化不良を引き起こし、栄養が充分に吸収されず、体の各所でさまざまな問題が生じるからです。
 (胃薬の常飲で)胃酸の分泌が不十分だと、…食べ物は消化不良の状態のまま腸へと進みます。そのため本来なら腸で消化吸収されるはずの食べ物が、不消化物として腸内に残存してしまいます。…当然のごとく腐敗・異常発酵が起きます。これにより腸内では悪玉菌が異常増殖し、免疫力が低下してしまうのです。
…病院食の…お粥だと最初からどろどろしているので、ろくにかまずに飲み込んでしまいます。そのため、やわらかいはずのお粥は、エンザイム(酵素)が充分に混ざっていないため消化が悪く、よくかんだ普通食のほうが消化がよいという皮肉な結果になるのです。
…よくかむとうことは、病人に限らず消化吸収をスムーズに行うためにとても大切なことです。とくに胃腸に問題ない人も、普段から30~50回はかむように心がけることをお勧めします。…
 肉食動物の「歯」と草食動物の「歯」が違うのは、あなたたちの食べ物はこういうものですよ、という自然の摂理の表れにほかなりません。私たち人間の歯並びにも、そうした自然の摂理はちゃんと組み込まれています。…
 自然の摂理に即した「命のシナリオ」を無視してしまったのは、人間の限りない「欲」です。…よりおいしいものを食べたいという欲を満足させるために、自然の摂理に即した食の範疇からはみ出し、より便利な生活をしたいという欲を満足させるために、さまざまな文明の利器を生み出し、…もっとラクに作物を育てたいという欲は、農薬を作り出し、…。
 いまの人間社会は、そうした自分たちの拡大させつづけてきた「欲」と「便利さ」の代償を、病気というかたちで支払っているのかもしれません。
 でも、
もうそろそろ現在の医学の延長線上に本当の健康はないということに気づいてもよいころです。私たち人間も自然の一部です。…自然の摂理に身をゆだねなければなりません。…みずからに備わった「命のシナリオ」に耳を傾けるということです。
 太っているのに飢餓感を感じるのは、必要な栄養素が足りないからです。下痢をしたり便秘をしたりするのは、体に適さないものを食べているからです。そして、病気になるのは、命のシナリオを無視しているからです。
 ですから、これからの医学は、これまでのように病気を力でねじ伏せていくような医学ではなく、…みずからに備わった自然治癒力を目覚めさせ、命を養っていく医学にシフトしていくべきだと私は考えています。

(新谷食事健康法とは)
 私が提唱している食事法では、基本的には、エンザイムを多く含む食物をよい食物、エンザイムが少ない、またはなくなってしまっている食物を悪い食物と考えます。
 よい胃相・腸相の人たちに共通していたのは、エンザイムをたくさん含むフレッシュな食物を多くとっていたことでした。そしてこのことは、…腸内細菌が活発に働くような腸内環境をつくるのにも役立っていました。
 一方、胃相・腸相の悪い人たちに共通していたのは、エンザイムを消耗する生活習慣でした。お酒やたばこの常用、大食、食品添加物を含んだ食事、ストレスの多い生活習慣、医薬品の使用、これらはすべてエンザイムを消費する行為です。…
 このことからわかるのは、健康を維持するためには、体内のエンザイムを増やす食生活をするとともに、体内のエンザイムを消耗する生活習慣を改める必要があるということです。そしてこのことこそが、私が提唱する「新谷食事健康法」の根幹となっているものなのです。…
 そのためもっともよいのは、ミネラルをたくさん含んだ肥えた土地で化学肥料や農薬を使わずに育てられたものを収穫してすぐに食べるということになります。
 野菜でも果物でも肉でも魚でも、新鮮であれば新鮮であるほどエンザイムの量は多いと思って間違いありません。私たちが新鮮なものを食べたときに「おいしい」と感じるのは、エンザイムがいっぱい詰まっているからなのです。
 しかし人間は、他の動物と違って食材を調理して食べます。煮たり焼いたり、ときには油で揚げたりもします。エンザイムは熱に弱いので、調理すればするほど失われていくことになります。かといって、何もかも「生」で食べることもできません。…食材の選び方、調理の仕方、そして食べ方というものがとても大切になってくるのです。
…健康によい食事を研究している人のなかには、人間も…(野生の動物のように)…すべて生の状態で食べるべきだという人もいます。
 でも私はそうは思いません。なぜなら、健康に生きるためには人が「幸福」であることがとても大切だからです。食事は人間にとってもっとも大きな喜びをもたらすものです。ムリしてまずいものを食べていたのでは健康にはなれないのです。 
 ですから新谷食事健康法では、自然に学びながらも、楽しみながらそれを続けることが何よりも大切だと考えています。
…新谷食事健康法を実践していただくと、約半年ほどでみごとなまでに胃相・腸相が改善され、ガスや便のいやな臭いも軽減されます。 
 そのためのポイントは、…
・植物食と動物食のバランスは、85(~90)対(10~)15とすること
・全体としては、穀物(雑穀、豆類を含む)を50%、野菜や果物を35~40%、動物食は 10~15%とすること
・全体の50%を占める穀物は、精製していないものを選ぶこと
・動物食は、できるだけ人間よりも体温が低い動物である魚でとるようにすること
・食物はどれも精製していないフレッシュなものを、なるべく自然な形のままとるようにすること
・牛乳・乳製品はできるだけとらないこと(乳糖不耐性やアレルギー体質の人、牛乳・乳製品が嫌いな人は、いっさいとらないようにする)
・マーガリンや揚げ物は避けること
・よくかんで少食を心がけること
 自然の摂理と人間の体の仕組みを知って、これらのポイントを守れば、健康に良い食事を楽しみながら続けることはそれほどむずかしいことではありません。…
 …分厚いステーキやチーズやお酒も、たまになら食べても飲んでも大丈夫です。…大切なのは、楽しみながら、正しい食事を長く続けていくことです。
(引用ここまで)

 以上、長々と新谷弘実著「病気にならない生き方」から引用しました。
 新谷食事健康法はポイントが8項目あげられていますが、その詳細は省略します。なお、リンクが貼ってある箇所は別記事で解説していますので参照なさってください。
 ところで、「たまになら食べても飲んでも大丈夫です」とありますが、その頻度はといいますと、引用を割愛しましたが「ほかの95%が健康に留意した食事をしていれば」と表現されていることから推測するに20日に1回といった程度になるかと思われます。
 最後に、引用文中にあった1977年の「マクバガン・レポート」は、その後のアメリカ人の食生活に大きな影響を与えましたので、少々説明しておきます。
 これはアメリカ政府が生活習慣病の急増原因を解明し、根本的な対策を立てるために世界中から学者を集め、7年の歳月をかけて詳細に調査研究された結果です。
 報告書は5000頁にわたる膨大なものですが、原因は間違った食生活にあると結論づけられ、「江戸時代の元禄以前の日本食が最も健康に良い」と、「玄米菜食」が高く評価され、「肉を大幅に減らして、穀類を多く摂るべし」として、栄養の所要量が提示されました。これに対して、アメリカの畜産業界と砂糖業界が猛反発し、その後に紆余曲折はあったものの、現在のアメリカの栄養摂取指針は基本的にはマクガバン報告を踏まえたものになっているようです。
 なお、この食生活改善は大都市、特に東部諸州の大都市で進んでいるようです。
 元禄以前の日本食への回帰を進めているアメリカ人、マクバガン・レポート以前の焼肉オンリーで“霜降牛”の味覚を楽しんでいる日本人。恥ずかしい限りです。
 最後の最後に、新谷弘実氏から読者へのアピールを記して終りとします。

 1996年、それまで「成人病」といわれていた疾患が「生活習慣病」と呼ばれるようになりました。しかし、私は機会があるごとに「これは生活習慣病ではなく、自己管理欠陥病ですよ」といっています。「今夜の焼肉」より「10年後の健康」を選べ!

 

(2021.9.22 補記)
 小池里予、小池英共著「ホリスティック健康学・ホリスティック栄養学入門」(平成18年改訂新版)に、本件に関係した興味ある調査研究報告(1977年「マクバガン・レポート」発表の4年前)の紹介がありましたので、以下に引用します。

 食物繊維の摂取が、病気の発生と深い関係にあることを示す有名な研究データが、1973年に英国人医師バーキッドによって発表されています。それはアフリカ人とイギリス人の“便”を比較したものです。
 その報告によれば、アフリカ人の1日の便の量は、イギリスの4倍にも達し、太く軟らかく、ほとんど臭いがしません。それに比べてイギリス人の便は、硬く圧縮されていて細く、何よりもひどい悪臭がするのです。研究によって、アフリカ人は食べた物をほぼ1日で排泄しているのに対し、イギリス人は平均3日もかかっていることが分かりました。
 当時、アフリカの田舎に住んでいた人々の食事の特徴は「低脂肪・高食物繊維」で、食物繊維はイギリス人の3倍も摂っていました。バーキッドと彼の仲間の医師たちは、食物繊維の摂取と病気との関連を調べ続け、その結果をイギリスの医学雑誌に発表したのです。…
 その中でバーキッドは、現代の欧米社会に多く見られる、心臓病・胆石・大腸がん・虫垂炎・痔・肥満・糖尿病・静脈瘤などの病気は、「食物繊維」を大量に摂っているアフリカ人には、ほとんど発生していないことを明らかにしました。(*ところが同じアフリカ人でも、都会に住み、欧米化した食事を摂っている人々の間には、欧米人並みに“現代病”が蔓延していました。)
 そうした報告に触発された世界中の医師たちのその後の研究によって、バーキッド博士の発表は裏付けられました。大腸内での食物繊維の働きが明らかになり、その重要性が認識されるようになったのです。
(引用ここまで)

 この調査研究における「アフリカ人」は、その当時の「日本人」と読み替えていいでしょう。あれから半世紀経ち、日本人の過半も「同じアフリカ人でも、都会に住み、欧米化した食事を摂っている人々」と同じになってしまったようですね。

コメント
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