薬屋のおやじのボヤキ

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酸っぱいもの、苦いものを食べない食生活は健康を害します

2017年12月14日 | 漢方栄養学

酸っぱいもの、苦いものを食べない食生活は健康を害します

 中医学(漢方)は何もかも5分類する“五行論”の世界です。よって、漢方に登場する味は、「酸味、苦味、甘味、辛味、塩味(正しくは鹹(かん)」の5つの味だけです。
 読んで字の如しの味ですが、その定義は通常の感覚とは若干違いがあります。「甘味」は、砂糖などの甘さのほか、よく噛んで甘さが生ずる御飯や旨味を持つ肉も一般的に「甘味食」品になります。また、「鹹味」は、塩気のほか“にがり”で代表される“えぐみ”も含まれます。
 この五味をバランスよく摂取すると体にいいということになりますが、季節によって強弱を付けるのがミソとなり、強調すべきものは「春は酸味、夏は苦味、土用(四季の変わり目)は甘味、秋は辛味、冬は塩味」です。
 また、五味はそれぞれの臓器を潤すこととなり、臓器も季節との関わり(臓器が特に働く時期がある)があり、それを含めて表示すると次のようになります。

 春=肝=酸味、夏=心=苦味、土用=脾=甘味、秋=肺=辛味、冬=腎=塩味

 ここに掲げた五臓は、読んで字の如しの部分もありますが、脾と腎はだいぶ違いがありますので、それを説明しておきましょう。
 脾は、脾臓を指すのではなく、消化吸収の要という意味になり、臓器としては胃と膵臓と考えていいです。土用は農作業が忙しく、力仕事をせねばならないから御飯をたくさん食べ、胃と膵臓に十分働いてもらう、ということになります。
 腎は、腎臓だけではなく、周辺臓器の生殖器も含み、腎精と言って、命の源という意味になります。

 さて、現在の食生活を五味の観点から見てみると、大きな偏りが生じています。
 とにかく「甘味」が断然に多いことです。ご飯に麺やパンといった穀類、芋類、肉や魚、これら全部が「甘味」食品です。加えて、砂糖が入った菓子や食後に食べる甘いデザート。さらには、果物さえ酸っぱさがなくなって、甘さが強いものに品種改良されてしまっています。
 ひどい場合、毎日、こうした「甘味」食品しか食べないという方もみえます。
 次に、“塩分は摂りすぎです。減塩しなさい。”と、やかましく言われ、「塩味」が抑えられすぎる傾向にあります。例えば、家庭料理においては味噌汁を全く作らなかったり、梅干や漬物を食卓に置かなかったりしています。これでは“命の源”が脆弱となり、元気が出なくなります。(ただし、加工食品や外食産業は、保存性の向上と素材の悪さを隠すために「塩味」をきつくしていることがけっこうあり、こうしたものに偏食すると塩分の過剰摂取となる傾向にありますが。)
 3つ目の「辛味」については、子供は抑えすぎの感がします。「辛味」は覚醒作用があり、活動的にしてくれますから、子供が元気よく動き回るには必須のものです。でも、大人となると両極端となり、激辛を好む人が出てきますが、これは味覚感覚がマヒしてしまっているからでしょう。これでは興奮しすぎとなってしまいますし、肝臓にさわります。もっとも、古来より子供の頃から激辛に馴染んでいる民族であば生体反応がそれに適合しており、さほど問題にはならないでしょうが。

 残りの2つ、「酸味」と「苦味」は近年どんどん味わうことが減ってきています。
 幼い子供は必然的にこれを嫌います。というのは、基本的に、「酸味」は“腐ったもの”の味であり、「苦味」は“毒のあるもの”の味ですから、動物は皆そうですが、この2味は直感的に避けるのです。幼い子供にも、この直観力は備わっています。
 ヒトは、文明化社会になってから、それが進めば進むほどに本来のヒトの食性からどんどん離れた食事をするようになり、五行論(五味もその一つ)が完成した2千年前の中国においてさえ、すでにそうした食事になっていました。
 こうした食生活においては、ヒトの消化器官では食べ物を完全消化することは難しく、まずは「酸味」が求められることになります。つまり“発酵食品”です。ヒトが食べても安全であるばかりでなく、腸内細菌の働きによって消化吸収の助けをしてくれる、発酵によって酸っぱさが生じたもの、これが重要なものとなったのです。
 また、酢の物を食すようになったのですが、これはミネラル不足を解消する効果があることから取り入れられたもので、食品中の不溶性のミネラルを酸が溶かし出し、吸収しやすくすることによります。ミネラルの存在を知り得たのは、まだ最近のことですが、その昔、酢の物にすれば、味わい深くなっておいしくなる(ミネラルの味をそう感じた)とともに元気になること(ミネラルの充足)を体が知ったからでしょう。

 最後の5つ目の味、「苦味」は、毒であるとともに薬になります。ヒト本来の食性から離れた食事と、文明化によりヒト本来の原始的な生活を取り得なくなったことによって、ヒトは皆、体のあちこちで不具合が生じてきたのです。2千年前の中国においてさえ、すでにそうなってしまっていたのです。
 臓器のどこかに無理が掛かって、頻繁に特定の臓器に機能亢進(高ぶり)を起こしたり、体のあちこちで炎症を起こしたりすることが、子供には少ないものの大人になれば必然的に多くなります。年を食えば、特に炎症が高じてきます。
 ここで、薬が必要となり、機能亢進を抑え、炎症を鎮める「苦味」が求められるようになったのです。「苦味」があれば、こうした不具合に薬として効くのです。そして、「苦味」は弱った胃には逆に健胃薬として働いてくれます。
 ときに子供も体調不良をきたすことがあり、昔は、そうしたときには子供にも「苦味」を味わせ、それでもって体調を改善させ、「苦味」に慣らさせてきました。また、幼少から、体にいいからと、フキノトウなり魚のはらわたを少しは食わせて、将来的に必要となる「苦味」に慣らさせていったのです。

 以上の五味は、科学的根拠なしで長年の経験でもって培われてきた食の基本であるのですが、自然科学が急発展した今日、次々と理にかなったものとして認知されてきています。その一部はここまでの説明で併記したとおりです。

  “肝心な”味、「酸味」と「苦味」の不足は、「酸味=肝」「苦味=心」ですから、肝臓と心臓の働きに大きな支障を及ぼすことにもなります。
 まず「酸味」ですが、漬物、特に梅干には酸っぱさの成分としてクエン酸が多く含まれていますし、酸っぱく感じる果物はほとんどがクエン酸によるものです。また、お酢の主成分は酢酸ですが、体内でクエン酸に変換されます。
 肝臓はエネルギー消費が最も多い臓器で、つまり、エネルギー産生を盛んに行っており、それに不可欠なものがクエン酸です。よって、酸っぱいものを摂ると肝臓の働きが円滑になり、疲労感も取れてくるのです。
 これでもって「酸味は肝臓を潤す」という理にかなった説明ができましょう。
 次に「苦味」ですが、「苦味が心臓を潤す」という直接的な科学的根拠は残念ながら乏しいのですが、前述した「機能亢進を抑え、炎症を鎮める」作用があることは確かで、夏は日が長く、その昔は活発に動き回りましたから、オーバーワークになりがちで心臓に大きな負担がかかったことでしょうから、そうした作用が求められたがゆえに「苦味=心」とされたものと思料されます。

 いまや飽食時代。加えて高度文明社会になって科学技術の大発展により、あまりにも体を動かさなくなってしまいました。
 これからは、一部の例外を除いてほとんどが「甘味」食品である三大栄養素(炭水化物、脂肪、タンパク質)の摂取を大幅に減じ、“肝心な”味、「酸味」と「苦味」をうんと摂らないことには、栄養(五味)バランスが崩れ、生体恒常性の維持も難しくなってきます。
 市場に出回る食品、野菜や果物でさえそうですが、「酸味」と「苦味」を減じたものになってきていますし、なによりも子供の食のしつけができておらず、子供が好むものしかあたえないという風潮になっていますから、その子供たちが大きくなっても、その偏食傾向から、味わったことのない「酸味」や「苦味」はまず口にしなくなります。
 こうして、これからますますこれが顕著となっていき、栄養(五味)バランスが完全に崩れ、将来のヒトは、ますます虚弱、病弱な体となり、元気さを失っていくことでしょう。
 その表れとして、一昔前までは子宝を授かるには「腎=塩味」の充実で済んでいたものが、いまや、その前に“肝心な”味、「酸味」と「苦味」を充実させないことには子宝は授からないと言われるようになりました。
 ここで、ご注意。「酸味はヨーグルト」とばかり、ヨーグルトを毎日食すと大変なことになります。古来からの食文化の大きな違いにより、日本人には全く合わないのが牛乳であり乳製品なのですから。
 参照過去記事:ヨーグルトは体にいいのか悪いのか、その答えは明らかです

 では、どんな食事をすればいいでしょうか。それは、日本人なら日本の古来からの食事であり、一言で言えば“おふくろの味”です。分かりやすく語呂合わせすると、“おかあさんだいすき”という料理になります。
 「おふくろの味」の語呂合わせ料理
  お   おから料理
  か   かぼちゃの煮付け
  あ   和え物
  さん  サンマの塩焼き
  だ   大根の煮物
  い   芋の煮っころがし
  す   酢の物
  き   きんぴら

 詳しくは、次の過去記事をご覧ください。
 
復権!「おふくろの味」 語呂合わせ“おかあさんだいすき” 孫の嫁入り支度に

 この料理を作るに当たっては、食材として「酸味」と「苦味」を意識されるといいでしょう。次の語呂合わせも参考になります。
 オサカナスキヤネ(お魚好きやね)
 オ  お茶
 サ  魚
 カ  海藻
 ナ  納豆
 ス  酢
 キ  きのこ
 ヤ  野菜
 ネ  ねぎ・たまねぎ

 参考までに、「老けすぎ 顔 あれていた」という食事ではいけません。このブログでも紹介しましたが、それはどんな食事か? 発案者の原典ブログをご覧になってください。
 食育講師の高田恭代のブログ

 

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漢方五味と主要5ミネラルの味の関係

2016年03月23日 | 漢方栄養学

漢方五味と主要5ミネラルの味の関係

 中医学(漢方)では何もかも5分類する「五行論」の世界です。
 よって、漢方に登場する味は、酸味、苦味、甘味、辛味、塩味の5つの基本的な味だけです。そして、それぞれの味がそれぞれの臓器に対応し、順番に肝、心、脾、肺、腎と密接な関係にあるとするものです。酸味は肝が喜ぶ、苦味は心が喜ぶ、といったぐあいです。また、季節とも対応し、春、夏、土用、秋、冬との関わりが深いものとなり、春は酸味、夏は苦味、といったぐあいです。

 冬は塩味を求め、これを美味しいと感ずるのは、腎がそれを求めていることもありますが、食塩(塩化ナトリウム)をたっぷり取ると体がぐんと温まることが大きく影響していると思われます。東北地方において高度成長期以前は塩分摂取が多かったのですが、これは寒さしのぎで高塩分になっていたのではないでしょうか。
 なお、漢方では夏は塩味を控えよとなっていますが、これは夏に高塩分食をとると体に熱がこもり、熱中症になりかねないからと言えます。

 春になると酸味を求め、それが美味しいと感ずるのは、いったいなぜでしょう。
 小生思うに、これは身体がカリウムを求めているのかもしれません。
 カリウムイオンの味は、塩味っぽかったり多少苦味がかっ
たりするようですが、どうやら酸味がかった味がするようです。
 春にカリウムが必要なわけは、考えてみるに、冬場の摂取が食
塩つまりナトリウムイオンに偏向したせいで、ナトリウム・カリウムのバランスが崩れてきて、身体がカリウムを欲する状態になっているからではないでしょうか。
 ナトリウムイオンとカリウムイオンは、細胞から出たり入ったりしながら、対になって生命活動を維持していますから、そのバランスはことのほか重要ですからね。
 こうして、冬に求めた塩味によってナトリウム過剰の体を、春にカリウム摂取で平衡を保とうとする力が働き、味覚が変わると考えるのが素直な感がします。

 次に夏です。夏は苦味を求めることになるのですが、これはマグネシウムイオンの味です。汗をかくと様々なミネラルを損失しますが、そのなかで一番問題になるのはマグネシウムの損失でしょう。これが欠乏すると筋肉の痙攣を引き起こし、限度を越えれば心臓麻痺で命を落とすことにもなります。
 よって、汗をかく夏場は身体がマグネシウムを求め、苦味を欲することになるのではないでしょうか。
 ところで、マグネシウムイオンとカルシウムイオンは、細胞から出たり入ったりしながら、対になって生命活動を維持していますから、そのバランスはことのほか重要です。カルシウムイオンが不足すれば骨を溶かせば容易に調達できるのに対し、マグネシウムは大半を口から補給するしかなく、苦味食品を求めることになるのでしょう。

 次に季節の変わり目である土用。土用に甘味を求めるのは、ミネラルからするとそれはカルシウムと考えられます。カルシウムイオンそのものは、苦味、塩味、エグ味が混ざったような複雑な味のようですが、食塩などに含まれた状態ですと、カルシウムが多いと味がまろやかで甘味を感じたりするようです。
 これを求めるということは、土用に農作業という力仕事をすることによって骨に荷重がかかって骨の発達が進み、つまり骨太になろうとカルシウムを要求していると考えてよいのではないでしょうか。

 最後に、秋に辛味を求めるのはどうしてでしょうか。ヒトが必要とする主要5ミネラル(正確には塩素を含めて6種類になりますが塩素は食塩=塩化ナトリウムとして1つとしてカウントします)は、今までに挙げたナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムの4つの他にリンがあります。これで5つとなり、「五行論」と足並みがそろいます。
 リンは他の4つのミネラルと性質が異なっており、対になって働く相手は持ちませんし、多すぎても少なすぎてもいけないミネラルです。
 さて、辛味といえば、唐辛子のカプサイシノイドです。その含有量は、リン酸肥料の施用量に影響を受け、リン酸が欠乏していても過剰であってもその含量は低くなります。つまり、ほどよい濃度のリンが唐辛子に入り込むと辛味が増すのです。
 ということは、ほどよい量のリン摂取の求めが、辛味を欲するという味覚要求になっていると言えるのではないでしょうか。
 少々苦しい説明になりましたが、秋は、食糧が乏しい冬に備えて食欲が増す時期であり、食欲増進のために胃を刺激する辛味を自然に摂るようになったと考えたほうが素直でしょうね。でも、「五行論」にこだわりを持つと、このような説明になってしまいます。

 何もかも5分類する「五行論」を、今まで外野席から冷ややかに見ていましたが、主要5ミネラルの味というものを各季節に当てはめてみましたら、ヒトの身体が要求するものと、あまりにもうまく符合することとなって、正直びっくりしているところです。
 主要5ミネラルを「五行色体表」にはめ込んだものは見たことがないのですが、紀元前に完成をみた「五行論」をアンタッチャブルなものにしておくのではなく、近代科学で新たに得た知見をこうして付け加えるのも面白いと思うのですが、いかがなものでしょうか。
 ということで、小生の新説、珍説をここに紹介させていただいたところです。

(2017.2.3追記) 冬の項について後2文を挿入

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漢方「五行論」に学ぶ味付け法

2016年03月04日 | 漢方栄養学

漢方「五行論」に学ぶ味付け法

 漢方では、あらゆるものを5分類し、それぞれに特徴的な5つの属性(氣)があるうえに、それらが単独で存立するものではなく、相互に影響し合い、それら5つの集合が全体でもって成り立っていると説きます。
 世界には、その多くを3分類や4分類にするという特徴を持った民族がいるのですが、なぜか漢民族は、3でも4でも6でもなく5つに分類してしまいます。それでもって、全てが矛盾なく納まり、全ての説明がつくというスタンスを取っています。
 その分類表(五行色体表)を見てみると、これは偶然にしては出来すぎだが、うまいこと5分類できているではないか、と思わせられます。
 加えて、同一の属性に所属する
物や事象は、全く異質なものであっても互いに関係するといいますから、これまた不思議なことですが、なんとなく当たっている感がします。
 ここのところが「五行論」を興味深くし、何かと実生活への応用範囲が広くて重宝させられます。

 さて、我々が感じる味というものは、単味である場合はまれで、幾つかの味が混ざって感じられ、その相互作用でもって美味しかったり、まずかったりもします。
 ところで、味の種類は幾つあるでしょうか。漢方では当然のことながら5種類だけとなりますが、ヒトの舌に存在するセンサーは、旨味、えぐ味、渋味といったものを感じ取ることもでき、5種類よりずっと多いです。でも、漢方では、旨味は“甘味のなかに含まれてしまう”ようですし、えぐ味や渋味は“これは味にあらず。味には氣があり、それでもって人の臓器の氣を養うものである”として無視してしまうようです。えぐ味や渋味というものは毒であり、また、毒と表裏一体の「下薬(短期間治療に用いる毒性のある薬)」であるといったところでしょうか。

 よって、漢方に登場する味は、酸味、苦味、甘味、辛味、塩味の5つの基本的な味だけです。そして、それぞれの味がそれぞれの臓器に対応し、順番に肝、心、脾、肺、腎と密接な関係にあるとするものです。酸味は肝が喜ぶ、苦味は心が喜ぶ、といったぐあいです。また、季節とも対応し、春、夏、土用、秋、冬と関わりが深いものとなります。つまり、春は肝の季節で酸味がよい、夏は心の季節で苦味がよい、というものです。
 考えてみるに、季節の野菜・果物もそんな感じがします。春は酸っぱい甘夏が旬になりますし、夏は苦味が強いゴーヤが出回り、その昔のキュウリは首の部分が苦かったものです。

 季節ごとの味一つだけを覚えておくだけでも健康に役立ちますが、料理は複数の味がからんできますから、より健康に、そして、より美味しいく料理を作っていただくためには、複数の味の組み合わせを知っておかれるといいでしょう。
 そこで、各季節ごと、さらに、24節気ごとの食材の選択や味付けについて、このブログで紹介(24節気は現在進行形)していますが、本稿で「漢方二味・三味」の組み合わせをまとめて紹介することにします。

 まず、基本となる「漢方二味」は次のようになります。
   春  主:酸味 従:甘味 (酢の物、酢漬には砂糖が不可欠)
   夏  主:苦味 従:辛味 (ゴーヤ料理には唐辛子をふる)
  土用  主:甘味 従:塩味 (鰻[甘味食品]の蒲焼[塩味]

   秋  主:辛味 従:酸味 (カレーライスにはラッキョウの酢漬が付き物)
   冬  主:塩味 従:苦味 (冬野菜のカブ[苦味食品]の塩漬)

 きちんとルール化された組み合わせになっていて、従味は2つ先の季節の主味になっています。この組み合わせが不思議と美味しく感ずるのです。

 では、「漢方三味」はというと、次のようになります。
   春  主:酸味 従:甘味 添:苦味(酢の物は砂糖を使い、柚子の皮を添える)
   夏  主:苦味 従:辛味 添:甘味(ゴーヤ料理には唐辛子の他に甘味食材も)
  土用  主:甘味 従:塩味 添:辛味(鰻[甘味食品]の蒲焼
に山椒の粉)
   秋  主:辛味 従:酸味 添:塩味(カレーは塩味が付いてる。+ラッキョウ酢漬)
   冬  主:塩味 従:苦味 添:酸味(カブ[苦味食品]の塩漬は発酵して酸味あり)

 これもきちんとルール化されていて、添味は直ぐ次の季節の主味になっています。この三味の組み合わせで料理の味に深みが出て、とても美味しく感ずるのです。
 和風懐石料亭はこの五味をご存知でして、上手に三味が組み合わせられています。例えば、酢の物が必ず出ますが、ちゃんと柚子の皮が乗っかっています。

 最後に避けたほうがいい味もあります。それをすぐ上に掲げた「漢方三味」に書き添えましょう。
   春  主:酸味 従:甘味 添:苦味 ×:辛味(酢の物には唐辛子は合わない)
   夏  主:苦味 従:辛味 添:甘味 ×:塩味(塩からいゴーヤ料理はまずい)
  土用  主:甘味 従:塩味 添:辛味 ×:酸味(鰻の蒲焼に梅干は食い合わせ)
   秋  主:辛味 従:酸味 添:塩味 ×:苦味(苦いカレーなんて食えません)
   冬  主:塩味 従:苦味 添:酸味 ×:甘味(甘い塩漬は、まずいです)

 これもきちんとルール化されていて、避けたほうがいい味は2つ前の季節の主味になっています。このようにバッティングする味もあって、不味くなることもあるのです。
 いかがでしたでしょうか。
 ところで、五味の残りの一味はどうすればいいでしょうか。これは食材に混じりこんでいる場合もありましょうし、自然に任せればいいでしょう。また、それによって美味しく感ずるようでしたら付け足されていいものです。

 以上が、季節折々の「漢方三味」の組み合わせですが、これをあまりに忠実に守り過ぎるのも考えものです。どの味も毎日欠かせないものですからね。
 例えば、春は辛味を避けねばならないとばかり、好きなカレーライスは当分おあずけにしたり、食卓から唐辛子の瓶を追放したりする必要はありません。これらは他の季節よりは控えることを意識するだけで摂りすぎが防げましょう。
 また、肝臓がいつもお疲れさん状態であれば、季節に関わりなく酸味を主体とした料理なり、酸っぱい果物を少し意識して召し上がられるといいです。もっとも酸味が強すぎると、過ぎたるはなお及ばざるが如し、となって逆効果にもなりますから、美味しいと感じる程度に止めてください。
 なお
、肝臓が弱っている方は、日頃から肝臓に差しさわりがある辛味を取りすぎないよう注意なさってください。その理由はのちほど述べます。

 「漢方二味・三味」を暗記しておくのは大変ですから、漢方「五行論」の「相生・相剋」図を下に貼り付けました。これを見て「漢方二味・三味」を拾い出してください。
(注:漢方では塩味のことを「鹹味」といいます。図中「水」の箇所が「鹹」=「塩」です。)
 時計回りの矢印が「相生」で次々と他のものを生み出していくことを意味しますが、味の場合は元になるものを次と次のものが助けることになります。太い矢印は「相剋」で相手方を抑えつけることを意味し、味の場合は避けるべしとなります。

 

 「漢方二味」の場合は時計回りに2つ先のものが助けてくれ、「漢方三味」の場合は1つ戻って隣のものも助けてくれる、そして、太い矢印が差し込んでくる味を避ける、と覚えておかれるといいでしょう。

 さて、この図は「木・火・土・金・水」の基本五行に、体の臓腑や器官、季節や感情そして味が付け足され、それぞれのグループごとに密接な関係を持っていることを意味しています。よって、冒頭で述べましたが、春・肝臓・酸味は密接な関わりを持つのです。
 ここで、五味と五臓の関係を、春に肝臓を十分に働かせようと酸味をとった場合を例にして、少々詳しく説明することにします。

 酸味をとる→肝氣が強まる→相剋関係にある脾氣を抑える→※脾氣が弱まる
 (これでは都合が悪いですから、脾氣を高めねばなりません。よって、甘味を補う)
 ※脾氣が弱まる→相剋関係にある腎氣を抑える力が落ちる→腎氣が強まる→相剋関係にある心氣を抑える→※心氣が弱まる
 (これでは都合が悪いですから、心氣を高めねばなりません。よって、苦味を補う)
 ※心氣が弱まる→相剋関係にある肺氣を抑える力が落ちる→肺氣が強まる→相剋関係にある肝氣を抑える
 でも、すでに酸味をとって肝氣を強めようとしていますから、大丈夫です。
 このように、酸味だけでは五臓のバランスを崩しますから、酸味をとった場合には、これによって弱まる臓器を助ける味を加える必要性があるのです。
 <主:酸味、従:甘味、添:苦味>の組み合わせがこうして生まれます。
 また、辛味でもって肺氣を強めすぎると肝氣を抑えつけすぎますから、辛味は避けるべし、ということも分かるのです。

 いかがでしたでしょうか。
 この「漢方三味」と、その組み合わせに加えることを避けるべき味を覚えておかれると、高級和風懐石料亭の味が楽しめるでしょうし、季節折々の正しい食養でもって心身ともに健康になることもできるのです。
 なお、薬膳料理とは、本来はこうしたものをいいます。
 そして、薬食同源(近年は間違って医食同源と名を変えてしまいましたが)の本来の意味は、“命は食にあり、食誤れば病いたり、食正しければ病自ずと癒える”であって、「心身を癒してくれる薬」と「美味しい食べ物」とは同じものであり、それは全て食べ物に源を発すると言っているのです。例えば、味噌汁だって季節折々の具材を上手に組み合わせれば、美味しくて立派な煎じ薬になるのです。
 
 さあ、皆さん、今日から旬の薬膳料理をお作りになって、毎日が高級和風懐石料亭へ行った気分に浸りませんか。

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減塩は大間違い!塩味を楽しんでイキイキ元気!

2012年08月17日 | 漢方栄養学

減塩は大間違い!塩味を楽しんでイキイキ元気!

 減塩は間違っていることを3回シリーズで書いてきましたが、その締めくくりとして、漢方理論と生活の知恵が相まって出来上がった「食養道」を、まず紹介しましょう。
 明治になって、文明開化により、様々な西洋文化が雪崩のごとく日本に流入し、食においても首都東京などでは洋食化が進み、健康を害する人たちが出てきました。
 これに危機感を抱いた人たちは、食の見直しを行い、正しい食生活をいろいろと提唱していますが、その中で有名なのが、西洋の理論も取り入れた石塚左玄で「食物養生法」を著しています。その基本が「食養の5原則」で、次のとおりです。

1 食物が健康と幸福の基礎である
2 ナトリウムとカリウム、陰と陽の2つの拮抗が基本的要素。
  ナトリウム=陽、カリウム=陰のバランスが大事だということですね。
  だから、食物の陰陽を組み合わせ、働かせて、効果を上げていく。
3 穀類が人間の一番正しい主食である。
4 「一物全体」の完全なバランスと調和のあるものでなくてはいけない。
  一物全体というのは、食材を丸ごといただくということを言っています。
5 「身土不二」、三里四方に採れる物がよい。
  生まれ育った風土でできた食物が大事だと言っているんです。

 この石塚左玄は、「食育」という言葉を始めて使った人でもあります。
 この5原則は食育に必要なものでもあると言っていいでしょうね。
(以上、若杉友子著「体温を上げる料理教室」96,97頁から抜粋。若杉さんが現代語に訳され、細字は彼女の解説文です。)

 ここで注目されるのは、食塩はナトリウムであり、野菜や果物にカリウムが多いという西洋近代科学を取り入れていることです。そして、漢方理論から、食塩(=ナトリウム)は陽の食品であり、カリウムの多い食品は陰の食品であるから、バランスよく摂取しなさいと言っているのです。なお、陽の食品は体を温め、陰の食品は体を冷やしますから、季節によって、バランス感覚が異なったものになってきます。これは、西洋にはないものです。
 このことだけからも、いたずらに減塩することは、大きな間違いとなります。

 そして、石塚左玄は、庶民に分かりやすいように、いくつもの「食養道・歌」を作っており、その中に食塩に関係するものがありますので、紹介しましょう。
(これも、若杉同著の100,101頁からの抜粋で、現代語訳も同様。ただし、※印は小生の補足です。)
・日本人は味噌と穀類を食べるのがよい。肉と魚の代用になる。
・減塩すれば体の中は病の大元になる。
(※ 食塩欠乏は、体が冷え、気力がなくなり、様々な疾病を呼び込みます。)
・塩のきいた味噌や漬物を毎日食べれば、病気が逃げていく。
(※ 食塩が充足すると、体が温まり、気力が出て、様々な疾病が改善される。)
・減塩をして大豆、ジャガイモ、果物を食べればたちまち具合が悪くなる。
(※ 例示されたものは、体を冷やす陰性食物の代表。体を極端に冷やしてしまう。)
・いい塩、いい米、良い水、これが日本の立て直し。
(※ 明治時代において、立て直さねばならないほど、既に食事に乱れが出ていた。)
(なお、これについては、のちほど若杉さんの解説を紹介します。)
・人々が寒さ、ひもじさに負けない働きは塩と米の力なり。

 次に、若杉同著から、食塩に関するお話の抜粋を紹介しましょう。なお、若杉さんは、1937年生まれ、野草の力に着目して独学で野草を研究し、漢方理論を取り入れて料理教室やセミナーを通し、生活の知恵を伝承しておられる、自称“ばあちゃん”です。

(28,29頁)塩分を控えめにすると活力も失われてしまう
 今の栄養学では、減塩をすごくすすめているでしょ。でも、この減塩が貧血、冷え症、低体温、便秘症の人を増加させているの。塩分を控えたら絶体絶命ですよ。
 人は高塩動物だから、昔の人は1日に30グラムぐらいの塩気を摂っていました。それで、精神的にも体力的にもバリバリ元気だったわけでしょ。みんなが塩分を十分に摂っていたから、世の中が元気だったわけですね。
 肉とか砂糖は貴重品だったし、ほとんど摂っていなかったけれど、塩気のものをよく食べていたから活力があったんですね。
 梅干や沢庵を毎日食べていたし、煮物も“煮しめ”と言って、しょっぱかった。…
 陰陽で言えば、塩気を持っている陽性の魚にも陽性の塩を振って、それを陽性の火で焼いて、そのうえから陽性の醤油をかけて食べていました。塩気をどんどん足して食べていたんですね。陽陽陽だから、みんな明るくて元気だったんですよ。
 わかるでしょう? 減塩というのは、貧血や冷え症になることを促進しているようなものですよ。そんな人が増えると、社会から活気が失われてしまうんです。
 味噌でも醤油でも、今は減塩ばやりだけど、それではむしろ体は虚弱になって、弱体化されていくだけですよ。
 味噌や醤油、自然塩、梅干などには、体温を上げ、新陳代謝を活発にして、血をきれいにする働きがあります。また、これらには造血作用があって、心臓に血液を送る静脈の流れを活発にするから、人間に活力を与えるわけですね。
 だから、減塩なんてする必要はない。自分でおいしいという適塩にして食べることなんですよ。

(106,107頁)五つの味をかしこく体に取り入れる
 食物には「酸っぱい、苦い、甘い、辛い、塩辛い」の5つの味があると言ったけれど、それらはそれぞれ次のような役割があるんですよ。…
 …塩辛さというのは腎臓を元気にします。でも、塩気は取りすぎても足らなくてもだめですよ。「塩梅(あんばい)」という言葉があるように、その人に合う「適塩」があります。陽性の子どもが塩気を取りすぎると、反動で甘い物や果物を要求してきますからね。…

(114)「塩梅はどう?」の本当の意味
 …昔は…体の悪い人には「あんた、なんの病気? どこが悪いの?」と聞かずに、「あんた、塩梅はどう?」って聞きました。
 この「塩梅はどう?」というのは、あなたの体に塩気は足りているかっていう意味なんです。それから、料理の塩の味加減を見るときにも「塩梅を見て」って言った。病気も料理も、塩梅はどう?って聞いていたわけです。
 面白いでしょう。昔の言葉には「塩」があちこちに含まれているわけ。それだけ陽性の塩が大事だということを、みんな生活の知恵として知っていたということなのでしょうね。…

(122,123頁)味噌汁は体の掃除をしてくれる特効薬
 昔の人はスイカや夏蜜柑(みかん)やイチゴといった夏の陰性の果物を食べるとき、塩を振って食べました。トマトもそう。これらにはカリウムが豊富に含まれていて体を冷やすから、バランスを取るためにナトリウムの塩をつけて食べたのです。
 ところが今は砂糖を振ったり蜂蜜をつけて食べるでしょう。ただでさえ陰性のものに、さらに陰性を加えているんです。夏にお腹を壊したりバテたりして調子を崩すのは、そういう道理に適わないことをしているからですよ。
 とくに食べ物というのは、それがすぐに体に表れるからわかりやすい。
 ところで、体調が悪いときにはお味噌汁を飲むといい。お味噌汁というのは体の特効薬だって私は言っているのだけど、すごいすぐれものなの。…
 味噌は血管の掃除もしてくれるし、腸の掃除もしてくれる。…味噌(は)…せめて2年以上は寝かせて熟成したものを選んでください。
 大豆は極陰で、陽性の体を温めるナトリウム元素1に対して陰性の体を冷やすカリウム元素が560も含まれているから、体によくありません。ところが、塩と火と時間によって原子転換をすると、「食薬」という大変な薬に変身するんです。だから、今日は味噌汁が飲めなかったという日は、味付けに味噌を使った料理を作りなさいって、ばあちゃんは教えています。味噌は健康維持の特効薬になるんですよ。

(118,119頁)なぜ病人にはお粥と梅干を食べさせるのか
 昔は病気をすると、行平(ゆきひら)という土鍋でコトコトと時間をかけてお粥を炊いて、それに梅干を添えて食べさせたものです。むしろ、それだけしか食べさせなかった。それで病気が治ったんです。
 今は違うでしょ。病気になると、栄養を摂らなきゃだめだといって、あれ食えこれ食え、これを飲んだら元気になるって、まわりがうるさいので困る。
 病人には、お粥と梅干で十分なんですよ。それはなぜかと言うと、梅干に含まれるクエン酸がものすごくいい働きをするからです。
 クエン酸というのは、…食べ物の毒とか血の毒とか、体に溜まったそういう毒素を動かして排泄する力を持っています。
 ここでも塩が働くんです。だから、お粥にも塩をちょいと入れて炊くといい。
 私たち日本人のご先祖様は、神棚にお塩と水とお米を供えて…たんです。これは、これだけのものがあったら生きていけますっていう教えなんですよ。…
 私たちのご先祖様は、世の中に大変な出来事が起こって立ち行かなくなったときも、これで生きていける、病気をしたときもこれで生きていけるんだよ、と教えてくれているんです。それがお供え物というしきたりになって、今にまで続いてきているわけでしょう。
 これはすごいことだと思うよ。私たちの先人たちは頭がよかったと思います。
 そういう伝統や習慣から私たちも気づいて、今の間違った食生活を変えるきっかけにしたいものですね。

 最後に、同著の第3章の締めくくりの2節の全文を紹介しましょう。
(126,127頁)陰陽を理解すれば、安全で健康な食べ方がわかってくる
 陰陽を知る一番大事なことは、何をどのように食べればいいかがわかってくるということです。陰性のものは体を冷やすからといって絶対に食べてはいけないというわけではなくて、要するに、かしこく工夫して食べる。これが大切なんですね。
 たとえば、大豆からできているお豆腐は極陰だけれど、陽性の火でゆっくり時間をかけて温めて湯豆腐にして、薬味をいっぱい散らして陽性の醤油をかけて食べれば、陰陽が調和するでしょう。そういうふうに食べ方を工夫することが大事なんです。それは私たちが健康に生きていくための知恵になるんですね。
 スパゲッティを食べるときも、ケチャップとかトマトはものすごく陰性だから、ナポリタンとかトマトスパゲッティというのはあまり食べないほうがいいのですが、ちょっとにんにくとか唐辛子とか野草の薬味を利かせて塩味のぺぺロンチーノ風にすれば、主食にもなって陰陽のバランスがとれてきます。また、トマトはサラダで食べたいという人もいるでしょう。そういうときは、塩をつけて少し陽性にして食べればいい。あるいは、火を入れてスープにして食べるようにすれば、これも陽性になるからいいでしょう。
 それから夏になれば旬の茄子(なす)を食べたくなるでしょう。そういうときは保温と殺菌作用を持つ生姜(しょうが)をいっぱいすりおろして、油でジュウジュウ焼いたところに醤油と生姜を少し多めに入れて炒めて、すぐに火を止める。そうすると、陰陽の調和がとれておいしくなります。陰性のものも、調理方法や食材を工夫して陽性になるようにして食べていくことが大切なんです。そのために陰陽を勉強しましょう、と言うわけです。
 料理とは、陰性の食物(野菜)を火や調味料(味噌・塩・醤油)を使って陽性にする仕事です。陰と陽は体のねじ回しで、陰性で緩んで陽性で締まる。これは宇宙の大真理です。真理を知って少しでも安全な状態にしてから食べてもらいたい。
 こういう考え方が理解できると、砂糖を入れると陰性になるけど、熱や塩や醤油で濃いめにすればいいのだとわかるでしょう。

(128,129頁)食べ物でどんな病気でも治る 桜沢如一の確信
 石塚左玄の食養理論を受け継いだのが、マクロビオティックを提唱された桜沢如一です。もともと病弱だった桜沢は、石塚左玄の食養生理論を実践して全身の改善に成功します。それがきっかけとなって、食べ物でどんな病気でも治るという確信を抱いて、左玄の理論に易の陰陽理論を取り入れ、発展させたのです。それが玄米を主食とし、野菜や漬物を副食として、陰陽のバランスのとれた食事をしていくマクロビオティックという考え方です。
 桜沢は左玄から受け継いだ日本古来の伝統食に関する考え方を世界各地で講義して、食養の普及運動を展開していきました。フランスでもイタリアでもアメリカでも、桜沢の行くところにはたくさんの人が集まって、熱心に講義を聞いていたそうです。
 フランスでの講義のとき、「あなたはどうしてこのような食養の研究を始めたのですか?」と聞かれた桜沢は、「僕は自分で研究をしておりません。我々の先祖が残した尊い伝統の知恵を発見して、紹介しているだけです」と堂々と答えています。
 桜沢は、日本に将来、食の乱れた時代がやってくることを予感し、それを見越して、食養の普及を世界に発信されたのではないかと思うんですよ。
 ばあちゃんも、食養というありがたい道に巡り合い、運が良かったと思っています。
 私たちの祖先は後世の私たちに、伝統の食文化という遺産を残しているんです。それを活かさない手はないと思うんですね。
 まず日本国民一人ひとりが食物の重要性を知って、間違った食生活を悔い改めていかなければいけないでしょう。毎日の食事に、子孫の運命と日本の運命がかかっていることを肝に銘じてもらいたいと思いますね。

 以上、若杉友子著「体温を上げる料理教室」からの抜粋ばかりになってしまいましたが、「塩」の重要性がご理解いただけたかと思います。
 なお、本書は、古来からの日本人の生活の知恵に基づく食養生が分かり易く書かれており、必読の書です。(致知出版社:本体1400円+税)

(2014.3.28 追記)
 本稿は、「食塩摂取のすすめ」となってしまいましたが、安易に食塩を多く取り続けると、やはり何らかの弊害が出てきます。そこで、少ない食塩摂取で十分にやっていける方法を見つけましたので、それを紹介します。このブログの過去記事です。
 2014.1.20 
減塩ではなく、1か月に1回「塩断ち」して「塩持ちの良い体質」に改善

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夏、水の飲みすぎに要注意

2012年07月23日 | 漢方栄養学

昔の人の生活の知恵「水はチビチビ」そして「塩分補給」

 毎日水を2リットル飲もうという「水飲み健康法」があります。
 体の毒素を排出したり、血液ドロドロを解消するために、また、真夏には熱中症で倒れないよう、十分な水分補給が必要なこともありましょう。
 しかし、今の日本人は「体の中が洪水」になってやしませんか。体が水膨れして、むくみがでたり、腹を押さえるとプチャプチャとかギューギューとか音がする。
 これは、余分な水がはけていないからで、水の入れ過ぎと排出能力の低下が相俟って起きます。よって、まずは入りを絞る必要があります。
 これについては、昔の人の「生活の知恵」に学ぶべき点が多いです。
 野草料理のベテランで、75歳になられる若杉友子さんが「食養」を実践し、研究する中で、次のように言っておられます。

 水はたくさん飲むほうがいいと言われているでしょ。でも、飲み過ぎてはいけませんよ。ばあちゃんなんか絶対にがぶ飲みしない。喉がちょっと湿るぐらいで十分なのよ。昔の子どもたちは体育のとき、先生から「水を飲むなよ」って言われたものですよ。今は逆で「水分補給を忘れるな」でしょ。なぜこんなに変わってしまったかと言うと、それは食生活の変化と関係があるんよ。今の子どもたちは肉食してるでしょ。元々陽性な子どもが陽性の肉を食べるから、ものすごく体が焼けるわけ。だから子どもたちも本能的に水が欲しくなるんです。昔の子どもは食べ物に陽性と陰性のバランスが取れていたから、必要以上の水は取っていなかったんです。
 水を飲み過ぎるとどうなるかと言うと、血が薄くなってバテる。体力がなくなるの。血を薄めたら、体が陰性になってしまうからね。私たちは血で生きているのよ。頭のてっぺんから足の爪先まで、どこを切っても血が出るじゃない。だから、血が薄くなると体調がおかしくなるし、病気にもなるわけね。
 大怪我して血が噴出したときもそうよ。そんなときは絶対に水を飲んじゃダメ。血が薄くなって血が止まらないし、治りがうんと悪くなるのよ。

 このように若杉ばあさんはおっしゃっています。
 子どもは陽性の体ですからまだいいとしても、大人になったら段々陰性体質(冷え症)になってきますから、水分の取り過ぎは考えものです。
 炎天下のアラビアでは、水が貴重品ということもあって、暑いときには熱い湯をチビチビ飲んでいます。これが正しい水分補強の仕方です。
 こうして入りを絞り込めば、水を排出する腎臓の負担も軽減され、腎臓が本来の機能を発揮してくれるようになることでしょう。
 その腎臓を元気にするのが塩です。若杉さんの話を続けましょう。

 今は減塩をすごくすすめているでしょ。でも、これが貧血、冷え症、便秘症を増加させているの。塩分を控えたら絶体絶命。
 昔の人はたっぷり塩を取っていました。スイカや夏みかんやイチゴといった夏の陰性の果物を食べるときには塩を振って食べました。トマトもそう。カリウムが豊富に含まれるものは体を冷やすから、バランスを取るためにナトリウムの塩をつけて食べたのです。
 だから、元気で活力があったの。塩気は陽性だから、皆、明るく元気だったの。
 味噌や醤油、自然塩、梅干は、体温を上げて新陳代謝を活発にし、血を作り、血をきれいにしてくれますからね。自分がおいしいという適塩にして食べてね。

 これが本当の話です。間違っていますよ、減塩は。

(参考文献:若杉友子著「体温を上げる料理教室」(致知出版)、同著「野草の力をいただいて」(五月書房)、寺田直剛著「陰陽生活のすすめ」(国書刊行会)ほか)

 

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“骨へんに豊”と書いて何と読みますか?その骨も硬骨と骨髄の両方が豊かでなければなりません。 

2012年03月13日 | 漢方栄養学

“骨へんに豊”と書いて何と読みますか?その骨も硬骨と骨髄の両方が豊かでなければなりません。
(最新更新 2018.5.15)

は、「(からだ)」の旧字です。
 この漢字ができた頃の古代中国の人たちは、老いも若きも皆が力仕事に精を出して、骨太(ほねぶと)で質実剛健な姿かたちをしていたことでしょう。
 よって、「“体”は、“豊かな骨”で成り立っている」とされたものと思われます。
 そして、骨細(ほねぼそ)であっては、“体(たい)をなさない”とされたのではないでしょうか。

 体を動かさない生活習慣が定着すると、骨は確実に細くなります。
 寝たきりの病人や地球の重力から開放された宇宙飛行士は、骨がだんだん細くなることは、皆さんご存知のとおりです。
 そして、健康の第1は、「毎日歩くに限る。1日1万歩を目標に。」と言われ、加えて日本では、カルシウムを十分摂って、お日様に当たってビタミンDを体内で作り、「硬骨を育てる」ことが目標にされています。
 たしかに、これは、骨粗鬆症(こつそしょうしょう)にならない、つまり、骨折防止に、大変重要なことですから、大いにお勧めの健康法です。
 でも、栄養補給の面からは、カルシウム(※1)とビタミンD(※2)は、さして重要ではなく、丈夫な骨作りに必要なのは、良質のコラーゲン(タンパク質)です。
(※1 カルシウムは摂取不足でないことは、このブログの過去記事「カルシウム不足の米国人、充足の日本人」で詳述していますので、そちらをご覧ください。)
(※2 ビタミンDはUVB(中波長紫外線)に当たれば体内合成できますし、魚肉にけっこう含まれており、特にシラス干し、イワシの丸干しに多く含まれ、こうしたものを食べていれば不足することはありません。でも、冬季は紫外線が弱く、えてしてビタミンD不足に陥りやすいですからご注意ください。本文中の「ビタミンは、さして重要ではなく…」は言い過ぎでした。ここに訂正してお詫びします。→参照:2018.1.23の記事「冬はお日様に当たって健康づくり」)

 硬骨は、「鉄筋コンクリート」に例えられるのですが、「鉄筋=コラーゲン」で、「コンクリート=カルシウム」であって、「鉄筋=コラーゲン」を欠くと、「脆い鉄筋コンクリート=脆い硬骨」にしかならないからです。
 骨とて毎日リモデリング(作り替え)が行なわれているのですから、コラーゲンとカルシウムが新たに必要となります。古い骨が壊され、コラーゲンは分解され、カルシウムが遊離します。そして、新しい骨づくりのために、アミノ酸から合成してコラーゲンを作り、これに遊離したカルシウムが張り付くのです。
 ですから、良質のコラーゲンが必須のものとなり、これは基本的に体内合成できますが、加齢とともに生産能力が落ちますから、外から補給してやる必要があるのです。
 そうすると、着実に骨は丈夫になります。これは、骨密度測定などで臨床的に実証されていますし、当店のお客様で長年コラーゲンを飲んでおられる方もそうです。

 ところで、「体」は「いわゆる骨=硬骨」だけで支えられているものではありません。
 パイプ状の硬骨の中に骨髄があって、そこで毎日大量に赤血球や白血球が造られます。全身に十分な酸素を供給するための「酸素をたっぷり抱え込める赤血球づくり」が行なわれるのですし、病原菌やウイルスそして癌細胞をやっつけるための「ピチピチした元気な白血球づくり」が行なわれるのです。
 骨髄における、これらの支えなくしては「体」が成り立ちません。
 骨髄を含めて骨全体が豊かであって、初めて丈夫な「体」となるのです。

 ところが、我々は、その骨髄のことを案外おろそかにしているきらいがあります。
 このことについては、前号の記事「寝る子は育つ、大人も同じ」で、“引力に盾突くとは暴挙なり!一に横になり、二に骨休め”をサブタイトルにして、少し触れましたが、本号で詳しく説明することにします。

 骨に重力負荷を掛け続けると、硬骨のパイプの部分は丈夫に育つのに対して、骨髄は重力負荷でまいってしまい、働きをガクンと落としてしまうのです。
 骨髄が働いてくれるのは、重力負荷から開放されている時間帯なのです。
 よって、体を横にし、十分な睡眠を取ることが必要です。
 その辺りのことを、西原克成氏がその著「健康は『呼吸』できまる」(実業之日本社)及び「2週間で美人になる本」(マキノ出版)で書いておられますので、その抜粋を紹介することにしましょう。

<健康は『呼吸』できまる>(P.78)
▼人間が骨休めを必要とする理由
 骨が力学的な刺激を受けると、それに対応してリモデリングの機構が自動的に作動します。骨の中心は空洞になっていて血液で満たされており、ここで造血が行われています。ところが、二足で立って活動している人類は、ほかの四つ足の哺乳類と比べて体を支えるエネルギーを使うために、歩いたり仕事をしているときには骨髄での造血が止まってしまいます。つまり造血にまで手が回らないわけです。
 造血は骨休めをしているときに骨髄でスイッチが入るようになっているのです。寝不足では造血がうまくいかなくなります。造血とは血液細胞のリモデリングのことです。古くなった血球が肝臓でどんどん消化される一方で、それを補うのが骨髄の造血です。…

<2週間で美人になる本>(P.197~199)
■じゅうぶんな休息が必要不可欠
…健康を維持するために必要な睡眠時間として、「大人は8時間、子供は12時間」と提言しています。また、体を酷使するような過激な運動ももちろん禁止です。なぜなら、直立二足歩行で生活している私たち人間には、重力の負担が強くかかるため、じゅうぶんな骨休めをしなければ健康を維持できないからです。
 免疫の要となる白血球の製造工場…(中略)…が造血作業にとりかかるのは、私たちが眠っている夜間です。人間が寝ている間受ける重力は、たった1Gにすぎませんが、立っているときは位置のエネルギーが作用して2G近い重力を受けることになります。昼間、立った姿勢でいるときは、関節頭に絶えず重力の負担がかかるため、関節頭は体重を支えるのがやっとで、造血作業まで手が回りません。体を休める夜間、重力から開放されてはじめて白血球作りが進むのです。
 したがって、過激な運動を続けたり寝不足が習慣になると、関節頭に負担がかかり、白血球をじゅうぶんに作ることができなくなります。幼稚園児や小学校低学年の子どもたちは、運動会や遠足の翌日にしばしば熱を出します。これは「疲れが出た」という単純な問題ではなく、骨に負担がかかりすぎ、免疫システムにダメージが与えられた現われなのです。これは大人でも同じことがいえます。夜更かしをして遊び歩いたり、残業で夜中まで仕事をしていたら、骨はいつまでたっても休めません。現代人がガンにかかりやすくなったり、結核などの感染症が重症化したりするのも、睡眠不足でじゅうぶんに骨休めができていないため、免疫の要である白血球を作る能力が落ちているからなのです。
…(中略)…寝不足が続くとリモデリングが正常に進まず、できそこないの白血球や赤血球が作られ、血液中に出回ることになります。つまり、睡眠不足はすでに半病人と同じ状態になっているといえるのです。不良品の白血球は細胞の消化能力もなく、古くなった細胞やガン細胞、ばい菌を消化することができません。
 一日のスケジュールを組み立てるとき、まず睡眠時間を確保して、残った時間に仕事や趣味を割り当てる。そのくらいの気持ちで、ぐっすり眠る工夫をしてみましょう。あお向けになって…(中略)…ぐっすり眠っている間に、ピチピチした元気な白血球や新しい細胞が作られます。…

 いかがでしたか。
 このように、「骨を豊かにする」つまり「体」づくりには、両面が必要になるのです。
 昼間は、骨に適度な力学的刺激を与えて骨のパイプ部分が頑丈になるようにして
やり、夜間は、骨に力学的刺激を与えないようにして骨の空洞部分の骨髄が活発に活動できるようにしてあげねばいけないのです。

 さて、若い方は睡眠をたっぷり取れば、骨髄の働きを正常化させられますが、加齢が進んで後期高齢者ともなると、何か手助けが必要となります。
 そこで、骨髄の滋養強壮になるもの(赤血球や白血球をピチピチした元気なものにしてくれるもの)はないのか、ということになるのですが、それにぴったりのものがあります。
 「腎」に効く「鹿茸(ろくじょう)」です。(なお、中医学において、「腎」とは、腎臓そのものを指すのではなく、「腎は、生命活動の源になる精氣を貯蔵したり、肺によって取り入れられた氣を納めています。発育や生殖の要で、水分の排泄や再吸収の働きの中心でもあります。」と解説されています。)
 「腎臓」と「骨髄」は無関係に思えますが、中医学(漢方)では、「腎臓」と「骨・骨髄」は密接な臓器・器官とされていまして、「腎臓」に効けば「骨・骨髄」にも効くのです。
 よって、鹿茸で、骨が丈夫になるとともに若々しい血球が供給されることになります。
 丈夫な「体」づくりは、「骨・骨髄」づくりなのですから、鹿茸はお勧めの生薬です。
 なお、鹿茸は、上薬に分類され、毎日飲み続けても副作用の心配がないものです。

 ところで、「腎臓」と「骨・骨髄」の関係ですが、生物発生学の見地からすると、脊椎動物の祖先をたぐっていくと、最初は腎臓で造血が行われ、その後、器官の分化が進む中で硬骨ができ、造血の仕事が骨髄へ移されていったようですから、互いに濃い親戚関係にある臓器・器官と言えるのです。
 我々は、腎臓と言えば、西洋医学の知識から、老廃物を除去する器官と考えてしまいますが、ヒトの腎臓にあっても、見方を変えてみれば、「有用物・不要物が混ざり合った血液から有用物を拾い出したり、再吸収したりして、生命活動の源になる新しい血液を生み出している」のですから、造血の重要な一分野を担っているとも言えるのです。そして、進化のその後の過程で、単に、血球づくりを「分化させた器官(骨・骨髄)に移しただけ」と捉えた方が良いのではないでしょうか。

 “春眠暁を覚えず”の季節の到来。
 たっぷり睡眠を取り、“骨休め”なさってください。若返ります!

(編集後記)
 それにしても、古代中国人は凄いですね。
 自然科学の知見がほとんどなかった時代にあっても、人の「からだ」に「體」という漢字を当てたり、「腎臓」と「骨・骨髄」は密接な臓器・器官と考えたりしていたのですから。
 中医学(漢方)の勉強を少しずつ始めたところ、生物学や医学の本質を衝くものがどんどん出てきて、ますますその凄さに驚くばかりです。
 ところで、原稿をここまで書いてから、記述内容について、一抹の不安がありましたので、中医学の師匠に添削を受けるとともに、更なるご教示を受けました。
 以下、それを補足させていただきます。

 中医学では、「腎」が一番よく働く時間帯は、「21時から翌日1時」にかけてとされていて、この時間帯に血液もクリーンにされますから、その時刻が迫ったら、"とっとと寝るが一番”です。
 現代医学でも、「21時から翌日1時」(若干のズレはありますが)の間に、成長ホルモンが一番多く分泌されると言われており、中医学における「腎」の働き(その一つが「発育の要」)の時間帯と一致します。
 この時間帯は、中医学からも現代医学からも、「骨」が作られる重要な時間帯ですから、大事にしたいものです。
 ところが、多くの受験生は、この時に一生懸命勉強をしています。しかし、この時間帯は、多くの血液が腎関係の臓器・器官に集中していますから、脳には十分な血液が巡らず、集中力・思考力が低下し、ちっとも身になりません。
 勉強するなら、午前2時、3時以降が一番です。これは、「肝」が働き出す時間帯で、新鮮な血液が十二分に脳へ供給されますので、能率が2、3倍違ってきます。
 元首相の鳩山家は代々、朝4時から勉強したそうです。そのお陰で、兄弟とも東大卒です。ただ、あまり良すぎると宇宙人になっちゃいますがね。

と、いうことです。
 これからも、折に触れて、中医学の真髄を紹介していきたいと思っています。

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