腸内悪玉菌は悪か?善か?
人と腸内細菌の緊密な共生関係から健康と天寿が決まります。
先月号で「人と腸内細菌、どちらが主人? 」と疑問を投げかけましたが、さて、どちらでしょうか。
人は、たったの1個の生命体に過ぎません。1個の卵細胞が単に多細胞化して60兆個(※)になっているだけです。
(※ 2015.11.20追記:最近の研究では37兆個で、こちらのほうが信憑性が高いです。→ 健康は赤血球で決まる )
これに対して、腸内細菌は、約500種類、百兆個の生命体の連合からなり、数の上で圧倒的な差があります。腸内細菌の総重量は約1.5キロもあり、人と堂々と渡り合えます。
便通 腸内細菌により完全にコントロールされています。
<善玉菌が圧倒的に優勢>
便は黄褐色で大量に出ます。大腸で停滞する時間も短く、半分程度しか吸収されず、大食しても太りません。
<悪玉菌が圧倒的に優勢>
便は黒褐色で少量しか出ず、便秘がちで滞留時間は長くなり、食べたものはあらかた吸収されて、少食でも太ります。
今日の飽食時代には、善玉菌優勢が喜ばれますが、飢餓のときには栄養失調になり困ります。悪玉菌よ、頑張れです。
<善玉・悪玉適正共存>
人が食べたもの(=腸内細菌の餌)の量が多ければ善玉菌がアクセルを踏み、少なければ悪玉菌がブレーキを掛けて、排便量が調節されましょう。
腸内細菌は、自分たちの食糧の安定確保のため、ごく自然にこれを行なっているだけのことと思われます。といいますのは、小生は一日断食を時々しますが、どんな整腸剤でもってしても、断食翌日は排便が全くありません。
「昨日は何もくれんかったから、今日は絶対に便を出さんぞ。」と、腸内細菌が怒っているのかもしれませんね。
免疫 無菌室で飼育した、腸内細菌を持たない無菌ネズミは、少しでも病原菌が腸に入ると、病原菌が大増殖して死んでしまいます。
腸内細菌は、自分を守るための免疫物質を作りますし、悪玉菌が常時出している毒も有効に働いて病原菌に対抗しているのかもしれません。
でも、病原菌を壊滅させることはできず、なかには病原菌が腸壁を潜り抜けて人の体内へと侵入を図ろうとします。
<人に免疫力を伝授>
腸内細菌が腸壁にいる白血球(免疫細胞)を絶えず刺激して、人に免疫力を付けさせているのが実情です。
「俺たちは異物の生き物だぞ。俺たちが訓練してやるから、自分のことは自分で守れ!」と、毎日人は腸内細菌にしごかれて、病原菌を撃退する力を白血球に付けさせてもらっているのです。
共生 こうして腸内細菌は、安定した餌を得つつ「住みか」の人を延命させ、自分たちの繁栄を築いています。
利は、人よりも腸内細菌に多い感じがします。
人は、腸内細菌に従う僕(しもべ)の存在でしょうね。
離別 人は歳を取ると運動能力が落ちると同時に少食になり腸の蠕動運動も弱くなります。よって、便の滞留時間も自ずと長くなります。
その結果、悪玉菌が優勢になり、便秘しやすくなります。加えて、悪玉菌が出す毒が体内に入り込んで、老化がどんどん加速します。
無菌室で、腸内細菌を持たない無菌動物を飼育すると、寿命は5割も伸びます。悪玉菌は寿命を縮め、やはり悪です。
宿主が死んでは、腸内細菌にとっても住みかを失うことになり、都合が悪いと思うのですが、悪玉菌は「不老長寿ということは有り得ん。何十年も住んで、ぼろ家になってしまったわ。そろそろ見切りを付けるか。」と考えるのでしょうね。
悪玉菌は、さらに毒を出し続け、人の足腰の関節を悪くします。原始時代には、いつも猛獣に狙われていた人であったことでしょう。足腰が悪くなった老いぼれは逃げ遅れ、猛獣の犠牲となります。猛獣は内臓を真っ先に食べ尽くし、その際に、腸内細菌は猛獣の口から侵入し、新たな住みかに安住することができようというものです。
健康 悪玉菌に見切られるのは嬉しくありません。「足腰が丈夫であれば健康だ」と言いますが、この言葉は、悪玉菌が人に言わせているのでしょうね。
腸内環境を改善しましょう。
もう暫くは善玉菌に頑張っていただき、寿命を延ばしたいと願う小生です。
(本稿は、当店「生涯現役新聞」2006年5月号に一部加筆し再掲したものです。)