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粗製塩と精製塩そして塩事業センターの“精製塩”に含まれる塩基性炭酸マグネシウム

2017年02月16日 | 正しい栄養学

粗製塩と精製塩そして塩事業センターの“精製塩”に含まれる塩基性炭酸マグネシウム

 2012年8月14日に投稿した 粗製塩が良いのか?「にがり」の功罪を考える。精製塩で良いし、にがりを意識的に摂るのは問題。に昨日付けで表記を内容とする長文の補記をつけました。
 投稿を終えて、改めて補記だけ読んでみますと、これはこれだけでも読者にそれなりに情報提供ができると思え、補記だけを別途投稿することとしました。
 皆様の参考になれば幸いです。

2017.2.15補記)
 最近、食塩について気になる表記をよく見かけますので、それを整理してみましょう。
 
まず、「食塩」の定義ですが、化学においても塩化ナトリウム(NaCl)を食塩と言うことがあり、純度100%の塩化ナトリウムを指すことがあります。
 そして、その昔は「日本専売公社」が独占的に食用塩を製造販売しており、今は「塩事業センター」となりましたが、圧倒的なシェアーを占め、その商品名が“食塩”ですから、これを「食塩」と呼んだり、その純度が99.6%(乾物基準)と高いですから、これを「精製塩」と呼んだりして、他の製造法で作られたものと区別することがあります。
 本稿でも、「粗製塩」と対比させるために、“食塩”を「精製塩」と表記しました。
 ところで、同センターが“食塩”とは違う製法で塩化ナトリウム純度をより高くしたものを作り、これに固結防止剤を添加したものを商品名“精製塩”としていますから、“食塩”と混同する例が多々見られます。申し訳ありませんが、本稿もそのそしりを免れません。
 なお、塩化ナトリウム含有率については、水分を除外した乾物基準で示される場合と、水分を含めた上での表記が混在しており、どちらかと言うと乾物基準で示される場合は少なく、ために、「にがり」の含有率が分かりにくい場合が多いですし、場合によっては「にがり」が多いように見せかけるために水分も含めているケースも見られます。
 例えば、次のような記述です。
 日本では、かつて塩は塩田を用いて作られ、その頃の塩は塩化ナトリウムの含有量が80%を超えるものはわずがしかありませんでした。
 この記述によると、残りの20%が「にがり」と思ってしまいますが、本文(※)中で説明しましたように、うち10数%は水分なのです。
 (※本文:粗製塩の純度(塩化ナトリウム)となると、85%程度に落ちることもあるようです。これは、塩以外のものとして、「にがり」約4%のほかに、付着した海水なり呼び込んだ水(湿り気)が約10%程度含まれることによるものです。)
 
 「食塩」とはなんぞや、ということになると、人の口に供するものですから、食用塩公正取引協議会という業界団体があるように本来なら「食用塩」と言うべきかもしれません。
 しかし、同協議会では公正競争規約
同左ポイント解説で「食用塩」を定義していますが、販売表示名は「塩」または「食塩」としているものの、低ナトリウム塩(塩化カリウム:KClを高配合)を含み、逆に、他の食品が混合された塩(ごましお,抹茶塩,塩こしょうなど)は規約対象の食用塩から除外しているなど、この規程は別目的で定められた特殊なものであって、これを採用することは難しいでしょう。
 他の定義としてはコーデックス規格(国際食品規格)というものがあり、食用塩をNaCl純度(乾物基準、添加物除く)97%以上と定めていますから、これを「食塩」と呼ぶのが一番ふさわしいでしょうが、日本では一般人の認知度が低いようです。
 「NaCl純度(乾物基準、添加物除く)97%以上」ということは、「にがり」が3%未満を意味しています。これでほとんどの食用塩がクリアすることになりましょうが、フランスでは天日塩生産者組合の要請により、NaCl純度(乾物基準、添加物除く)94%以上とされているようです。つまり、フランスでは「にがり」が6%未満なら食用塩としてよいというものです。日本ではどうかというと、
その実態は小生にも分かりかねます。
 なお、コーデックス規格では、含有有害重金属の濃度規制や固結防止剤などの添加規準を定めています。

 近年になって、塩の専売制度が廃止され、民間企業も塩の製造販売ができるようになりました。そこで、登場したのが、「自然塩」「自然海塩」「天然塩」といった名称です。
 これらの名称は誤解を招きやすいことなどから、2008年4月に食用塩公正取引協議会が公正競争規約を策定し、使ってはならないこととしました。そして、海塩、岩塩、湖塩、天日塩、焼塩、藻塩、フレーク塩という名称について、一定の要件を満たした場合に表示できるとしたものです。
 本稿においても、「自然塩」「天然塩」という名称を使ってしまい、
申し訳ありませんでした。この補記を契機に「粗製塩」という言葉に訂正することにしました。

 さて、食塩に関して大きな間違いに出くわすこともたびたびです。
 それは、塩事業センターが製造している商品名“精製塩”やそれと同質の“食卓塩”に添加されている固結防止剤「塩基性炭酸マグネシウム(mMgCO3・Mg(OH)2・nH2O)」についてです。以下、間違いを2つ取り上げます。
*これを摂取すると乳酸菌が正常に活動できなくなる可能性があります。
 これには驚きました。難溶性の塩基性炭酸マグネシウムですが、摂取すれば胃酸によって溶け、Mgはイオン化され、CO3はCO2ガスになります。十二指腸に入ってアルカリ環境にさらされても、元の姿に戻ることはないのです。
*これの存在で乳酸菌がうまく働くことが出来ず、美味しい漬物ができない。
 これについては、乳酸菌発酵で塩基性炭酸マグネシウムが使用された例が今までになく、理論的推測からすると次のようになります。
 漬物は乳酸菌発酵で酸性側に傾いて、より発酵するだろうから、そのとき塩基性炭酸マグネシウムが存在するとアルカリ側に引っ張るから酸性度が弱まり、発酵にブレーキがかかると考えられる。
 しかし、これは実験してみないことには分かりません。
 現実にそれをやってみて、なんと逆の結果が得られたことによって特許をとった例があります。それを紹介しましょう。
 (2004.2.26 わかもと製薬 公開特許広報 抜粋)
 乳酸菌の培養において…高菌数を得るため…添加物として…炭酸マグネシウム…を含む培養液中で培養することで、高菌数の乳酸菌を得る方法。
 炭酸マグネシウムは、乳酸菌の液体培養地成分として使用した例が全く報告されていない。この理由は、炭酸マグネシウムを液体培養地に少しでも添加すると、培地pHが乳酸菌の通常増殖培地pH7~6よりも容易にアルカリ化し…菌の増殖阻害が見込まれる為と考えられる。
 本発明は、乳酸菌数の増大化液体培養方法を提供する目的で古くから用いられてきたペプトン、グルコース、酵母エキスなどの培地成分…に加え、無機塩の最適化を図る目的で炭酸カルシウムに着目し、鋭意検討してきた。そして、炭酸カルシウムに上回る効果を発揮する物質として炭酸マグネシウムを見出し、本発明を完成するに至った。
 炭酸マグネシウム…を単独で添加する場合は1重量%以上…で効果が出る。炭酸マグネシウムの本質は、含水塩基性炭酸マグネシウムまたは含水正炭酸マグネシウムであり、…その分子式は(
MgCO3)4・Mg(OH)2・5H2Oである。
 乳酸菌の液体培養系において培地に分泌された乳酸により培地pHが低下するなどの理由で乳酸菌の成育が抑制され易いことに着目し、…乳酸産生を抑制する要因(引用者注:静止状態ではなく震動する)も加えて培養する…。この方法を創案することによって、現実に高菌数化出来た…(引用ここまで)
 この特許では、塩基性炭酸マグネシウムを培地に対し1重量%以上加えているのですが、塩事業センターの“精製塩”には塩基性炭酸マグネシウムが0.28%しか含まれておらず、漬物全体では無視できるほどの量となって、漬物の乳酸発酵にとって毒にも薬にもならないということができましょう。

 本文、補記を含めて、随分と長文になりましたが、最後までお付き合いいただき、有り難うございました。
 たかが塩、されど塩、です。塩は奥深いものがあります。健康面でも注目される塩ですが、粗製塩と精製塩に対する捉え方は両極端なものがあったりし、惑わされます。
 どちらが正しいか、本稿がその判断材料になれば幸いです。


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