薬屋のおやじのボヤキ

公的健康情報にはあまりにも嘘が多くて、それがためにストレスを抱え、ボヤキながら真の健康情報をつかみ取り、発信しています。

夜更かしタイプの睡眠障害について考える

2017年10月26日 | 健康情報一般

夜更かしタイプの睡眠障害について考える

 このことについては基本的なことを当店毎月発行(2017.10.25)の新聞で記事にし、このブログでも、その画像を掲載したところです。
 
 それだけでは寸足らず、となりましょうから、「睡眠相 後退症候群」に関してだけで恐縮ですが、もう少し掘り下げて説明したいと思います。

 睡眠障害にはいろいろなタイプがあります。その中で「概日リズム睡眠障害」というものがあり、これは昼夜のサイクルと体内時計のリズムが合わないために生ずるものです。
 さらにそれは5分類され、その中でよく見受けられるのが「睡眠相 後退症候群」です。

 「睡眠相 後退症候群」の極端な例は、明け方近くまで寝つけず、いったん眠ると熟睡はできるのですが昼過ぎまで目が覚めないという状態になります。そこまでいかなくても、いつも2時間3時間なかなか寝付けず、起きる時間がそれだけ遅くなるというものです。
 
そうした方は、“あんたは夜更かしばかりしているから、そういう癖が付いてしまったんだ”と言われてしまうことが多いのですが、決してそうではありません。

 眠くなって床につく、これを自然に行ってくれる大きな要素として体内時計があります。
 大方の人は、長年にわたる毎日毎日のお日様の巡行サイクルに順応して、体内時計は24時間に概ね合わさっています。でも、なかにはこの時計が狂ってしまっている、例えば、おいそれとは時計が進まず、1日のサイクルが24時間ではなく、25時間、いやもっと長くなるという方がおられますし、朝、お日様の光刺激を受けても体内時計がリセットされないという方もおられます。

 ところで、ヒトの体内時計は1日が何時間か。
 これについては以前は定説があり、25時間というものでした。今でもしぶとくこれは生き残っています。どんなものも、いったん定説にされてしまうと容易には改められませんから、体内時計についても25時間というのがまかり通っています。
 これは、1979年に、ドイツのマックス・プランク研究所という研究機関が、光や音をさえぎった、外部から隔離された環境に被験者を置いて実験したもので、被験者たちの生活リズムが24時間から26時間ぐらいの周期になり、平均すると25時間ぐらいになると発表され、これがもとでヒトの体内時計は25時間というのが定説になったようです。
 1999年に、同様な実験が、今度は米国のハーバード大学で行われ、平均すると24時間11分という結果が出ました。その少し後で、日本の国立精神・神経医療研究センターで測定した日本人のそれは、平均で24時間10分という結果となりました。
 そうしたことから、定説の25時間は24時間に改めねばならないと言われているのですが、小生にはこうした言動が気になります。25時間にしろ24時間にしろ、皆がこの時間だと断定するような言い切り型はおかしいからです。詳細なデータは知りませんが、ハーバード大学の実験の場合、
23時間40分~24時間40分位の間に70%の被験者が入るとのことで、かなりの幅を持っており、個人差がけっこうあると捉えねばならない性質のものだからです。マックス・プランク研究所の場合においても、大きな幅を持っているようで、こうしたものは、通常、正規分布を示しますから、幅を持った表現にすべきものです。

 それはそれとして、ヒトの体内時計が平均して1日約24時間という結果が出たのは、しごく当然なことです。ヒトは、生後、毎日お日様の巡行サイクルに合った、24時間サイクルの生活をするしかなく、大人はそれに概ね順応させられているからでしょう。その結果、日照や騒音から完全に隔離されて、時間が全く分からなくても、ヒトの生理現象のサイクルは順応させられた太陽時に概ね従うことになっていると考えるのが妥当です。

 さて、ここで、平均で1時間なり11分とか10分という太陽時に対する遅れがどの実験でも出ていることは注目に値します。これは、太陽時に順応した24時間の体内時計と、それとは違った太陽時より時刻の刻み方が遅い体内時計が別にあって、それがために、どれだけかの遅れを生じさせているのではないか、とも考えられるからです。

 先に結論を申しますが、ヒトが本来持ち備えている、その体内時計は、約24時間ではなくて、誰しも1日約25時間であったのは間違いない事実です。それを説明しましょう。

 新生児の哺乳時刻を覚醒、睡眠時刻とともに図表にすると、どんな新生児にも必ず現れるひとつの形、学問的には“Spiral Milky Way”、日本語では“らせんに巻いた天の川”が出生15週あたりまで、きれいに現れるのであり、胎児も当然に1日約25時間のサイクルを刻んでいたのは間違いないことです。
 (下の図表は三木成夫著「内臓とこころ」から孫引きしました。クリックしてください。)

 そして、このことについて、三木氏(故人)は1982年頃に「発生学サイドからして、ヒトは潮汐周期(2周期で約24時間50分)を生命記憶していると考えるしかない。生物の進化の歴史において、動物が波打ち際から陸上へ進出するまでの間において長期間経験した1日のサイクル、それが約25時間であって、遠い海辺の時代の生命記憶は、ことあるごとにその頭をもたげようと、うごめき続けているのだろう。」という感想をお持ちになっておられました。
 なお、潮汐周期に合わせた生活パターンは海辺の動物に顕著なものがあり、海釣りをなさる方はご存知のとおり、魚の採餌行動は、潮止まりは休息に入り、その前後で活発になるという傾向を示します。もう一つの採餌行動は朝マズメ、夕マズメという太陽の運行に合わせたパターンで、両者が混合していますが、何を食べているかによって、魚種により両者の出方には差があります。

 ところで、地球の歴史において、動物の陸上への進出となると、最初は両生類であって、それは古生代デボン紀(約4億年前)であり、その後に、爬虫類や哺乳類の祖先系が石炭紀(約3億年前)に生じて、ペルム紀にこれら全てが繁栄し始めます。そして、ペルム紀の終わり(2億5千万年前)に地球史上最大規模とも言われる大量絶滅が起き、時代は恐竜が栄えた中生代へと入っていきます。
 さて、この時代、古生代の1日(太陽時)の長さはというと、地球の自転速度は今より速く、約21.5時間(4億年前)ないし約23.5時間(2億5千万年前)であったことが、サンゴ化石の成長線の読み取りなどから推計されています。また、これは理論計算でも概ね同様です。一方、潮汐周期はというと、ネット検索では見つかりませんでしたので、自分で計算してみたのですが、今日の月の公転周期の遅れぐあいをそのまま引き伸ばしてみると、1億年で約0.2日長くなる計算になりますので、4億年前は約0.8日、2億5千万年前は約0.5日短かかっただけになりますから、今の潮汐周期(2周期で約24時間50分)の誤差範囲に収まってしまいます。

 こうしたことを鑑みると、ヒトの「遠い海辺の時代の生命記憶」は大昔の4億年も前のことであり、一方、その当時の1日(太陽時)は今より2時間ほど短かったのが、だんだん長くなって、これについては逐次“上書き保存”されて、太陽時の生命記憶は24時間に“書き改められた”ものの、潮汐2周期の25時間だけはそのまましっかりと生命記憶されている、ということになるのですが、これは何だかおかしな感じがします。

 その疑問を解消してくれるひとつの仮説があります。直立二足歩行する裸の猿「人類」の誕生を顧みたとき、これはエレイン・モーガン女史が提唱された人類水生進化説が、小生は正しいと思うのですが、初期人類は潮汐の影響をもろに受ける内湾の汽水域で長く暮らしていたものと想像され、これが億年前の生命記憶に重ねられたかどうかは分かりませんが、ついこの前(数百万年前から百万年単位の間)まで、ヒトは海辺の時代をしっかり経験し、それがために、今でも1日が約25時間という潮汐体内時計を根強く持ち続けているのではないのか。よって、どんな新生児にも“らせんに巻いた天の川”が現れるという現象を示すことになったのではないかと、想像されるのです。

 だいぶ脇道へそれてしまいましたが、新生児が持ち備えている潮汐体内時計25時間というものが、半年も経たないうちに24時間太陽時に無理やり矯正され、馴染まされることになるも、なかにはしぶとく潮汐25時間を守り通したり、大きくなってぶり返すことも無きにしも非ずではないでしょうか。体がいったん覚えたものは、環境が変わっても、そう易々とは変えられない保守的な体質の方はいくらでもいらっしゃいます。

 特に、大学生となって単身住まいとなると、朝、家族に無理やり起こされることもなくなり、しつこく25時間の潮汐体内時計を持ち続けている主は、体内時計のリセットが免れますから、ついつい夜寝るのが遅れがちとなり、とうとうお昼近くまで寝ているといった、昼夜が逆転した生活サイクルに陥りがちになります。
 大学時代の小生が正しくそうで、一時は昼夜が完全に逆転するまでになってしまいました。これではいかんと徹夜(“徹昼”)して元に戻すも、すぐまた1日1日、夜のほうへずれよう、ずれようという力が働き、いかんともし難い生活を長く送ったものです。
 この傾向は社会人になってからも続いたのですが、自宅からの出勤でしたから無理やりたたき起こされ、何とか体内時計をリセットして踏ん張ったものの、午前中の仕事は能率が上がらず、ために残業せざるを得なくなりました。でも、残業時は、めっちゃ能率が上がり、瞬く間に仕上げてしまっていました。
 小生の体内時計が、24時間太陽時時計のほうが優位になったのは還暦を迎えた頃からでしょうか。年を食って睡眠時間が減ってきて、朝の太陽光の刺激で目が醒める、という自然のリセットが働き出し、夜遅くなると猛烈に睡魔が襲い、バタンキューで寝てしまうという理想的な睡眠形態にやっと入ることができました。

 ところが、小生より少し年長の知人Nさんは、若かりし頃は2つの体内時計がどっこいどっこいの状態にあったものの、最近では潮汐25時間時計が圧倒的に優位となったのでしょう、深夜になっても目が冴え渡り、なかなか寝付けなくて悩んでおられます。
 何とかならないかと相談を受けるも、ごく一般的なことしかアドバイスできず、いかんともしがたい状態です。古希を過ぎた方に、“毎朝、奥さんに叩き起こしてもらって朝からちゃんと仕事せえ”なんてことも言えず、ほとほと困っているところです。
 まあ、ここは、夜型の生活スタイルを通しつつ、どこかで時々うまいこと折り合いを付ける、例えば時々半徹夜(“半徹昼”)してみたり、早く寝られたときには丑三つ時に起きてみたり、といった方法を試したりして、24時間太陽時時計が優位になる方法を、試行錯誤を重ねて見つけ出すしかないなあ、ということになりましょうか。
 Nさん、こんなところで御免なさい。

コメント (2)

秋の夜長 夜ふかしのすすめ(三宅薬品・生涯現役新聞N0.273)

2017年10月25日 | 当店毎月発刊の三宅薬品:生涯現役新聞

当店(三宅薬品)発行の生涯現役新聞N0.273:2017年10月25日発行
表題:秋の夜長 夜ふかしのすすめ

副題:高齢者の不眠症対策は、まず夜ふかしして遅寝することから

(記事の最後のほうを抜粋)
…第1に「遅寝する」ことです。ここで注意が必要なのは明るい照明の下ではダメです。…「夕焼けになった。もうすぐ夜だ。」と感じる明るくない電球色で脳をごまかしてあげましょう。…本を読むのが一番です。…
 次に、体温変化は深い睡眠と密接な関係にあることが分かっています。若い人は日中は体温が高く、眠くなり始めから体温が急激に下がり、熟睡状態に入っていきます。年を取ると低体温傾向になり、寝る前の体温は急降下しなくなります。そこで一時的に体温を上げてやることです。…ぬるめの風呂に長い時間つかって体の芯まで体温を上げてやれば…睡眠導入になろうというものです。

表面)↓ 画面をクリック。読みにくければもう1回クリック。裏面も同様です。 

 

(裏面)瓦版のボヤキ
    自然農法へのチャレンジ
    「たんじゅん農」に本気で取り組み始めた小生です。


コメント

慢性胃炎:交感神経の高ぶりで胃への血流は2段構えで絞られます

2017年10月12日 | 胃の病

慢性胃炎:交感神経の高ぶりで胃への血流は2段構えで絞られます
(最新更新:2018.6.21)

 このブログで最近一番アクセスが多いのは2015.3.10投稿の「胃薬を飲めば飲むほど胃は悪くなる(付記:お茶も薬のうち)」です。あらためて慢性胃炎の方がいかに多いのかを感じています。コメントやメールでの相談もずっと続いています。その後、相談者の大半の方が心因性のものであると気付き、2016.9.24に少々きついですが、「胃の調子が少々おかしくてもヒーヒー言うんじゃない!」と題して記事にしました。これでもって、慢性胃炎は心因性のものであることがご理解いただけたのではないかと思っています。
 しかし、そうであるからこそ、つまり心因性であるからこそ、その治療はたいそう難しいものとなります。安易に心療内科にかかって向精神薬でも飲まされようものなら、慢性胃炎をかえって悪化させた上に、心まで蝕まれてしまう恐れさえ出かねません。

 じゃあ、どうすればいいか。
 容易にはこれといった解決法が出てきませんが、「敵を知り、己を知れば、百戦危うからず」と申しますように「敵=慢性胃炎」とはどういうものか、「己=生活習慣・精神」はどんな状態にあるのか、まずはこれをしっかり捉えなければいけないでしょう。
 「己=生活習慣・精神」を知るについては、2016.9.24の記事「胃の調子が少々おかしくてもヒーヒー言うんじゃない!」で触れましたから、本稿では「敵=
慢性胃炎」について、別サイドから、どういうものなのかを探ってみることにします。

 慢性胃炎の症状は、説明するまでもないですが、むかつき、吐き気、げっぷ、痛み、膨満感など様々な胃(時には下腹部も)の不快感が、人によっては強弱を伴って全部であったり、一部であったりし、これが恒常的に続いています。
 そして、慢性胃炎は胃下垂(胃の入り口の位置は正常なのですが胃袋が引っ張られて下に伸びている状態をいいます)を伴うことが多いようです。
 胃下垂の原因は、胃での消化が悪くなり、それによって食物が長時間滞留することにより引き起こされるのが一般的で、慢性胃炎と同時並行で起きると言えましょう。

 健全な胃から分泌される胃液は、1日に約2リットルと言われています。
 胃液と一口に言いますが、主成分は次の3つです。
 ・食べ物を殺菌する胃酸(=塩酸)
 ・タンパク質を分解する消化酵素(=ペプシノーゲン:不活性な前駆体であり、これが分泌後に塩酸と反応して活性型のペプシンに変化する)
 ・胃粘膜を守る胃粘液
 胃粘膜は、強い酸性を示す胃酸によって炎症を起こしやすいですし、ペプシンによって胃粘膜も消化されます。よって、急性胃炎で胃袋に穴が空くということも起こります。
 それを防いでくれているのが胃粘液なのですが、食べ物を殺菌・消化するために胃は蠕動運動をしますから、健全な胃であっても不完全にしか防げません。
 よって、胃粘膜はどんどん作り替えられていて、3日もすれば新しい粘膜に入れ替わるようです。この作り替え(新陳代謝)は、夕食を胃で消化しきって胃が空っぽになった後の夜中に盛んに行われ、朝には概ね完了するようですが、十分なエイジング(慣らし、熟成)を必要とし、健全な胃の持ち主にあっても、できれば朝食を抜くと、十分な厚みのある、より健全な胃粘膜をキープすることができます。

 慢性胃炎の方は、胃液のこれら3成分の出が悪くなっていますし、かつ、胃の蠕動運動も弱々しいものになっています。なお、胃粘液の出方が胃酸や消化酵素に比べて相対的に少ないと、胃粘膜を荒らして痛みを強く感ずることになります。

 以上のことからして、慢性胃炎の方は胃全体の働きが極端に悪くなっているのでして、胃が“眠らされている”状態になっています。
 健康な人の場合、たっぷり食事を取ると、動きたくなくなり、眠くなります。これは血液が消化系(特に胃:蠕動運動のため)へ多く送り出され、手足の筋肉や脳への血流がすぼめられますから、特に、脳細胞が酸素不足になって、眠くなるのです。
 ここらあたりの調節をするのが自律神経です。神経は、大きく2分され、随意的な運動を支配する体性神経と不随意運動(意志に基づかない自動的に行われる運動)を担う自律神経があります。そして、自律神経は、交感神経と副交感神経という相反する働きを指示する神経系に分かれ、その絶妙なるバランスでもって正常な生命活動を続けることができるのです。

 さて、ここで全身に張り巡らされている血管と神経の働きを、その生い立ちから眺めてみることにしましょう。
 この地球上に動物が発生してから血管と神経は順次できてきました。動物の体は、その性質によって大きく2分されます。一つは内臓系で、腸管(吸収)・腎管(排出)・血管(循環)の3つで成り立っています。もう一つは体壁系で、外皮(感覚)・筋肉(運動)・神経(伝達)の3つで成り立っています。原始的な動物の場合、そうそう動き回らなくても餌は容易に得られましたから、最初に発達したのは内臓系で、体壁系の発達はどれほどのものもなく、主従関係は、内臓系が主で、体壁系が従でした。これはしごく当然なことで、生きていくためには内臓系をしっかりさせ、餌を獲得する体壁系の機能はどれだけも必要としないからです。
 動物も脊椎動物の発生そして哺乳類の誕生へと進んでくると、餌を得んとする体壁系の運動機能が必然的に発達します。それに伴い、内臓系に属していた血管なのですが、血管からの酸素と栄養を体壁系が求め、血管が内臓系から体壁系へ伸びていき、酸素と栄養が体壁系へも順次回されるようになります。これだけに止まらず、餌を獲得するための神経が発達するに伴って、神経は内臓系にも伸びていき、先ずは血管を支配し、より多くの酸素と栄養が体壁系に回されるよう操作するようになります。次に、腸管・腎管を神経が支配し、吸収・排出の働きをコントロールするようにもなったのです。
 こうして、主従関係が逆転したのですが、正常な生命活動を続けるためには、この状態は危うい力関係です。動物がすこやかに生きていくためには、やはり内臓系が健全なのが基礎になりますからね。哺乳類に至って、いつしか主従関係が逆転してしまった原因としては、餌が容易には得られない厳しい環境がきっと恒常化したからでしょうね。

 そもそもの起源が体壁系にあった神経ですが、今ではヒトに顕著ですが自律神経が体全体を支配し、様々な臓器、器官の働きをコントロールするようになってしまいました。
 神経は、本来、“餌を見つけた!筋肉を動かして捕りに行こう”とか“天敵が来た!筋肉を動かして逃げよう!”という体性神経だけで十分であったのですが、これだけでは発見が遅れるし、取り逃がしたり捕まってしまうからと、感覚を研ぎ澄ませ、俊敏な動きが可能となるよう、より濃密に酸素を外皮(感覚)・筋肉(運動)に供給するために、つまり、血管を操作して内臓系への血流を絞り込み、体壁系への血流を十分に確保する働きを担う自律神経わけても交感神経を発達させたと言えましょう。
 元々内臓系であった血管は、こうして自律神経わけても交感神経によって完全に支配されます。副交感神経が働くのは、獲物がたっぷり獲れたときや天敵から逃げおおせたとき、つまり満足感や安心感があるとき、リラックスして楽しいというとき、ということになります。そうしたときは、交感神経を高ぶらせる必要がないですからね。

 ここで、表題にしました「交感神経の高ぶりで胃への血流は2段構えで絞られます」について説明しましょう。
 心臓から送り出される動脈血は、先ずは体壁系3系統の大動脈に流された後、下行大動脈となって内臓へ向けて送り出されます。前者が体壁動脈であり、後者が内臓動脈です。この分岐点あたりで、どちらに多く血液を送るかが交感神経節によって調節されます。下行大動脈は順次枝分かれして各内臓に供給されるのですが、その中で胃袋へ行く腹腔動脈にあっては、その分岐点で血流の絞込みを強烈にする機構ができています。腹腔動脈入り口の左右に大きな塊=腹腔神経節があり、それが血流の絞込みを行うのです。なお、こうした神経節は、腹腔動脈に続いて枝分かれする上腸間膜動脈(主として小腸へ)、その下の下腸間膜動脈(大腸へ)、腎動脈(腎臓などへ)にも用意されていて、必要に応じて交感神経節が血流の絞込みを行っています。

 このように、胃への血流は2段構えで絞られますから、交感神経の高ぶりが延々と続くとなると、胃への血流は極端に絞られ続けることとなり、食べ物が胃に入ってきても消化はままならず、長時間滞留するしかなくなるのです。
 胃を健全にするには、まずもって胃への血流を大きくしてあげて、血液中にたっぷりある酸素でもって胃の機能を正常化させ、つまり、胃液の分泌を盛んにさせ、胃粘膜の新陳代謝を促進させねばなりません。
 そのためには、交感神経の高ぶりを鎮めないことには何ともならないのです。
 そして、胃の蠕動運動を盛んにしてあげる必要があるのですが、これには、胃への血流を大きくしてあげることのほかに、休みっぱなし、抑えられっぱなしの副交感神経をよく働くようにしてあげるしかありません。
 交感神経は「闘争と逃走の神経」とも呼ばれています。ストレス社会にあって仕事や家庭で大きな悩み事を抱え続けていると、日夜「闘争と逃走」の状態にあり、ずっと交感神経優位の状態になってしまい、眠っている時間帯でさえ熟睡できず、夢見も悪く、副交感神経は抑えられっぱなしになっています。

 どうしたらいいか。
 つまるところ、自分で心のケアをするしかない、ということになります。リラックスして楽しい気分になれば、交感神経は抑えられ、副交感神経が働き出すのですからね。
 なお、小腸や大腸への血流は、胃ほど強くは絞られないようですが、血流の絞り方は胃と同様に2段構えになっていますから、消化吸収が滞りますし、大腸の蠕動運動が不十分となって便秘がちになったりします。
 交感神経が高ぶりやすい方は性格によるところが大きいようで、ベテランの解剖学者、三木成夫氏(故人)は、「屍体解剖してみますと、交感神経系が非常によく発達している人と、あるかないかわらない人と、これくらい個人差の甚だしいものはありません。」 とおっしゃっておられます。
 でも、あきらめる必要はありません。心の持ち方は訓練次第でいくらでも変えることができ、副交感神経優位の生活を楽しむことも可能なのです。
 このブログのカテゴリー「心に安らぎを」「心に安らぎ・トイレ掃除」「心の病からの脱却」「笑い話&回文物語」をお暇な時間にお読みになってください。 

 

(2018.1.18 追記)
 慢性胃炎の方は胸やけを訴えられることが多いのですが、その真因は胃酸の逆流ではないことを知りましたので、そのことについて解説しました。
 → 胃酸の逆流で逆流性食道炎が起きるなんて大間違い !?
 

(2018.3.13追記)
 胸やけを解消する意外な方法があることを知りましたので、記事にしました。
  太田胃散が胸やけに効くわけは意外なところにあり

 

(2018.6.21追記)
(参考記事)本稿の中で、福田稔著『実践「免役革命」爪もみ療法』を一部引用しましたが、“爪もみ療法”は、交感神経を沈め、副交感神経を高めますから、慢性胃炎の方におすすめしたい治療法です。下記をご覧ください。
  実践「免疫革命」“爪もみ療法”のすすめ。いろんな病気が改善しますよ。

 

コメント