24節気の健康と食養:夏至から小暑まで
24節気を約5日ずつ3区分した「七十二候」というものがあり、気象の動きや動植物の変化を知らせています。「略本暦」に掲載された七十二候で、本節気は次のとおり。
夏至 初候 乃東枯(なつかれくさ かるる)夏枯草(うつぼぐさ)が枯れる
次候 菖蒲華(あやめ はな さく)あやめの花が咲く
末候 半夏生(はんげ しょうず)烏柄杓(からすびしゃく)が生える
芒種(ぼうしゅ)の次にやってくる24節気が夏至で、毎年6月21日頃(2024年は6月21日)になります。
気温もどんどん高くなって、この先、小暑そして大暑でもってピークを迎えるというのが、中国中心部の気候で、梅雨はありません。中国で梅雨があるのは、長江下流域とその西方の中国南部だけです。北海道を除き、全国的に梅雨がある日本ですから、中国とは季節の捉え方が随分と変わったものとなります。
芒種の頃から夏至、小暑、大暑と3つ先の節気までの1か月半(今年は梅雨入りが遅れて夏至の頃から1か月)ジメジメとし、気温も梅雨明け後にグーンと上がり、まるで季節感が違いますから、日本における対処法は異なったものとなります。
芒種から夏至そして小暑までは昼の長さは1年で最も長くなる時期です。よって、活動時間はとても長くなり、夏:心の季節ということもあって、心臓の働きも活発になります。人の体は、夏:心の季節に十分に対応していることでしょう。
これを踏まえた夏の養生法を下記の記事で紹介しています。参照なさってください。
立夏は夏の入り、五味を上手に夏食に。先ずは「心」が求める苦味です。
ここでは、夏至から小暑までの養生について、前回の芒種とかなり重複しますが、夏の季節として特徴的なものを紹介することにしましょう。
昼がとても長くなりますから、その分活動量が増え、心臓も長時間働かされます。よって、エネルギー代謝をスムーズにしてあげる必要があります。
芒種の頃から旬となるのがタマネギです。タマネギにはこれといった栄養価はないものの、特有の刺激臭「硫化アリル」がビタミンB1を活性化させ、これによってエネルギー産生回路を円滑に回す、つまりスタミナ食になりますから、心臓にとって実に望ましい食品といえます。旬のタマネギを大いに食したいものです。
5つの味「五味」についても頭に置いといてください。漢方では、五臓のバランスを整えるため、夏は<主・苦味、従・辛味、添・甘味>この三味の組み合わせを最適としています。料理は、この三味を頭に置いて行っていただきたいものです。
次に、夏至の頃には既に(今年はやっと)梅雨入りしており、梅雨時の養生について説明します。これの詳細な解説は、次をご覧いただくとして、ここでは簡潔に要点を述べます。
梅雨時の健康法は「湿熱」疾病と「冷たい物中毒」の合併症からの脱却
梅雨に入ると「湿熱」で「脾=胃」が弱ってきますから、胃に負担がかからないよう、油っこいものを避け、よく噛んで食べるのが第一となります。また、この時期、通常はエネルギーの消耗が少ないですから腹八分とし、食欲も落ちてきますから、美味しく食べられるものを少しずつあれこれ食べるのが良いということになりましょう。
そして、梅雨の晴れ間には少しはお日様に当たりたいものです。骨を丈夫にする活性化ビタミンDは皮膚で太陽光線により作られるのですからね。特に朝日を浴びるのは重要です。というのは、「幸せホルモン」セロトニン(これは「睡眠ホルモン」メラトニンに変化)を体内で十分に作るには、先ずは朝日を浴びるに限るからです。これについては「セロトニンとメラトニンを十分に出す生活習慣を」で解説しましたのでご覧になってください。
しかし、晴れた日の屋外は、蒸し暑さが相当なものとなります。体に熱がこもることもありましょう。軽い熱中症です。よって、この時期は旬が盛りとなったキュウリを毎日いただくと良いです。体の芯を冷やしてくれる夏野菜の一番手として登場するのがキュウリです。
汗をかきますから、毎日入浴したいですね。
でも、長湯すると体が熱くなってしまうからと、烏の行水で終わっていまっている方が多いようです。
しかし、胃腸がけっこう冷えていることが多く、長湯して体の芯まで温めたいです。そのためには、のぼせそうになる前にあがり、冷水シャワーをたっぷり浴びましょう。これで体にこもった熱が取り除けます。
なお、この時期から冷房が入り、そうした環境で丸1日仕事をなさる方は、体の芯が冷え切っていることが多いです。そうした方も、この入浴法がベストで、温めの湯に長く浸かり、汗が出だしたら体の芯が十分に温まったことでしょうから、湯上がりに冷水シャワーを気持ちいい程度に浴びます。すると、皮膚がしまり、熱を閉じ込めてくれます。
いずれの場合も、初めて全身に冷水を浴びると心臓麻痺を起こしそうになりますから、先ずは手足だけ、次に下半身だけ、といった具合に少しずつ体を慣らしてください。
初めて冷水シャワーに挑戦なさる方は、次の記事を参照ください。
今がチャンス!始めましょう、冷水シャワー。万病に効果あり。ただし、夏を過ぎても毎日実行。
なお、冷房で体が冷える方は、日中は貼るカイロをお尻の両脇(「気をつけ」の姿勢を取ったとき凹む位置)あるいは下腹部に貼られるといいでしょう。これで、特にお腹が温まり、結果、全身を温めてくれます。下痢症の方にもお勧めの方法です。
次回は、「小暑」(7月7日頃)からの健康と食養です。
今年の「入梅」は6月10日、梅雨時の健康法は「湿熱」疾病と「冷たい物中毒」の合併症からの脱却
主として農業歴となる24節気は中国で作られ、日本でもそのまま使われているのですが、これだけではイマイチ不十分であるがゆえ、雑節が幾つか設けられています。「八十八夜」と「二百十日」がよく知られていますが、「入梅(にゅうばい)」もその一つです。
「入梅」は、太陽の視黄経が80度に達した日とされ、太陽暦の6月11日頃にあたり、2024年は6月10日です。今年はけっこう遅れるようですが、毎年、概ね「入梅」の頃に梅雨入りします。
中国大陸の中心部は梅雨がないですから、中医学(漢方)には「梅雨」の季節の健康法なるものは基本的には登場しません。せいぜい「湿熱」による疾病への対処の仕方が書かれているだけです。もっとも、小生は漢方にからきし弱くて、よう見つけないだけかも分かりませんが。
何にしても、「5」にこだわる中国人ですから、漢方の季節区分も「春夏秋冬と土用」の5つです。これは間違いないです。でも、土用は四季の間に毎回入りますから、実質は8区分。「夏」は5月5日頃の立夏から始まって7月18、19日頃まで、「夏の土用」は7月19、20日頃に始まって8月7日頃の立秋の前日まで、といったぐあいです。
でも、日本には、6月上旬から7月中旬まで約1か月半の「梅雨」があります。「梅雨」が明けるのは、だいたい「夏の土用」入りの頃。そうなれば、細かく季節を区分すれば、9つになります。何もかも複雑に分類する傾向が強いインド哲学が日常生活に深く浸透しているインド人、彼らであれば、日本の気候は9区分にすべきだ、と言うでしょうね。
インド哲学を少々かじり、百姓仕事に精を出している小生ですから、インド人の主張に賛成したいです。のちほど述べますが、身をもって体験していますからね。
さて、漢方の世界での「夏」は「心(しん)」の季節で、夏至を中心として昼間の時間帯が非常に長くなり、原始時代からつい最近まで、ずっと、毎日長時間活発に動き回ったことでしょうから、この季節には「心=心臓」が活動的となるのは理解できます。
そして、夏の食事は、「心」が求める「苦味」を主体にして「辛味」と「甘味」を添えると良い、「酸味」はほどほど、避けるのは「塩味」、ということを過去記事(「 立夏は夏の入り、五味を「上手に夏食に 」)で述べました。
日本においても、梅雨入りまでは、これで良いでしょう。
しかし、梅雨入り後においては、その気候は、中国大陸中心部とは全く様相を異にします。雨や曇天で気温は真夏ほどには上がらないものの、やたらと蒸します。
「湿熱」地帯と化します。
「湿」と言えば「土用」で、これは、土を掘り返すことが多くなる時期であって、土中の湿気に中(あた)ることが多くなり、この季節に対応する臓器は「脾=胃」です。
「土用」は農作業が忙しい時期ですから、高カロリー食を摂ることになり、「脾=胃」が活動的になるのはうなづけますし、「湿」に対して「脾=胃」を労(いた)わらねばならないのも分かります。
「梅雨」入り後の農作業は田植えは別にして、それ以外はさほど多くないですから、「脾=胃」がさほど活動的になることはないでしょうが、明るい時間帯が1年で一番長くなり、「心」は活動的と考えて良いでしょう。
つまり、心臓は毎日長時間、元気に働こうとし、その結果、汗もかきます。空気が乾燥していれば、少しの汗で体熱を十分に放散してくれますから、水分補給はたいして必要ないですが、「湿熱」地帯にあっては、気化熱の放散がままならず、たらたらと汗をかくことになり、水分補給がたっぷり必要です。
しかし、汗を大量にかいたとしても、どれだけの効果も上がらず、「湿熱」が体内にこもってしまい、冷蔵庫が普及した今日にあっては、「冷たい物」でもってダイレクトに体の芯を冷やしたくなります。
さあ、こうなると大変。「脾=胃」がビックリ仰天!
「脾=胃」は「湿」の季節に対応していますから、水分代謝の機能もどれだけか備えているのですが、その「土用」の期間は半月ちょっとです。ですが、「湿」が1か月半も延々と続く「梅雨」ですし、限度を超えて水分が体内に入ってくるのですから、「脾=胃」の処理能力を超えてしまい、何ともなりません。ましてや、昭和の高度成長以降は、異常に「冷たい物」が「胃の腑」にじゃんじゃん入ってくるようになったのですから、大変なことになります。つまり、梅雨時の日本人の体内は、「冷たい物の大洪水」で、ギブアップの状態になってしまいます。
「湿熱」の疾病と「冷たい物中毒」の合併症です。
中医学においては、大陸南部に「湿熱」地帯を抱えていますから、「湿熱」の疾病にも十分に対応できましょうが、「冷蔵庫文化」が普及しきった今日情勢は想定外のことですから、「冷たい物中毒」には対応できていません。もっとも、「冷たい物中毒」が高ずれば「冷え症」となり、これは昔からありましたので、「湿熱を伴う冷え」として、複合的に対応する処方を用いることができ、症状の改善を図ることはできます。
でも、残念ながら中医学においても、「冷たい物中毒」がいかに恐ろしいものであるかは、まだ十分には認識されていないようです。もっとも、中国人は冷蔵庫文化が広まっている大都市にあっても、夏に日本人のように氷を浮かべた冷たい飲み物を飲むのはまれで、特に女性は暑くても水分補給はお湯で済ませる習慣が定着していますから、「冷たい物中毒」とは無縁かもしれません。
(参照→暑くなった5月半ば、“冷たい物中毒”から脱却するチャンス!)
さて、どうしたらいいものか、日本の「梅雨」ほど厄介なものはないですね。
最優先せねばならないのが、何と言っても「冷たい物中毒」からの脱却でしょう。暑くっても「冷たい物」を絶対に摂らないことです。先に中国人のことを書きましたが、40度を超すアラビアでは皆さん「熱い物」をチビチビ飲んで水分補給しています。カラッカラに乾燥していますから、汗の蒸散効果が高く、この方法がベストとのことでして、少しは見習いたいですね。
でも、湿度が異常に高い日本では、しっとり汗では済まず、たらたらと汗をかくことが多くなります。そんなときは、大量に水分補給せねばなりませんが、たいていは、飽食によって体の中が洪水を起こしていますから、「汗」即「水」とせず、「のどがカラカラ」となってから、チビチビと小まめに水分補給するだけで良いでしょう。
これであっても、「脱水症状」を起こすことはないと思います。
次に「湿熱」の除去です。可能であれば、日中に「水風呂」に入ることですし、夜の入浴時には、前後にたっぷりと冷水シャワーを浴びることです。
ここで、さきほど日本の気候を9区分すべきと言った訳を述べましょう。
だいぶ前のことになってしまいますが、小生が2011年6月19日に梅雨の合間に行なった農作業。午後3時から6時過ぎまでの3時間強でしたが、土が湿っていて鍬を動かすのにその重かったこと。汗たらたら。
終了後に冷水シャワーをたっぷり浴びたものの、湿気に中(あた)って「湿熱」のこもりが抜け切っていなかったようでして、軽めの晩酌(焼酎の湯割り)が回りに回り、夕食はいつもの半分しか喉を通りませんでした。
これは、軽い熱中症にかかっていたところへ、アルコールで追い討ちをかけたものですから、「脾=胃」が拒否反応を示したからと思われます。
小生のこんな経験は、記憶になかったのですが、このとき63歳の老体であったがゆえとも思えず、これはやはり「湿熱」が原因でしょう。
このように、日本の梅雨は、暑い上に異常な湿り気がありますから、尋常な方法では健康を維持するのが困難になります。
今はエアコンが普及し、これでもって体熱を放散させれば良いと、安易な方法に頼るのは考え物です。先の小生の例では、これが有効な手段となるでしょうが、熱中症でもないのにエアコンを恒常的に使うと、体内温度が下がってしまい、「冷え症」と同じ状態になって様々なトラブルを引き起こすのは、皆さん経験済みのことでしょう。
よって、エアコンの使用は、我慢の限界を超えたときに、やむを得ず使うといった気構えで当たっていただきたいものです。お勧め法は、しっとり汗をかきつつ扇風機で涼を取り、その風が苦になりだしたら切り、また付けるという方法です。
この時期は、やはりどれだけかは汗をかきたいですからね。尿としては出ない老廃物は汗として出るのですから。
最後になりましたが、梅雨時の食事を漢方栄養学から説明しましょう。
と言ったものの、冒頭で言いましたように、小生ただいま漢方を勉強中でして、手元にある書物には、これが書いてありません。書いてあるのは、次の2つ。
夏の食事は、先に述べましたように、「心」が求める「苦味」を主体にして「辛味」と「甘味」を添えると良い、「酸味」はほどほど、避けるのは「塩味」、これが基本です。なぜ夏に「塩味」を控えるかといえば、「塩味」の強い物を摂ると、塩は体を温める最たるものですから体に熱がこもってしまうからです。
土用、これは各季共通ですが、「脾=胃」が求める「甘味」を主体にして「塩味」と「辛味」を添えると良い、「苦味」はほどほど、避けるのは「酸味」、これが基本です。ここで注意すべきは、「甘味」は、砂糖など甘い物だけを指すのではなく、主として「よく噛むと、ほのかな甘味が出てくる物」を言うのでして、ご飯(米)や肉のようにエネルギー源となるものを言います。
単純に考えれば、「梅雨」は「湿」ですから、「土用」と同じで良いとなります。
なお、季節は「夏」ですから、「心」を考慮して、避けるべきものは「塩味」となりますが、大汗をかけば「ミネラル=塩分」が失われますから、これを補給せねばならず、敢えて「塩味」避ける必要はないと考えて良いです。
こうしたことを総合的に考えてみますと、「湿熱」で「脾=胃」が弱っていますから、胃に負担がかからないよう、よく噛んで食べるのが第一となり、この時期にはエネルギー消耗が少ないですから腹八分とし、五味の使い分けは土用を基本としつつも、さほどこだわる必要はないということになります。食欲も落ちていますから、美味しく食べられるものを少しずつあれこれ食べるのが良いということになりましょう。
以上、中医学(漢方)に基づき、栄養学を説明しましたが、先に述べましたように「冷たい物中毒」は、中医学でも想定外の出来事でして、「梅雨」の時期の食事の摂り方で注意すべきは、繰り返しになりますが、決して「冷たい物」を摂らないことです。
その昔には、「冷(さ)めた物」も摂りすぎは要注意、と言われました。つまり、「常温」であっても胃腸に差しさわりがあると言っていたのでして、ましてや「冷(つめ)たい物」となったら論外なのです。
梅雨時には、うちでは「むしシャブ」をやることが多いです。様々な野菜と茸を中心にして、豚肉を少々乗せます。「胃」に負担を掛けず、「胃」を温めるという、「胃」に優しい料理です。食事中に汗をかきましょうが、日中に汗をほとんどかくことがない女性にとっては、こうでもして汗をかかねば健康を維持できませんから、おすすめです。
ところで、「酸味」は避けるべしですが、「むしシャブ」に「ポン酢」は付き物、これなしでは美味しくありません。顔から汗が噴出すほどに濃いポン酢は胃にもよくないでしょうが、ほどほどであれば、気にする必要はないと思われます。ただし、食事の最後に、漬物は「酸味」が強い梅干とするのは避けるべきでしょうね。梅干は朝に1粒で十分です。
このブログでときおり紹介している「日本講演新聞」(旧名:みやざき中央新聞)。毎月4回発行され、定期購読しているのだが、読んだとき傑作な記事には黄色の蛍光ペンで丸印を付けておく。それを毎月20日頃にもう一度読み、少々拡大コピーして切り取り、所定のA4用紙(上段に「日本講演新聞」のロゴやキャッチコピー入り)に貼り付ける。今月分と先月や先々月の繰り越し分の中から、“これはいい”というものを4つ選び出し、両面コピーし、2枚にしてDMに使うことにしている。ただし、たいていの方へは1枚だけの送付となる。
この新聞のキャッチコピーは「宮崎発未来~ときめきと学びを世界中に」と「心揺るがす」の2つあるが、当店のお客様の心のケアに役立たないかと考え、DM封筒に入れて毎月発送しているのだが、そのキャッチコピーは「心温まり、勇気を得て、感動した!」と勝手に付けている。
こうして、優れた記事を2、3回読むことになり、読むその度に「心温まり、勇気を得て、感動した!」という気分を味わっている。そして幸せな気分にもなれるから、実に有り難い。
毎号けっこういい記事があるが、1つの記事に(A4サイズで)4ページ割かれるものは、いくら内容が良くてもDMで2枚になってしまい、採択しにくく、めったに使ったことがない。たいていお蔵入りとなる。
これではなんとも残念だから、このブログの読者の皆さんに読んでいただこうと、4ページものをこれで3回目になるが、以下に紹介させていただくことにした。
(備考)
この講演記事の中で「情動の涙」には「ストレスを解消する効果がある」と紹介されていますが、他に「NK細胞を活性化させ、がん治療効果がある」とも言われています。
参照→毎日5善の心で癌(がん)に向き合う。癌は心の病の現れと捉えるべきでしょうね。
皆さんも、ぜひこの講演記事をじっくり読んで「情動の涙」を流してください。
スキャンしたら裏写りしてしまい、読みにくて申し訳ありません。
24節気の健康と食養:芒種から夏至まで
24節気を約5日ずつ3区分した「七十二候」というものがあり、気象の動きや動植物の変化を知らせています。「略本暦」に掲載された七十二候で、本節気は次のとおり。
芒種 初候 螳螂生(かまきり しょうず)螳螂が生まれ出る
次候 腐草為蛍(くされたる くさ ほたると なる)
腐った草が蒸れ 蛍になる
末候 梅子黄(うめの み きばむ)梅の実が黄ばんで熟す
小満の次にやってくる24節気が芒種(ぼうしゅ)で、毎年6月5、6日頃(2024年は6月5日)になります。言葉のいわれは「芒(のぎ=籾殻にあるトゲのような突起)ある穀類、稼種する時なり」からきています。
これを早とちりしたのか、“現在の日本においては少々遅いと言われていますが、稲や麦など芒のある穀物の種まきをする季節とされてきました。”とか“実際には現在の種まきはこれよりも早い。”とか解説されているものが目立つのですが、「稼種」の「稼」は「①穀物を植える、栽培」「 ②みのり、取り入れた穀物」と2つの意味があり、芒種の場合は後者の意味で使われているのです。つまり「この頃に、秋に播いた麦類の実が稔って刈り入れが行われる」というものです。なお、芒種の一つ前の節気である小満は、麦の実が次第に充実してきた様を言っていますし、24節気の発祥地は中国大陸中心部でして、穀類といえば米ではなく小麦ですから、このように解釈すべきです。
気温もどんどん高くなって、この先、夏至、小暑と気温は上がり続け、大暑でもってピークを迎えるというのが、中国大陸中心部の気候で、梅雨はありません。中国で梅雨があるのは、長江下流域とその西方の中国大陸南部だけです。
北海道を除き、全国的に梅雨がある日本ですから、中国とは季節の捉え方が随分と変わったものとなります。日本では、芒種の頃から1か月半、3つ先の節気である大暑の頃までジメジメとし、気温も梅雨明け後にグーンと上がり、まるで季節感が違いますから、対処法は自ずと異なったものとなります。
芒種から梅雨入りまでのしばらくの間は、夏至(次にやってくる節気)に近いこともあって、昼の長さは1年で最も長くなる時期です。よって、活動時間は長くなり、夏:心の季節ということもあって、心臓の働きも活発になります。人の体は、夏:心の季節に十分に対応していることでしょう。
これを踏まえた夏の養生法を下記の記事で紹介しています。ご参照ください。
立夏は夏の入り、五味を上手に夏食に。先ずは「心」が求める苦味です。
ここでは、芒種から夏至までの養生について、まず、梅雨入り前の特徴的なものを紹介することにしましょう。(今年は例年より梅雨入りが遅れそうで有り難いです。)
昼が長くなりますから、その分活動量が増え、心臓も長時間働かされます。よって、エネルギー代謝をスムーズにしてあげる必要があります。
芒種の頃から旬となるのがタマネギです。タマネギにはこれといった栄養価はないものの、特有の刺激臭「硫化アリル」がビタミンB1を活性化させ、これによってエネルギー産生回路を円滑に回す、つまりスタミナ食になりますから、心臓にとって実に望ましい食品といえます。旬のタマネギを大いに食したいものです。
同じ頃に旬となってくるニンニクも、薬効成分アリシンが同様な働きをしますから、これも料理に取り入れたいものです。
5つの味「五味」についても頭に置いといてください。漢方では、五臓のバランスを整えるため、夏は<主・苦味、従・辛味、添・甘味>この三味の組み合わせを最適としています。料理は、この三味を頭に置いて行っていただきたいものです。
次に、梅雨入り後の養生について説明します。これの詳細な解説は、次をご覧いただくとして、ここでは簡潔に要点を述べます。
梅雨時の健康法は「湿熱」疾病と「冷たい物中毒」の合併症からの脱却
梅雨に入ると、「湿熱」で「脾=胃」が弱ってきますから、胃に負担がかからないよう、油っこいものを避け、よく噛んで食べるのが第一となります。また、この時期、通常はエネルギーの消耗が少ないですから腹八分とし、食欲も落ちてきますから、美味しく食べられるものを少しずつあれこれ食べるのが良いということになりましょう。
そして、梅雨の晴れ間には少しはお日様に当たりたいものです。活性化ビタミンDは皮膚で太陽光線により作られるのですからね。
慢性的に血液中の活性化ビタミンDになっている日本人と思われます。骨を丈夫にするほか、新型コロナやインフルエンザなど感冒の感染症にも効果があるビタミンDです。ネットニュース(2023.6.5)で東京慈恵会医科大学の調査結果が流れましたが、そのプレスリリースは次のとおりです。ご覧になってください。
98%の日本人が「ビタミン D 不足」に該当
また、朝日に当たると「幸せホルモン」セロトニンの分泌が促され、精神が安定し、気分が穏やかになり、幸福感が湧き上がってきますから、おすすめします。なお、リズミカルな運動を併せて行うと、よりいっそうセロトニンの分泌が促進されますので、日が昇るのが早くなったこの頃ですから、早起きして散歩を5分でも、できれば15分、最大30分、少々早足で行なうとよいです。ラジオ体操でもいいです。
前季におすすめした「冷水シャワー」。皆さん、始められましたか。湯上がりにたっぷり冷水シャワーを浴びると、気分まで爽快となり、精神的ストレスも流しとってくれますよ。免疫力も高まり、風邪も引きにくくなります。
ところで、精神的ストレスといえば、「五月病」を罹った方で6月になっても尾を引いている人も少なからずいらっしゃいますし、近年は新社会人に「六月病」なるものも現れるようになりました。どちらも「精神の高ぶりや心の落ち込み」という交感神経の緊張状態がずっと続いていると考えてよく、これが延々と続くと、そこから脱却できず、鬱病になったり、心の病が深刻なものになりかねません。
そうした方々は、交感神経の緊張を緩め、副交感神経を優位にしてあげる方策、つまり精神をリラックスさせる何らかの手立てをとっていただきたいです。
ネットニュースで、実に簡単でこれはいいなあ、というものを見つけましたので、それを紹介しておきましょう。
(2018.6.5配信『何かだるい梅雨の隠れ疲労 放置すると「夏うつ」に』 奥田弘美 精神科医(精神保健指定医)・産業医・労働衛生コンサルタント)
軽く目を閉じて、鼻先を出入りする空気の流れをじっくり感じる「呼吸瞑想」(マインドフルネス瞑想の一種)を数分行うだけでも交感神経系の緊張を緩める効果が期待できます。空気が鼻孔から入っていき、また鼻孔から出ていく。呼吸瞑想では、この感覚を目を閉じてひたすら感じていくだけでOKです。何か思考や関係ないことが浮かんだら、「思考した」「考えた」と気づいて、また呼吸の感覚に意識を戻します。座禅のように無になろうと頑張る必要は全くありませんので、電車でもオフィスでも自宅でも一人になれる空間があればどこでも可能です。目まぐるしい外界の刺激からシャットダウンされますので、心が落ち着きやすくなるため筆者もしょっちゅう実践しています。ぜひ気軽に試してみてください。
次回は、「夏至」(6月21日頃)からの健康と食養です。