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水素添加植物油脂はトランス型脂肪酸以外の毒物により食用に不適です

2019年12月12日 | 正しい栄養学

水素添加植物油脂はトランス型脂肪酸以外の毒物により食用に不適です

 従前、強く主張されていた「水素添加植物油脂は、その製造過程でトランス型脂肪酸ができてしまい、これに毒性があり、よってマーガリンは食べてはだめだ。」という話は、最近では通らなくなりました。というのは、今、出回っているマーガリンは、原料を水素添加植物油脂から熱帯油脂(トロピカルオイル=パーム油など)に切り替えられたからです。
 でも、水素添加植物油脂は、ショートニング(マーガリンの純度を高めたのもの。さっくり感やパリッとした食感を出すのに好都合で、菓子類製造に利用されることが多い)としてその後も使われています。しかし、それに含まれるトランス型脂肪酸(数%から十数%含有)そのものの毒性は弱く、天然に存在するトランス型脂肪酸(反芻動物の胃で微生物によって作られ、牛肉や牛乳に必ずどれだけか含有)と変わらないようでもあります。
 では、水素添加植物油脂は安全かというと、さにあらずで、近年判明したのですが、その製造過程でかなり毒性の強いジヒドロビタミンK1(ビタミンK1の変性物)が副生され、これが各種の健康被害を生じさせる元であることがはっきりしてきました。
 そして、最近のマーガリンの代替原料となってきた熱帯油脂(パーム油など)には何かと問題がありそうなことも次第に分かってきています。
 そのあたりのことを下記参考文献(各種研究報告100本以上の要旨を整理して掲載されたもの)から引用して紹介することとします。

参考文献:2019.9.8 発刊「日本人は絶滅危惧民族 ー誤った脂質栄養が拍車ー 」
<裏表紙:糖尿病 慢性性腎炎 骨折 脳・心血管病 認知症 少子化の予防を目指して>
(日本脂質栄養学会 食品油脂安全性委員会 糖尿病生活習慣病予防委員会 編著者:奥山治美)
※この「日本脂質栄養学会」は信用が置けるか否かですが、これについては下記の記事で小生の受け止め方を書いています。ポイントとなるのは「利益相反開示」です。
 久しぶりに本を買い、食の見識を新たにする

 引用文中に小々専門的な用語がいくつも出てきますが、それは読み飛ばしていただいていいです。ただ、予備知識として下に示したビタミンK2とビタミンD3の働き、それらと密接にリンク(連携)して働くオステオカルシンの重要性を頭に置いといてください。
<ビタミンK2>
 ビタミンK2はオステオカルシンを活性化するという重要な働きがあり、これが抑えられるとなれば、糖尿病の発症などが危惧される。
<オステオカルシン>
 骨の非コラーゲンタンパク質で、ホルモン様作用を持ち、インスリンの分泌を促進するなど多様な作用を有する。また、ビタミンK2依存反応によりカルシウムやリン酸を保持できる(Hashimoto Y;El Asmar,2014)ことにより、大動脈や腎臓での石灰化を抑えている。
<ビタミンD3>
 ビタミンD3不足は骨粗鬆症を引き起こすが、ビタミンD3は全身の臓器で必要とされる重要なもので、不足すれば様々な生活習慣病を引き起こす元にもなる。なお、ビタミンD3はオステオカルシンの遺伝子発現を調節し、ビタミンK2と相加的に働く。

 それでは、まず、植物油の水素添加の過程で副生したジヒドロビタミンK1の毒性等に関する研究報告の主だったものを紹介しましょう。(所々抜粋しての引用)

 植物油の水素添加の過程で副生したジヒドロビタミンK1が、ビタミンK2-オステオカルシン・リンクを阻害して糖尿病を発生させる、というメカニズムを明らかにしている(Okuyama H,2016)。水素添加植物油の影響(害)はトランス脂肪酸そのものの影響ではなく、上記リンクの阻害物質が原因である。

 脳卒中易発症性ラット(オス)を使った、水素添加大豆油、マーガリン(主成分が水素添加植物油脂)、ラード、バターほかの油脂を食餌した場合の生存期間比較で、図のとおり大きな差が生ずる。これは植物油の水素添加の過程で副生したジヒドロビタミンK1の毒性によると考えられる。

             

 オステオカルシンは骨ホルモンであり、血液中に放出されて脳をはじめ多くの組織に取り込まれ、その機能維持に必要な役割を担っている。ジヒドロビタミンK1はこの過程を傷害し、脳・血管病をはじめ種々の疾病を発症させる。すなわち、トランス脂肪酸そのものではなく、ジヒドロビタミンK1が水素添加植物油中の主な有害成分であるといえる。

 最近、骨折が増えているが(年齢未調整)、トランス脂肪酸が直接骨細胞に働いてオステオカルシンなどの発現を抑えているというメカニズム(Hamazaki K,2016)、水素添加植物油に含まれるジヒドロビタミンK1によるビタミンK2-オステオカルシン・リンクの阻害によるメカニズム(Hashimoto T,2014)とが提唱されている。

 トランス脂肪酸(牛由来の天然物、水素添加植物油脂に含まれる工業トランス脂肪酸)の摂取が脳機能に及ぼす影響が幾つか報告されているが、明確な結論は得られていない。一方、工業トランス脂肪酸の場合は、ジヒドロビタミンK1が脳に達し、オステオカルシン類も脳に取り込まれるので、この経路により脳機能に影響を与えうる。

 水素添加大豆油はHMG-CoA還元酵素の遺伝子発現を抑え、ビタミンD3前駆体の供給が抑えられると推測される(Hashimoto Y,2017)。

 このように、水素添加植物油脂はトランス型脂肪酸以外の毒物(副生したジヒドロビタミンK1の毒性等)により「食用に不適である」と日本脂質栄養学会は結論づけています。
 数多くの研究報告をまとめると、ジヒドロビタミンK1等の毒性は下図のとおりとなります。この図には「菜種油など数種の植物油脂に含まれる未知微量因子」を併せて記載されていますが、その詳細については後日、別途、整理して紹介します。
 なお、この図には、同類の「コレステロール降下剤:スタチン」の害、「血栓塞栓症予防の抗凝固剤ワルファリン(商品名ワーファリン)」の害なども併記されています。

 

 さて、知らず知らず口にさせられている水素添加植物油脂の害、これは少なくともビタミンK2を欠乏させることになりますから、自衛手段としてビタミンK2を多く含む食品(下図を参照)を意識して摂取する必要がありましょう。ただし、これでもってジヒドロビタミンK1の毒性から十分に逃れられるものではありません。
(備考)ワルファリンはビタミンK類似構造のクマリン誘導体で、ビタミンKに拮抗し、肝臓においてビタミンKが関与する血液の凝固因子がつくられるのを抑えて血を固まりにくくし、ワルファリンを服用中は、ビタミンKの活性が抑えられた状態にあります。このときにビタミンKを多量に摂るとワルファリンの作用は減弱してしまいますから、ビタミンKを多く含む納豆等は食べるなと指導されます。ワルファリンの副作用はジヒドロビタミンK1毒性と同じですから、これには大きな問題があります。

 


 次に、熱帯油脂(トロピカルオイル=パーム油など)の毒性に関する研究報告等の主だったものは次のとおりです。(所々抜粋しての引用)

 欧米で先行しているように、行政的に水素添加植物油脂の摂取を制限することは極めて重要なことである。しかし、その代替品として熱帯油脂(トロピカルオイル=パーム油など)が盛んに使われだしたが、脳卒中促進・環境ホルモン作用の報告があり、安全性は確立していない。動物実験ではパーム油は発がん促進作用、脳卒中促進作用、寿命短縮作用が報告されている。

 最近になって、パーム油に含まれる3-MCPD(3-モノクロロ-プロパンジオール)の毒性(腎臓、精巣)について国際的(国際連合食糧農業機関FAO、世界保健機関WHO)に議論され、我が国の省庁も参画している。
 そのなかで、2016年、FAO/WHO合同食品添加物専門家会議において、3-MCPDの耐容1日摂取量に対する現在の摂取量の比は、成人で1.0倍、乳幼児で2.5倍くらいと評価された。乳幼児に高いのは、粉ミルクに3-MCPDを多く含むパーム油などが使われているからである。

 以上のとおり、水素添加植物油脂はトランス型脂肪酸以外の毒物により食用に不適であること、その代替品である熱帯油脂(トロピカルオイル=パーム油など)の安全性は確立していないこと、これを上記参考文献のなかで強く主張されています。

 じゃあ、消費者はどうすればいいのか。小生思うに、つまるところは油脂全般を極力控える、つまり戦前の食生活に戻すしかないようです。そうしたことを先日、別記事(当店新聞:下記)で書きましたので、ご覧になってください。
 そして、赤ちゃんには熱帯油脂を与えたくないですから、母乳で極力長く育てるしかなさそうです。なかなか難しいことですが。

 やっぱり「油断」しなきゃ(三宅薬品・生涯現役新聞N0.298)

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