直立二足歩行する裸の猿・ヒトは人類水生進化説に基づき的確な健康対策を
人類は、きっと海または塩水湖という水生環境で進化し、その後は陸に上がったものの、まだどれだけも経っていないであろうがために、ヒトは様々な疾患を抱えている身体障害者であると、このブログで何度か書いてきました。
その人類水生進化説は、あまりにも突飛すぎて、従前からある草原進化説を信奉する権威ある学者からは、異常と言えるほどに毛嫌いされ、そして無視されています。
この説をまとめ上げたのがエレイン・モーガン女史(英国人)で、文系出のシナリオライターの職にある門外漢だったものですから、専門家からは、“素人のでしゃばり女め!”と怒りを買い、余計に評判の悪い説となってしまいました。
ヒトは、チンパンジーとの共通の祖先から枝分かれしたことは、DNAの塩基配列の比較からはっきりしています。それも、高だか数百万年前のことです。
それから今日までの間に、ヒトは体の形質を大きく変え、直立二足歩行・大きな頭・無毛症・犬歯の退化といった、チンパンジーにはない姿になってしまいました。それ以外にも、皮下脂肪を持つ、体温が1度ほど低いなど、目に見えない体質の違いもあります。
これらの違いを説明するのに、ヒトはジャングルから草原に生活の本拠を移したとする草原進化説では、どだい無理な話であって、それに代わる水生進化説の立場に立てば、全てがスムーズに説明できてしまうのです。もっとも、犬歯の退化については、モーガン女史も触れていませんし、これについては、群社会の在り様の変化を持ち出さないことには説明できないと思われ、ここでは取り上げません。
さて、人類水生進化説の詳細説明となると、モーガン女史が5冊もの本で書かれており、とても本ページで説明できかねます。これについては、小生の論文(人類水生進化説)、これは“犬歯の退化はなぜ起きたのか”を紐解くための入り口となるものですが、その第4章で概説していますので、お時間がありましたら、そちらを覗いて来てください。
ここでは、ヒトの形質・体質変化によって、どのような疾患が生じているかを中心にして書くことにします。
まず前提として、現生人類は数百万年の水生生活の後、十数万年前にやっと陸に上がっただけの、陸生生活経験が非常に浅いヒトであるということです。
ヒトはアフリカ東部の大地溝帯で誕生し、当地の乾燥化に伴って、順次その地を後にし、ジャワ原人になったり、北京原人になったりしたのですが、彼らの生き残りであれば、陸生生活に随分と慣れて形質変化し、現生人類のような疾患を背負い込み続けることはなかったと思われるのですが、彼らはそうなる前に絶滅してしまいました。
そうしたことから、現生人類は、陸ではまだよちよち歩きの生き物だと心得てください。
水生生活に随分と馴染んだことによって獲得した形質・体質と問題点
・直立二足歩行
チンパンジーとは別種(実質は亜種)のボノボは、湿潤なコンゴ盆地に住み、雨期には水中歩行を強いられることが多く、その骨格はチンパンジーに比べてヒトに少々似ています。そして、ボノボは二足歩行が上手です。このことからだけでも、ヒトは水生生活をしていたと考えられます。
でも、ボノボもチンパンジーも、地上を歩くときは、手があまりにも長いので、ナックル歩行します。これは、ニホンザルのような完全な四足歩行ではなく、手の甲を地面に軽く付けた歩き方で、二足と四足との中間型です。この姿勢であれば、両足首だけでバランスを取る必要はないですし、腰関節は四足に近い使い方になります。
それが、現生人類となると、完全な直立二足歩行になりましたから、腰関節を限界いっぱいまで伸ばした姿で常時歩きますので、設計許容範囲から逸脱してしまったのです。
只今、腰関節改造の工事中といったところです。加えて、腰回りの筋肉も増強中です。
そして、幼少時代に走ることを覚えると、足首の亜脱臼を起こしてしまいます。大人に成長した後、これに気づいていない方が多いですが、常時軽い炎症を持った状態にありますから、冷え症になってしまいます。
さらに、説明するまでもない膝痛を発症します。
加えて、大きな頭や手の重みを背骨で支えねばなりませんから、脊椎に荷重が常時かかった状態を強いられます。これによる脊椎損傷はあまり多くはないでしょうが、骨の芯にある骨髄が圧迫され、造血が滞ります。日中は時々、そして夜はたっぷり「骨休め」のために横になり、地球の重力から開放してやらねばならなくなったのです。
また、肩こりや首筋のこりも、手の重みと大きな頭を支える筋肉の疲労によるものです。これが高ずれば頭痛持ちにもなります。
簡単に並べあげるだけで、直立二足歩行が元になっている疾患がこれだけあります。
次に、直立二足歩行で内臓疾患を引き起こします。
四足と二足の違いは、“洗濯物干し”に例えられます。四足ですと、洗濯竿に相当する背骨に、きれいに内臓が吊るされ、押し合うことも癒着もありません。それが、竿を垂直にすると、洗濯物が下に固まるように、背骨の役割が消えてしまい、内臓は押し合い、癒着し、垂れ下がる一方で、臓器はその能力を十分に発揮することができなくなるのです。
胃下垂、脱腸、脱肛といった自覚症状に止まらず、一番上にある肺を除いて全ての臓器が常時圧迫され続け、そのために病んでいると言っても過言ではないでしょう。
本格的な直立二足歩行を円滑にするための骨格や筋肉は遠い将来に設計改造できるでしょうが、四足動物にとって骨髄と内臓に掛かる重力方向の変更は想定外のことですから、はたしてこれがうまく設計変更できるかどうかは甚だ疑問です。
(参考記事:2012.2.3 人は病の器であり、その最大の原因は直立二足歩行)
・無毛症と皮下脂肪と低体温
この3つは相互に関連があって、大型水生動物に共通するものです。
無毛症は、皮膚が水によって冷やされて体表面への血流が滞り、体毛への酸素と栄養補給が止まり、毛が抜け落ちたものと思われます。
また、水によって体熱が奪われて体温が低下し、基礎代謝が落ちてエネルギー利用が減り、過栄養は脂肪細胞に溜め込まれ、これが皮下脂肪になったことでしょう。
この皮下脂肪が育ってくれば、保温材として働き、体熱が奪われにくくなります。
こうして、水生生活に慣れた後でも、無理やり元の体温まで上げることなく、低体温のままで暮らすことになったものと思われます。
ちなみに哺乳類の体温ですが、陸生動物は38±0.5度、水生動物は36±0.5度といったところです。ヒトはどっちに入りますか?
低体温ですと、免疫力が低下することが分かっています。白血球が免疫を担当するのですが、低体温ですと、その活性度が落ちるのです。ヒトが病原菌に感染しやすい大きな原因になっていると考えられます。
(参考記事:2012.2.28 人が病気しやすいのは、そもそも低体温動物だから)
これらにはメリットもあります。初めて出た、数少ないメリットではありますが。
それは、皮下脂肪により体熱の放散が防げますから、エネルギー源となる食糧をあまり必要としないことです。体温も低いですから基礎代謝を抑えられ、この面からも少食で済みます。加えて、食糧が全く手に入らなくても、皮下脂肪で食い繋ぐことができます。
飢餓にめっぽう強いのが現生人類なのです。もっとも、今の日本人は飽食を満喫していますから、何の役にも立ちませんけど…。
ついでながら、メリットかどうか判断しかねますが、低体温だと長生きできることです。非常に近い種のチンパンジーよりずっと寿命が長いのはこれが原因していましょう。
(参考記事:2012.5.16 人はなぜ長寿なのか?)
・口呼吸
口から息を吸い、口から息を吐くという口呼吸、これをヒトはできます。一般の陸生動物は鼻呼吸です。口呼吸ができるのは水生動物に限られます。長く潜水して水面に浮上し、一気に息を吸うなかで、手に入れた技でしょう。
よって、喉の構造が複雑になっており、ヒトもそうです。
問題になるのは、口から息を吸うときです。鼻の中には立派な空気清浄器があって、雑菌はそこで補足されて殺菌されます。ところが、口から息を吸うと、喉がその役割をするのですが、不完全になりますし、喉は乾燥に弱いですから、乾いた空気ですと、その働きが落ち、雑菌の体内侵入を許してしまいます。
風邪を引きやすくするだけでは済みません。体内侵入した雑菌が体中の細胞に寄生してエネルギーの横取りをし、低体温にしてしまって、アレルギー症を起こさせるのです。
メリットとしては、口から息をゆっくり、そして随意に吐けますから、言葉が喋れることです。チンパンジーは随意呼吸ができませんし、口からゆっくり息を吐くこともできませんから、キャッとかウォッとかの叫び声しか出せないのと、大きく異なるのがヒトです。
(参考記事:2011.02.15 アトピーの本質的な原因について考える(その4))
(参考記事:2011.12.27 風邪を引かない“犬”に学ぶ)
・塩分コントロール機能
陸生動物は塩分をあまり必要としませんし、欠乏したときは塩分の高い湧き水を飲んだり、そうした泥を舐めるのですが、必要量が摂取できたら、そこでピタッと止めます。
ところが、ヒトは、海または塩水湖での生活を長く続けたことでしょうから、塩分のある物を好みますし、必要量以上に摂取してしまいます。
ヒトは、塩分コントロール機能が壊れてしまっていると考えてよいでしょう。
それがために、塩分の過剰摂取で高血圧になる方があります。もっとも、代替機能が働いているからと思われるのですが、塩分過多でも高血圧にならない方の方が多いです。
(参考記事:2011.11.8 ヒトはなぜ塩っ辛い物を食べてしまうのでしょうか)
陸生生活に戻ったことによって獲得した形質・体質と問題点
・発汗システムの変更
チンパンジーの発汗は、体中にあるアポクリン腺から、ほんの少しずつ汗をかき、体毛に吸い取らせて効率良く体熱を放散します。ところがヒトは、アポクリン腺を脇の下など一部に残すものの、これを全身から無くしてしまいました。その代わりに、チンパンジーの掌にあるエクリン腺(滑り止めになる)を全身に展開し、体熱が溜まると、少々の時間差をもって一気にポタポタと汗を噴出させることになりました。
何とも効率の悪い、大雑把な発汗の仕方で、これにより、脱水症状を引き起こす危険が高まり、暑いときには頻繁に水分補給せねばならない動物になってしまったのです。
(参考記事:2012.7.4 “裸の猿”ヒトには発汗の訓練が必要です)
・皮脂分泌と皮膚常在菌との共生
水生時代から皮脂分泌をしていたと思われるのですが、これによって陸生となってから皮膚の乾燥を防ぐことができました。でも、過剰に出る傾向にあり、ニキビ、吹き出物の原因になります。でも、こうしたデメリットよりもメリットが大きいと思われます。
それは、皮脂に取り付いた細菌との共生です。細菌は皮膚の垢を食べつつ、酸性の液を分泌し、皮脂を弱酸性に保ってくれるのです。これにより、酸性を嫌う病原菌の増殖と体内侵入を防ぐことができるのです。
平安時代のように入浴習慣がなければ、皮膚常在菌は1兆個も住んでいます。健康な皮膚は皮膚常在菌あってのことなのです。
高度成長期にボディーシャンプーなるものが販売されるようになってから、皮膚病が急増した事実を忘れないようにしていただきたいものです。
体を洗うとは、皮脂を落とすことなく、汗臭さだけを落とすことだと心得てください。江戸時代、入浴時には、米糠でもって脂を補給したくらいですからね。
(参考記事:2013.2.26 ヒトの皮膚呼吸、皮膚の吸収・排泄機能…)
以上、ヒトは水生生活に馴染んだことによって、たいそう厄介な問題を抱えざるを得なくなったことをよく承知していただいて、健康対策に取り組んでください。
最後に、もう一つ重大な疾患をヒトは抱えています。それは、性行為を正常に行なえなくなったことです。これについては、人類水生進化説第5章をご覧ください。