mitakeつれづれなる抄

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大倉流小鼓の松月会による能・囃子を拝見しました

2012年12月17日 | 能楽

 昨日、名古屋能楽堂において、能楽大倉流小鼓方の久田舜一郎先生社中による松月会の、能と囃子を拝見しました。

 いわゆる小鼓を稽古なさっている社中の皆さんの発表会。小鼓の稽古発表では、皆で、あるいは一人で中ノ舞を演奏したり、それか謡を入れて一部を謡う「居囃子」の形で上演したり、シテの舞を入れた舞囃子で上演するのが多いようです。

 しかし今回の松月会は、なんと能が三番も。そしてそれも小鼓方だけが稽古されているお素人さんで、あとはすべて本職。番組表では地謡と後見の名が省略されていますが、シテやワキの御名を拝見してビ、ビックリ。

 上演された能は次の通り。他に舞囃子と一調、独鼓がありますがそれらは省略です。

  • 吉野天人 シテ:寺澤幸祐
  • 葵上 シテ:観世喜正
  • 土蜘蛛 シテ:梅田邦久 頼光:久田勘鴎(正式には旧字)

 前記の通り小鼓だけがお素人さん。笛、大鼓、太鼓も東西の名手が勤められました。やっぱり番数が多いからなのかな。名古屋の舞台ではあまり見られない、聞けない流儀があり、とても新鮮でした。

 笛の森田流、ちょっと変わった奏法ですね。東京では普通でしょうし、Youtubeで聞ける囃子は森田流のが多いです。これ生で聴いたのは今回が初めてでしょうか。普段耳にする藤田流と、唱歌はほぼ共通でしょうけど、メロディがずいぶん違った感じがします。中ノ舞でも随分違う感じを受けます。

 それと大鼓の高安流。印象深かったのは安福光雄先生。鋭い音を奏でます。あれ、カンカン(それかキンキン)に焙じたのでしょうね。それと右手で鼓を打つ時の角度が随分上前から打ち下ろすような打ち方。

 やっぱり私、名古屋の舞台ばかり観ていては駄目ですね。ちょっと世界が狭かったことを思い知らされました。

 

 ・・・とこんなこと書いていますが、今回の主役は稽古発表のお素人さん。でも事前のPRが利いたのか、能を目当ての方が多く、見所(客席)の正面席は8割方埋まりましたね。能が終わると、さーっと引き、また能が近づくと人が増える、の繰り返しでした。

 私も当然、能がお目当て。でも番組表での舞囃子も捨てがたい。結局始めのほうと最後の方を除いてほぼ拝見でした。名古屋能楽堂ができて一番長い滞在時間だったかな。10時40分頃に到着し、19時過ぎに出るまで8時間以上でした。

 なにか取り留めの無い記事になってしまいました。いやそれだけ充実し、かつ中身の濃い舞台でした。「そんな小鼓が素人で良いの?」って心配がありますけど、小鼓(さらに大鼓と太鼓も)は音を出すのが目的ではなく、間を確実に刻むのが目的です。なので音が出ていない時が「音楽」なんです。この間を正確に打っていただければ(それと掛け声も)、しっかりした舞台が期待できます。

 なので、今回の能、そして舞囃子など、小鼓がお素人さんであることを忘れて舞台を堪能できました。尤もいささか不安な小鼓の方もいましたし、背後霊のように久田先生が立ち膝で後ろに着いておられた方もいましたし、華やかで和気藹々とした会でした。

 

 土蜘蛛のシテを勤められた梅田先生、蜘蛛が退治される場面で後ろには倒れませんでしたね。やっぱり危ないからだな。

 それと土蜘蛛は蜘蛛の糸をサーッと投げるのが名物。ところが今回、ラーメンの縮れ麺のように縮まって、あまり飛びませんでした。「梅田先生、歳とりはったのか」と思いましたけど、後見が投げたのも同じく縮れで、こういう糸もあるんですね。見所まで飛ぶのを期待していましたけど、そうは行きませんでした。このあとも舞囃子などが上演されるからでしょうか。


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