夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『PERFECT DAYS』

2024年01月04日 | 映画(は行)
『PERFECT DAYS』(原題:Perfect Days)
監督:ヴィム・ヴェンダース
出演:役所広司,柄本時生,中野有紗,アオイヤマダ,麻生祐未,石川さゆり,田中泯,三浦友和他
 
イオンシネマ茨木にて前述の『TALK TO ME トーク・トゥ・ミー』を観た後、
15分後から予告編上映開始の本作に向けて、109シネマズ箕面へダッシュ。
予告編には間に合わないのはもともとわかっていたこと。本編には間に合います。
 
ヴィム・ヴェンダース監督が東京・渋谷を舞台に撮り上げた日本/ドイツ作品。
なんでまたヴェンダース監督が?と思いませんでしたか。私は思いました。
きっかけは、渋谷区内17か所の公共トイレを刷新するプロジェクト“THE TOKYO TOILET”なのだそうです。
このプロジェクトのPR映画の制作が企画され、ヴェンダース監督に依頼が届いたとか。
で、当初は短編が検討されていたものの、ヴェンダース監督が長編作品として撮ることに。
 
下町のアパートに一人で暮らす中年男性の平山(役所広司)は、公衆トイレの清掃員。
毎朝きっちり決まった時間に起き、歯を磨き、軽自動車に乗り込むと、
お気に入りのカセットテープをかけて音楽を聴きながら、渋谷の公衆トイレへと向かう。
 
昼食は公園のベンチに腰掛けてサンドイッチと牛乳。
何十年も使っているカメラで木々をパチリと撮影。
黙々と清掃作業をこなして帰宅した後は、自転車で銭湯へ向かい、駅構内の居酒屋で食事する。
フィルムがいっぱいになれば写真屋に現像に出し、時折行きつけのスナックに顔を出すことも。
 
ほかに寄るところといえば、コインランドリー古本屋ぐらい。
夜は寝床に入って本を読み、眠くなれば就寝。
 
こんなふうに平山のひたすら規則正しい毎日が描かれているといえばそれだけで、
だからちょっと気を抜くと睡魔に襲われそうにもなります。
けれど、なんだかそれがとても心地よい。
平山に過去に何があったかは明かされないままですが、たぶん凄く悲しいことがあったはず。
それでも、日々の幸せを感じ、生きている姿っていいなぁと思う。
 
平山とシフトを組む実にいい加減な清掃員に柄本時生。彼が入れあげる女性にアオイヤマダ
家出して平山を尋ねてくる姪っ子に中野有紗、その母親(=平山の妹)に麻生祐未
駅構内の居酒屋の大将には甲本雅裕、スナックのママには石川さゆり、客にはモロ師岡
公園で踊るホームレスに田中泯、昼食時に隣のベンチに座るOLに(長井短)。
柄本時生演じるいい加減な清掃員が突然辞めた後のピンチヒッター清掃員に安藤玉恵
なんだか観ていて安心できる面々でした。
 
特別なことは何も起こりません。
万人にはお薦めしないけれど、落ち着けます。
公衆トイレのデザインを見るだけでもいいかも。

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『TALK TO ME トーク・トゥ・ミー』

2024年01月04日 | 映画(た行)
『TALK TO ME トーク・トゥ・ミー』(原題:Talk to Me)
監督:ダニー・フィリッポウ,マイケル・フィリッポウ
出演:ソフィー・ワイルド,アレクサンドラ・ジェンセン,ジョー・バード,オーティス・ダンジ,ミランダ・オットー,
   ゾーイ・テラキス,クリス・アロシオ, マーカス・ジョンソン,アレクサンドリア・ステファンセン他
 
まだまだ続くよ、旧年中に観た作品。
イオンシネマ茨木にて、懲りもせずに(笑)ホラー映画を
 
兄弟監督のダニー&マイケル・フィリッポウは、オーストラリア出身の双子で人気YouTuberなのだそうです。
配給元のA24は『ヘレディタリー/継承』(2018)や『ミッドサマー』(2019)など優れたホラー作品の配給でも有名で、
本作も全米で公開されるやいなやスマッシュヒットとなったとか。
 
冒頭、一軒家で繰り広げられる若者たちのパーティーに姿を見せた青年。
彼は弟を探しにきたらしく、人が溢れる庭と邸宅の中を歩き回っています。
やっと見つけた弟の様子は明らかにおかしく、連れ帰ろうとする兄に切りつけると、自らを刺して死亡。
このあと場面が変わるため、この先の話とどう関係があるのかは終盤までわかりません。
 
大好きだった母親を亡くした高校生ミアは、深い悲しみから立ち直れず、
心配する父親とも距離を置いて、親友ジェイドの家に入り浸っている。
 
どんな形であれ、もう一度母親と会えないものか。
そんな思いから、最近友人たちの間で話題になっている降霊会に参加したくなり、ジェイドを誘う。
ジェイドの弟ライリーも連れて、友人たちが集う家へ。
 
降霊会を仕切るヘイリーとジョスがテーブルの上に出したのは、人の手の形をした置物。
ふたりによれば、本物の死人の手に防腐処理を施して石膏か何かで固めたものらしい。
ミアを含め、誰もそんなことは信じずにケラケラと笑う。
 
この手の形をした呪物を握って「トーク・トゥ・ミー」と唱えた後、霊を自分の中に招き入れれば憑依するらしい。
ただし、制限時間は90秒。それを超えると霊にそのまま取り憑かれる可能性があるのだ。
自ら挙手してこの日のそれを体験したミアは、スリルと高揚感を味わう。
その後も次々と若者たちが挙手して、大興奮の90秒に大盛り上がりを見せる。
 
危険を伴うため、年端もいかない子どもに体験させるのは御法度としていたが、
取り残された感を味わっていたライリーが、自分もやってみたいと言い出す。
姉のジェイドは反対するが、悲しそうな顔を見せるライリーにミアは同情。時間を50秒にして体験させることに。
 
ところが、ライリーに憑依したのはミアの母親らしく、母親と離れたくないミアのせいで50秒を遙かにオーバー。
霊に憑依されたままのライリーは大暴れして、自らを傷つけて死のうとしている様子。
なんとか取り押さえて病院へと運び込むのだが……。
 
ホラー作品を観に行くと怖くて直視できないのが常
本作もそのつもりで視線を下げていましたが、最近のホラー作品の中ではいちばん直視に耐えたかも。
最初にミアが見た幻影は別として、ほかの若者たちが見るものはほぼ出てこないのです。
何かを見て怯え、憑依されている姿を私たちは見せられるだけなので、さほどビビらずに済みます。
むやみやたらと怖がらせるシーンがないのは私にとってはありがたいこと。
 
それでも目を伏せていたシーンが結構あるから(笑)、見落としているところはあるかもしれません。
特に終盤は顔を上げられなくて、何がどうなっているのやらわからなくなったところも。
 
冒頭のシーンはそれほど重要だと思えなかったものの、
亡くなった人の魂で遊ぶのはよくないことだというのは心に突き刺さります。
興味本位で立ち入ってはいけない領域は絶対にある。
 
顔を上げられなかったせいで、肝心のラストの解釈が合っているのかどうか不明です。(^^;
でも結局、そういうことになるのね。さまよい続ける魂。

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