夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『トンマッコルへようこそ』

2007年03月30日 | 映画(た行)
『トンマッコルへようこそ』(英題:Welcome To Dongmakgol)
監督:パク・クァンヒョン
出演:シン・ハギュン,チョン・ジェヨン,カン・ヘジョン,
   イム・ハリョン,ソ・ジェギョン,スティーヴ・テシュラー他

一昨年、韓国で大ヒットした作品。
反戦をテーマにした、おとぎ話のようなドラマです。
宮崎駿のアニメでもお馴染みの
久石譲が音楽を担当したことも話題を呼びました。
ちょっと宮崎アニメをも彷彿とさせる本作で、
笑って泣いてグッときたら、
まだまだ自分はひねくれていないかも、そう思えます。

1950年代、朝鮮半島の主権をめぐり、
韓国と北朝鮮の間で戦争が勃発。
やがて、米国をはじめとする国連軍も加わり、
国際戦争へと発展する。

さて、そんな世界情勢とは無縁と思われる、
朝鮮半島の山奥の村、トンマッコル。
村びとたちが自給自足の生活を送り、
ひたすら穏やかに時間の流れるこの村は、まさに理想郷。

ある日、連合軍の米国人兵士の操縦する戦闘機が
村の近くに墜落する。
ほどなくして、殺戮合戦の果てに生き延びた、
韓国側の南軍の兵士2名と、北朝鮮側の人民軍の兵士3名が
次々と村へ迷い込む。
敵対する者同士、村びとたちを挟んで銃を向け合い、
一触即発の事態となる。

しかし、争いごとなど知らない村びとたちは
兵士たちが武器をかざそうともビビらない。
村びとたちの最大の気がかりは、畑を荒らす大きな猪。
動くなと命じられても、畑を見に行かずにはいられないのだ。

長時間に渡り、兵士たちのにらみ合いが続くが
村びとたちはそれを楽しんですらいる様子。
空腹と睡魔に襲われた兵士たちはひとまず休戦で合意。
不発弾と思われていた手榴弾を放り投げたところ、
それが穀物庫の床下で爆発。
村びとたちの大切な食糧を焼いてしまった兵士たちは
畑仕事を手伝うことにするのだが……。

兵士たちが次第に心を開いてゆくことは予想どおり。
予想できても、やっぱりイイ。
村を守りたい一心で、米軍の爆撃機の誘導作戦に出るシーンでは、
市川染五郎似の南軍兵士に涙、涙。

猪を食べる習慣のない村びとたちが
みんなで仕留めた猪を土に埋めると、
どの兵士も猪肉が頭をよぎって眠れません。
夜中に猪の埋められた場所へ行ってみれば、兵士たち全員集合。
バツの悪そうな顔をしながら、
上手に焼いた猪肉を食べれば誰もが笑顔。

「多くの人を統率するコツは?」と聞かれた村長の答えは
「たくさん食べさせることです」。
旨い食事が人の心を癒す。

『キンキーブーツ』

2007年03月22日 | 映画(か行)
『キンキーブーツ』(原題:Kinky Boots)
監督:ジュリアン・ジャロルド
出演:ジョエル・エドガートン,キウェテル・イジョフォー,サラ=ジェーン・ポッツ,
   ジェミマ・ルーパー,リンダ・バセット,ニック・フロスト他

実話に基づく。英国に実在する靴工場のお話です。
凹んでる人はとびっきりの元気をもらえること、請け合い。

田舎町ノーサンプトン。
チャーリーは伝統ある靴工場の跡取り息子。
しかし、自分は社長の器ではないと思う彼は、
不動産会社に勤める婚約者のロンドン転勤を機に、
マーケティングを口実に町を出る。

ところが、ロンドン到着早々、父親の訃報が届く。
町へ舞い戻ったチャーリーは成り行きで社長に就任。
経営状態を調べてみれば、なんと工場は倒産寸前。
人望の厚かった父親は、従業員らに実情を話せず、
売れもしない靴を作り続けていたのだった。

仕方なく、チャーリーは従業員のリストラを図る。
取引先がないんだから、君たちに給料を払えない。
僕だってクビになんてしたくない、だけどどうしろと言うんだ。
そう言うチャーリーに向かって、
まだ若い女性従業員のローレンがこう答える。
「作るものを変えるの!」。

ある日、昔なじみの同業者に工場救済を求めて
ロンドンを訪れたチャーリーが出会ったのは、
オカマバーの人気歌手、ローラ。
彼女(彼?)はドラァグクイーン(=女装趣味の男性)。
ドラァグクイーンの必須アイテムがセクシーブーツだと知り、
チャーリーはこれぞニッチ産業だと確信する。

女装の男性の体重を支えることのできるセクシーブーツ。
ローラにデザイナーになってくれと頼み込み、
工場再生を賭けたチャーリーの悪戦苦闘が始まるのだが……。

最近の実話ベースの話の中で、いちばん惚れました。
ドラァグクイーンになんて免疫のない田舎町では
ローラが歩くだけで悪意ある言葉が投げつけられます。
でも、そのローラが素晴らしい。
男だけど、女の気持ちをくみ取ることのできるローラが、
トイレにこもって泣きつつも、メゲずに従業員の信頼を得てゆく姿は
たくましく、かっこいい。ラストのショーのシーンも圧巻。

ドラァグクイーンにとって、セクシーブーツは靴じゃない。
長さ75cmの筒状のSEXそのもの。
SEXの秘密はヒールにあり。
ローラの言葉の意味を誰もわからずにいると、
お婆ちゃん従業員が説明してみせるところなども痛快。

月並みな言い方だけど、人生ってええやん。
観ればそれがじんわりと心に。

『もしも昨日が選べたら』

2007年03月17日 | 映画(ま行)
『もしも昨日が選べたら』(原題:Click)
監督:フランク・コラチ
出演:アダム・サンドラー,ケイト・ベッキンセイル,クリストファー・ウォーケン他

本日公開の『ナイトミュージアム』の主演俳優ベン・スティラーと、
本作主演俳優アダム・サンドラーと言えば、
アメリカでは大人気の俳優でありながら、日本ではずーっと知名度イマイチ。
でも、このふたりは、私にとってはハズレなし。
ふたりの出演作の基本路線はドタバタコメディですが、
大笑いして、ホロっと来て、幸せな気持ちでいっぱいに。
本作は大笑いするつもりで借りたら、
予想に反して終盤大泣き。

建築士のマイケルには、美しい妻、可愛い息子と娘がいる。
家族は父親と多くの時間を過ごしたいと思っているが、
マイケルはつい仕事優先に。

その日も、会社だけでは仕事が片付かず、
帰宅してからも図面を広げていると、子どもたちや飼い犬が走り回る。
妻とは口を開けば喧嘩になり、気晴らしにテレビでもつけようとすれば、
部屋に何台も散乱するリモコンのせいで、どれを取ればいいのかわからない。

1台で家電すべてを操作できるリモコンを
隣家の子どもが自慢していたのを思い出したマイケルは
深夜の町にその万能リモコンを求めて車を走らせる。

1軒だけまだ開いていた店の奥まで進むと、怪しげなドアが。
初老の店員は「これで君の人生が変わる」と言ってマイケルにリモコンを差し出す。
「無料、ただし、返品不可」と付け加えて。
複数のリモコン操作の煩わしさから逃れられると思ったマイケルは
喜んで家に持ち帰るのだが……。

さて、これは、人生のメニューを操作できるリモコンです。
犬の声や誰かの小言が聞きたくなければ消音できます。
ムカつく上司がぶつくさ言っている間、一旦停止して、
上司の顔にオナラをすることもできます。
巻き戻しも早送りも思いのままですが、その人生を書き換えることはできません。
過去はそのまま、未来もそのまま、予定どおりに起こることを
巻き戻して見たり、早送りしたりするだけです。

そして、一度早送りしたことは、リモコンの学習機能により、
常に早送りされるようになってしまいます。
たまにはその出来事をゆっくり味わいたいときでも、勝手に早送りモードに。

将来に幸せがあるはずだからと、今を早送りしては駄目。
今を大事にしなかったら、将来も幸せにはなれない。
急がずに、毎日を大切に。そう思わせてくれる作品です。

善人は報われる。

『夜のピクニック』

2007年03月13日 | 映画(や行)
『夜のピクニック』
監督:長澤雅彦
出演:多部未華子,石田卓也,郭智博,西原亜希,貫地谷しほり他

恩田陸の同名ベストセラー小説の映画化。
全校生徒が夜を徹して80kmを歩く「歩行祭」は、
原作者の母校である茨城県立水戸第一高等学校で、
1949年からおこなわれている伝統行事「歩く会」がモデル。
実際は映画の設定より10km短い、70kmのようです。

最初は学芸会を観ているようで恥ずかしかったのに、
気がつけば爽やかな涙。
ベストセラーなので、ネタバレもOKにさせてもらいます。

高校3年生の貴子にとって、歩行祭も今年が最後。
彼女には胸に秘めたひとつの賭けがあった。
それは、一度も話したことのない同級生の融に
歩行祭中に話しかけること。

貴子と融は実は異母兄妹。
融の父親が浮気してできたのが貴子だった。
その事実を知っているふたりは、
お互いが自分のことを憎んでいると考え、今まで避け合ってきた。

どんなに親しい友人にも打ち明けられないまま
高校生活を送ってきたふたりのことを
周囲は勝手に両想いだと決めつけ、
歩行祭の間になんとかくっつけようとするのだが……。

80kmのうち、最初の60kmを徒歩。
残り20kmは自由歩行と名づけられた時間で、走る生徒もいるんですから、
最近、「1km走ろうと思ったら走れる?」と知人から聞かれて
「走れる」と言いきれなかった私には信じられません。
何が嬉しゅうてそんなに歩かなあかんねんと思いましたが、
本作を観たあとにはそれもいいかなと。

貴子と融が何らかの血縁関係にあることは
冒頭でなんとなく匂わされます。
原作を知らず、恋愛物を期待していると
兄妹であってほしくない気はします。
でも、お互い、気になる存在であるのは恋愛物と一緒。

私がとても好きだったのは、避け合いながらも
お互いを目で追い続けていたことがわかる、このやりとり。
歩行途中で足首を捻挫した融に向かって、貴子の台詞は
「足、ほかにもどこか怪我してるの?
 最近、歩き方ちがうよ」。
テニスで膝を傷めたと言う融に、
貴子が「満身創痍だね」と笑いかけると、融はこう言います。
「やべっ、その漢字、書けないや。
 漢字、強いよな。クラス当番の日誌、漢字だらけ」。

「言ってほしいこと、言ったほうがいいことってある。
 それを言わせてくれる力が、歩行祭にはある」。
酔った力を借りないと言えないようなことは
所詮その程度のことだと思うけれど、こんな力ならいいな。

『セックス・アンド・マネー』

2007年03月09日 | 映画(さ行)
『セックス・アンド・マネー』(原題:Friends with Money)
監督:ニコール・ホーロブセンナー
出演:ジェニファー・アニストン,フランシス・マクドーマンド,
   ジョーン・キューザック,キャサリン・キーナー他

原題は“Friends with Money”。
どぎつい邦題は、おそらく安直な理由から。
人気ドラマの『セックス・アンド・ザ・シティ』と同監督の作品で、
『フレンズ』のジェニファー・アニストン主演だからと思われます。
もしも10年前に観ていたら、つまらなかったかも。
40歳前後の女性が観れば(いや、男性も)、
更年期の問題や夫婦のあり方を考えさせられ、
唸って、笑って、共感できるシーン満載のはず。

クリスティン、ジェイン、フラニー、オリビアは昔からの女友だち。
脚本家のクリスティン、デザイナーのジェイン、専業主婦のフラニーは、
それぞれ夫と子どもに囲まれ、幸せな毎日を送っているように見える。

オリビアのみ、独身。以前は高校教師だったが、
今はメイドで生活費を稼いでいる。
不倫相手にも捨てられたオリビアを
この世の不幸をすべて背負ったかのように思う友人たちは、
彼女に仕事やら男性やらを紹介しようとするのだが……。

こんな彼女たちの日常だけで物語は進みます。
それだけに、「あるある、こんなこと」がいっぱい。
ビジュアル的に地味な役者揃いなせいか、
日本では未公開でしたが、実は見事な顔ぶれ。
『40歳の童貞男』(2005)のキャサリン・キーナー、
整形は絶対しないと宣言しているフランシス・マクドーマンド
私の大好きなジョン・キューザックの姉、ジョーン・キューザック。
さらにはハリポタのルシウス役、ジェイソン・アイザックスも。

表向き幸せそうでも、誰もが不満をため込んでいて、
みんな話を聞いてほしがっているように思えます。
聞き上手になるって、むずかしい。

そういえば、知人に元ヤンキー風の(実際そうだった)、
ものすごい聞き上手な男性がいます。
ムカツク人の話をすれば「おぉ、そんな奴、俺がドツキに行ったる」。
何故この人に愚痴を聞いてもらうだけで
こんなに気が晴れるんだろうと考えてみたら、
ひたすらこちらの味方になってくれて、説教じみたことは一切言わない。
これって、聞き上手になる極意じゃないでしょか。
その知人の元カノがソープ嬢だと聞いて納得。
身体を張った仕事だと、聞き上手な彼がほしいような気がして。
その元カノに似てると言われたときは、かなり複雑な心境。(^^;