夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『マイケル・ムーアの世界侵略のススメ』(TOHOシネマズ1ヶ月フリーパスにて鑑賞の20本目@梅田)

2016年05月31日 | 映画(ま行)
『マイケル・ムーアの世界侵略のススメ』(原題:Where to Invade Next)
監督:マイケル・ムーア

TOHOシネマズ1ヶ月フリーパスポートの有効期限まであとわずか。
週末公開作品を網羅すべく、またまた午後休を取りました。
網羅しようにも劇場ごとに上映作品は異なるから、
大阪と兵庫のTOHOシネマズを数時間で渡り歩くのは無理だし、
どれか1本はあきらめなければならない模様。
熟考して金曜日に梅田で2本、土曜日になんばで4本と決めました。

12:00のチャイムとともに職場を出れば、
12:45に上映開始の本作に余裕で間に合うと思っていました。
だって昼間の新御堂筋はたいてい空き空きだし。
そこのところは想定どおりだったのに、駐車場が混んでいる。不覚。
TOHOシネマズにもっとも近い、最大料金設定のある駐車場は満車。
仕方がないのでUターン、いつも利用する茶屋町のタイムズへ。

ここは満車じゃなかったけれど、機械式立体駐車場なので出入庫に時間がかかる。
そのうえ、2台前の客は車内土足厳禁らしく、
入庫してから靴を履き替えたりしていて、とにかく時間がかかっとる。
ちょっぴりイライラしつつも、これではなんばで時間がないと叫ぶ客と同じ。
いかんいかんと心を落ち着かせ、もしも本編に間に合わなかった場合を考えて、
入庫を待つ間にスケジュールの練り直し。が、幸いにも12:55に滑り込むことができました。

お久しぶりのマイケル・ムーア監督。
DVDまで買った『ボウリング・フォー・コロンバイン』(2002)、
その後は作品そのものよりも、監督の肥満のほうが気になって、
もうちょっと痩せないと早死にするよと言いたくもなり。
彼に清潔さなど求めるつもりはないものの、
あれだけ太ると何をやってもだらしなく見えてしまいます。
これは予告編もまぁまぁ面白そうだったので、肥満体には目を瞑って(笑)。

アメリカを飛び出してヨーロッパへと向かった監督。
ヨーロッパ侵略を目論むも、各国で知る驚くべき文化や制度。
そこで監督はそれらをアメリカにも取り入れるべきものとして持ち帰ることに。

いくつか例を挙げてみると……。

フランスの小学校の給食はフルコースのフレンチ
陶器の皿にガラスのコップ。プラスチックではありません。
ナイフとフォークもきっちりと用意され、
子どもたちは給食によってマナーを学び、
給仕し給仕される楽しさ、食事する楽しさを感じ取ります。
水分を摂取することも忘れない。もちろんコーラではなくて水。
この給食の予算がアメリカよりも安価でまかなわれているそうです。

昔はアメリカと同程度の学力だったフィンランド。
あるとき試した施策が功を奏し、子どもたちの学力は急上昇、世界のトップクラスに。
いったいどういう方法を採ったのだと尋ねてみれば、「宿題をなくした」。
宿題をなくしてみれば、放課後に家族や友人と過ごす時間が増え、
さまざまな会話や遊びや読書に費やすようになる。
そうすることで自分で考える力がついてゆくと。

ノルウェーの刑務所は一軒家。囚人がでかい包丁で調理にいそしむ姿が普通。
彼らにとっての最大唯一の罰は、家族や友人と会えないこと。
看守は彼らの話を聞き、守ってくれる存在だから、暴動なんて起きません。
一軒家ではない厳重警戒刑務所であってもそれは同じこと。

私は死刑に反対ではありません。
正直なところ、死んでしまえばいいと思う事件の犯人だっています。
が、息子を殺された父親が犯人にすら尊厳を認めるシーンには心を揺さぶられました。

そのほか、イタリアの有給休暇やアイスランドの銀行の話など、
どれも「へ~」とか「ほ~」とか、興味を惹かれます。

笑える小ネタも多く、『俺たちステップ・ブラザース 義兄弟』(2008)の1シーンや、
ジャック・ブラックが一瞬映ったり。
ネスレのCMでただの太ったオッサンだと思っていた人が気づいてくれますように。

デブでもまだまだキレ味は衰えていないムーア監督なのでした。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『殿、利息でござる!』(TOHOシネマズ1ヶ月フリーパスにて鑑賞の19本目@伊丹)

2016年05月30日 | 映画(た行)
『殿、利息でござる!』
監督:中村義洋
出演:阿部サダヲ,瑛太,妻夫木聡,竹内結子,寺脇康文,きたろう,千葉雄大,
   西村雅彦,堀部圭亮,上田耕一,羽生結弦,松田龍平,草笛光子,山崎努他
ナレーション:濱田岳

西天満で晩ごはんの前に半休を取って2本ハシゴの2本目。
前述の『海よりもまだ深く』と同じくTOHOシネマズ伊丹にて。

『武士の家計簿』(2010)と同じ原作者、磯田道史の『無私の日本人』に収載される、
「穀田屋十三郎」、「中根東里」、「大田垣蓮月」のうち、「穀田屋十三郎」を映画化。
監督は質の高い娯楽作品を次々と繰り出す中村義洋
もっと軽いコメディかと思いきや、なんともいい話で泣きました。

18世紀後半、江戸時代中期の仙台藩。
百姓や町人の暮らしは重税のために困窮し、破産や夜逃げが続出。
宿場町の吉岡宿(よしおかじゅく)も例外ではなく、誰もがうちひしがれている。

町の行く末を案じる穀田屋十三郎(阿部サダヲ)は、
なんとか町を救えないものかと知恵者の菅原屋篤平治(瑛太)に相談。
酒の席で篤平治が発したアイデアを真に受ける。

それは、藩に大金を貸し付けて、その利息で町を再建しようというもの。
計画にはざっと1000両(約3億円)が必要。
それだけの金を用意できるわけもなく、篤平治はすぐにその話を忘れる。

ところが後日、十三郎が穀田屋十兵衛(きたろう)を伴って篤平治のもとへやってくる。
先日の話を十兵衛にしたところ、町のためならば金を出すと乗り気。
お上に金を貸すなど正気の沙汰ではないと篤平治は困惑。

肝煎(きもいり=世話役)の遠藤幾右衛門(寺脇康文)に話せば止められるにちがいない。
篤平治が十三郎を連れて幾右衛門を訪ねると、幾右衛門も賛成する。
ならばと、町でもっともお上に近い立場にある大肝煎、千坂仲内(千葉雄大)に話すと、
仲内は「町のことをそこまで考えている者がおるとは」と涙を流すではないか。

藩に無事に金を貸すことができたとして、利息はすべて町に落とす。
だから、貸し付ける金を工面しても、その金は工面した当人たちには返ってこないし、
何の得にも儲けにもならない。これはあくまで町のため。
それを理解して金を用意しようという奇特な人間など、この5人以外にいるとは思えない。
話が話だけに、1000両用意できる前にお上に知られでもしたら大変。
5人は節約に節約を重ね、家財をなげうって銭集めに奔走するのだが……。

老いも若きも役者が良し。

阿部サダヲ演じる十三郎は、もとは浅野屋の息子。
幼い頃、先代の浅野屋甚内(山崎努)から穀田屋に養子に出され、
甚内の名を継いだのは弟(妻夫木聡)。
金を貸してはたんまりと利息を取り、どケチと呼ばれた父親と、
その血をそのまま継いだとおぼしき弟。
十三郎は長男である自分が養子に出されたことに傷つき、
あんな守銭奴になるものかと心に誓って生きてきました。
いろいろと明らかになるシーンに思いがけず涙。

両替屋役の西村雅彦には顔を見ているだけで笑わせられ、
悪役も多い堀部圭亮が印象に残る代官役、松田龍平が無慈悲な出入司役で、
おもしろい配役といえましょう。
中村義洋作品の常連、竹内結子が飲み屋の女将役。気っぷが良くて綺麗。
同じく常連の濱田岳がナレーションで声のみの出演とはまた粋。

自分がどうなろうとかまわない。
町の皆が幸せに暮らせますようにとの一念で走り回った無私の人たち。
こんなふうにはなれないものだけど、こんなふうになれたら。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『海よりもまだ深く』(TOHOシネマズ1ヶ月フリーパスにて鑑賞の18本目@伊丹)

2016年05月29日 | 映画(あ行)
『海よりもまだ深く』
監督:是枝裕和
出演:阿部寛,真木よう子,小林聡美,リリー・フランキー,
   池松壮亮,吉澤太陽,橋爪功,樹木希林他

平日、晩ごはんは西天満で外食予定の日、午後休を取りました。
最近やみつきの、「晩の予定の前に映画のハシゴ」というやつ。
最終目的地は西天満なのだから、梅田かなんばで映画を観られたらよかったのですが、
そこでは観たいものがない。というのか、もう観るものがない。
で、この日のために取っておいた伊丹で2本。

駄目駄目だった『エヴェレスト 神々の山嶺』はともかくとして、
真面目な役も三の線で出ているときも基本的には良い阿部寛
是枝裕和監督作品には数度出演している彼の効果的な使い方を
やはり監督はよくご存じのようです。

作家の篠田良多(阿部寛)は、15年前に新人賞を受賞したきり、鳴かず飛ばず。
小説の取材と称して探偵事務所で働いている。
だが、給料はすべてギャンブルにつぎ込む始末で、そんな夫に愛想を尽かし、
妻の響子(真木よう子)は一人息子の真悟(吉澤太陽)を連れて出て行ってしまう。

響子に未練たらたら、月に一度の真悟との面会が楽しみでならないのに、
月5万円の養育費を滞納するわ、ギャンブルのせいで面会には遅れるわ、
そのくせ真悟にいい顔をしようとするから、響子は呆れっぱなし。

なんとか金を工面しようと、探偵事務所の仕事で悪だくみ。
所長の山辺康一郎(リリー・フランキー)にはバレぬよう、
同僚で後輩の町田健斗(池松壮亮)の協力を仰いでいる。

探偵としての腕を活かして、響子の身辺調査をしてみれば、
どうやら新しく男ができた様子。
健斗を伴ってデートの席に張り込み。相手の男(小澤征悦)に嫉妬あらわ。

そんな良多の頼みの綱は、団地で気ままに一人で暮らす母親の淑子(樹木希林)。
母親の懐を当てにするなと姉の千奈津(小林聡美)に怒られるが、
もはや母親しか頼れないのだから仕方がない。

真悟との面会日も母親を当てにして実家へ。
響子にも実家へ真悟を迎えにくるようにと連絡を入れる。
すると、折からの台風で3人とも実家から動けなくなり……。

なんということはない話です。
なのに眠気に襲われなかったのはどうしてなのでしょう。
やはりこの手の話が私は好きなのだと思います。

優しさに満ちた是枝監督の本作は、心に残る台詞がいっぱい。
やきもちと責任感と未練は、見方によっては同じだというのが新鮮。
「いったいどこで間違っちゃったんだろう、自分の人生」と思いはしても、
そんな間違いも丸ごとひっくるめてその人の人生。
「ほんとに男ってやつは」という言葉に笑った女性は多いはず。
是枝監督だって男なのに、こんなだけど勘弁してってことかしらん(笑)。

未来にやきもちを焼いても仕方ない。
今を生きるのが大事。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『ガルム・ウォーズ』(TOHOシネマズ1ヶ月フリーパスにて鑑賞の17本目@なんば)

2016年05月27日 | 映画(か行)
『ガルム・ウォーズ』
監督:押井守
出演:メラニー・サンピエール,ランス・ヘンリクセン,ケヴィン・デュランド他
声の出演:朴路美,壤晴彦,星野貴紀他

TOHOシネマズなんばにて、前述の『マクベス』とハシゴ。
日本人監督作品だけど英語。
字幕版を上映している劇場が少なすぎて、吹替版で我慢。
これもフリーパスがなければ観なかったであろう1本ですが、
押井守監督の人気は根強いらしい。
見事に全員ひとりで来ている客ばかりというのが可笑しい。

もともとは1990年代終盤に着手されるはずだったプロジェクトで、
2000年には公開される予定だったとか。
セガとバンダイの合併騒動などの煽りを受けて頓挫。
10年以上経ってからようやくプロジェクト再始動。
昨年秋に北米で公開され、このたび日本で公開。
紆余曲折あった作品らしいですが、相当マニアック。

“ガルム”とはクローン戦士。
古代の星アンヌンには、かつてガルムの8部族が存在し、
創造主ダナンによってそれぞれの役割を与えられていた。
しかしあるときダナンが去り、その後の覇権を巡って部族が対立。
激しい争いが繰り広げられ、残っているのは3部族のみ。

空を制する部族“コルンバ”の女性戦士カラは、
陸を制する部族“ブリガ”の兵士スケリグ、
情報技術に長けた部族“クムタク”の老人ウィドに出会う。

最初はお互いを敵対視していた3人だが、ウィドがふと問いかける。
ダナンはなぜ去ったのか。
我々ガラムとはいったい何者なのか。
我々はどこから来てどこへ行くのか。
カラとスケリグもそれを知りたいと思うように。

ウィドは絶滅したはずの部族“ドルイド”の最後の生き残りナシャンを連れていた。
ナシャンはダナンの声を伝える役目を果たしていた部族。
ナシャンに導かれ、3人は伝説の森“ドゥアル・グルンド”を目指すのだが……。

実写とアニメが融合した不思議な映像が美しい。
しかし二日酔いと寝不足の頭ではついていくのが大変。
いや、そうでなくてもかなりツラかったはず。
わからん人は観てくれなくていいよとでも突き放されているようで、
はい、すみませんと言いたくなります。

これが予定どおり15年以上前に公開されていれば斬新だったのかもしれません。
だけど今となってはどこかで見たような気がするシーンばかり。
押井守の旬はとっくに過ぎちゃった感は否めません。
とにもかくにも気持ちよくうつらうつらできます。(^^;

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『マクベス』(TOHOシネマズ1ヶ月フリーパスにて鑑賞の16本目@なんば)

2016年05月26日 | 映画(ま行)
『マクベス』(原題:Macbeth)
監督:ジャスティン・カーゼル
出演:マイケル・ファスベンダー,マリオン・コティヤール,パディ・コンシダイン,ショーン・ハリス,
   ジャック・レイナー,エリザベス・デビッキ,デヴィッド・シューリス他

日曜日のTOHOシネマズなんば。何か割引がある日でもないのにババ混み。
こういう日に必ず見かけるのが、上映時間ギリギリになって来館し、
「並んでいるひまがない。なんとかしろ」と怒っている客。
いやいや、アンタ、余裕を持って来ないほうが悪いのよと苦笑い。
まったく動じずに「並んでください」というスタッフが頼もしい(笑)。

『マクベス』といえばもちろんウィリアム・シェイクスピア
なんぼほど映画化されているんだろうと思ったら、意外に少なくて4度目。
ジョン・エマーソン監督によって1915年に、
オーソン・ウェルズ監督によって1948年に、
ロマン・ポランスキー監督によって1971年に、そして本作。
実は私、読んだことがありません。
そんな私にわかりやすく説明してくれるかのような作品です。

激しい内戦のせいで荒廃したスコットランド
ダンカン王への裏切り行為に走る領主も多いなか、
忠誠を誓うグラミスの領主・マクベスは獅子奮迅の活躍、反乱軍を撃退する。

マクベスが戦友バンクォーと戦地を後にしようとしたとき、
どこからともなく3人の魔女が現れる。
魔女たちはマクベスがスコットランド王になると予言。
さらにはバンクォーの子孫がいずれ王になるであろうとも予言する。

マクベスの功績を褒めたたえるためにグラミスを訪れたダンカン王一行。
王は息子マルコムを王位継承者に定めるが、王位に固執するマクベスの妻は、
今こそ王を暗殺すべきとマクベスをそそのかす。

その夜、妻から言われたとおりに王の胸にナイフを突き立てたマクベス。
現場を目撃したマルコムは脅されてイングランドへと逃亡。
マクベスは王の護衛を暗殺犯に仕立て上げ、まんまと王位に就く。

しかし、バンクォーはマクベスのことを疑っている様子。
それにマクベスの頭からは魔女の予言が離れず、
バンクォーとその幼い息子の命を絶たねば安心できない。
周囲の誰に対しても疑心暗鬼になっているマクベスは錯乱状態に陥り……。

モデルとなっているのは、1040年から1057年にかけて在位した実在のスコットランド王マクベス。
へ~、こんな人が実際にいたのですね。

この手の戯曲を映画化するのは難しい。
台詞が芝居じみているから、なんとなく入り込みにくく、
やはり舞台のほうが楽しかろうと想像します。

ま、でも、古典と言われるものは読んでおくべきなのだろうと思います。
長いこと放置したままのシェイクスピアあれこれ、これを機会に読もうかと。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする