夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

2回目の『ラストマイル』

2024年09月07日 | 映画(ら行)
1回目は公開初日に観ました。
リピートする気はなかったのですが、この日観ようと思っていた『モンキーマン』がイオンシネマ茨木で20:30からの上映で、
それまでボーッとしているには時間がありすぎる。
台風のせいで週末はどこの劇場も閉館するかもしれないから、その前にせっせと劇場通いしておこうと思いました。
 
2回目の『ラストマイル』は満島ひかり演じるエレナの人となりがわかっているから、
彼女のテンション高すぎる言動に嫌気が差したりはしません。
だけど、新任のセンター長から「センター長ではなくエレナと呼んで」と言われたり、
自分のことをいきなり下の名前で呼び捨てにされたりするのはドン引きですよねぇ。
岡田将生演じる孔の「なんじゃこいつ」みたいな顔に笑ってしまいます。
 
「ロジスティクス」と言えない酒向芳演じる刑事、それをフォローするのは大倉孝二演じる後輩刑事。
「客が注文したのはのり弁なのに、唐揚げ弁当にすり替わっている」というエレナの例えを
「豪華になってるじゃないか」と大倉孝二がツッコミ入れるところは少しだけ面白い。
「桃太郎だと思ったら桃から出てきたのは金太郎」という例えには、
「桃から出てこない時点で桃太郎ではない」というディーン・フジオカ演じる五十嵐にもクスッ。
この五十嵐が本当に嫌な奴だと思うけれど、ディーン・フジオカだから「どうにもできなかった」と言うシーンには悲哀を感じます。
イケメンじゃないオッサン俳優が演じていたら、もっと憎らしく思ったでしょうね(笑)。
 
2回目だと俳優そのものを見る余裕も出てきて、違った楽しみ方ができます。
それに、漫然と見ていた物流業界のさまも、1回目よりいろいろと感じるところが多い。
羊急便の関東局局長役の阿部サダヲが、電話の相手が社長だと知らずに叫ぶところが好きです。
その阿部サダヲが満島ひかりに「やめましょう!」と言われるシーンも好き。
 
大手企業の商品配送が自社の60%ものシェアを占めるせいで楯突けない。
けれど、1個運んで150円ではドライバーのなり手に困る。
エレナの計画により、運送会社が一致団結するのは小気味のいい場面です。
 
ひとつの荷物にどれだけの人が関わり、私たちの手元に届けられているのか。
人としての扱いを受けていないかのような現状があるならば、なんとかせねばなりません。
でも、いかに便利かばかり考えてしまうのですよねぇ。
 
火野正平宇野祥平のような宅配ドライバーがたくさん存在しているということを心に留めておきたいです。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『ラストマイル』

2024年08月28日 | 映画(ら行)
『ラストマイル』
監督:塚原あゆ子
出演:満島ひかり,岡田将生,ディーン・フジオカ,大倉孝二,酒向芳,宇野祥平,安藤玉恵,火野正平,阿部サダヲ他
 
公開初日、前述の『恋を知らない僕たちは』の次に、同じくイオンシネマ茨木にて。
 
塚原あゆ子監督は人気TVドラマを多く手掛ける演出家でありプロデューサー。
今の私はTVドラマにはほぼ時間を割けないので、同監督のTVドラマシリーズは全然観ていません。
ただ、本作がやたら豪華キャストだなと思っていたら、人気TVドラマの面々が配役そのままに登場しているのですね。
『アンナチュラル』と『MIU404』はいずれも塚原監督と野木亜紀子の脚本コンビでかつて放映されたTVドラマ 。
この2本のTVドラマと本作は世界を共有する作品で、こういうのを「シェアードユニバース」と言うのだとか。
ま、マルチバースよりはずーっとわかりやすいですし、
もとのTVドラマファンも楽しめれば、本作が初めてという私のような人も問題なく楽しめる作品です。
 
“ブラックフライデー”を目前に控え、巨大物流倉庫のセンター長に着任した舟渡エレナ(満島ひかり)。
正社員に1名に対して派遣社員はその百倍。
数少ない正社員のひとりでチームマネージャーの梨本孔(岡田将生)を従え、稼働率に注視しながら仕事を進めようとする。
 
ところがその矢先、世界最大手のショッピングサイトから配送された荷物が爆発する事件が発生。
その後も同じサイトで発注された荷物が配達先で立て続けに爆発。
これは事故ではなく、明らかに爆発を狙った事件であることがわかる。
 
解明まで物流を止めたい警察と、絶対に止めないと誓うエレナ。
戸惑いつつも上司のエレナに従うしかない孔だったが、エレナの行動がどうも怪しくて……。
 
始まってからかなり時間が経つまで、エレナのことが大嫌いでした。
テンションの高さ、身勝手さ、会社の利益しか考えていない行動、何もかもが受け入れ難く、
これはエレナの人となりゆえなのか、それとも満島ひかりの演技に問題があるのかと思ったほど。
 
エレナが不可思議な行動に走るのが見えたとき、この人の復讐劇なのか、
いやいやいや、そんなに単純な話じゃないよねぇと思いはじめ、するとエレナに肩入れしたくなってくる。
仏頂面の岡田くんの演技もよくて、この人は最近悪い役も多いけど、
この程度の「愛想無しだけど本当はいい奴」なところがやっぱり見たいなぁと思う。
 
中村倫也は病院で寝たきりの役ですが、彼の思いについてはとても考えさせられます。
彼が残したロッカーの落書きみたいな書き置き。
「2.7m/s」はベルトコンベアの流れる速度。「70kg」はベルトが耐え得る重量。これを超過したとき、稼働率は「0」になる。
飛び降りてみたら確かにわずかな間「0」にはなったけど、
頭から血を流して死にかけている自分の横でまたベルトコンベアは流れだし、稼働率のメモリが上がってゆく。
命を賭けた意味が何もないところが悲しく残酷です。
 
宅配ドライバーを演じる火野正平宇野祥平(いま気づいたけど、このふたり名前が似すぎ(笑))、
宇野祥平役の彼の元勤務先が最後の伏線となっているところなど、とてもよかった。
シングルマザー役の安藤玉恵のこんな真面目な役もたまにはいいですね。
 
これぞエンタメって感じです。みんな好きでしょ。私も好きです。
それぞれのTVドラマも観たくなる。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『ロイヤルホテル』

2024年08月16日 | 映画(ら行)
『ロイヤルホテル』(原題:The Royal Hotel)
監督:キティ・グリーン
出演:ジュリア・ガーナー,ジェシカ・ヘンウィック,トビー・ウォレス,ヒューゴ・ウィーヴィング,
   ダニエル・ヘンシュオール,ジェームズ・フレッシュヴィル,アーシュラ・ヨヴィッチ他
 
テアトル梅田で4本ハシゴの2本目。
 
『アシスタント』(2019)のキティ・グリーン監督によるオーストラリア作品。
ピート・グレッソン監督がハラスメントをテーマに2016年に撮ったドキュメンタリー、
“Hotel Coolgardie”をモチーフとしているそうです。
 
カナダ出身のハンナとリブは親友同士。
アメリカで生活していたふたりは、客船に乗り込んでオーストラリアへ。
旅を楽しむ予定だったのに、リブが船中でクレジットカードが使えなくなったと言い出す。
現金の持ち合わせはなく、旅行するどころではなくなってしまう。
 
致し方なくワーキングホリデーの道を選び、紹介されたのは田舎のパブ“ロイヤルホテル”での住み込み。
お気楽な接客仕事だと思いきや、ほかに娯楽施設のないここでは客たちが好き放題。
オーナーのビリーはパワハラ極まりない飲んだくれで、常連客のセクハラも横行していて……。
 
鑑賞前にあらすじを読んだとき、もの凄いパワハラとセクハラなのだろうと思っていました。
そう思って観てみると、そこまで凄いとも思えない。
ただ、逃げることはできないこの土地でこんなところに押し込まれたら、それは恐ろしくてたまらない。
 
軽くいなせばいいものを、ハンナはそうはできなくていちいち腹を立てます。
するとそれが客の怒りを呼ぶのか、ストーカーのごとく執着されるようになる。
一方のリブは逆に脇が甘すぎて、飲んではヘラヘラと笑い、どこかに連れ去られそうにも。
もとはといえばこんなことになったのはリブのせいなのに、厳しいハンナに逆ギレ。
 
逃げようよ早く!と思うものの、完全にはハンナとリブの味方になれず、
特にリブには無性に苛立たせられます。
リブがハンナに「大嫌い。放っておいて」と言い放ったときなどは、
こんな奴はホントに放っておいていいよと思いました。
 
“マトリックス”シリーズのエージェント・スミス役が懐かしい。
 
いろいろともやもやして、スッキリしません。でも面白い作品でした。
この町には住みたくない。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『ルックバック』

2024年07月11日 | 映画(ら行)
『ルックバック』
監督:押山清高
声の出演:河合優実,吉田美月喜他
 
『チェンソーマン』の人気漫画家・藤本タツキによる同名漫画をアニメ映画化。
割引なしの特別料金1,700円で公開中。イオンシネマ茨木にて。
 
主人公女子ふたりの声を河合優実吉田美月喜が務めています。
私は『チェンソーマン』を知らないので、このふたりに惹かれて観に行ったようなものです。
 
藤野は自身の漫画を描く才能に対して絶対的な自信を持つ小学4年生女子。
学年新聞に毎回自作の4コマ漫画を連載し、同級生や家族からいつも称賛を浴びていた。
 
そんな彼女にある日、教師が声をかけてくる。
学校新聞の漫画の1枠を不登校の同級生女子・京本に譲ってやってほしいと言うのだ。
教師曰く、京本は学校には来られないけれど漫画は描けるそうだと。
 
余裕を持って京本に1枠譲った藤野だったが、できあがった学年新聞を見て愕然とする。
京本の巧さは一目瞭然。同級生らが思わず「藤野より上」と口走るほど。
 
以降、相変わらず不登校の京本に負けじと藤野は明けても暮れても漫画を描きつづけるが、
どれだけ頑張ろうが京本には敵わないことを悟り、小学6年生の半ば、突然描くことをやめる。
 
小学校卒業の日、やはり学校に来なかった京本。
教師から卒業証書を届けるように言いつけられた藤野は渋々出向く。
すると、藤野の姿を見た京本は驚愕し、「藤野先生!」と呼ぶ。
学校に行けなかった京本は藤野の漫画の熱烈なファンだと言う。
 
こうして初めて対面した藤野と京本は、共同で漫画を描くようになるのだが……。
 
好きな絵です。そして話も面白かった。
 
藤野と京本、ふたりが仲睦まじく漫画を描きつづけるわけじゃない。
途中、京本は美大に進んでもっと絵を学びたいと言い出し、すでに爆売れ漫画家だったこのコンビは解散。
ひとりになったからって藤野の人気が下がるとかいう安直な展開ではなくて、
ひとつの悲惨な事件を機に、物語がふたつに分かれます。
 
ネタバレになりますが、ひとつはこの流れのままの物語。
もうひとつは、「小学6年生で漫画を描くのをやめた藤野」が「藤野と出会わないままだった京本」を救う物語。
後者は本来の世界とは異なるわけで、こちらは空想上の世界のように思えます。
 
窓の外の景色で感じる四季がとても心地よいけれど、起きたことは残酷。
ペンを走らせつづける藤野の背中を見ていると切なくなります。
 
実写化もできそうな作品。でもこれはきっと漫画の世界の中にあるほうがいい。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『ライド・オン』〈吹替版〉

2024年06月04日 | 映画(ら行)
『ライド・オン』(原題:龍馬精神)
監督:ラリー・ヤン
出演:ジャッキー・チェン,リウ・ハオツン,グオ・チーリン,ユー・ロングァン,ユー・アイレイ,ジョイ・ヨン,
   アンディ・オン,シー・ヤンネン,ラン・ユェティン,シャオ・シェンヤン,レイ・ロイ,ウー・ジン他
 
イオンシネマ茨木にて、前述の『映画 からかい上手の高木さん』の次に。
21時半も過ぎてからの回でしたが、ジャッキー・チェンはやはり人気。
絶対字幕版を観たかったのに、上映している劇場も回数も少なすぎる。致し方なく吹替版を鑑賞。
 
引く手あまたのスタントマンだったルオ・ジーロンは、撮影中に負った怪我のせいで第一線から退く。
今は愛馬のチートゥと広場に出かけて小銭を稼ぐのみで、借金取りに追いかけられることもしょっちゅう。
 
ある日、旧知の会社のワン社長が亡くなったことから、その債務トラブルに巻き込まれる。
チートゥはワン社長が私費で得た馬だったから、会社の資産ではない。
それゆえワンから譲り受けたチートゥはルオのものであるはずなのに、会社側はチートゥの所有権を主張。
チートゥを手放したくないルオは困り果てる。
 
そんなルオに友人たちは一人娘のシャオバオに頼ることを提案。
スタントの仕事で各地を飛び回っていたルオは、妻子と共に過ごすことができなかったせいで離婚。
父親に棄てられたと感じていたシャオバオと疎遠になり、妻が亡くなった今は連絡も取れず。
シャオバオは弁護士を目指してロースクールに通う身で、相談すれば力になってくれるに違いないと友人たちは言うのだ。
 
恥を忍んでシャオバオのもとを訪ねたところ、予想通りつれない態度。
自分はまだ弁護士ではないから何もできないし、そもそもアナタと私は何の関係もないとまで言われる。
肩を落として帰るルオだったが、後からこっそり父親の様子を見に来たシャオバオは、やはり放っておけなくなる。
 
シャオバオは自分の恋人で新米弁護士のナイホァにこの件を相談。
訴訟沙汰となったルオを援護しつつ、エキストラで人気者となったチートゥのことも守るのだが……。
 
シャオバオ役のリウ・ハオツンがめちゃめちゃ可愛い。
世の中のお父さん方、特に娘と円満な関係が築けていない人はこれを観て泣くしかありません(笑)。
 
チートゥがまた愛らしすぎる。
私は特に馬が好きなわけではないけれど、ルオがチートゥを引き取ることになった経緯も含めて、
こんな馬だったらそりゃもう手放したくなくなるでしょう。
シャオバオにも泣かされるけど、そうだった、私が泣かされたのはチートゥのほうでした。
 
ジャッキー・チェンのこれまでのスタントシーンも挟み込まれています。
すべてのスタントマンに贈る賛歌。
 
これ、エンドロールのNGシーンまで吹替なんですよね。
やっぱり字幕版が観たい。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする