夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『笑顔の向こうに』

2019年02月28日 | 映画(あ行)
『笑顔の向こうに』
監督:榎本二郎
出演:高杉真宙,安田聖愛,木村祐一,池田鉄洋,佐藤藍子,聡太郎,阿部祐二,
   藤田朋子,丹古母鬼馬二,大平サブロー,中山秀征,秋吉久美子,松原智恵子他

高杉真宙主演の作品って、なぜいつもイオンシネマで上映されるのでしょう。
イオンシネマで上映というよりは、イオンシネマでしか上映されないというのか。
たぶんこれは単なる私の思い込み。

こんな思い込みの原因ははっきりしていて、昨年の大阪北部地震のときのこと。
とても楽しみにしていた『世界でいちばん長い写真』(2018)は、
私の行動範囲内にある映画館ではイオンシネマ茨木のみでの上映でした。
ところが地震のせいでイオンシネマ茨木はしばらく休館
上映予定だった『世界でいちばん長い写真』は再開後にかかることもなく飛ばされて。
致し方なくDVD化を待って鑑賞しましたが、これも高杉くん主演だったんだよなぁ。

今回は彼を見逃さないようにしようと、イオンシネマが安くなる20日、
午後休を取って観に行きました。
予告編開始時は私ひとりで、またしても“おひとりさま”かと思ったら、
本編が始まる寸前にあと3人の客が。良かったような残念なような。

公益社団法人日本歯科医師会全面協力。原案と製作総指揮は同会常務理事だそうな。
だったらもっと客を呼ぶ術がありそうなのに、こんなに少ないのはやっぱり残念では。

地元の金沢を出て、歯科衛生士として東京近郊の歯科に就職した真夏(安田聖愛)。
幼い頃、歯医者を怖がっていた真夏に優しく接してくれた歯科衛生士、
あんなお姉さんになりたいとこの職に就いた。
「しょまな(=金沢弁で「ドジ」)真夏」と呼ばれていたくらいの彼女は、
あれこれ失敗を繰り返すが、院長(木村祐一)と同僚たちが見守ってくれる。

ある日、若くて仕事ができてイケメンの歯科技工士がいると同僚から聞く。
「王子」と呼ばれているその歯科技工士と会って真夏はビックリ。
彼は金沢にいた頃の幼なじみ、大地(高杉真宙)だったから。

昔から真夏は「しょまな」と大地にいじめられていたが、
23歳になった今も、大地は会えば嫌みばかり言ってくる。
しかし彼が仕事に取り組む姿は確かにカッコイイ。

休日、ひとりで出かけた真夏は、「しょまな真夏ちゃん」と声をかけられる。
振り返るとそこには大地の祖母(松原智恵子)がいた。
いきなり大地に会いにきたらしく、真夏は彼女を大地のもとへと連れていくのだが……。

ご当地ムービーでもないのにこのご当地ムービー感は何故。
観ているこっちが時折気恥ずかしくなってしまうような真面目さですかね。

大地の父親に池田鉄洋、母親に佐藤藍子。
佐藤藍子が23歳の高杉くんの親を演じる年齢になったのかと驚く。
えっ、でも調べてみたらまだ41歳やん!?
秋吉久美子が歯科大学の教授役で出演するなど、何気なく豪華。

歯科技工士の仕事を映画で観たことなどなかったので、
それだけで十分に興味を引かれます。
たとえば入れ歯をつくるとき、歯科で診てもらったのち、
歯科から歯科技工所へ依頼するわけですよね。

歯科技工士は直接患者を見ていないから、歯形から患者を想像する。
歯形だけ見ればできるものだと思っていましたが、
患者がどんな体格で、歯が無くなる前にその人がどんな生活をしていたか。
趣味は何で、どんな食べ物が好物だったか。
なるほどそれがわかれば、出来上がる入れ歯も変わってくる。

寝たきりだった老人も、歯を治療することで歩けるようにすらなる。
内科と歯科の連携も興味深いと思いました。

思いやりが大事なのは何ごとも同じ。相手の身になって考えること。

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『女王陛下のお気に入り』

2019年02月26日 | 映画(さ行)
『女王陛下のお気に入り』(原題:The Favourite)
監督:ヨルゴス・ランティモス
出演:オリヴィア・コールマン,エマ・ストーン,レイチェル・ワイズ,ニコラス・ホルト,
   ジョー・アルウィン,マーク・ゲイティス,ジェームズ・スミス他

TOHOシネマズ梅田にて、『フォルトゥナの瞳』とハシゴ。
本館から別館へ移動しました。

アイルランド/アメリカ/イギリス作品。
ギリシャ出身のヨルゴス・ランティモス監督。明らかに変人です。
『籠の中の乙女』(2009)を観たときの衝撃と言ったら。
その次に観た『ロブスター』(2015)を観たときもぶっ飛びました。
受ける印象はミヒャエル・ハネケ監督と似ています。

18世紀初頭のこと。
イギリスは植民地をめぐってフランスと戦争の真っ最中。
君主であるアン女王の体調が思わしくないことを理由に、
宮廷の実権を握るのは側近のレディ・サラ。
何も決められないアン女王に代わり、戦争賛成派のサラは戦費の調達に奔走する。

そんな折り、サラの従妹だというアビゲイルが宮廷にやってくる。
元は上流階級の出だが、ろくでなしの父親のせいで没落。
サラを頼ってやってきたらしく、女中として働くことに。

可愛い外見とは裏腹にしたたたかなアビゲイルは、アン女王に取り入ることに成功。
サラも仕方なくアビゲイルを女官に据える。
以降ますますアン女王の歓心を買うようになったアビゲイルは、
サラの追い出しをも目論み、その計画を着々と進めるのだが……。

各国で高い評価を受けているからと言って、
映画をたまにしか観ない人には絶対に薦められない作品です。
つきあいたてのカップルとかは知的で面白そうだなんて思って観に行っては駄目ですよ(笑)。

面白いです、とても面白い。でもとても嫌な話。善人はひとりもいない。
アン女王はわがままでヒステリーなデブ女だし、サラはとにかくきつい。
いちばん食えないのはアビゲイルで、女の敵(笑)。

アン女王役のオリヴィア・コールマン、アビゲイル役のエマ・ストーン
サラ役のレイチェル・ワイズ、三者三様、皆上手。
彼女たちの演技を見るだけでも十分価値があるけれど、
下ネタも相当に生々しいから、想像してキモ!と思う人もいるかも。

わがまま言い放題のアン女王が何度も流産死産を繰り返し、
17人もの子どもを亡くしたことを語るときの表情はたまりません。
オリヴィア・コールマン、アッパレです。
エマ・ストーンのヌードは私は初めて見た気がします。
過去に脱いだことありましたかね。これで脱ぐんや。

実在の人物ばかり、よくもこんなに破廉恥といえば破廉恥に描くことが許されたなぁと思います。
許されるぐらい面白くはあるのですけれど。
これが史実だと信じたら怒られると思う(笑)。

本作にて第91回アカデミー賞の主演女優賞をオリヴィア・コールマンが獲得。
おめでとうございます。

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『フォルトゥナの瞳』

2019年02月25日 | 映画(は行)
『フォルトゥナの瞳』
監督:三木孝浩
出演:神木隆之介,有村架純,志尊淳,DAIGO,松井愛莉,
   北村有起哉,斉藤由貴,時任三郎他

TOHOシネマズ梅田にて2本ハシゴ。
ほかにも観たい作品がいろいろあったけど、時間の効率のみで本作を選択。

原作未読。というのも実は百田尚樹があんまり得意じゃないのです。
いちばん好きだったのは、たぶん『探偵!ナイトスクープ』の番組構成をされていた頃。
『永遠の0』(2015)は読んだけどイマイチ、
『海賊とよばれた男』(2016)は人から借りて読まないまま。
唯一好きだったのが『ボックス!』(2010)で、
でもこれも先に映画版を観ていたから、原作に入り込みやすかったのかと。

そんなわけで、本作の原作も積極的に読む気になれず。
とか、うだうだ思いながら鑑賞。
青春恋愛ものが十八番の三木孝浩監督らしい仕上がりだと思います。

原作では横浜が舞台なのだそうですが、映画版はオール関西ロケだとか。
そのわりに関西臭がゼロなのは、みんな標準語だからですね(笑)。
神戸は三宮、塩屋、ポートアイランドにハーバーランド、須磨など、
奈良は橿原神宮に榛原、桜井の病院といったところが登場します。
見慣れている人ならば「おっ!」と思えるかもしれません。

高級車のコーティングを主としたメンテナンス店に勤める木山慎一郎(神木隆之介)。
幼い頃、家族と共に搭乗した飛行機が墜落、自分だけが生き残った。
彼の父親代わりとなって面倒を見てくれたのが社長の遠藤哲也(時任三郎)。

このたび2号店を出すことになり、遠藤はその店長に慎一郎を抜擢。
そのせいで、先輩社員で腕も確かな金田大輝(志尊淳)から妬まれ、
突き飛ばされた拍子にケータイが壊れてしまう。

ケータイショップで応対してくれた店員・桐生葵(有村架純)を見て慎一郎は驚く。
葵の手の一部が透けて見えたから。
慎一郎には「死が近づいている人間が透けて見える」という能力があるのだ。
葵を救いたい一心で、大事な話があるからと終業後に待ち合わせ。
ところが、再び会った葵はどこも透けて見えなかった。安心する慎一郎。

後日、わざわざ慎一郎の店を訪ねてきた葵は、慎一郎のことを命の恩人だという。
もしも終業後に会うことなくまっすぐ家に帰っていたら、
葵がふだん通る道に面した工場で起きた爆発事故に巻き込まれていたはずだと。

運命を感じた慎一郎は、葵に交際を申し込む。
こうしてふたりの幸せに満ちた日々が始まるのだが……。

鑑賞したら読んでみたいという気にさせられました。
原作に忠実なのかどうかわかりませんが、
百田さんの作品なら、戦争と関係のない話のほうが私は好きなのかも。

社長の妻に斉藤由貴。遊び人で上から目線の常連客にDAIGO
私がめっちゃ気に入ったのは、医者役の北村有起哉
この人はいつも存在感のある立派なバイプレイヤーですね。

これって、みんなオチを知っている話なのでしょうか。
私は知らずに観たのでより面白かった。
だから知らないほうがいいと思うのですが、ネタばらしすると。

葵も同じ力を持つ人間でした。
目の前に死が近い人がいるとき、慎一郎の選択と葵の選択と。
泣けるなぁと思っていたら、いくつか向こうの席に座っていたオッサンがボロ泣きで笑った。

いいよねぇ、オッサンだってこんな純愛に泣いたって。

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『半世界』

2019年02月24日 | 映画(は行)
『半世界』
監督:阪本順治
出演:稲垣吾郎,長谷川博己,渋川清彦,池脇千鶴,杉田雷麟,信太昌之,菅原あき,
   堀部圭亮,岡本智礼,原田麻由,牧口元美,小野武彦,石橋蓮司他

TOHOシネマズなんば別館へ、土曜日のレイトショーを観に行きました。
昨日じゃなくて、1週間前のこと。

『北のカナリアたち』(2012)も『エルネスト』(2017)も阪本順治監督の作品ですが、
私にとっては『顔』(2000)の「お日さんが西からのぼったら、
うちと一緒になってください」という台詞のインパクトが強すぎて、
同監督のその後の作品をいくら観ても『顔』しか出てこないのです。

オープニングは沖田修一監督の『キツツキと雨』(2011)みたいな感じ。
単に木こりのいそうな風景だからというだけか。(^^;

過疎化の進む地方都市(車のナンバーは三重でした)。
39歳の高村紘(稲垣吾郎)は妻・初乃(池脇千鶴)と息子・明(杉田雷麟)の三人暮らし。
意地で父の仕事だった備長炭づくりを継いだが、生活は決して楽ではない。
中学生の明は学校でいじめに遭っている様子。
しかし紘は家庭のことを初乃に任せっきりで、明はそんな父親と口もきかない。

自衛隊員になった親友・沖山瑛介(長谷川博己)がある日突然帰郷する。
瑛介は妻子と別れ、仕事も辞めてきたという。
今は誰もいない実家を掃除して住むつもりらしく、
紘は地元で中古車店を営むもうひとりの親友・岩井光彦(渋川清彦)を誘うと、
3人で久々に酒を酌み交わす。

酒を呑んでいる間はたまに笑顔を見せるものの、瑛介は明らかに昔と違う。
暗い表情の彼のことを紘も光彦も心配するが、瑛介は何も話そうとしない。

一方、明へのいじめはエスカレート。
紘が自分の息子に対して無関心であることを明は見抜いていた。
それを指摘され、どうしていいのかわからない紘だったが……。

『まんぷく』ですっかりおっちゃんおばちゃんたちの馴染みになった長谷川博己。
いえいえ、その前から大河ドラマですっかり知られているのですよね。
だけど朝の連ドラも大河も観ていない私には、
彼はいつまで経っても一風変わった不思議な役者。
そもそも私が彼を認識したのは『映画 鈴木先生』(2012)と『地獄でなぜ悪い』(2013)ですから。
そのイメージが抜けきれないまま(好きだけど)今まで来ましたが、
本作で印象が変わりました。上手いなぁ。

自衛隊で部下を統率する立場にあった瑛介は、ある出来事にとても責任を感じている。
それを払拭できずに辞職して帰郷した彼の心の傷はいつか癒えるのか。
稲垣くんの映画なのでしょうけれど、印象に残るのは長谷川博己のほう。

住む世界がちがうと感じることってよくあると思うけど、
その世界が大きくても小さくても、みんなそれなりにいろいろある。
大小に関わらず、自分が住む世界以外に住む人のことも考えてみることは必要。

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『ファースト・マン』

2019年02月23日 | 映画(は行)
『ファースト・マン』(原題:First Man)
監督:デイミアン・チャゼル
出演:ライアン・ゴズリング,クレア・フォイ,ジェイソン・クラーク,カイル・チャンドラー,コリー・ストール,
   クリストファー・アボット,キアラン・ハインズ,パトリック・フュジット,ルーカス・ハース他

TOHOシネマズ伊丹にて、『アクアマン』とハシゴ。

デイミアン・チャゼル監督には『セッション』(2014)で魂を射貫かれました。
『ラ・ラ・ランド』(2016)よりも断然『セッション』が好きでした。
今度は音楽もの以外に手を出しちゃうのですね。
封切り直後の評判がイマイチだったので、期待値は下げて観に行きました。
そうしたら、そんなに悪くないやん。

1969年7月に打ち上げられたアポロ11号
このときの船長で、人類で初めて月に降り立ったのがニール・アームストロング。
彼の半生を映画化した伝記ドラマです。

空軍でテストパイロットを務めるニール。
妻ジャネット、息子、娘の三人家族だったが、娘は悪性の脳腫瘍に冒されている。
娘のことが頭にあるから、パイロットとしては非常に優秀だが、時折注意散漫に。
ほどなくして娘を亡くしたニールは、悲しみを押し隠したまま出勤。
上司から飛行禁止処分を下されたちょうどそのとき、
NASAのジェミニ計画で宇宙飛行士を募集していることを知る。

宇宙開発競争でソ連に後れを取っていたアメリカは、
何が何でも先に月へ降り立とうと必死。
そのためには欠かせない技術を確立しようと考えての募集。
さっそく応募したニールはみごと採用される。

次男を授かり、一見平穏なアームストロング家だが、
亡くなった長女のことを一切口にしようとしないニールをジャネットは心配する。

課される過酷な訓練をこなし、飛行士仲間との絆も深まった頃、
親しかった仲間のうち何人かが命を落とし……。

何がびっくりしたって、ジャネット役のクレア・フォイですよね。
『蜘蛛の巣を払う女』でリスベットを演じて超カッコよかった彼女が、
本作では悲しみをこらえつつ夫を支えて息子たちに愛情をかける、普通の、強い母親役。
確かに同じ顔だけど、とても同じ女優が演じているとは思えません。
彼女を見ていると、確かに「世の中に弱い女なんておらん」かなと。

そんなに悪くなかったとはいえ、『セッション』には遠く及びません。
肝心の月面着陸のシーンでは睡魔に襲われてうとうとしちゃったし。

チャゼル監督は次の作品を考えるときには相当苦心していると思われます。
そりゃそうだ、『セッション』なんて凄い作品を撮っちゃったら、
世間の次作への期待は否応が高まるでしょう。大変だ。

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