夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

サラ・リーのチーズケーキ

2007年02月23日 | 映画(番外編:映画と食べ物・飲み物)
私は密かにチーズケーキ・マニアです。
サラ・リーの冷凍チーズケーキが登場するのが
『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』(2002)。

サラ・リーとは、サラ・リーコーポレーション。
そもそもこのチーズケーキは、シカゴのパン屋、
“Kitchens of Sara Lee”で売られていたものだそうです。
サラ・リーとはそのパン屋の創業者の娘の名前だとか。
今から約50年前、別の会社がパン屋を買収し、
食品と家庭用品の2分野で事業を展開するサラ・リーコーポレーション誕生。
靴クリームで有名なKIWIもサラ・リーのブランドです。

さて、『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』は、
実在の天才少年詐欺師フランク・W・アバグネイルをモデルにした映画。
彼が時の人となったのが1960年代で、
まさしくサラ・リーのチーズケーキが大人気だった頃。

映画の中で、サラ・リーのチーズケーキは
上流階級の証として登場します。
FBI捜査官カールは、詐欺師の正体が未成年者であることを突き止め、
未成年者の家出人捜索願いが出ている家庭を片っ端から回るうち、
フランクの母親ポーラの家に辿り着きます。

フランクの父親とは別れ、弁護士と再婚したポーラは、
FBI捜査官らを家へ招き入れる際、こう言います。
「サラ・リーのケーキがあるのよ」。
それを聞いたカールの同僚はヨッシャのポーズ。

ポーラは、フランクの父親と出会った田舎町のことを
「サラ・リーなんて誰も知らない町よ」と少々嘲るように言ったあと、
カールらにケーキを勧めます。

勧められたカールの同僚がポーラに言う台詞が
“Nobody doesn't like Sara Lee!”。
つまり、「サラ・リーを嫌いな人はいない」。
字幕では「サラ・リーは最高!」となっていますが、
これはアメリカ人の誰もが知っている、
サラ・リーのキャッチフレーズだそうです。

サラ・リーのチーズケーキには、
プレーン、ブルーベリーソース、ストロベリーソースがありますが、
映画ではストロベリーソースでした。
クッキーの台に真っ白なチーズクリームの生地、
甘ずっぱそうなストロベリーソースは贅沢そのもので、
当時、みんなの憧れであったのも大納得。
つい最近まで、近所の輸入食材店で購入できたのですが、
昨日寄ったら取り扱い中止になっていました。がっくり。

靴クリームとチーズケーキを一緒に売るってどうよ?と思ったけれど、
昔、通った商店街には「玉子と履物の店」があったなぁ。

『トランスアメリカ』

2007年02月19日 | 映画(た行)
『トランスアメリカ』(原題:Transamerica)
監督:ダンカン・タッカー
出演:フェリシティ・ハフマン,ケヴィン・ゼガーズ,フィオヌラ・フラナガン,
   エリザベス・ペーニャ,グレアム・グリーン,バート・ヤング他

女性になろうとしている男性を演じた女優フェリシティ・ハフマンが、
どこからどう見ても「女性になろうとしている男性」にしか見えません。
いや、参りました。スバラシイ。

ロサンゼルスでひとり暮らしの中年、ブリー。
幼い頃から自分は男性ではなく、女性であると信じてきた。
女性ホルモンを飲みつづけた結果、一見女性。
しかし、完全な女性になるためには男性器がジャマ。
真面目に働いてコツコツとお金を貯め、
1週間後に念願の性転換手術を受けられることに。

ところが、ニューヨークから電話が入る。
ブリーの息子が万引きで捕まり、警察に拘留中とのこと。
自分の息子の存在を初めて聞かされたブリーは気が動転。
確かに若かりし頃、男として、女性と一度だけ関係を持ったことがある。
その後、実家を飛び出したブリーは、
相手の女性が出産したことを知らずにいたのだ。

息子の名はトビー、17歳。
身元引受人として指定されたブリーは逃げ腰だが、
ブリーの親しい友人でセラピストのマーガレットは
トビーとの問題に何らかのけじめをつけなければ
性転換手術は受けさせないと言う。

仕方なくニューヨークに出向いたブリー。
母親はすでに死亡し、トビーは男娼として生計を立てていた。
しかし、会ったことのない父親と一緒に暮らすのが夢だと語るトビーに
スカートを穿いた自分が父親だとは明かせないブリーは
教会関係者だと偽り、トビーの保釈金を払う。

荒んだ生活を送るトビーを放っておけない。
中古車を購入したブリーは、映画俳優になりたいというトビーを
ロサンゼルスまで連れて行くことにする。
こうしてブリーとトビーの大陸横断の旅が始まる。

性同一性障害(トランスセクシュアル)という、
ここ数年取り上げられている比較的新しい題材でありながら、
古典的なロードムービーという形がハマった秀作。
衝突をくり返しながら絆を深めていくわけですが、
ブリーのことを女性だと信じて疑わなかったトビーが
野宿の途中で用を足すブリーの男性器を見てしまってからが大変。
それでもまだ父親であることは打ち明けられないブリーの
男親として息子を思う気持ちと、
女親として息子を思う気持ちの動きが絶妙。

こんな爽やかなラストも久しぶり。

『マッチポイント』

2007年02月14日 | 映画(ま行)
『マッチポイント』(原題:Match Point)
監督:ウディ・アレン
出演:ジョナサン・リス・マイヤーズ,スカーレット・ヨハンソン,
   エミリー・モーティマー,マシュー・グード他

私は結構ツイてます。
舅によく言われるのが「あんたはホンマにツイとるなぁ」。
なぜか、実家に美味しいものが届いた日に
私が突然立ち寄る確率がめちゃ高い。
お裾分けしてくれる舅に、「すみません、いつもタイミングよすぎで」と言うと、
「いやいや、そのツキは大事にせなあかんで。
ツキっちゅうのはな、手に入れようと思っても無理なもんや」。

さて、本作はそのツキがテーマ。
ニューヨークをこよなく愛するウディ・アレンが(こちらこちら参照)、
初めてロンドンで撮影をおこなったサスペンスです。

元プロテニス・プレイヤーのクリスは、
かつてアガシやヘンマンとも張り合ったほどの選手。
引退後、ロンドンの会員制テニスクラブでコーチとなる。

金持ち相手のこのクラブで、クリスは実業家の息子トムの指導担当に。
クリスの趣味がオペラ鑑賞だと知ると、トムは特別席にクリスを招待。
そこでクリスはトムの妹クロエに気に入られる。

トムの父親アレックスにも好印象を与えたクリスは、
クロエの口添えでアレックスの会社の管理職に。
クリスとクロエは交際を経て婚約。

ある日、トムの別荘で開かれたパーティーで、
クリスは色気ムンムンの米国人女性に出会う。
彼女はトムの婚約者のノラ。
一目でイカレたクリスは彼女を追いかけ、関係を持ってしまう。
その後、ノラはクリスに冷たい素振り。

やがてクリスはクロエと結婚。
ところが、ノラがトムと別れたと知り、
クリスはじっとしていられなくなる。
ノラに連絡を取り、密会を重ねるようになるのだが……。

クロエは愛情の対象、ノラは愛欲の対象です。
前述の『セレブの種』に「男は生きているかぎり嘘をつく」
という台詞がありましたが、マジでクリスは嘘のつきどおし。
そのうち収拾がつかなくなります。

善人ならこのオチに納得できないでしょう。
ほとんど運のみに左右されてしまうところは後味悪くも痛快。
「人間は皆、努力で幸せが呼び込める、
人生は自分でコントロールできると思いたいものだけれど、
運に左右されるのを認めるのが怖いだけなんだ」とは監督の弁。

あらゆる登場人物につきまとう運をご覧ください。
人生は、ツイていれば自分の思う方向へ。
ツイていなければあらぬ方向へ。運は大事。

『セレブの種』

2007年02月07日 | 映画(さ行)
『セレブの種』(原題:She Hate Me)
監督:スパイク・リー
出演:アンソニー・マッキー,ケリー・ワシントン,エレン・バーキン他

「種」は精子を指しています。
確かに精子を売らざるを得なくなった男の話ではありますが、
この邦題は映画の意図からは外れまくり。
監督は『マルコムX』(1992)の社会派、スパイク・リー。
邦題を疑いながらレンタルしてみれば、やはり社会派。
でも堅苦しくなく、笑いあり、法廷劇の醍醐味まで味わえて、幸せな満腹感。

ジャックはハーバードでMBAを取得、大手製薬会社に勤めるエリート。
会社は近々エイズの特効薬を発表する予定。
ところが、薬の研究開発を担当する博士が自殺する。

ジャックが博士の遺留品を調べてみたところ、
薬が認可されないと知った社長が大損を回避すべく、
証券取引詐欺を目論んでいたことが判明。

世間を欺きたくないジャックはそれを告発。
すると翌朝、待ち受けていたのは突然の解雇。
さらには会社の悪事を彼個人の罪と公表され、
銀行口座まで凍結される。

当面の生活費さえ失ったジャックのもとへ、昔の恋人ファティマが現れる。
数年前、自分がレズビアンかもしれないと思っていた彼女は
結婚を控えながら自身を確かめるために女性と浮気。
現場を目撃したジャックと破談した過去がある。
その彼女が同棲中の女性を連れてきて言うには、
「私たち、同時に妊娠したいの。精子を売って」。

倫理に反すると断るジャックだったが、
職も金もない状態であることを突っ込まれ、
1回1万ドルの報酬で引き受けることに。
やがて、ファティマを仲介役として
精子を求めるレズビアンが続々とやってくる。

本作にはこうした精子の売買問題以外にもあらゆる社会問題がてんこ盛り。
人種差別問題(ジャックは黒人)、同性愛問題、
家族の問題、内部告発者のたどる道。
邦題から連想する、エリートの種を求める女たちの映画ではありません。

とはいうものの、ひと晩に何人もの相手をして
ヘロヘロになっているジャックの姿は可笑しい。
「もう一滴も残っていない」とこぼす悲壮な顔は笑えます。
客の中にマフィアのボスの娘もいたりして、
話はもっと笑える展開に。

ジャックが飲み続けるのはレッドブル。
精力剤として本当に有効なんですかね。
レッドブルについてはこちらをご覧ください。

「女は排卵日に嘘をつく。
 男は生きているかぎり嘘をつく」。
でも、正直に生きればハッピーエンド。

『ディパーテッド』

2007年02月02日 | 映画(た行)
『ディパーテッド』(原題:The Departed)
監督:マーティン・スコセッシ
出演:レオナルド・ディカプリオ,マット・デイモン,ジャック・ニコルソン,
   マーク・ウォールバーグ,マーティン・シーン他

これもロードショーにて。
香港の大ヒット作『インファナル・アフェア』(2002)のリメイク。
オリジナルについては「ブリーフの似合う人」をご参照ください。

マサチューセッツ州ボストン。
犯罪者の一族に生まれたビリー・コスティガンは
その血と決別すべく警察官を志望する。
一方、貧困家庭に生まれたコリン・サリバンは、
マフィアのボス、コステロによって育てられ、
警察の動きをボスに逐一知らせるスパイとなるため、警察官を目指す。
ふたりは警察学校で優秀な成績を修める。

ビリーとコリンはお互いを知らぬまま警察官となる。
犯罪者の血を断ち切ることを望んだビリーに下された任務は
皮肉にも犯罪者の振りをしてマフィアに潜入し、コステロを潰すこと。
ビリーが潜入者となることは機密扱い。
警察内部でも彼の存在を知るのはディグナム巡査部長とクイーナン警部だけ。

コリンが配属されたのはマフィア撲滅の特捜班。
有能な警察官を装いつつ、捜査の状況をコステロに知らせては
警察の手からマフィアを逃がし続ける。

やがて警察、マフィアの双方にスパイがいることを双方が知る。
スパイの特定に躍起になる警察とマフィアだったが……。

オリジナルの大ファンは多いと思います。かくいう私もそう。
『インファナル・アフェア』は凄かった。
原題は『無間道』と言って、死ねずに永遠に続く地獄の苦しみを表しています。
未見の方にはぜひお薦めしたい、男泣きの逸品でした。

しかし、ハリウッド版はオリジナルの男の悲哀をぶった切り。
「そ、それでいいのか!?」と思わんこともないですが、
あまりのわかりやすさにこれはこれでいいのかも。
別物として観れば十分楽しめますし、2時間半もあっという間。
ラストもは予期しない白黒の付け方。いいかな、これも。
とにかく豪華キャストです。
ビリー役のレオナルド・ディカプリオも良かったけれど、
ひそかにディグナム役のマーク・ウォールバーグ、最高。

オリジナルとリメイクが何を目指したかは
キャッチコピーを見てもわかりそう。
オリジナルは「男には決断すべき時がある。心に秘める愛がある」。
リメイクは「男は、死ぬまで正体を明かせない」。

死んで終わりか、死なずに責め苦を負うか。