goo blog サービス終了のお知らせ 

夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『ごはん』

2025年05月22日 | 映画(か行)
『ごはん』
監督:安田淳一
出演:沙倉ゆうの,大淵源八,井上肇,紅壱子,小野孝弘,福本清三,浅野博之,
   森田亜紀,多賀勝一,福田善晴,戸田都康,鈴木ただし,枦川友彦,皷美佳他
 
中津で昼呑みの後、阪急電車で隣駅の十三へ。シアターセブンで本作を鑑賞。
 
『侍タイムスリッパー』(2023)で話題をかっさらった安田淳一監督が2016年に撮った作品。
安田監督のご実家が米作り農家なのだそうで、お父様がお亡くなりになった後を継ぎ、米農家と映画監督の兼業を続ける安田監督。
本作は日本映画史上もっとも美しい水田風景を描いた作品と言われています。
 
東京で派遣社員として勤めていたヒカリ(沙倉ゆうの)は、父親(井上肇)急逝の報せを叔母(紅壱子)から受け、慌てて京都へ帰省する。
母親(森田亜紀)はヒカリが小学生の頃に亡くなり、そのときも田んぼに出かけていた父親は母親を看取れず。
いつも田んぼ優先だった父親にヒカリは反抗し、以来、父娘の会話はほとんどなくなっていた。
就職先も東京を選んだから、父親が何をどのように考えてどうしていたのか、ヒカリは知る由もない。
 
父親は、田んぼを持て余す近隣の米農家30軒の頼みを聞き入れて5町(甲子園球場約4個分)もの田んぼを預かっていたらしい。
1年前、食うに困ってトマト泥棒を働いた九州出身の源八(大淵源八)という青年を雇い入れ、丁寧に米作りを指導。
父親と源八ふたりで田んぼを見てきたわけだが、父親は亡くなり、源八は現在骨折で入院中。
ヒカリが田んぼをなんとかできるはずなどないから、30軒に詫びて田んぼを返したら東京に戻ろうと考える。
 
ところが、今さら田んぼを返されてもと言う家ばかりでヒカリは困り果てる。
唯一、致し方のないことだ詫びるのはこちらのほうだと言ってくれた西山老人(福本清三)の話を聴き、
せめて源八がまた働ける体になるまではこちらに残って田んぼを見ようとヒカリは決意するのだが……。
 
米作りエンターテインメントと銘打たれているとおり、米作りについてこんなにわかりやすく描写されている作品は初めて。
何の知識もない若い女性が田んぼを守るなんて無理だと思いましたが、
実際に米を作っている安田監督が描くならば、可能なのかもしれないと思いはじめました。
そもそも無理だと決めつけたらそれは無理ですよね。無謀だったとしても、無理だと思い込まないことが大事なのかも。
 
言わずと知れた名斬られ役の福本清三が稲刈りを手伝うシーンで「刃物の使い方は任せしとけ」という台詞で笑わせてくれます。
今はもうこの世にいないのがとても寂しい。
生きていたなら絶対『侍タイムスリッパー』にも出演オファーがあったでしょうに。
でもきっと『侍タイムスリッパー』の大ヒットや本作の再上映を喜んでいらっしゃいますよね。
 
上西雄大監督やその上西組の徳竹未夏もキャストに名を連ね、みんなで作り上げた作品だということがわかります。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『クィア/QUEER』

2025年05月21日 | 映画(か行)
『クィア/QUEER』(原題:Queer)
監督:ルカ・グァダニーノ
出演:ダニエル・クレイグ,ドリュー・スターキー,ジェイソン・シュワルツマン,ドリュー・ドローギー,
   アンドレア・ウルスタ,デヴィッド・ロウリー,リサンドロ・アロンソ,レスリー・マンヴィル他
 
中津昼呑みの約束をしていた日、大阪ステーションシティシネマにて8:15上映開始の本作を観に。
仕事に行く日より早起きして向かいました。
 
イタリア/アメリカ作品。
監督は『君の名前で僕を呼んで』(2017)のルカ・グァダニーノで、自身ゲイであることをカミングアウトしています。
原作は、同性愛が精神疾患だとされる時代に生きたウィリアム・S・バロウズの同名小説。
ダニエル・クレイグ演じる主人公はバロウズ本人を投影しているようで、自伝的作品とのこと。
 
ちなみにあの『ブレードランナー』(1982)は、バロウズ原作でも何でもないのに、バロウズの著作にこのタイトルがあって、
単にその語感の響きがよかったからまったく別の映画のタイトルに使われたという逸話があります。という余談はさておき。
 
3つの章とエピローグから成る構成。
 
1950年代のメキシコシティ
アメリカ人のウィリアム・リーはゲイでアヘン中毒者。そのせいでアメリカには身の置き所なくここにいる。
酒場に入り浸っては男を物色する生活を続けていたある日、ひとりの美しい青年に目が釘付けになる。
 
彼はユージーン・アラートン。店では上品な御婦人メアリーといつもチェスに興じていて、彼がゲイかどうかはわからない。
しかしウィリアムに気を持たせるような態度を取るものだから戸惑ってしまう。
いつもはタイプの男を見れば躊躇なく誘うウィリアムなのに、ユージーンにはそうできないまま。
 
店の客でやはりゲイのジョン・デュメにユージーンが何やら尋ねているのを見て、ウィリアムはついに声をかけずにいられなくなる。
すると思いのほかあっさりとウィリアムにつきあってくれるようになったユージーン。
ウィリアムの想いは募る一方で、ユージーンが他の誰かと話しているのを見るだけで居たたまれない。
 
南米に生息する“ヤハ”という植物に以前から興味を持っていたウィリアムは、一緒に旅行しようとユージーンを誘う。
ユージーンを縛りつけないという約束のもと、ふたりはエクアドルへと向かうのだが……。
 
ジェームズ・ボンドを引退したダニエル・クレイグが同性愛者役、
しかも若い男性に骨抜きにされる役ということに興味を惹かれて朝イチで観に行ったわけですが、難解だなぁ。
序盤はそう難しい話でもないのですけれど。
 
ウィリアムが男を漁る姿は痛々しい。
ターゲットを決めて「これは行ける」と思ってもやんわり断られ、彼が立ち去ると嘲笑が聞こえてきたりも。
確かにかなりウザいオッサンです。いくつになってもベビーフェイスではあるけれど、立ち居振る舞いが古すぎて、話も面白くない。
下心丸出しで近寄ってこられて退屈な話を聞かされると嫌になるでしょう。
そんなオッサンに対してユージーンもつまらなそうにしているくせに、寝ることには応じるのが罪作り。
 
エクアドルに行く話なんて断りそうなところ、ついて行くユージーン。
ウィリアムによればヤハという植物はテレパシーの力を向上させる効能を持つらしく、ロシアなどが戦争で用いようと狙っているとのこと。
もちろんウィリアムはそんなことに使うつもりはなくて、想いを寄せる相手と心を通わせたいと思っているのです。
 
ジャングルで暮らす女性研究者コッター博士を訪ね、ヤハを煎じて服用するふたり。
この辺りからは一瞬ホラーかと思うような描写もあり、だんだん話について行けなくなりました。
『ミセス・ハリス、パリへ行く』(2022)であんなに愛らしいおばちゃんを演じていたレスリー・マンヴィル
コッター博士と同一人物とは思えません。怖すぎる。ホラーですよ、ホラー。(^^;
 
とどめは晩年のウィリアムの姿。だーかーらー、老けメイクは嫌いなんだってば〜
 
ユージーン役のドリュー・スターキーはこれまで主にTVドラマに出演していた俳優らしい。
うん、こんな知的で美しい青年が現れたら、目も心も奪われるでしょうね。
それにしたってダニエル・クレイグの姿が痛々しすぎて、見ているのがつらかった。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『鬼滅の刃 柱合会議・蝶屋敷編』

2025年05月16日 | 映画(か行)
『鬼滅の刃 柱合会議・蝶屋敷編』
監督:外崎春雄
声の出演:花江夏樹,鬼頭明里,下野紘,松岡禎丞,岡本信彦,櫻井孝宏,日野聡,小西克幸,河西健吾,
     早見沙織,花澤香菜,鈴村健一,関智一,杉田智和,森川智之,上田麗奈,山崎たくみ,石見舞菜香他
 
『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』(2020) 以来の劇場版となる『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章』が7月に公開されるに当たり、
鬼滅シアターなるものが開催中。
で、先日、時間潰しに観た『鬼滅の刃 鼓屋敷編』がめちゃめちゃ面白かったから、
夙川でひとりランチとCOOL JAPAN OSAKAでお笑いイベントの合間にTOHOシネマズ梅田にてこれを観る。
 
本作は、2019年に放送されたTVアニメ第1期『竈門炭治郎 立志編』全26話のうち、第22話〜第26話で構成されているのだそうです。
飲酒してから観たらあかんっちゅうのに、まったく学習できていません(笑)。
だって、鼓屋敷編があまりに面白かったせいで、これなら飲んでも寝ないかなと思って。
しかし、酒量がちょっとやそっとじゃない場合は無理だ。少し寝てしまって、すみません。(^^;
それでも十分に面白さはわかりました。
 
読み方さえわからなかった「柱合会議」は「ちゅうごうかいぎ」と読むのですね。
「柱」とは、言わずと知れた鬼殺隊の中でも最高位に君臨する剣士たち。
彼らが集まって、「鬼殺隊のメンバーのくせして鬼を連れ歩く炭治郎をどないしてやろうか」と相談する。
お館様は、こんな話題になる前から炭治郎と禰豆子のことを承知して許していたらしい。
 
私が初めて“鬼滅の刃”を観たのは『無限列車編』だったから、煉獄さんに衝撃を受けたのを今も覚えています。
なんだこの滅法強くて滅法変わった人は、と。
久しぶりにこうして煉獄さんの姿を見られるのはとても嬉しい。
柱はみんないいですよねぇ。全員に惚れてしまいそう。       
 
負傷した鬼殺隊士のために設けられた医療施設が蝶屋敷と呼ばれているのは忘れていましたが、
しのぶ姐さんの私邸も兼ねているというこのお屋敷。
       
ま、この辺りで睡魔に襲われちゃったわけですが、ここから『無限列車編』に続くんだなぁと思うと、
やっぱり観ておいてよかった。『無限城編』も凄く楽しみです。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『来し方 行く末』

2025年05月07日 | 映画(か行)
『来し方 行く末』(原題:不虚此行)
監督:リウ・ジアイン
出演:フー・ゴー,ウー・レイ,チー・シー,ナーレンホア,ガン・ユンチェン,
   ホアン・レイ,フー・ヤオジー,ホワイト・K,スン・チュン,コン・ベイビー他
 
京都シネマにて2本ハシゴの2本目。
数カ月前に京都シネマに行ったときに予告編が流れていて、観たいと思った中国作品です。
 
一昨年の秋に開催された第36回東京国際映画祭での上映時は『耳をかたむけて』という邦題だった模様。
『来し方 行く末』という邦題のほうが私は断然好きです。
主演は『鵞鳥湖の夜』(2019)でも主演を務め、岩井俊二の監督作『チィファの手紙』(2018)にも出演していたフー・ゴー。
 
脚本家を目指すも叶わず、弔辞の代筆業で生計を立てている男性ウェン・シャン。
葬儀場に勤める友人の取次により仕事を受けているが、
丁寧な取材を重ねたうえでしたためるウェン・シャンの弔辞は依頼主の評判がとても良い。
 
依頼人はいろいろ。
例えば、亡くなった父親とは交流の少なかった男性。
そのまだ幼い息子は祖父のことが大好きで、父親と共に祖父と最期の時を過ごせると思ったのにそうならなかった。
 
一緒に会社を立ち上げた同僚でありCEOでもあった友人を突然亡くした男性。
窓のない地下の部屋から大きな窓のある上階の明るい部屋へ会社を移す直前だったのに。
 
癌で余命宣告を受けた自身の弔辞を依頼してきた老婦人。
ネットで親しくなったものの面識はない男性の死を知り、弔辞に文句を付けてきた女性。
 
ウェン・シャンはさまざまな人の話に耳を傾け、故人や依頼者のことを知ろうとします。
 
彼は非常に穏やかな人柄に見える半面、感情の起伏もなくて、人生が楽しんでいるようには見えません。
だけど、そんな彼のことを葬儀場の友人が表す言葉がとても的を射ています。
 
特に好きだったのは、CEOを亡くした会社員の話。
故人の身内からの依頼を受けるのは普通でも、会社のCEOが故人となると葬儀の大きさも意味も変わる。
この話は受けられないと一旦は断ったウェン・シャンと会社員の会話にはしんみり。
 
緩やかに話が進むから、ちょっと睡魔に襲われた瞬間もあるけれど、(^^;
知らない誰かのことをきちんと知って弔辞を書こうとする姿には胸を打たれました。
人の見え方はひとつではなくて、相手によって捉え方も違うのですね。
 
弔辞って、親しい人が自分で書くものだと思っていましたが、こんなビジネスもあるんだなぁ。
これはこれでありかなと思います。ウェン・シャンみたいな人が書いてくれるならば。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』

2025年05月05日 | 映画(か行)
『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』
監督:大九明子
出演:萩原利久,河合優実,伊東蒼,黒崎煌代,安齋肇,浅香航大,松本穂香,古田新太他
 
封切り日、なんばへライブを聴きに行く前にTOHOシネマズなんばにて。
 
原作は、ジャルジャル福徳秀介が小説家デビューを飾った同名小説。
平日の昼過ぎなのに、若者から高年層までの客でほぼ満席。
テレビで頻繁に予告編が流れていたのかどうかは知りません。ジャルジャル人気のせいなのか。
それとも関西ロケだということが知れ渡っているのでしょうか。
 
『私をくいとめて』(2020)などなど、女優起用の上手い印象がある大九明子
 
関西大学に通う男子学生・小西徹(萩原利久)は雨の日も晴れの日も傘を差して歩く。
その理由を知っているのは唯一の友人・山根(黒崎煌代)のみ。
 
ある日、小西はキャンパスで見かけた女子学生・桜田花(河合優実)に心を奪われる。
なんとか彼女と話すきっかけを作ると、その後セレンディピティ(=幸せな偶然)に見舞われて何度もばったり。
わずかな期間でふたりの距離は縮まり、小西の日々に陽が差し込む。
 
そんな小西にずいぶん前から想いを寄せているのに打ち明けられずにいるのは、
小西と同じ銭湯でバイトする京都の女子学生・さっちゃん(伊東蒼)。
最近親しくなった女子学生(=花)のことを楽しそうに話す小西の表情を見て、彼は恋しているのだとさっちゃんは確信。
バイトの帰り道に思わず小西に告白しつつ、その気持ちをこの場で終わらせると宣言。
 
呆然とする小西だったが、それ以降なぜか花には会えず、さっちゃんもバイトに姿を見せなくなり……。
 
ジャルジャルのコントや漫才を舞台で何度か観ているから、本作はいかにもそんな感じがします。
「幸せ」を「さちせ」、「好き」を「このき」と読ませるというくだりは、正直言って苦手です。
小説で読むとそれほど抵抗がないかもしれませんが、映画でこの台詞を聞くと私はちょっとゲッ(笑)。
こういう表現を使う人とは感覚が違いすぎて親しくなれない気がします。
 
これを抜きにしても、全体的に台詞の言い回しが私には寒く感じられてのめり込めません。
銭湯のオーナー役の古田新太だけは、演技がオーバーであろうが何であろうがさすがと思わせるところがあるけれど。
 
萩原利久よりも河合優実よりも、本作でいちばんよかったのは伊東蒼じゃないかなぁ。
『世界の終わりから』(2023)で堂々の主役を張った彼女は、最近は脇役に回ることが多いけど、
「このき」の部分を除けば(そういう台詞なんだから仕方なし)、彼女の告白は心に訴えるものがありました。
 
松本穂香推しなので、彼女の出番が少ないのは残念至極。
と、いろいろ文句を並べてみたものの、関大、関大前、出町柳河原町など馴染みのある場所が映ったり、
南千里という地名が出てきたりしただけでも嬉しいのでした。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする