夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『ライフ・イットセルフ 未来に続く物語』

2019年11月30日 | 映画(ら行)
『ライフ・イットセルフ 未来に続く物語』(原題:Life Itself)
監督:ダン・フォーゲルマン
出演:オスカー・アイザック,オリヴィア・ワイルド,マンディ・パティンキン,オリヴィア・クック,
   ライア・コスタ,セルヒオ・ペリス=メンチェータ,アネット・ベニング,アントニオ・バンデラス他
 
TOHOシネマズ西宮にて、無理やりつくった時間で1本だけ。
 
予告編を観たとき、輪廻の話なのかなと思っていました。
そうではありませんでしたが、「人生そのもの」の話はちょっぴり哲学的。
その部分についてはちゃんとは理解できなかったけれど、
理解できてもなんとなく言わんとすることは伝わってきます。
 
おおまかに分けて3つの話。
時代が少しずれているところとかぶっているところがあります。
どこから話してもネタバレになってしまうから、
ご覧になる予定の方はここから先を読まずに劇場へどうぞ。
 
ニューヨーク。大学時代に知り合ったウィルとアビー。
アビーにぞっこんだったウィルが想いを打ち明けて実らせ、結婚に至る。
ところが、あと3週間で女の子が生まれるというときに、
アビーは道路の真ん中でバスにぶつかって死亡する。
最愛の妻を喪ったウィルは精神を病み、
退院後にカウンセリングを受けるも精神科医の前で自殺。
 
アビーのお腹の中にいた赤ん坊は無事に生まれていた。
名前は母親アビーが切望していたとおり“ディラン”と名付けられ、
祖父アーウィンが引き取って育てる。
しかし父親ウィルは一度もディランに会いにくることなく死んでしまった。
アーウィンの愛情を痛いほど感じて感謝はしているが、
生まれたときから不幸だらけの身の上だから、とても素直になれない。
 
ニューヨークから遠く離れたスペイン・アンダルシア。
大地主サチオーネのオリーブ畑で働くハビエルは、
その実直さを見込まれ、作業長として住居を与えられる。
それを機会に恋人イザベルと結婚、ほどなくして息子ロドリゴが生まれる。
初めての家族旅行でニューヨークを訪れるのだが……。
 
3つの話がどう繋がるのか、見当もつきませんでした。
アビーが事故死したことがわかるのも、1つめの話が終わる頃になってからです。
そして、お腹の中の赤ちゃんが生きていたことがわかったときもビックリ。
 
役者が皆とてもいいんです。
特によかったのは、ディラン役のオリヴィア・クック
自分の誕生日が母親の命日。
父親は母親の死から立ち直れないまま自ら命を絶ったなんて、
これはもう不幸以外の何物でもない。
そりゃグレもするでしょう、髪の毛を真っ赤っかに染めてヘソ出して。
でもそんな見た目であっても祖父に感謝していることはわかる。
息子夫婦が孫を遺して逝ってしまって、頑張る爺ちゃんの姿には涙が出ます。
 
また、サチオーネ役のアントニオ・バンデラスもめちゃくちゃイイ。
オッサンどころかジジイになったなぁバンデラスと感慨深い。
彼がイザベルとロドリゴに無償の愛を注ぎ(金持ちだからできることなんですが(笑))、
ひそかにハビエルに手紙を書き続けていたことがわかるシーンにも涙。
 
サミュエル・L・ジャクソンが「信頼できない語り手」として登場しています。
随所にユニークな点も見られ、深刻な話の中に笑いも。
 
ボブ・ディラン好きの人には特にお薦めしますが、
ディランよう知らんという私みたいな人も「なんかよかった」と思える作品なのでは。

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『残された者 北の極地』

2019年11月29日 | 映画(な行)
『残された者 北の極地』(原題:Arctic)
監督:ジョー・ペナ
出演:マッツ・ミケルセン,マリア・テルマ他
 
どうしても劇場で観たくて、ない時間を無理やり作り、梅田ブルク7へ。
この後ランチした後輩に、映画観て阪急の催し物にも寄って来たと言ったら驚かれました(笑)。
 
アイスランド作品なのですけれども、
主演はすでにハリウッド映画でもおなじみ、デンマーク出身の俳優マッツ・ミケルセン
監督は本作が長編デビューとなるブラジル出身のジョー・ペナ。
どういう理由でアイスランド、デンマーク、ブラジルなのか、それだけでそそられます。
 
雪山が舞台という設定に私は昔から強く惹かれます。
本でもそうですが、想像力を駆使しなくても視覚に訴えてくる映画ならなおさら惹かれる。
これはまったく駄作じゃない、凄い作品でした。
 
北極圏不時着した飛行機。
パイロットのオボァガードは奇跡的に軽傷で生存しているが、
見渡すかぎりの雪原で、どうしようもない。
 
壊れた機体を利用して、生活する場所は確保。
救難信号を発信しながら、氷に穴を空けて釣った魚を保存して食糧に。
毎日同じ時間にアラームをセットして起きては
自ら定めたルーチンワークをこなし、救助が来るのを辛抱強く待つ。
 
幾日かが過ぎ去り、ついにやって来た救助ヘリコプターに喜ぶが、
強風に煽られて目の前でそのヘリコプターが墜落。
乗員のうち男性のほうは即死、女性のほうも大怪我を負っている。
 
なんとか女性をヘリコプターから救出し、自分が住まう機体へと連れて行くと、
ほぼ意識のない彼女の傷の手当てをして寝かせる。
水を与え、少しずつ食糧を口へと運ぶが、良くなる兆しはない。
 
このまま待っていても救助は来ないだろう。
そう考えたオボァガードはヘリコプターに積まれていた地図を見て建物の存在を知る。
彼女を橇に乗せて引っ張って行くのは楽ではないが、
それでも何日か歩けばその建物にたどり着けるはず。
オボァガードは装備を調えると意を決して出発するのだが……。
 
登場人物は最初から死んでいる男性を省くとこのふたりのみ。
しかも女性は台詞ゼロに等しく、オボァガードもほとんど喋りません。
ただ雪原を歩いて行くだけでこんなにスリリングな作品がありましょうか。
 
冷静沈着で、生に対してそんなに執着があるとも思えない。
でも彼は絶対にあきらめない。
自分ひとりで歩いて行けば、目標の建物にもさっさと着けそう。
地図どおりの地形ではなくて直進できず、迂回せざるを得なくなっても彼女を見捨てない。
 
シビレましたね。
登場人物が少なくても、台詞がほとんどなくても、雪山だけでも、
こんな凄みのある映画が撮れる。
 
やっぱり雪山映画、やめられん。

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『ひとよ』

2019年11月27日 | 映画(は行)
『ひとよ』
監督:白石和彌
出演:佐藤健,鈴木亮平,松岡茉優,音尾琢真,筒井真理子,浅利陽介,
   韓英恵,MEGUMI,大悟,佐々木蔵之介,田中裕子他
 
シネマート心斎橋で『国家が破産する日』を観た翌日だった日曜日、
昼から母とコンサートを聴きに行くので、映画は1本しか観る時間なし。
どれを観るって、そりゃもう公開されたばかりの白石和彌監督。
TOHOシネマズ梅田にて。
 
衝撃的なオープニングシーンだった『孤狼の血』(2017)。
だって豚の肛門大写しの脱糞シーンからスタートですよ。
でも数年前からいちばん注目している監督には変わりありません。
 
タクシー会社を営む稲村こはる(田中裕子)。
飲んだくれては子どもたちに暴力をふるう夫にたまりかね、
ある雨の夜、泥酔した夫を轢き殺す。
会社と子どもたちの世話を甥の丸井進(音尾琢真)に任せて自首。
15年後に必ず帰ってくると約束して。
 
子どもたちは成人、まもなく15年が経過しようという頃。
 
長男・大樹(鈴木亮平)は地元の電器店の娘・二三子(MEGUMI)と結婚するが、
夫婦仲は上手く行っておらず、現在別居中。
小説家志望の次男・雄二(佐藤健)は上京してエロ雑誌のコラム記事を執筆。
長女・園子(松岡茉優)は美容師の夢を諦め、地元に残って寂れたスナックに勤務。
こはるが起こした殺人事件のせいで運命を狂わされた結果がこれ。
 
そんな3人の気持ちを知ってか知らずか、こはるが約束どおりに帰ってくるのだが……。
 
心に傷を負っているのにそれを口に出せずに来た家族が、
自分たちのことを見つめ直す。
こんな話の場合、たいていは泣く方向へ煽られるものだし、
そのほうが万人受けするでしょう。
でも、白石監督は煽らない。説教臭くもならない。
 
台詞は多すぎないから、役者の演技力が物を言う。
『マチネの終わりに』みたいに全部しゃべったりはしません(笑)。
田中裕子が素晴らしいのはもちろん、佐藤健を見直しました。
演技とは関係のないことですが、佐藤健ってもっと華奢だと思っていたら、
二の腕を見てビックリ。めちゃくちゃ太いやん。
 
泣かせにかかっていないのに、人の温かさにホロリと来てしまう。
面倒なことを押しつけられたわけなのに、
逃げも隠れもせずに子どもたちを預かったこはるの甥。
その役を演じた音尾琢真がめちゃめちゃよかった。
悪役も多い彼ですが、「家族だったら巻き込まれてやれよ」にジワ~ン。
 
同様にタクシー会社を支える柴田弓役の筒井真理子や、
雄二の幼なじみでタクシー運転手の牛久真貴役の韓英恵
訳ありでこの会社に就職してきた堂下道生役の佐々木蔵之介
とにかく脇役まで揃いもそろってよかった。
あ、そうそう、ヤクザ役で出ていた千鳥の大悟まで上手いから驚いた!
 
沁みました。

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『国家が破産する日』

2019年11月26日 | 映画(か行)
『国家が破産する日』(英題:Default)
監督:チェ・グクヒ
出演:キム・ヘス,ユ・アイン,ホ・ジュノ,チョ・ウジン,ヴァンサン・カッセル他
 
土曜日の朝、タイ出張からダンナが帰国。晩は北新地で食事予定。
通常は私は電車、ダンナは車で出かけて、予約している店で落ち合うのですが、
この日の新御堂筋は工事のために18時から南行き規制の情報。
ダンナが車で大阪市内へ向かうとなると、きっと渋滞ど真ん中。
で、昼間に私が車に乗って行くことにしました。
別にふたりとも電車で行けばいいのですけれど、
食事の帰りに下戸のダンナに運転してもらえば、私は酔っぱらいでいいので(笑)。
 
蛍池までダンナを迎えに行き帰宅。まず出張で出た衣類を洗濯。
12時に家を出て、中之島のコインパーキングに駐車。
国立国際美術館で“ウィーン・モダン クリムト、シーレ 世紀末への道”を観覧して、
パン屋その1に寄ってから地下鉄四つ橋線肥後橋駅へ。
四つ橋駅で下車して何かつまもうと南堀江のカフェで軽食。
それからシネマート心斎橋にて本作を鑑賞。
 
話題作なのか、結構混んでいます。
私はといえば政治ネタに疎いにもほどがあるというのか、バカです。
韓国が国家破綻の危機に陥ったことなんてあったんだっけ、
というぐらいのバカ。もうほんとに恥ずかしい。(--;
 
「史実に基づいてはいるが、フィクション」、最初にそういう注意書き。
当時政府がどう動いていたのかなんてわかりません。
『新聞記者』なんかでもそうでしたが、徹底的に隠される。
こういう動きがあったのかどうか、とても興味深い。
 
1997年。大半の国民が景気はいいと信じて疑っていないが、
韓国銀行の通貨政策チーム長ハン・シヒョンは、崩壊寸前であることを察知。
このままでは1週間以内に国家が倒産することになるとして、
チームで報告書を作り上げ、政府の金融担当者に連絡する。
 
直ちに国民に告知すべきべきだとするハンの主張を財政局次官は一蹴。
国民に知らせれば不安を招くだけ、告知の必要などないとして、
非公開のチームを立ち上げて対策を練るように命じる。
 
同じ頃、やはり国家倒産の危機を察知した金融コンサルタントのユンは、
勤務先をとっとと退職すると、自分に投資してくれる金持ちを探し、大儲けを狙う。
 
一方、国家がそんな状況にあるとは知らない町工場の経営者ガプスは、
大手百貨店から大量の発注を受けて大喜び。
現金のみで商売をしてきたため、担当者から手形で払うと言われて躊躇ったものの、
これを受けない手はないと承諾する。
 
ハン、ユン、ガプスを軸にして物語は進みます。
綿密なリサーチをおこなったという触れ込みどおり、ノンフィクションさながら。
池井戸潤のドラマを観ているようでもあります。
 
大統領に現状を説明するようにと秘書官から言われたとき、
「大統領は難しい話がお嫌いだから簡単に」と付け加えられます。
このシーンには苦笑い。
今週中に国家が破綻するというときに、難しい話が嫌いだと言うてる場合か。
でも、さもありなんと思ってしまうのですよねぇ。
 
映画の中だけの話じゃないし、他人事とも言えないと思います。
何しろ政府は都合の悪いことを隠そうとする。
そして国家が破綻することに期待して金儲けに走る人もいる。
悪徳政治家の顔といったら。
 
結局、金持ちはさらに金持ちになるようにしかできていない。
国の言うことを信じた結果、首を括るしかなかった人のことを思うと痛ましい。
 
ちなみに本作を観た後は肥後橋に戻り、パン屋その2へ。
肥後橋のパーキングから出庫して北新地のパーキングへ移動。
中崎町まで歩いて友人の写真展におじゃま。
阪急三番街でグラスワイン飲みながら本を読み、
やっと晩ごはんを食べるべく北新地へ。へとへと(笑)。

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『ターミネーター:ニュー・フェイト』

2019年11月24日 | 映画(た行)
『ターミネーター:ニュー・フェイト』(原題:Terminator: Dark Fate)
監督:ティム・ミラー
出演:アーノルド・シュワルツェネッガー,リンダ・ハミルトン,マッケンジー・デイヴィス,
   ナタリア・レイエス,ガブリエル・ルナ,ディエゴ・ボネータ他
 
109シネマズにて、『T-34 レジェンド・オブ・ウォー』とハシゴ。
 
公開初日のレイトショー、IMAX2D版を観ました。
さすが“ターミネーター”、ファンが多いようで、結構な客の入り。
私はといえば、一応シリーズ作品すべて観ていますが、
繰り返し観たわけでもなく、思い入れも別になし。
でも普通以上には面白かった気がします。
 
21歳のダニーは、家族の誰もから頼りにされている女性。
ねぼすけの弟を起こして一緒にメキシコシティの自動車工場へ出勤したところ、
人件費の削減のためにいつのまにかあちこちで機械化が進んでいる。
そのうち工場内がロボットだらけになるかもしれない。
所長に弟が呼ばれ、きっとクビを言い渡されるのだと思ったダニーは、
解雇は理不尽だと所長に直訴しにいく。
 
そこへ未来からターミネーター“REV-9”が現れ、ダニーが狙われる。
すると今度は同じく未来からやってきた強化型兵士のグレースが現れて、
ダニー姉弟を連れて逃げようとする。
 
REV-9は凄まじい強さを見せつけ、弟は死亡。
危うくグレースもやられそうになったところ、
どこからともなく現れた女戦士サラ・コナーがダニーたちを救う。
 
とりあえずはREV-9を撒くことに成功。
グレースの怪我の手当てをしつつ話を聞くと、
ダニーは未来の人類を救う人物で、
彼女の命が奪われることはつまり人類の滅亡を意味するらしい。
グレースは絶対にダニーの命を守るという。
 
サラは息子を亡くして以来、ターミネーターが地上に降り立つと匿名で知らされるメールにより、
その場所を訪れてターミネーターを始末していた。
グレースが司令官から「困ったら訪ねよ」と言われていた場所と、
サラへの匿名メールの差出位置が一致していることがわかり、
グレースとダニー、サラが訪ねてみるとそこには旧型ターミネーター“T-800”が。
 
サラの息子ジョンを殺した憎きT-800が、
今は人間のふりをしてシングルマザーの母子と暮らしている。
絶対にT-800を許せないサラは、彼に襲いかかろうとするが、
REV-9を倒すにはT-800の力を借りるしかなく……。
 
“ゴーストバスターズ”で女性が活躍する編が作られたと思ったら、
“ターミネーター”まで女性がメインキャストで活躍するように。
キャストとしてはアーノルド・シュワルツェネッガーが最初にクレジットされていますが、
彼は主役ではないですよね。
本作の主役はサラ役のリンダ・ハミルトン、グレース役のマッケンジー・デイヴィス
ダニー役のナタリア・レイエス。
彼女たちを支えるシュワちゃんが愛することを覚え、
愛する人の息子と暮らして初めてサラの気持ちがわかったというシーンが良いです。
 
ガブリエル・ルナ演じるREV-9が強すぎて、絶対勝てそうな気がしない。
唯一ホッとしたのは、奴は飛べない(笑)。これで空も飛べたら勝ち目無し。
 
どう見ても勝ち目がないのに勝つところがいいんですよね。
ターミネーターファンの評価は如何に?

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