夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『第9地区』

2010年04月29日 | 映画(た行)
『第9地区』(原題:District 9)
監督:ニール・ブロンカンプ
出演:シャールト・コプリー,デヴィッド・ジェームズ,ジェイソン・コープ他

前述の『ウルフマン』とハシゴ。

私の愛読雑誌『映画秘宝』の2009年ベスト映画ランキングで、
日本でまだ公開されていないにもかかわらず、8位に。
選出者の一人は、「今年公開、こころして待て!」と書いていました。
その後、飛行機内で観たという知人からもお薦めメールをもらい、
ずっと心して待っていました。

南アフリカ出身の新鋭監督によるSFアクション映画。
いや~、たまげました。
公式HPもかなりの凝りよう。

南アフリカ、ヨハネスブルグ上空に、謎の巨大宇宙船が突如出現。
エイリアンの襲来かと人びとは恐れるが、
故障で司令船と母船の連絡が絶たれたゆえの単なる漂着だった。

武装した軍人たちが宇宙船内に入ってみると、
そこには栄養失調などで体力を消耗した大勢のエイリアンが。
宇宙船が動かない状態では追い返すわけにもいかず、
政府は彼らを難民として受け入れることにする。
人びとは、その外貌からエイリアンのことを「エビ」と呼ぶ。

それから20年。
フェンスで囲われたエビの共同居住区“第9地区”は、
エビの数が増え続けるせいで、今やスラムと化している。
エビとの共存に耐えきれない人びとの不満が募り、
超国家機関MNUは共同居住区の移動を決定。
そのプロジェクトの最高責任者として抜擢されたのが
エイリアン対策課のヴィカスで……。

モキュメンタリー(“Mock(=偽りの)”と“Documentary”を合わせた造語)、
つまりは、ドキュメンタリー仕立てのフィクションの手法で撮られています。

ちょいアホで素直なヴィカスは、栄えある任務就任に大喜び。
そんな彼に密着取材という形でカメラとマイクが向けられます。
ヴィカスは任務遂行中にエビが造った液体を浴びてしまい、エビ化開始。

あまりのグロさに、上映開始後、途中退席して戻って来なかった人、複数。
確かに万人にはお薦めできません。

しかし、人間の残酷さを目の当たりにさせられる、興味深い作品です。
エビの気色悪さにだけ注目していると、最低映画で終わりそうですが、
“トランスフォーマー”シリーズ顔負けのロボットも登場で、見どころバッチリ。
本作もラストシーンは切なさいっぱいです。

オオカミ人間とエビ人間を続けて観たせいで、
振り返るとどっちがどっちだかわからなくなる瞬間も。
この2本を同日に観るのは誤った選択でした。(^^;

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『ウルフマン』

2010年04月26日 | 映画(あ行)
『ウルフマン』(原題:The Wolfman)
監督:ジョー・ジョンストン
出演:ベニチオ・デル・トロ,アンソニー・ホプキンス,エミリー・ブラント他

ぎりぎりまで、『クレヨンしんちゃん』とどちらを観るか迷いました。

古典ホラー『狼男』(1941)のリメイクです。
グロそうなのが気がかりでしたけれど。

監督が『遠い空の向こうに』(1999)のジョー・ジョンストン。
主役のベニチオ・デル・トロのいつも腫れぼったい瞼に惹かれ、
その父親役のアンソニー・ホプキンスは紛れもない怪優。
最近のお気に入り、『ヴィクトリア女王 世紀の愛』(2009)や『サンシャイン・クリーニング』(2008)が良かったエミリー・ブラントも出演。

さらに、特殊メイクを担当したのは、リック・ベイカー。
オスカーのメイクアップ賞の初代受賞者で、
マイケル・ジャクソンの『スリラー』の特殊メイクも彼の手によるものです。
ジョニー・デップ主演の『エド・ウッド』(1994)、
大ヒット作の『メン・イン・ブラック』(1997)などで、
何度も同賞を受賞していますが、
最初の受賞作は『狼男アメリカン』(1981)でした。

前置きが長くなりましたが、そんなわけで、
『クレしん』落選、本作を選択。

1891年。米国で舞台俳優として活躍中のローレンスは、
兄ベンの婚約者グエンから、ベンが行方不明との知らせを受け、
25年ぶりに英国の生家、タルボット城へ帰る。

母の死をきっかけに疎遠となっていた父ジョンは、
ローレンスを素っ気ない態度で迎え入れ、
ベンはすでに遺体で発見されたと話す。

ベンの遺体と対面したローレンスは、その無惨な姿に愕然。
何に襲われればこんな姿になるというのか。
悲しみに打ちひしがれるグエンを見かねたローレンスは、
事件を解明するまでここに残ることを決めるのだが……。

犯人は満月の夜に変身する狼男。
その犯人に襲われたローレンスは、一命を取り留めたものの、
自らも狼男となってしまいます。

予想に違わぬ血しぶきの飛びっぷりに目を覆うこと数回。
でも、つべこべ言わずに楽しんだもん勝ちという気がします。
先に挙げた3名の役者はもちろん、
『マトリックス』(1999)のエージェント・スミス、
ヒューゴ・ウィーヴィングが警部役で怪演。
ローレンスとグエンの恋はどこまでも切なく、ラストは思わず涙。
その後のブラックなオチにもニヤリ。

ホラーは苦手だと言いつつ、
狼男、吸血鬼、フランケンシュタインは平気なのかも、私。

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「TSUTAYA独占レンタル作品」って

2010年04月20日 | 映画(番外編:小ネタいろいろ)
日本では未公開のDVDスルー作品の中に、
数カ月前から「TSUTAYA独占レンタル」なるものが現れ始めました。
これらのレンタル作品は、TSUTAYA DISCASでは異様に評価が高く、
サクラの存在を疑ったりもするのですが、
釣られてレンタルしてみたところ、結構アタリ。

1月レンタル開始の『ROCKER 40歳のロック☆デビュー』(2008)。
アマチュアバンド“ヴェスヴィオス”のドラマーだったフィッシュは、
大手レコード会社とメジャー契約を交わすさい、
ただ一人、メンバーから外されたという苦い過去があります。
その後、ヴェスヴィオスは超人気バンドとなり、
20年経った今も第一線で活躍。
フィッシュはと言えば、姉の家に居候するプータロー。
ある日、高校生の甥が所属するバンド“ADD”に欠員が出たことから、
フィッシュは助っ人として参加することになるのですが……。
おっちゃんたちに贈る応援歌。

2月レンタル開始の『ブラザーズ・ブルーム』(2008)。
幼い頃からカモを探して放浪の旅を続けてきた詐欺師兄弟。
弟のブルームはそんな生活に嫌気がさしていますが、
兄のスティーヴンから大口の仕事を持ちかけられ、
これを最後に足を洗うと誓います。
ブルームは億万長者ペネロペに近づくのですが、
いつしか彼女に恋してしまい……。
これはそこそこ有名な役者が揃っています。
アシスタントを務める爆弾オタクに菊地凛子も。
どんでん返しはちょっぴり切なく、清々しく。

4月レンタル開始の『奇跡のロングショット』(2008)。
高校時代にアメフトのクォーターバックとして活躍したカーティスは、
膝の怪我で選手生命を絶たれます。
やがて不景気で町は沈み、カーティスも無職の身に。
義姉から11歳の娘ジャスミンの面倒をみるように頼まれますが、
父が家出して以来、心を閉ざしているジャスミンは、
まともに口をきこうとしません。
あるとき、ジャスミンにアメフトの才能があると気づいたカーティスは、
彼女にアメフトを教え始めるのですが……。
少年アメリカンフットボールの全米大会で、
史上初の女子プレーヤーとなった少女の実話が基になっています。
ジャスミンの活躍で町も活気を取り戻す様子が素晴らしい。

どれも、知名度の高い役者はほとんど出ておらず、
お金もさほどかかっていそうにはなくて、ちょい地味。
劇場で観たかったとは言いがたいですが、
後味すっきりの「いい話」ばかりなので、
元気のない日にDVDで観るにはうってつけに思えます。

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『人生に乾杯!』

2010年04月16日 | 映画(さ行)
『人生に乾杯!』(原題:Konyec)
監督:ガーボル・ロホニ
出演:エミル・ケレシュ,テリ・フェルディ,
   ユーディト・シェル,ゾルターン・シュミエド他

ハンガリーの作品。
原題は「おしまい」を意味するロシア語からきた“Konyec”。
81歳と70歳のジジババによる強盗劇にこんな邦題が付いているので、
お気楽なコメディを想像しました。
そのため、観終わった直後は肩すかしを喰らわされた気分。
しかし、原題の意味を知ったとき、なんだかジーンと来ました。

夫のエミル、81歳。妻のヘディ、70歳。
ふたりの出逢いは1950年代にさかのぼる。
共産主義体制になって間もないころ、共産党の運転手を務めるエミルは、
ブルジョワの屋敷へ私物没収に向かう党員たちに同行する。
階上を調べていたエミルは、屋根裏部屋に身を隠すヘディを発見。
見逃してほしいとダイヤのイヤリングを差し出すヘディに、
エミルはそれを返し、彼女をかくまう。やがてふたりは結婚する。

あれから50年以上の月日が経ち、いまはわずかな年金暮らし。
家賃も払えず、役人が徴収に来れば、部屋で息を殺す。
昔の想いは今何処、腰痛に悩むエミルと糖尿病を患うヘディの間には、
投げやりな会話しかなされない。

そんなある日、役人が差し押さえにやって来る。
エミルの蔵書がごっそり持って行かれそうになったとき、
ヘディが差し出したのはあのイヤリング。
役人は黙って受領証を書くと退散する。

この瞬間、心の中で何かが弾けたエミルは、
運転手時代に支給された愛車のチャイカに飛び乗ると、
当時から車内に残されていた拳銃トカレフを片手に郵便局へ。
こうしてエミルは次々と強盗を犯すのだが……。

防犯カメラには顔が丸写り。
すぐに指名手配され、ヘディのもとを刑事が訪れますが、
捜査に協力すると見せかけて、ヘディはエミルとともに逃走します。
途中ではねてしまった女刑事を人質にして。

まさにジジババ版『ボニーとクライド 俺たちに明日はない』(1967)。
コメディとしては中途半端に重苦しい雰囲気があるのに、
警察はボンクラすぎて、笑えるような笑えないようなビミョーさ。
超脇役の車オタクの刑事だけは可笑しいです。

でも、原題の意味を知ったときに感想は変わりました。
過酷な情勢下で生き抜いてきた彼らが、
人生の終わりに近づいて、成し遂げたかったこと。
ヘディの望みは『ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア』(1997)を思い起こさせます。

人生に誇りを。

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『ホワイトアウト』

2010年04月13日 | 映画(は行)
『ホワイトアウト』(原題:Whiteout)
監督:ドミニク・セナ
出演:ケイト・ベッキンセイル,ガブリエル・マクト,
   コロンバス・ショート,トム・スケリット他

織田裕二と松嶋菜々子共演で映画化された、
同名の真保裕一のベストセラー小説がありました。
あれからもう10年経つことにビックリ。
本作は、グレッグ・ルッカのアメリカン・コミックの実写映画化です。

米国が南極に建設した観測所、アムンゼン・スコット基地。
雪に覆われ、限られた人しかいない基地では事件など起こるはずもなく、
女性連邦保安官キャリーは、雑用をこなすだけの日々を送っている。
過去の出来事がきっかけでここへ赴任したが、
数日後の飛行機で帰国したら、退職するつもり。

ところが、雪原で遺体が見つかったとの連絡が入る。
上司から確認を命ぜられたキャリーは、ヘリの操縦士デルフィ、
もう長いつきあいの老齢の医師ジョンとともに、現場へ向かう。

移動手段はヘリか雪上車しかない場所に横たわる遺体。
どう見ても他殺体で、ピッケルで胸を一突きされたらしい。
脚には急いで怪我を縫った跡がある。
犯人は怪我の処置をしておきながら、その後に突き殺したというのか。

南極初の殺人事件に基地は騒然となる。
犯人が身近にいるとしか考えられず、
職員の安全を重視する上司は、全員を帰国させることにする。
キャリーも乗る予定だったその便を逃せば、
本格的な冬に入る半年間は基地から出られなくなるのだ。

キャリーは早速捜査を開始するが、
雪で視界が白一色になるホワイトアウト現象に見舞われて……。

『60セカンズ』(2000)や『ソードフィッシュ』(2001)の監督らしく、
スピード感があり、テンポよく観られます。
その分、それぞれの背景や心理描写は薄く、
かといって、これぞ娯楽大作というほどの感もありません。
職員がぞろぞろ出て来るものの、目立った登場人物はわずかで、
謎解きミステリーとしてはイマイチ。
でも、ホラーばりにドキドキさせてくれるサスペンスでした。

笑ってしまったのが、建物の外側、各棟間でのアクション。
零下65度、凄まじい雪で、ホントに何も見えません。
そんな中で、キャリーと相棒のロバート、
そして殺人鬼とおぼしき人物が格闘するのですが、
着ているものは皆同じような防寒具だし、一面まっ白で、
誰が誰だか全然わからん。誰よ、今のは!といちいちツッコミ。

DVDで十分かと思うけれど、
雪モノは劇場で観たほうが迫力ありそうなのでした。

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