夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『最後の決闘裁判』

2021年10月31日 | 映画(さ行)
『最後の決闘裁判』(原題:The Last Duel)
監督:リドリー・スコット
出演:マット・デイモン,アダム・ドライヴァー,ジョディ・カマー,ベン・アフレック,
   ハリエット・ウォルター,ナサニエル・パーカー,マイケル・マケルハットン他
 
153分の大長編ゆえ、仕事帰りに観に行くのを躊躇していましたが、
リドリー・スコット監督作品をスルーするわけにはいかないと、
阪神のペナントレース最終戦の前日、意を決してイオンシネマ茨木へ。
 
週初めに遅くなるのはつらいはずが、めちゃめちゃ面白かった。
観に行ってよかったと心底思いました。
 
14世紀、中世のフランスで実際におこなわれた決闘裁判を映画化。
原作となっているのはエリック・ジェイガーのノンフィクション、
『決闘裁判 世界を変えた法廷スキャンダル』です。
 
1380年代、百年戦争中のフランス。
かつては親友同士だったノルマンディーの騎士ジャン・ド・カルージュ(マット・デイモン)と
従騎士のジャック・ル・グリ(アダム・ドライヴァー)だが、
ジャックが地主の伯爵ピエール(ベン・アフレック)から厚遇されたのをきっかけに、
ジャンはジャックへの敵対意識をあらわにしている。
 
あるとき、ジャンの妻マルグリット(ジョディ・カマー)が、ジャックに強姦されたと訴える。
ジャンは無実を主張するジャックを法廷へと引きずり出し、
シャルル6世(アレックス・ロウザー)のもと、決闘裁判にかけることになるのだが……。
 
ご覧になる予定の方はこの先を読まないでください。
予告編で知り得た程度の知識で観に行くほうが絶対に面白いです。
 
予告編を観ると、最愛の妻を元親友に陵辱された夫が正義をかけて決闘に臨む、
そんな印象だったから、当然ジャンを応援したくなります。
 
3章から成る本作の第1章を観たときも同じ感想でした。
第1章は「ジャン・ド・カルージュの真実の物語」。
優しく逞しいが愚直すぎて損をしているジャンのことをマルグリットは深く愛している。
ジャックに強姦された事実をどうしても隠してはおけず、
夫婦そろって声をあげて闘うことを誓う、そんな感じ。
 
ところが第2章の「ジャック・ル・グリの真実の物語」を観ると、その印象が変わる。
伯爵ピエールから目をかけられているジャックは、ジャンのことをかばおうとする。
しかし、暴走気味のジャンのことを止められない。
ある日、友人の結婚式で久しぶりに会ったジャンとジャックは和解するが、
そこで紹介されたマルグリットにジャックは一目惚れ。
マルグリットも合意の上での出来事であって、強姦ではない。
姦淫があったことを明かせば裁判で不利だから、無実の主張を貫き通そうとしています。
 
ここまで観たかぎりのふたりのイメージは、どちらかといえばジャックのほうが良い。
でくのぼうのようなジャンとは違って、ジャックは女にモテモテ。
知的でもあり、マルグリットもジャックへの恋心を隠せない。
 
なのに。
 
第3章は「マルグリットの真実の物語」。そしてこれが真実。
まぁ、なんというのか、男ってどれだけ幸せな思考回路なんだと思わずにはいられません。
第1章、第2章を見れば、ジャンもジャックも自分はとっても良い男で、
だからマルグリットは自分にぞっこん、自分も彼女のことを大切にしていると言いたげ。
それがマルグリットの立場から見れば、何もかもがちがう。
 
決闘裁判なんてものがまかり通っていた時代が不気味です。
不妊に苦しんでいたマルグリットが強姦を告発後に妊娠したせいで、
「強姦では妊娠しないと科学的に証明されている。
ほかに男がいたのを隠すために強姦されたことにしたのでは」とか、はぁ?
 
そもそも被害者は彼女なのに、彼女自身が訴えることはできない。
夫が訴えて、夫と相手の男が殺し合って、もしも夫が負ければ彼女は火あぶりの刑って、
どんな世界やねんと思うけれど、こんなことが当たり前だったのですね。
嫁姑問題もいつの時代もあるもののようだし、いろいろと衝撃的です。
 
決闘のシーンでは男ふたりとも死んでしまえ!と思いました。(^^;
さて、結末や如何に。そこはご覧ください。
 
見応え大ありの1本でした。

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『ビルド・ア・ガール』

2021年10月30日 | 映画(は行)
『ビルド・ア・ガール』(原題:How to Build a Girl)
監督:コーキー・ギェドロイツ
出演:ビーニー・フェルドスタイン,パディ・コンシダイン,サラ・ソルマーニ,
   アルフィー・アレン,フランク・ディレイン,ローリー・キナストン,エマ・トンプソン他
 
日曜日、広島vs阪神のデーゲームが始まる前に梅田で2本観ようと考えました。
ふだんなら休日の朝は20分あれば自宅から梅田まで行けるのに、
新御堂筋の南行車線で神崎川橋梁の工事中。
土日の8時から20時まで1車線規制になっていて、なんと1時間半もかかってしまった。

1本目に予定していた作品は当然観られず(予約はしていなかったのでラッキー)、
11時から梅田スカイビル地下の滝見小路でお昼ごはんを食べ、
12時からシネ・リーブル梅田にて本作だけ観て帰ることに。
梅田まで出ておきながら1本しか観ないなんてもったいないけれど、
阪神の試合を見届けないわけにもいかないのです。
 
ロンドン・タイムズ紙のコラムニスト、キャトリン・モランの半自伝的小説を映画化。
実際に音楽雑誌で歴代最年少ロック批評家として活躍した経歴を持つ人です。
1本だけでも大満足、すごく好きな作品となりました。
 
デブで冴えない女子高生ジョアンナ。
教師から類い稀な文才があると認められているが、発揮する場はなくて悶々。
人気ラジオ番組で自作の詩を披露するチャンスを得るが、緊張しすぎて大失敗。
誰も見ていないことを祈っても無理、学校中の笑いものに。
 
ある日、兄のクリッシーが、大手音楽情報誌“D&ME”でライターを募集していると教えてくれる。
批評する曲としてジョアンナが選んだのはミュージカル『アニー』の主題歌“トゥモロー”。
面接の連絡があり、嬉々としてロンドンのD&ME社を訪れるが、
“トゥモロー”で応募してくるなんてどんな奴だとからかわれただけだった。
落ち込んだものの、文章自体は面白かったと言われたことからやる気復活。
ロックバンドの取材に自分を試しに使ってほしいと主張する。
 
初めて聴いたロックにジョアンナの世界が変わる。
彼女の批評は斬新で面白いと評判になり、瞬く間に有名人に。
そんなとき、シンガーソングライターのジョン・カイトのインタビューに臨み、
ジョアンナは恋に落ちてしまうのだが……。
 
ジョアンナの父親はいつまで経っても音楽への夢をあきらめきれず、
収入もないのに子どもばかりつくって、母親は産後鬱。
16歳のジョアンナは、双子の乳児を抱えて暗い面持ちの母親にもう甘えることはできません。
D&ME社で物書きを始めてそれが当たると、ジョアンナはとても高慢ちきになり、
家賃を払っているのはこの私、家族の中でいちばん偉いのよと言わんばかり。
どんなときもジョアンナの味方だった兄のクリッシーに対してもそんなだからたまったもんじゃない。
 
本当はいいと思っているバンドのことも、こきおろしたほうがウケるから辛口批評する。
そうするとさらに人気が出て、友だちのいなかった彼女に人が群がってきます。
 
16歳はまだ子ども。自分が実は大人から見下されて利用されただけだとわかるとき。
自分のことを心から愛し、大切に思ってくれているのは誰なのか。
結構イライラさせられたけれど、気づいた後の彼女の行動は最高です。
 
ジョン・カイトのモデルとなっているシンガーはいないんですかね。
どこまで実話に即しているのか知りませんが、この人が実在しているといいなぁ。
子どもを騙したりしない。でも子ども扱いしているわけじゃない。そんな人。
 
最後にチラリとだけ登場するエマ・トンプソン。やっぱり大好き。
さしづめ日本でいうところの余貴美子みたいな存在に思えます。
 
ちなみに字幕では“Build a Girl”は「自分作り」。
どうやって自分を作りますか。

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『ロン 僕のポンコツ・ボット』

2021年10月29日 | 映画(ら行)
『ロン 僕のポンコツ・ボット』(原題:Ron's Gone Wrong)
監督:サラ・スミス,ジャン=フィリップ・ヴァイン
声の出演:関智一,小薬英斗他
 
TOHOシネマズ伊丹にて4本ハシゴの4本目。
 
エド・ヘルムズが声を担当する字幕版を観たかったけれど、
シアタス心斎橋まで行かないと観られないようだから、涙をのんで吹替版で手を打つことに。
 
イギリスのCGアニメーションスタジオ“ロックスミス・アニメーション”初の劇場長編アニメーション。
なのにアメリカ作品のようで、製作やら配給はいろいろとややこしい。
唯一の配給会社はディズニーの子会社である20世紀スタジオ。
「ディズニーが21世紀フォックスの買収を通じて20世紀を買収、
2020年12月4日、社名を20世紀スタジオに変更した」とウィキにあります。絶対ややこしいでしょ(笑)。
 
本作の舞台は子ども1人にロボット1台という時代です。
 
少年バーニーは父親と祖母の3人暮らし。
同じ学校に通う児童は全員、ロボット型デバイス“Bボット”を所有しているが、バーニーは持っていない。
Bボットはスマホよりハイテクで、所有者の何もかもを把握しており、友だち探しまでしてくれる。
それを持たないバーニーには友だちがひとりもいない。
 
バーニーの誕生日、プレゼントを喜ばない様子を見た父親と祖母は、
ようやく彼の望みがBボットであることを知って大慌て。
すぐに買いに走るが、あいにく店はすでに閉店。
あきらめきれずに駆けずり回ったところ、倉庫への搬入口を発見。
傷ありで返品となるはずだった不良品を買い取ることに成功する。
 
Bボットを受け取ったバーニーは、それにロンと名付けて大喜びするが、
デフォルトでインストールされているはずのものが何も入っていないせいでどうしようもない。
バカなロンに嫌気がさしたバーニーは返品しようとするのだが……。
 
面白かったけど、もやもやするのはなぜなのでしょうか。
結局、ロボットより生身の人間だよということにはならないのです。
何もかもインストールされた賢いロボットよりは、
時に言うことをきかない人間味のあるロボットね、ということ。
 
誰かと友だちになるときまでロボットに頼らなくちゃ駄目ですか。
そりゃSNSを始めたら、知らなかった友だちの一面までわかったり、
そんな趣味もあったのかと驚いたりして楽しいことはいっぱいあります。
でも、実際にしゃべるより前にまずはロボットに頼るって、
何か不思議というのか不気味な感じです。
 
友だちはいないと思っていたら幼なじみが手を差し伸べて、
いやいや、友だちだよと言ってくれる。
そんな良いシーンもあるけれど、現代の映画だなぁという気がして仕方ありません。
本作そのまんまの光景を見る日も実際に訪れそうに思います。

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『G.I.ジョー:漆黒のスネークアイズ』

2021年10月28日 | 映画(さ行)
『G.I.ジョー:漆黒のスネークアイズ』(原題:Snake Eyes: G.I. Joe Origins)
監督:ロベルト・シュヴェンケ
出演:ヘンリー・ゴールディング,アンドリュー・コージ,サマラ・ウィーヴィング,
   イコ・ウワイス,ピーター・メンサー,平岳大,安部春香,石田えり他
声の出演:木村昴,小林親弘,白石涼子,野津山幸広,井上和彦,子安武人他
 
TOHOシネマズ伊丹にて4本ハシゴの3本目。
 
どう考えてもわざわざ観なくていい作品のような気がするのですが、
ほかに観たいものもなかったのでポイントで鑑賞
ちなみにこの日観た4本はすべてポイントを使って観ました。
フリーパスポートのあった時代なら、間違いなくフリーパス鑑賞の対象だったでしょう。
 
“G.I.ジョー”シリーズと言われても知らんし、と思っていたけれど、
私、観てるやん、『G.I.ジョー バック2リベンジ』(2013)。(^^;
ドウェイン・ジョンソンイ・ビョンホンが出ていたのに、まったく覚えてないってどーゆーこと!?
 
覚えていないから全然シリーズものという気がしませんが、
“スネークアイズ”というのはこのシリーズの謎に包まれた忍者なのだそうです。
前作までスネークアイズ役はレイ・パークでした。
彼をそのまま起用せずにヘンリー・ゴールディングをキャスティングしたのは、
スネークアイズのもう少し若かりし頃の話だからなのでしょうかね。
 
吹替版の上映しかないのがとても不満ですが、まぁ、タダだし。
 
少年期に目の前で父親を殺され、復讐だけを胸に成長したスネークアイズ。
亡くなった父親のことを調べてみると、父親の名前は偽名。
少年自身の名前も偽名で、自分が生まれた日すらわからなかったから、
父親が殺されるきっかけとなったサイコロの目(=1のゾロ目)にちなんで
自分の名をスネークアイズとした。
 
格闘技で金を稼いでいたスネークアイズは、鷹村ケンタという男から声をかけられる。
鷹村は、スネークアイズの父親を探し出してやる代わりに、
日本の秘密忍者組織“嵐影”に潜入してほしいと取引を持ちかける。
どうしても復讐を果たしたくてその取引を承諾したスネークアイズは、
嵐影で忍者として認められるよう、修行に臨むのだが……。
 
全体的に陳腐ではあります。
オール日本人キャストだった『ONODA 一万夜を越えて』とは異なり、
彼が日本人だと言われても……みたいな人もいるし、
現代の東京の街を写しておきながら、忍者屋敷はいつの時代やねんという城下町に。
海外作品にありがちな、とんでもニッポン(笑)。
 
異彩を放っているのは忍者組織の頭(かしら)役、石田えり
こういう作品の中では彼女の日本語まで変に聞こえてくる。
カッコイイおばあちゃんと言えなくもないけれど。
 
ツッコミどころは満載で、そういう意味では面白かったのも確かです。
どんだけ裏切るねん、スネークアイズ(笑)。退屈はしませんでした。
忍者って、国際的に永遠の憧れの対象なのですかね。

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『CUBE 一度入ったら、最後』

2021年10月27日 | 映画(か行)
『CUBE 一度入ったら、最後』
監督:清水康彦
出演:菅田将暉,杏,岡田将生,田代輝,山時聡真,斎藤工,吉田鋼太郎,柄本時生
 
TOHOシネマズ伊丹にて4本ハシゴの2本目。
 
予告編を観たとき、あの『CUBE』(1997)を日本でリメイクするなんて、
どんな大それたことを考えるねんと思いました。
ヴィンチェンゾ・ナタリ監督はその凄すぎる1作目の呪縛が解けなかったのか、
ほぼ一発屋になってしまった気がします。
今は主にTVドラマシリーズを手がけていらっしゃる様子。
本作では「クリエイティブアドバイザー」というワケわからん肩書きで協力。
 
目覚めると謎の立方体の中。
そこから脱出しようとした青年(柄本時生)は仕掛けによって瞬殺される。
 
その後、別の立方体の中で目覚めたのは後藤裕一(菅田将暉)。
同世代の越智真司(岡田将生)に起こされる。
すぐそばには宇野千陽(田代輝)という少年もいた。
3人とも記憶を辿ってみるが、なぜここにいるのかわからない。
 
戸惑っている3人の前に隣の立方体からやってきたのが井手寛(斎藤工)。
そしてそれとは別の立方体から甲斐麻子()もやってくる。
どうやら仕掛けのある立方体とない立方体があるようで、
あるほうに不用意に入れば即座に仕掛けが発動して死に至るらしい。
 
最も行動力のありそうな井手に従って移動すると、
そこには安東和正(吉田鋼太郎)がひとりで縮こまっていた。
助けに来てくれたと思った安東は、それが勘違いだと知ってガッカリ。
 
どこかに出口はあるのか。
脱出の手段を考えるうち、書き並べられている数字の法則に気づいて……。
 
オリジナルとこのリメイクを比べようにも、
25年近く前に一度観たきりの作品の詳細を覚えているわけがありません。
ただ、あの衝撃はリメイクにはない。
 
そもそも、公式サイトに登場人物たちの職業が記されていますが、
映画の中ではそれについては何にも情報がありません。
自己紹介をするときに口にするのはフルネームのみ。
唯一「会社役員をしています」と言うのが安東で、
聞かれてもいないのに「会社“役員”」などと偉そうに言う奴はろくでもない(笑)。
 
情報が示されないなか、彼らのバックグラウンドやバックボーンを想像せよというのか。
単にワケありの6人が集められて順番に処刑されるみたいな話になっています。
かろうじて後藤だけは過去に何があったのか明かされ、贖罪する体(てい)。
ほかは何の罪で処刑されるのかもわからない。
6人のうち1人は助かり、1人はゲーム続行、1人は企画側の人間でしたというオチ。
 
オリジナルをもう一度観たくなる作品です。
清水康彦監督なら、『その日、カレーライスができるまで』のほうがよかった。

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