夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

2024年9月に読んだ本

2024年10月01日 | 映画(番外編:映画と読み物)
2024年9月の読書メーター
読んだ本の数:12冊
読んだページ数:3413ページ
ナイス数:932ナイス

■境界線 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)
これ単独で読んでも理解に困ることはないけれど、『護られなかった者たちへ』を読んだうえで映画も観ていれば「シェアードユニバース」、とまでは言わないか。佐藤健が演じた利根が本作の五代と刑務所仲間だったと思うとニヤリとしてしまいます。いつもの七里さんよりドンデン返し度低めではあるものの、読み応えがある。名簿の売買に手を染めるに至った過去そのものが人生のドンデン返し。しかも悪いほうへの。笘篠(阿部寛)と蓮田(林遣都)のコンビを映像でも観たい。ただし前作の映画版のような「汚名を挽回」という台詞は無しでお願いします。
読了日:09月03日 著者:中山 七里

■愛するよりも愛されたい 令和言葉・奈良弁で訳した万葉集1
万葉集の時代の首都は奈良だったのだから、標準語は「奈良の言葉」のはずだ。というところからして、生まれも育ちも関西の私には面白い。意訳も意訳、だけど言いたいことはこうだったのだろうと思わされます。ストーカー並みの人もいれば、とんだナルシストっぷりを発揮している人、この変態め!と言いたくなる人、いろいろ。だけど結局、恋って今も昔も変わらないのねとも思う。「ワンチャン」なんて言葉が出てくる万葉集の訳はほかにない。速攻で読めるという点でもオススメです。大伴家持ってモテたんですねぇ。どんな色男だったのか見てみたい。
読了日:09月04日 著者:佐々木良

■緑の毒 (角川文庫)
著者を知ったのは『OUT』がTVドラマ化されたときだと記憶しています。それはそれは面白くて、主人公たちがノコギリで死体をギコギコぶった切るシーンは、長調なのに哀しげなテーマ曲の旋律と共に今も頭の中に蘇ります。本作はそのイメージのまんますぎる気がして、桐野さんってあれからひとつも歳をお取りではないのかと思うほど。「最低最悪の読み心地」という帯の言葉に、このゲス医者が逃げおおせる嫌ミスの如き結末も覚悟していましたが、桐野作品ではやっぱり女が強い。ひとりではどうにもならなくても皆で天罰を食らわせる。ナメんなよ。
読了日:09月08日 著者:桐野 夏生

■9割の医者が知らない 正しいアトピーの治し方
10年前に脱ステ脱保湿に挑戦し、完治したと言って良いと思います。ところがこのたび手指に湿疹再発。普通の石鹸しか使っていなかったのに、洒落たボディソープに手を出したせいでしょう。思わず何か塗りたくなるところ、当時の自分のブログ記事を読み返して「死んだほうがマシやと思ったぐらい過酷な体験をして乗り越えたんやから」と耐えています。で、ついつい脱軟を推奨する医師の本も読みたくなり。「死んだほうがマシやと思った」と書くたびに、一昨年がんで亡くなった弟に「死んだほうがマシなんてことはないわな」と心の中で謝っています。
読了日:09月11日 著者:藤澤重樹

■サクリファイス (新潮文庫)
読んだ本は、貸出希望者を一周したら譲渡希望者に進呈するのが常です。同著者の『みかんとひよどり』を差し上げた人が「好きだなぁと思ったら“ビストロ・パ・マル”シリーズの作家なんですね。道理で」と言うので、もしやそっちのみの書き手と思っているのではと不安になり(笑)、これを読んでもらおうと買い直したついでに、ほぼ15年ぶりに再読しました。本作をきっかけに自転車競技に興味が湧いたように記憶していたけれど、アニメ映画『ベルヴィル・ランデブー』が先ですね。今回再読して『疑惑のチャンピオン』ももう一度観たくなりました。
読了日:09月15日 著者:近藤 史恵

■くらのかみ (講談社文庫 む 81-10)
単行本の刊行から20年以上経って初の文庫化なのだそうです。「四人ゲーム」は数ヶ月前に観た映画『新・三茶のポルターガイスト』で知りました。モキュメンタリーだと思い込んで観た後にドキュメンタリーだと聞いて、え、マジ!? こんなんホンマにある!?とビビりました。その映像を思い出してしまう本作の冒頭シーン。けれど怖いのはそこだけで、子ども向けのファンタジーホラーらしく安心して読めます。親たちに降りかかりそうな災難の真相を子どもたちが解決しようと奮闘。何巻目かで中断したままの『ゴーストハント』をまた読みたくなった。
読了日:09月16日 著者:小野 不由美

■嗤う淑女 (実業之日本社文庫)
これまでに読んだ中山七里作品の中で最低最悪の読み心地。R-18+指定かと思うようなエロシーンが不愉快で、序盤に投げ出そうかと思ったほど。とはいうものの、途中で止められずにあっちゅうまに読めてしまうところが憎らしい。映像化されていることを知らず、さっきキャストを眺めてみたら、黒田大輔とか絶妙の配置ではないですか。美智留と恭子は死が二人を分かつまで一緒にいるものだと思っていたため、途中でドヒャー。と思ったらそのはるか斜め上を行く展開に。いや~、それはなんぼなんでも無理やと思うけど、次も読んでしまうやん(泣)。
読了日:09月17日 著者:中山 七里

■女神のサラダ (光文社文庫 た 51-2)
「言わなわからん」が信条です。察することは大事だし、言われなくてもわかりたい、わかってほしいとは思うけれど、わかるよわかれよというのは傲慢じゃないかと思ったりもします。ここに登場する人たちはみんな優しい。それがゆえに聞けない。聞かなくても察しているつもりだったけど、ひょっこり聞く機会がやってきたら、とんだ思い違いをしていたことに気づく瞬間がとてもいい。馬鈴薯とレモンの話が特に好きでした。アスパラガスとチーズも好き。『うさぎパン』のときから好きだった著者ですが、久しぶりに読んだらなんだか大人になっていた。
読了日:09月21日 著者:瀧羽麻子

■透明な螺旋 (文春文庫 ひ 13-14)
あいだに6人(6人目だから5人?)挟んだら世界中の人と繋がるという「六次の隔たり」を私は信じています。信じてはいるけれど、こんなに上手く繋がるわけはないと思わなくもない。思わなくもないのに、あるかもしれないと思わされるのが東野圭吾。ただ、無理に繋いだ感も憶えてしまうから、ミステリーとしてはちょっと物足りない。圧巻のリーダビリティを誇る東野圭吾と中山七里、たまたま文庫化新作2冊が同じような傾向でしんみり。ところで、これだけシリーズが続いていると、どうしても福山雅治のイメージを外して読むのは無理。実母役は誰?
読了日:09月23日 著者:東野 圭吾

■ショートケーキ。 (文春文庫 さ 49-5)
家に帰れば売るほど積読本があるのに、出先で読書に割ける時間を読み違えて、持って出た本を読みきってしまうことがあります。慌てて本屋に駆け込んで、帰宅するまでに読めそうな薄い本を探す。で、本書を買ったら、するする読めすぎて危うくこれも読みきってしまうところでした(笑)。ホールケーキへの執着を見せる女子、その女子に恋心を抱くケーキ屋のバイト店員、そしてその先輩店員および姉、さらには姉の後輩社員と、人間模様が楽しい連作短編。帰宅途中、コンビニで思わずまるごとバナナを買ってしまったのでした。だって絶対食べたくなる。
読了日:09月24日 著者:坂木 司

■極限団地: 一九六一 東京ハウス
イヤミスという言葉がいつからあり、誰が最初だったのか知りませんが、私の中ではやっぱり「元祖イヤミスの女王」といえばこの人です。当時みんながこぞって入居したがった団地なのに、トイレットペーパー騒動をはじめとしてなんだかよろしくないイメージもついて回る。阪本順治監督の『団地』(2015)を観たときも、藤山直美岸部一徳を取り巻く環境を少し恐ろしく感じたものでした。どんな暮らしであれ、晒される状況は怖い。そしてなんとか視聴率を取ろうとして煽る偽りのリアリティショーも怖い。この表紙の不気味さそのまんまの中身です。
読了日:09月26日 著者:真梨 幸子

■ふたたび嗤う淑女 (実業之日本社文庫)
第1弾ほどの生々しさはないものの、彼女に縋れば全員陰惨な死を迎えるところが恐ろしい。美しさを表現する言葉が第1弾とは異なっていて、そこまでの美貌を感じさせないゆえ別人だろうと思っていたらやはり。七里作品のダークヒーローは嫌いになれないものだけど、このダークヒロインはまだまだ好きになれず。人をさんざん煽るだけ煽って最後にどん底へ叩き落とす。まぁ彼女の依頼人たちにも同情はできません。そんなにオイシイ話が転がっているわけないっちゅうの。ネトフリで『地面師たち』を全話一気に観た後だったから、より面白く読めました。
読了日:09月30日 著者:中山 七里

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