夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

ギャンブルで負け続ける人の心境

2005年01月26日 | 映画(番外編:小ネタいろいろ)
一昨日の新聞によれば、イタリアの数字選択式宝くじ「ロト」で
2年近く出ていない‘53’という数字に次こそは出るだろうと大金をつぎ込む人が続出。
‘53’に賭けるためのお金を勤務先からくすねたり、全財産を‘53’に賭けた結果、
借金が膨らんで自殺したり、家族と無理心中を図ったり、
どえらい社会現象が起きているようです。

この記事を読んで思い出したのがカナダの作品、『LUCK/ラック』(2003)。
日本では未公開でしたが、
前述の『ドーン・オブ・ザ・デッド』の主演女優、
サラ・ポーリーが出演しているということで、
去年、『ドーン・オブ・ザ・デッド』の公開前にDVDが発売されました。
この作品は、サラ・ポーリー主演の青春ラブコメディという触れ込みですが、
ウソです。彼女は主演じゃないし、コメディとも言えません。

1970年代のカナダ。シェーンという若者が、サラ・ポーリー演じるマーガレットに恋をする。
マーガレットが別れたはずの男性と旅に出ると聞き、シェーンはやけくそでギャンブルに走る。
アイスホッケー版トトカルチョ、競馬、ブラックジャックなど、
あらゆるギャンブルにハマり、借金は巨大化。

ギャンブルにハマる様子が実によくわかります。
冒頭、「ギャンブルはすべきではない。運はいつ向くか、誰にもわからないから」という格言が流れます。
でもこれはギャンブル狂には通用しないでしょ。
「勝つまでやれば負けない」というのがギャンブル狂。
ギャンブル狂にこの映画の感想を聞きたい気分です。

シェーンがカジノで負け続け、友人に「もうやめれば」と諭されますが、
「自分がやめたすぐ後に、いい手が来たらどうするんだ」と言います。
みんながそう思うから、イタリアでも社会現象化するのですね。

ギャンブルの儲けが気になるけれど
大金は賭けられずにいる仲間への言葉が印象的。
「意気地がないくせに、欲も捨てられない」。

自分はいっさいギャンブルしない人で、
ギャンブルする人に向かって「勝ったらごちそうして」って言う人、いませんか。
「嫌や」って答えようものなら「ケチ!」って言いかねない人。
まさに「意気地がないのに欲も捨てられない人」ですわな。

ギャンブルするのもしないのも自由。
自分の責任の範囲でならご自由にどうぞ。
かくいう私は宝くじだけは買う小心者ですが、
ギャンブルする人に「勝ったらおごって」、それだけは言わないようにしています。

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『ドーン・オブ・ザ・デッド』

2005年01月24日 | 映画(た行)
『ドーン・オブ・ザ・デッド』(原題:Dawn of the Dead)
監督:ザック・スナイダー
出演:サラ・ポーリー,ヴィング・レイムズ,ジェイク・ウェバー他

眠りが浅くて、しょっちゅう夢を見るので、
その夢に出てきそうなホラーは大の苦手。
ホラーに分類されていても、心理的にゾクゾクして、
心霊現象に何らかの理由があるもの(たとえば『アザーズ』(2001))はいいんですが、
オカルト系やアクションホラーはとても苦手。

だから、名作と言われるホラーもほぼ未見。
しかし、ここらで「ホラーの壁」を破っておかなければ一生観られないかもと思い、
ハリウッド嫌いで有名なサラ・ポーリー
初出演したハリウッド大作ということもあり、レンタルを決意。
ジョージ・A・ロメロ監督の『ゾンビ』(1978)のリメイクです。

ワシントン州。
看護婦のアナは勤務を終えて帰宅。
夫ルイスとともに眠りにつくが、寝室のドアの向こうに誰かがいることに気づく。
それは、ゾンビと化した隣家の少女だった。
凄まじい勢いで少女に襲いかかられたルイスは、
喉を噛み切られて息を引き取ったかと思われたが、すぐさまゾンビとして復活。

ルイスを振りきり、アナはなんとか自宅を脱出。
外では無数のゾンビが走り回っていた。
まだ正常な人間たちは、一刻も早く逃げようと
ゾンビを車でひき殺し、銃を撃ちまくっている。
あちこちに火の手が上がるなか、アナは無我夢中で車を飛ばす。

やがて、アナは生存者である警官ケネス、
電化製品の販売員マイケル、
麻薬の売人アンドレとその妻ルダに出会う。
5人は生き延びるため、無人のはずのショッピングモールへと向かうのだが……。

当然オリジナルは観てないので比べられませんが、
オリジナル信奉者は不満いっぱいのようです。
しかし、これがホラー鑑賞第1作とも言える私はめちゃめちゃ楽しかったです。

何しろ、いい役者陣が揃っているのになんでゾンビが発生したのかとか、
そんな細かいことは一切なしの超B級。
のっけからゾンビだらけで、最後まで心臓が持たんかもと思いました。

モールの屋上から俳優似のゾンビを狙って銃で頭をぶち抜くゲームをしたり、
チェーンソーでゾンビをぶった切ったり、
でも、そんな残酷描写中にもユーモアがたっぷり。

この作品、「走るゾンビ」がウリなんですけどね、マジですんげぇ速いのよ。
そんなごっついスピードで走られたら、怖いけどワラけるっちゅうの!

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『下妻物語』

2005年01月19日 | 映画(さ行)
『下妻物語』
監督:中島哲也
出演:深田恭子,土屋アンナ,宮迫博之,樹々希林他

嶽本野ばらの同名小説の映画化。
期待せずに観てみたら、ごめんなさい。
下妻、尼崎、バッタモン、ロリータ、ヤンキー。
これぞ日本のエンターテインメント。

茨城県下妻市。
歩けば牛の糞を踏むような、田んぼだらけの田舎町。
ロリータファッション大好きな桃子は、父、祖母とともに暮らす。

桃子は尼崎生まれ。
母は不倫に走り、チンピラの父に育てられた。
バッタモンを売って生計を立てていた父は
あるとき“USJ”と“ヴェルサーチ”の「Wネーム入りバッタモン」を考案。
安さが命の尼崎ではこれが大当たりするが、
本家本元から訴えられることを恐れたヤクザの幹部が、身を隠すように父に指示。
桃子の祖母を頼って、下妻までやってきたのだった。

ロリータファッションにしか興味のない桃子だが、
下妻の住民が服を買うのはいつもジャスコ。
フリフリの服なんぞ、下妻では入手できるわけもなく、
桃子は片道2時間半をかけて代官山のロリータブランド“BABY”に通う。

服代を捻出するため、桃子が思いついたのは、
父の仕事の名残=バッタモンの個人売買。
「ヴェルサーチの服を売ります。但し、バッタモン」と広告を出したところ、
やってきたのは特攻服の地元のヤンキー。
原チャリ暴走族メンバー、イチゴだった。
偽ヴェルサーチに喜ぶイチゴは、その後、頻繁に桃子の家を訪れるようになり……。

生まれも育ちも関西の私は、まず尼崎の描写に釘付け。
「住人の大半がヤンキーか元ヤンキー。
 生まれてすぐにジャージ、
 死ぬときもジャージ。
 そう、ここはジャージ天国」。

幻の原付としてDJ-1Rの“VIVA YOU”仕様が登場。
80年代に原付に乗っていた人は懐かしく思うはず。
ファッション・ブランドとホンダのコラボレートで
話題にはなったけど、あんまり売れなかったやつ。
この原付を見て、イチゴが「すっげぇ!」と感激。

借りは返す主義のイチゴに対し、
「人は本当に大事なものは貸さないの。
 貸すのはどうでもいいものだけ。
 だから、私は借りたものは返さないし、
 私が貸すときはもう返ってこないと思ってる」
という桃子の台詞は一理あり。
合いそうもないこのふたりが友情を育む様子は、ダサイけどとてもいい。

下妻も尼崎もあんまりな言われ方だけど、怒れないでしょ。
役者も個性派揃いでみんな○。
愛すべき作品。

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『ウォルター少年と、夏の休日』

2005年01月17日 | 映画(あ行)
『ウォルター少年と、夏の休日』(原題:Secondhand Lions)
監督:ティム・マッキャンリーズ
出演:マイケル・ケイン,ロバート・デュヴァル,ハーレイ・ジョエル・オスメント他

とても珍しいことですが、可も不可もない作品のはずが、
その素晴らしいオチゆえに観た甲斐があると思える一作になることがあります。
米国の人気映画雑誌『MOVIELINE』で
「スクリーンで観たい良質な脚本No.1」に選ばれたのも納得。

14歳のウォルター少年は母親メイとふたり暮らし。
身持ちの悪いメイは、ろくでもない男に引っかかってばかり。
そんなメイには頼れる親戚もいなかったが、
長らく行方不明だった大叔父のハブとガースがテキサスに帰ってきたことを知る。

数十年もの間、放浪を続けていた大叔父たちは
どうやら大金を隠し持っているらしい。
メイはウォルターを大叔父たちのもとへ送り込むと、金の在処をつきとめるよう、
ウォルターに耳打ちして、自分はさっさと立ち去ってしまう。

途方に暮れるウォルターに、大叔父たちは「子どもの扱い方はわからんから、
必要なものは自分でなんとかするか、我慢しろ」と言い放つ。

ボロ家に住み、世間とはつきあいを断ち、
金目当てにやってくるセールスマンたちを銃で追い払うハブとガース。
テレビも電話もないこの田舎で、ウォルターと大叔父たちの夏休みが始まる……。

原題は“Secondhand Lions”で、作品中にも登場する、
動物園をお払い箱になった老齢のライオンのこと。
大人から愛情を注がれたことのないウォルターが頑固者のハブとガースに出会い、
嘘とも本当ともつかないふたりの冒険談を聞かされて、
こんな大人になりたいと思うようになります。
ハブとガースのほうも、ウォルターと出会う前はまさに原題どおり、中古のライオン。
それがウォルターと関わるうちに毎日が輝きを放ち始めるのです。

それが真実かどうかは関係ない。
人生には信じなければいけないことがある。
名優ロバート・デュヴァル演じるハブの台詞に唸り、
そして迎えるラストは、人生ってやっぱりいいもの、そう思えます。
好きだなぁ、このオチ。

『シックス・センス』(1999)の後、悲しいかな、
巧すぎる演技が鼻についてしまうハーレイ・ジョエル・オスメント。
声変わりはしたけど、あの垂れさがった眉は健在。
彼がもうちょっと中年だったら、ハリソン・フォード、ブルース・ウィリスとともに
「いつでも困ってるみたいな顔」の御三家と呼びたいかも。

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『僕の彼女を紹介します』

2005年01月13日 | 映画(は行)
『僕の彼女を紹介します』(英題:Windstruck)
監督:クァク・ジェヨン
出演:チョン・ジヒョン,チャン・ヒョク,キム・スロ,チャ・テヒョン他

前述の『ハウルの動く城』とハシゴして観た1本。
泣ける映画=いい映画と定義するなら、これはまちがいなく最上級の映画。
その日の観衆、みんな大泣き。
私の泣きっぷりがどれぐらいだったかと言うと、
『ハウル』より先に観たにもかかわらず、
『ハウル』の後、まだまぶたが腫れていたほど。

『猟奇的な彼女』(2001)の前編にあたると思われる、同監督、同主演女優の作品。

ひったくり犯を追いかけていた教師ミョンウは、
通りかかった婦人警官ギョンジンに犯人とまちがわれる。
ギョンジンは華奢な美人でありながら、恐ろしく凶暴。
取り押さえられ、ボコボコにされるミョンウ。
すぐに誤解は解けるが、口も達者なギョンジンはミョンウに謝ろうともしない。

数日後、生徒の非行防止のため繁華街のパトロールを決めたミョンウは、
同伴してくれる警官を求めて警察署を訪れる。
そこに居合わせたのがあのギョンジン。
仕方なく、ふたりでパトロールを開始するが、
途中で麻薬の売買と思われるシーンに遭遇。
恐れおののいて逃げようとするミョンウにギョンジンが手錠をかけたため、
怪しい人物の追跡にミョンウもつきあわされることに。

熱血漢の彼女に振り回されるミョンウだったが、
ふたりはやがて恋に落ちて……。

まぁ、これがなんともせわしない映画。
ドタバタコメディかと思いきや、ポリス&カーアクション並みの展開あり、
ドキドキハラハラのサスペンスかと思えば、結局は正統派のラブストーリーに。

音楽もやりすぎやっちゅうほど、泣きのツボを刺激。
ボブ・ディランの名曲、 “Knockin'on Heaven's Door”で始まり、
クラシックあり、ダンス・ビートあり、はては大音量でX Japanの“Tears”まで。
小物の使い方もお見事で、
紙飛行機、風車、詩集、パラパラ漫画、写真、そして、ピアノの鍵盤。

この作品を観たくて観にいった人は、みんな満足するはず。
まずは『猟奇的な彼女』をレンタルしてから
こちらを観るのが絶対オススメ。3倍ぐらい泣けるかも。
そしてもう1回、『猟奇的な彼女』が観たくなる。

自分の前世は風だと思うと語っていたミョンウの言葉、
「僕が死んだあと、風が吹いたら、その風を僕だと思って」。
く~、泣くしかない!

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