夜な夜なシネマ

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『浜の朝日の嘘つきどもと』

2021年09月22日 | 映画(は行)
 『浜の朝日の嘘つきどもと』
監督:タナダユキ
出演:高畑充希,大久保佳代子,柳家喬太郎,甲本雅裕,佐野弘樹,
   神尾佑,竹原ピストル,光石研,吉行和子他
 
心斎橋で3本ハシゴの1本目はシアタス心斎橋にて。
 
結構好きかもしれません、タナダユキ監督。
『ロマンス』(2015)、『ロマンスドール』(2019)、どれも印象に残っています。
いつも女性がいい感じなんですよね。
 
本作は、福島県相馬市に実在する映画館“朝日座”が舞台。
映画館が出てくる話としては、私は『キネマの神様』より断然こっちが好き。
 
相馬市にある朝日座は100年の歴史を誇る名画座
しかしこのところ厳しい経営状況が続いていたうえに、コロナの打撃。
支配人の森田保造(柳家喬太郎)は致し方なく売却を決める。
ひと月後には解体され、スーパー銭湯が建つことになるだろう。
 
朝日座の前でフィルムを焼却しようとしていると、
その保造を突き飛ばす勢いで見ず知らずの若い女性(高畑充希)がやってくる。
保造に名前を問われて咄嗟に茂木莉子と名乗るが、本名は浜野あさひ。
 
福島県出身のあさひは東京の映画配給会社に勤めていたが、会社が倒産。
そんな折、病に倒れた恩師の田中茉莉子(大久保佳代子)の遺言で
朝日座をなんとか立て直してほしいと言われ、ここへやってきたらしい。
 
すでに決まっている売却を撤回できるのか。
存続を完全にあきらめている保造が止めるのも聞かず、
あさひは仲介した不動産会社に駆け込む。
経営者の岡本貞雄(甲本雅裕)はあさひの話に耳を傾け、掛け合ってくれる。
 
まずは朝日座がつくった借金450万円を返済しなければならない。
あさひはクラウドファンディングで金を集めようとするのだが……。
 
『キネマの神様』にもコロナの要素が絡められていました。
本作ではコロナも東日本大震災も絡められています。
光石研演じるあさひの父親・浜野巳喜男は、当時タクシー会社を営んでいました。
放射能を恐れて誰も近寄ろうとしないなか、巳喜男は被災地を走り回り、
地元の人たちにとても感謝されていたのに、彼がそれで莫大な利益を得たという噂が流れるや、
周囲は打って変わったように彼に冷たくなる。
儲けようと始めたわけではない。人のためになりたかっただけなのに、おかしな話ですよね。
 
そのせいで高校生だったあさひも友だちがいなくなる。家族もおかしくなる。
そんなあさひを救ったのが茉莉子先生でした。
自殺を考えていたあさひに、「どうせ100年後には死ぬんだから、いま死ななくてもいいでしょ」と言う。
何の慰めの言葉もないまま、名画のDVDを一緒に観る。それだけで落ち着くあさひ。
 
食べ物や飲み物と違って、映画でお腹が満たされることはありません。
でも、スクリーンの残像を胸に、生きていこうと思えるときがある。
 
映画のない生活は考えられません。お腹は減っても心は満ちる。
ま、美味しいものを食べられない生活も考えたくはないですけれど。
食べて飲んで観てが最高だ。映画館よ、なくならないで。

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