時事解説「ディストピア」

ロシア、イラン、中国等の海外ニュースサイトの記事を紹介します。国内政治、メディア批判の記事もあります。

「反日」そして「中国」 (学者・ジャーナリストの言葉の使用について)

2015-07-28 23:13:10 | 反共左翼
リテラに次の記事があった。

学生たちのデモ団体SEALDsにデマ攻撃と公安を使った揺さぶり
安倍政権の体質は中国共産党と変わらない!

(http://lite-ra.com/2015/07/post-1333.html)


執筆した梶田陽介氏は、以前、「米軍基地反対派が
ハーフの女児を暴行した」という右翼が流したデマを暴露した人物である。

「基地反対派がハーフ女児暴行」は右派のデマ攻撃だった! 元国会議員も関与


「週刊誌が書くべき記事はこのようであるべきなのだ」と感心した覚えがある。

アカデミズムと比べてジャーナリズムがはるかに勝っている点として、
早いということ、(基本的には)自由にテーマを決められることが挙げられる。


学問の場合、どうしても論文の形にまとめるには時間がかかるし、
業界への貢献が優先され、社会へのアクチュアリティが軽視されがちだ。
(もちろん、社会に役立つ学問にしようとする動きはあるのだけれども)


その点、上の記事は目下、反対派にむけて行われているプロパガンダ活動に対して
即座に強力なカウンターを食らわし、逆に賛成派の言説の怪しさを暴露した
とても内容がある記事だったと思う。


その梶田氏が「中国共産党」という言葉をマイナスの意味で使うのは少し残念だ。



 冒頭に紹介した記事には、


「 憲法で保障されている「思想・良心の自由」や
 「集会・結社の自由」にのっとって行動しているだけの市民を犯罪者扱いし、
  嫌がらせと弾圧を加える。安倍政権の本質は安倍首相の大嫌いな
  中国共産党とたいして変わらない、ということかもしれない。」

という箇所がある。このような表現にはあえて苦言を呈したい。


何度も書くが、現在の右翼は、
中国や北朝鮮を悪役に仕立て、それに対抗する存在として日本を対置する
というイメージを好んで使っている。




このように書き換えてみれば、よくわかると思う。


「 憲法で保障されている「思想・良心の自由」や
 「集会・結社の自由」にのっとって行動しているだけの市民を犯罪者扱いし、
  嫌がらせと弾圧を加える。安倍政権の本質は安倍首相の大嫌いな
  翁長知事とたいして変わらない、ということかもしれない。」



いやいや、待て!沖縄県は市民にそこまで嫌がらせをしていないぞ!
というのが当然の反応だと思うのだが、相手が中国になるとこの理屈は通じないらしい。



もちろん、中国政府も完全無欠の善政を敷いているわけではないのだが、
「安倍と同じ」と言うのであれば、弾圧の手段を比較して、その共通点を提示すべきだろう。

記事とは全く無関係の中国共産党を、悪の象徴としていきなり持ち出してくるのはおかしい。



もしかすると、梶田氏は去年の香港の雨傘革命を思い出しながら書いているのかもしれないが、
この雨傘革命が実のところ、欧米の支援により動いていたことや、
実際の革命では暴力的な手法も使われたことを思えば、同運動への対応を、
非暴力的な手段を用い、外国からの指導がない運動団体への攻撃と同一視することはできない。




……とまぁ、こんなことを書いてしまったが、別に梶田氏に限ったことではなく、
学問の場でも、安易に中国、北朝鮮、反日といった言葉を、
マイナスのイメージを持たせて使い、
結果的に保守派とさほど変わらない立場から意見を述べる人物が多くいる。



特に、領土問題に対する中国や韓国の運動、声明を「反日」の一言で
片付けてしまう人文学者には正直、驚いてしまう。


もちろん、沖縄の「反米」デモのように、抵抗の形態として認識・使用しているのであれば
問題は無いが、実際は過剰なナショナリズム(国粋主義)として認識・使用している場合が多い。


尖閣諸島に関しては、私も勉強不足で、まだ断言することは出来ないが、
竹島に関しては、完全に大日本帝国が軍事的目的から日露戦争の時期に占領したものであり、
これに対して領土権を主張することは何ら奇妙なことではない。


にも関わらず、竹島の領土権を主張した=反日として扱い、領土問題を
ナショナリズムとナショナリズムの激突として理解する学者が随分といる。


もちろん、外交問題にまで発展するほど両国の国民が
この問題に対してピリピリしている以上、ナショナリズムはどこかに介在してくる。
だが、仮に日本が原爆投下に対する賠償をアメリカに求めたとして、
それら抵抗の動きを「反米」の一言で片付け、
アメリカ人が嫌いな連中がした行き過ぎた行為と評価しても良いのだろうか?

とう言うことである。



先日、読んだスプートニクの記事でも、憲法学者の小林節氏が
安保反対を表明するために「このままでは日本が北朝鮮のようになってしまう」
と語っていた。


これは北朝鮮=最悪の国家と言っているようなもので、
安倍の説く「北朝鮮脅威論」と皮肉にも通じる見解である。



日本とは全く異なる政治的・経済的背景を無視して、
悪の帝国として便利に利用するこの態度には正直辟易させられる。


ここのサイトで何度も指摘しているが、
北朝鮮は米韓の軍事演習さえ中止すれば、
核放棄に応じるというメッセージを定期的に発信している



また、逆らう者は容赦なく処刑というイメージは
韓国の国情院をはじめとする反北勢力が構築したもので、
実際には、何度かの「更正」期間が与えられている。


人権弾圧の象徴として非難されている収容所の数、
正確に言えば収容者の数も大幅に減らしてきた。


これらの事実を指摘した上で、なお同国を批判するのであれば理解できるのだが、
北朝鮮地獄論を唱える自称リベラル・中道・左翼は、単に
日本や韓国の右翼が唱えている言説に乗っかっている印象を強く受ける。
(主張する内容が保守派のそれとそっくり)


とどのつまり、これらの言説は一見、反対派の意見のように見えるが、
実のところ、殴るか、なじるかの手段のレベルで異議を唱えているにすぎず、
隣国を悪としてみなす敵視政策については保守派陣営と同じ立場なのである。




そういう輩が果たして本当に進歩的な意見を提示できるのか……
という一抹の不安を私は持っているのだが、これは杞憂に終わるのだろうか?



仮に集団的自衛権の容認を阻止できたとして、
そこから一歩踏み込んで隣国の関係を改善することは出来るのだろうか?


私は無理だと思う。


最新の画像もっと見る