時事解説「ディストピア」

ロシア、イラン、中国等の海外ニュースサイトの記事を紹介します。国内政治、メディア批判の記事もあります。

北朝鮮党大会に関する朝日新聞のプロパガンダ記事

2016-05-09 00:12:29 | 北朝鮮
現在、北朝鮮では何十年ぶりの党大会を開催しているが、
これに伴い、国外のジャーナリストを招致し、自国のアピールに奔走している。

せっかくの訪朝のチャンスなのだが、日本のメディアは直接平壌に行こうとしない(※)。
代わりにいつも通りの韓国経由の北朝鮮バッシングに熱中している。

朝日新聞を例にすれば、文春新書から自著を出すようなバリバリの保守記者、
牧野愛博氏が「正恩氏、非核化を再び否定「責任ある核保有国」 党大会」という記事を書いているが、
もちろん、ここに書かれているのは海外メディア経由のもので、まぁ推して知るべしである。


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正恩氏が示した戦略は、個人独裁を含む従来の北朝鮮の路線を正当化し、継承することを訴えている。
核や弾道ミサイルを放棄し、武力挑発をやめるように求めてきた国際社会の反発を呼びそうだ。

正恩氏は5カ年戦略について「人民経済発展のための段階的な戦略」とし、
電力の充実や農産物の増産などを指示したが、具体的な数値目標には触れなかった。

正恩氏は外交や安全保障分野で「米国による核戦争の危険を、強力な核抑止力に依拠して終わらせる」と主張。
「責任ある核保有国」という言葉を使い、核を放棄する考えが全くないことを改めて強調した。
「実用衛星をさらに多く製造し、打ち上げるべきだ」とも訴えた。

正恩氏は、韓国に南北関係の改善を訴えると同時に、
米国に「朝鮮半島問題から手を引くべきだ」と主張した。
米韓は、北朝鮮が非核化に向けた具体的な態度を示すよう求めており、正恩氏の主張に強く反発しそうだ。

また、正恩氏は、日本に対して「朝鮮半島に対する再侵略の野望を捨て、
わが民族に犯した過去の罪悪について反省、謝罪し、朝鮮の統一を妨害してはならない」と強調した。

朝鮮労働党大会は8日も平壌で引き続き、開かれている模様だ。(ソウル=牧野愛博)

http://www.asahi.com/articles/ASJ5833W9J58UHBI008.html
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同じことをスプートニク紙やPars todayが伝えるとこうなる。


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北朝鮮の金正恩第1書記は、北朝鮮は核不拡散の義務を遂行し、
世界の核ポテンシャルの拡大に終止符を打つために努力すると発表した。

8日、ロイター通信が、朝鮮中央通信を引用して伝えた。


また金第1書記は、北朝鮮の主権が侵害された場合には核兵器を使用すると述べた。

第1書記は、次のように指摘した-

核兵器を保有する責任ある国として、我が共和国は、
 侵略的な敵対勢力が核兵器を用いて我々の主権を侵害しない限り
 核兵器を使用することはない。


http://jp.sputniknews.com/politics/20160508/2101820.html
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北朝鮮第1書記、世界の非核化と韓国との関係改善を強調



北朝鮮のキムジョンウン第1書記が、「北朝鮮は核兵器を使用しないだろう」と表明しました。

中国・新華社通信によりますと、
北朝鮮のキム第1書記は、8日火曜、朝鮮労働党大会で、世界の非核化を求めました。

キム第1書記はまた、「北朝鮮は侵略を受けた場合にのみ、核兵器を使用するだろう」と語りました。

さらに、
「北朝鮮は大量破壊兵器の拡散防止を遵守しているとともに、
 この実現に向けて、全力を注ぐことになるだろう」としました。

キム第1書記は、演説で、祖国統一は朝鮮労働党にとって特別な重要性を帯びており、
韓国との関係改善を進める必要があるとしました。

また、南北朝鮮の双方の尊重、双方の関係における新たな時代を作るための共通の努力、
祖国統一キャンペーンの支援、これらは韓国との関係改善に必要だと述べました。

さらに、韓国との全てのレベルにおける話し合いの継続を求め、
両国関係は根本的に改善されるべきだと強調しました。


韓国の政府高官は匿名で、キム第1書記の世界の非核化に関する表明はあまり重要でないととしました。

北朝鮮は6日金曜、36年ぶりに行われた朝鮮労働党大会の開会に際して、
敵対を停止するための平和条約の締結を求めました。

http://parstoday.com/ja/news/world-i7825

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一応、確認しておくと、北朝鮮は非核化にむけた具体的な態度をすでに示している。
米韓軍事演習の中止を条件とした核開発の停止、平和条約の締結だ。
この提言を米韓が毎回、難癖をつけて却下し、軍事演習に固執してきたのはすでに伝えた通り。

日米韓の北朝鮮ミサイル実験に対する茶番

牧野氏の報道では、事実関係が逆転している。
北朝鮮は挑発しているのではなく、警告しているに過ぎない。


Pars todayでは、金正恩が韓国との対話による解決を求めていることを率直に伝えているが、
朝日新聞の記事では「韓国に南北関係の改善を訴える」と表現し、対話を求めているという
肝心かなめの部分を削除している。


牧野記者は意図的に北朝鮮が暴力的な国家であるというイメージを拡散させるために
「北朝鮮は核兵器を使用しないだろう」と明言された点には一切触れずに
「北朝鮮は侵略を受けた場合にのみ、核兵器を使用するだろう」という部分を曲解して
「核を放棄する考えが全くないことを改めて強調した」と記述する。実に悪質な記事である。


朝日新聞の記者は前々から保守系出版社から本を書いていたし、
朝日の右傾化は10年前から昔の読者から指摘されていたことである。

とはいえ、ここまで事実を捻じ曲げて報道されると、その合法詐欺ぶりに驚きあきれてしまう。
北朝鮮を非難するのは勝手だが、そのやり口が汚すぎる。せめてフェアな態度で臨んでほしいものだ。


※追記

もっとも、すべてのメディアが訪朝していないわけではない。
テレビ局の中には直接、取材を行っているチームもある。