時事解説「ディストピア」

ロシア、イラン、中国等の海外ニュースサイトの記事を紹介します。国内政治、メディア批判の記事もあります。

竹中平蔵と余斌 現代経済の肯定者と批判者

2014-06-05 22:39:06 | 日本政治
アベノミクスは100%正しいと豪語する竹中平蔵氏。
http://toyokeizai.net/articles/-/15884



私はアベノミクスを批判する人間の中に、彼を擁護する人間がいるのを
非常に不可思議な気持ちで受け止めているのですが、まぁそれはさておき。


余斌という人物については、おそらく99%の日本人は「誰?」と言うはず。

ネタばらしをすると、この方は中国の経済学者で、
ポール・サミュエルソンやハイエク、フリードマンなどが主導した
近代経済学・新古典派経済学の批判者として、業界では有名な人です。


先日、彼が書いた資本論の解説書がこぶし書房から出版されました。
『さぁ「資本論」を読んでみよう』・・・直球ですねぇ。
http://www.kobushi-shobo.co.jp/book/b176215.html


本書の最大の特徴は、資本論の入門書でありながら、
最新の中国経済事情をはじめとして、市場主義経済の罠に
警鐘を鳴らし、また、それらシステムを構築させた
近代経済学(経済学部で習う経済学)そのものの批判にあります。


つまり、経済学の入門書でありながら、
現代批判の本でもあるわけです。


まだ、読んでいる最中ですが、非常に面白い。

中国の学者が自国の経済事情をどう受け止めているかを知る上でも、
必読の書ではないでしょうか?すでに台湾研究者の丸川哲史氏が
同書の書評を書いたとか。さもありなんですね。



さて、中国の経済学者が自国の経済の問題を
批判的にとらえているのに対して、竹中氏は
アベノミクスは「理論上は」100%正しいと評価した上で、
実行できるかどうかは疑問という実に彼らしい逃げ口上を述べていました。


ウマいですねぇ。
アベノミクスが成功すれば、「な?俺の言う通りだったろう」で、
失敗すれば、「やはり実行は難しかったか」と言うことができる

…どちらにせよ彼の意見は正しいことになるわけです。


そんな彼が先日、『ハバード経済学入門』という本を翻訳しました。
ハバードとは、ブッシュ政権で経済政策を担当したグレン・ハバードのこと。

彼が提唱するサプライサイド経済は、いわゆる新自由主義経済に属するもので、
同経済の批判者を筆頭に、多くの同業者から否定されているものなのですが、
これを日本の大学生に読ませるために翻訳したわけですよね。竹中先生は。



前から存在した経済格差を目に見えて拡大させた日本の経済学者と、
新自由主義を筆頭とする近代経済学の欺瞞性を暴露する中国人学者。

この違いは一体全体何なんでしょうねぇ…



特に後者に至っては、中国の社会科学の最高学術機関、
中国社会科学院に所属しているわけです。中国の国立大学は、
日本の国立大学と同じではないことは、容易に想像できることでしょう。

つまり、なぜか比較的言論や思想の自由が許されているはずの
日本の大学教授のほうが日本よりはるかに自由が制限されている中国の教授よりも
露骨に体制に迎合し、私利私欲のために職権を濫用している。これは注目すべき事実です。


ところで、アベノミクス礼賛の文章の中に、
スティグリッツも同意見だと述べている箇所があるのですが、
これが本当だとすると、イラク戦争批判で著名な彼も、本質は
同じだったということなんでしょうか…まぁ、思い当たる箇所はあるけれど。

大手人材会社パソナの会長、竹中平蔵氏が旗振り 人材会社を潤わす「300億円」の助成金を設けさせる

2014-06-05 21:02:26 | 日本政治
日刊ゲンダイの記事より。三流新聞だが、インタビューに応じた
五十嵐仁氏は労働問題を専門とする社会学者なので、信頼性は高いと思います。


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これも人材派遣最大手のパソナによる政官接待の成果なのか──
今年3月から大幅拡充された「労働移動支援助成金」が注目を集めている。
この制度で多大な恩恵を受けるのがパソナだからだ。


労働移動支援助成金は、従業員の再就職を支援する企業に国がカネを出す制度。
それまでは転職成功時に限って上限40万円の補助金が出たが、これを改め、
転職者1人につき60万円まで支払われることになった。

しかも、仮に転職が成功しなくても、
従業員の転職先探しを再就職支援会社に頼むだけで
10万円が支払われる。


この制度拡充を主張したのが、パソナ会長であり、
産業競争力会議のメンバーを務める竹中平蔵慶応大教授だった。


「労働力の移動と言いますが、要はリストラ促進助成金です。
 従業員をクビにすると助成金を受け取れる。
 昨年3月に開かれた第4回産業競争力会議で、
 竹中氏は『今は、雇用調整助成金と労働移動への助成金の予算額が
 1000対5くらいだが、これを一気に逆転するようなイメージで
 やっていただけると信じている』と発言しています。その言葉通り、
 労働移動支援助成金は、本当に2億円から一気に300億円に増えた。

 この巨額の税金が、人材サービス業のパソナなどに流れ込むわけです。
 これが自社への利益誘導でなくて何なのでしょう
(元法大教授・五十嵐仁氏=政治学)

http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/150691
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日本の雇用体系の崩壊の一つの原因は、
彼が推進した労働力の流動化(派遣社員を増やし正社員を減らす)
なのですが、その経済政策で最も利益を得るであろう人材派遣会社の
会長職に収まって、大金を頂いているというのは凄すぎですよね。




わかりやすく説明すると、麻薬を合法化させた大臣が
大手の麻薬販売業者の会長になっていたようなもの
なのですが、
いまだに彼を擁護する人が少なくありません。他ならぬ庶民に。かなりの数で。


私も、さる場所でこの件について「派遣会社が得をする制度に
改造した後に、自分が会長になるあたり、陰謀めいたものを感じる」と
竹中氏を批判したところ、「それは決めつけだ」「批判者の意見を鵜呑みにしている」
という厳しい意見を頂きました。どうも陰謀という言葉がよくなかったらしい。


しかし、状況証拠からして、自分の利益のために行動しているのは
一目瞭然でしょう。私は誰かの意見をそのまま垂れ流しにしているのではなく、
ありのままの事実だけを並べると、彼が大金を得られるような経済システムを
「経済改革」の美名のもとで行ったようにしか見えないと考えているのですが……


彼らにとっては、「それこそがお前の思い込みだ」らしい。

ちなみに、「なぜ、そこまで竹中を庇うのかがわからない」と反論すると、
「これを『かばう』と受け取るあたり、隔たった観点に立っている」とのこと。

彼らは、この人材派遣の点については、どうでもいい、さして関心がないと
明言した後に、「傍から見た意見として」と称して、批判者の意見を
「それは言いすぎだ」「他人の意見に流されている」と否定するのです。


もし、その情報を流した相手がオウムだと知らずに
信じたらどうする?と言われました。少なくとも、五十嵐教授より
竹中のほうがよりオウム的だと私は思うのですが、そういう感情も
「お前は前から竹中が嫌いだから、少しでも批判できる情報を
 得ると過敏に反応してしまうのだ」らしいです。


要するに「気にするな」ってことですよね。


それが誰にとって都合のよい言葉なのか……
明らかに竹中をはじめとした派遣会社と、
リストラをしやすくなった大企業なんですがね……



私と論議した相手は、企業の経営者ではなく、ごく普通の労働者。
これに限らず、在日問題や歴史問題、軍拡でも感じることですが、
当の被害者たちの中に加害者たちに加担する人が一定の割合でいるんですよね。


彼らにとっては、無知であることが客観的であることで、
事情に詳しくなることを、情報に流されていると呼ぶらしい。


経済格差の責任者の一人を批判するのではなく、
その批判を浅薄な意見だとみなして一蹴するのが客観的意見らしい。


その一方で、彼らは、
消費税増税や年金といった自分に直接関係のある
問題に対しては、政府を批判しているんですよね。



私が同じような論調で、彼らの不満をせせら笑ったら、
どう感じるのか、想像できないのでしょうか・・・?


どうも、今の日本の政治や経済で語る人たちの中には、
自分のこと以外に関心がないくせに参加したがる人が多い気がする。

そういう連中は、百害あって一利なしで、
口出し無用なのですが、まぁ、喋ってくるんですよね。困ったもんです。

G7、ロシア抜きで協議中

2014-06-05 01:10:04 | 国際政治

G7(英・米・仏・独・伊・日・カナダ)のエネルギー依存政策と経済格差を非難する抗議者。
安倍の表情が絶妙。
http://rt.com/news/163476-g7-brussels-russia-ukraine/


ロシア抜きでの協議がブリュッセルで行われています。

自分たちに批判的な国は、徹底的に排除するという姿勢が
明らかになったのではないでしょうか?まぁ、前からこうなんですけどね。


それにしても、G7の批判者たちの仮装、すごく面白い。
石油(エネルギーの原料)に着目して20世紀の歴史を振り返ると
欧米各国による常軌を逸した資源獲得戦争が見えてくるわけです。

そのことをこれほど分かりやすく伝えたものはないでしょう。
考案した人間、ナイスですねぇ。