中国西安で奮闘する大学教師Mの日々

日本人教員として中国の陝西省西安市の大学生・大学院生に対し、「日本文化・社会」や「卒業論文」などを教えています。

日本語会話を上達させるには?という質問に対して

2014年09月23日 01時06分13秒 | 中国の大学、大学生
中国で日本語教育界の端くれで仕事をしていると、よく学生さんから受ける質問があります。
その一つが、

「文法などは沢山覚えたけど、会話があまり上達していない。どうすればいいか。」

というものです。
先日も済南市内の各大学生が集まる日本語交流会で、同じような質問を受けました。
こうした質問を中国現地の学生達のおかれた状況に即して、回答したいと思います。


まず、日本語学習者が学習を進めるにあたり、目標とする一つがN1(日本語一級試験)です。
重点大学などでは四年次に8級試験というより高度な日本語試験を受験するケースもあります。
しかし、一般的にはN1が多くの日本語学習者の一つの学習目標に設定されているといえます。

この試験を受験するには、リスニング、言語知識、読解などの問題に回答する必要があります。
試験内容はなかなか高度で、言語知識(語彙、文法)は日本人でも区別がつけにくいものが混じっていることもしばしばです。
リスニングは日本人であれば当然聞き取れるものですが、やはり学習者にとっては複雑な面もあり、毎回点数は低い箇所です。
語彙も約1万語を覚えないといけないとされており、習得までには相当な時間を要するといえます。

このため、多くの学習者はN1合格に向けて単語・熟語を一生懸命覚え、文法習得後は実践トレーニングを積みます。
また、リスニングと同時に書く練習も相当な時間をかけてこなさないと身につかないといえるでしょう。

ですから、中国の学習者を見ていると早くて大学二年、一般的には大学三年の終わりに、遅い方で四年時に合格するという感じです。
もっとも途中で学習をドロップアウトしてしまうケースもあります。

これだけの労力を費やす試験だけに、大半の学生は真剣に望みますし、複数回受験するケースも見られます。


私個人としては、中国の学生達がこの試験に臨む姿勢にこそ、良い面と悪い面が並存していると考えています。
良い面としては、周りの学生達が真剣に勉強するので、自分自身も影響を受けて勉強するようになることだと思います。
同時にその間、がむしゃらに多くの単語・熟語・文法を頭に叩き込むことが可能になっているといえるでしょう。

一方、負の面としてはN1が絶対的な目標になりすぎた場合、勉強する楽しさ、自身で目標を設定する姿勢などが弱めになるという点にあると感じています。
仮に学生が「とにかくN1に合格すればいい」という意識になってしまうと、合格するためには徹底的な暗記、リスニングの強化に走りがちです。
一方、N1には含まれないが重要性の高い会話レベルをある程度までの成長で止めてしまう、あるいは、それ以上関心を持たなくなってしまうケースが見られるのです。

つまり「N1至上主義」になる学生は、本来もっとも考えるべき、日本語の運用能力を忘れ、合格資格の取得こそが最重要という意識になってしまう場合があるわけです。
私は中国での仕事を通じて、こうした視野の狭い目標を掲げた学生は、総じて会話が伸び悩むという認識を持っています。

そもそも「N1至上主義」の学生は日本語学習を楽しいと感じていないケースが多く、まるで労働のように取り組んでいる場合さえあります。
逆に、日本語学習に関心を持っている学生は仮に伸びは遅くても、確実な力をつけるケースが多いですし、継続して日本語運用能力も上達していきます。
関心があればこそ、自分でどんどん課題を見つけて学び、その力を伸ばせるのだと思います。


「文法などは沢山覚えたけど、会話があまり上達していない。どうすればいいか。」

これが先ほどの質問内容でした。
でも、この質問少し内容が正確ではないと私は感じています。
正確には、

「文法などは覚えさせられたけど、会話はあまり上達しなかった。どうすればいいか。」

と言うべきではないでしょうか。

そもそも、きちんと文法などが身についている学習者であれば、会話トレーニングをより積んでいくようにすれば必ず話せるようになります。
会話は一つ一つ階段を上っていく作業と同じで、基本的には自分で目の前を課題を一つ一つ片付けていくことで徐々に上達していくものだからです。
もしN1に会話試験があれば、先のような質問をした多くの学生は「合格するレベル」までは一生懸命会話をトレーニングするのでしょう。
しかし、恐らくそれ以上は自分で目標を設定しないので伸び悩むのではないかと私は思います。


大切なのは「楽しいという興味・関心」と「自主的に課題設定する姿勢」だと思います。
まずはそれがないと会話レベルはもちろん、他の日本語運用能力も試験が定めた範囲から上のレベルにはいけないのです。


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4 コメント

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Unknown (キンシン)
2014-10-02 21:30:10
あたしはそういう感受もあります.日本語を勉強したばかり、試験の準備するために、何回も単語や文法などを覚えるにおける、日本語の本質のホビーを失ってしまいました。楽しく勉強することができないので、日本語の進歩に達することができないと思います^o^
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キンシンさんへ (M)
2014-10-03 00:19:34
そうですよね、楽しいという気持ちはやはりいつでも大切だと思います。ところで、大阪の大学院の生活はどうですか?
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Unknown (キンシン)
2014-10-03 16:50:01
兵庫県立大学ですね。毎日基礎的な経済知識、数学、英語を勉強して、大変やで。時々英語を使って発表するため、めっちゃ難しいと思います。まあ、コツコツと勉強したほうがいいと思います。先生はどうですか?お元気ですか?
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キンシンさんへ (M)
2014-10-04 03:25:33
そうですか、県立大学には知り合いの研究者(工学系ですが)が教授をしています。今は修士課程の学生ですよね?僕は変わらずに元気にやっていますよ。
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