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中国西安で奮闘する大学教師Mの日々

日本人教員として中国の陝西省西安市の大学生・大学院生に対し、「日本文化・社会」や「卒業論文」などを教えています。

10月、研究報告をします(天津外国語大学)。

2016年09月16日 05時15分06秒 | 中国での「日本事情」テキスト出版
10月22‐23日、これまで進めてきた日本事情テキストプロジェクトに関して報告をする機会を得ました。

研究会の会場は、天津にある天津外国語大学です(これで二回目の訪問)。
研究会名は、「国际化视野中的日汉语言对比及翻译研究国际研讨会会议」とやや長め。

その報告要旨をさきほど事務局に送ったのですが、それをここにも掲載しておきます。

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題目:現代中国の大学生に向けた日本事情テキストの共同制作

 現代中国の大学における日本語教育関連科目の中に、日本事情(或いは、「日本概況」や「日本文化と社会」)がある。本科目では日本について、社会・文化・歴史・経済・政治などを幅広く学生に教授し、かれらの日本理解を深め、かつ、多角的な日本理解を進めることを主な目的としている。さらに、本科目は学生の日本語習得においても少なくない学習効果が期待できる。

 これまで中国国内において、日本事情の大学テキストは数多く出版されてきた。しかしながら、それらのテキストには依然、少なくない課題もみられ、改善の余地が残されている。それらの課題は、①記述内容の公平性、②内容の構成面、③使用されている日本語水準、④学生の学習ニーズの把握、⑤学習内容を発展・深化させる工夫、などであったと考える。日本事情は日本語科学生に対して、有意義な内容を多く含む科目でありながら、上記、日本事情テキストにおける課題が一つの要因となり、教育的効果が十分には上げられていない状況も見られた。その一方で、教師側が日本事情テキストを使用せず、全て自らプリント・関連資料を準備して教えるとなると、教師の負担は重くなり、現実的とはいえない面もある。報告者はこれまで7年半、中国の大学で日本語教育に携わってきたが、その中で日本事情テキストを巡る課題に直面し、その過程で、解決の糸口を新たな日本事情テキストの共同制作に求めるようになった。

 本報告では、現代中国の大学における従来の日本事情テキストの現状と課題を整理した上で、2014年1月以降、報告者が主導となって進めてきた日本事情テキストの共同制作の過程、さらに、我々の日本事情テキストを作る上で核に据えてきた幾つかの制作方針についても報告したいと考えている。

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当日得られたレスポンスなどは、後日、この空間で御紹介したいと思います。

なお、10月に報告させて頂く内容は私個人の成果ではなく、2014年以降、共同して進めてきたプロジェクトメンバーの協力によるものです。
今年8月5日(金)に千葉大で実施した会合が最近の活動なのですが、14年以降、毎年夏・冬は定期的に集まり、意見交換を交わしてきました。

メンバーの協力のお陰で、本プロジェクトはゆっくりではありますが、確実に進んでいます。

2014年1月の会合以降、毎年夏・冬に二度実施してきた会合とその後の執筆作業を経て、現時点では日本語原稿はほぼ書きあがりました。
今後はイラスト・写真の挿入、日本語水準の微調整を経て、中国語への翻訳作業を関係者にお願いし、中国語原稿を作成していきます。
ここまでの作業を来年7月には終えた後は、中国の出版社へ原稿を渡して「原稿チェック」、そして出版という流れになります。

現状ではまだやるべき事が残されており、外部意見もほしいので、10月の研究会で有益なコメントがもらえることを期待しています。



会合後の懇親会の様子





日本事情テキストの出版プロジェクトの活動成果

2015年05月16日 23時52分44秒 | 中国での「日本事情」テキスト出版
このカテゴリーは久々の更新です。
中国で日本事情テキストを出版するプロジェクト、そのメンバーで書いた共著が刊行されました。

見城悌治、三村達也、中嶋英介、菅田陽平
「現代中国における大学生に対する「日本事情」ニーズ調査」『国際教育』(8)、51-76頁、2015年3月


主な考察内容は、現代中国の大学(日本語科)で行われる「日本事情」のニーズ調査、その分析です。
中国の各地域の大学を対象とし、約800名の大学生を対象に調査を実施しております。
この調査の過程で多くの日本人教員・中国人教員の方々にご協力を頂きました。

この場をかりて、お世話になった皆さまに感謝申し上げます。

なお、実際の論文は以下のアドレスからお読み頂くことも可能です。
http://mitizane.ll.chiba-u.jp/metadb/up/SB00228823/8_51-76.pdf



上とは関係ありませんが、私が最近行った翻訳も刊行されています。

【翻訳】梁雲祥『日本外交与中日関係』(2012年、世界知識出版社)
三村達也、『千葉大学人文社会科学研究』(30)、199-206頁、2015年3月


今回は私の研究関心と関わりある、第7章の日中民間外交の箇所(「中日民間外交」)を中心に翻訳させて頂きました。
著者の梁老師には、翻訳後に原稿を送ってほしいと言われているので、日本から製本されたものをお送りする予定です。

こちらも実際の翻訳がネット上に公開されているので読むことができます。
http://mitizane.ll.chiba-u.jp/metadb/up/AA12170670/18834744_30_199-206.pdf

少しづつ進みつつある「日本事情」テキスト出版の道

2014年11月21日 22時12分18秒 | 中国での「日本事情」テキスト出版
先月末(26日)、山東省済南市の山東師範大学にて開催されたシンポジウムにて、研究報告をしてきました。

シンポジウム名:第一届中日研究生学术论坛:人文・社会・经济
论文题目: 現代中国における大学生向け「日本事情」テキストの分析 -そこから見えてくる日本像-


なお、シンポジウムに関して書いた記事は以下。

前回の記事(シンポジウムで研究報告をします(山東省済南で))
http://blog.goo.ne.jp/mimutatsu1008/e/53098d84f93316aecc2814274b09f019


当日の様子を紹介すると書いていながら、その後、その模様を全く触れていませんでした。
ですから、今回は簡単に当日の模様を紹介したいと思います。

まず、上記の報告ですが、15分というかなり限られた時間でありながら、無事に終えることができました。
(毎回思うことですが、中国の研究発表は報告+討論時間が短いので十分な議論ができないことが多い)

有難いことに、報告後、会場の研究者から、報告時間を超過しても止まないほど様々な御質問を頂きました。
また、シンポジウムの後、私の報告会場で司会をして下さった一人、安徽大学のL老師から声をかけられました。
彼もまた、我々と同じように「日本事情」教育の革新が必要だとの問題関心を持っていたとのことで、
『「日本事情」出版のプロジェクトにも積極的に参加させてほしい』と積極的な反応を頂ました。

我々としても、中国人の研究者と一緒にプロジェクトを進めていきたいと思っていた矢先だったので、
まさにタイミングはドンピシャリでした。
早速、プロジェクトメンバー全員に連絡を取り、この件を伝えたところ、皆喜んで迎えたいとの反応でした。
そのため、すぐにL老師に連絡を出し、「可能な範囲での共同研究」をお願いしたいとお伝えしました。

L老師からもすぐにお返事があり、非常に積極的に協力したいとの様子でした。
今回のシンポで、積極的に参加してもらえる中国人のプロジェクトメンバーを得られたことは非常に大きな成果だと思います。
今後はどのような形で協力をして頂くのか、他のメンバーとの相談が必要ですが、上手に協力して進めていきたいものです。


現在は年明けに発表する共著論文を書いているところで、それも今月末には仮完成の予定でいます。
その後、今年末頃を目安に、実際の教科書項目の構成案を各自メンバーから出し合うという流れになっています。
そして、年明けには日本で構成案を持ち寄り、実際の教科書構成案を決定するのが、現時点での計画です。

大学の方ももう少しで学期末試験なので、それが終われば研究天国が始まります。
そこまでは少し忙しくて大変ですが、何とか頑張っていこうと思います。

シンポジウムで研究報告をします(山東省済南で)

2014年10月23日 03時54分27秒 | 中国での「日本事情」テキスト出版
【お知らせ】

今度の日曜日、山東省済南市にある山東師範大学にて開催されるシンポジウムにて、研究報告をさせて頂きます。


シンポジウム:第一届中日研究生学术论坛:人文・社会・经济
论文题目 現代中国における大学生向け「日本事情」テキストの分析 -そこから見えてくる日本像-


なお、今回の報告は既に刊行済みの共著論文が下敷きになっています。
(見城悌治、三村達也「現代中国の大学生向け「日本事情」教科書に見る日本像」『国際教育』第6号、2013年3月)
これは2012年以降、我々が「日本事情」テキストの出版プロジェクトとして取り組んできた一つの研究成果でもあります。
中国国内の研究者の方に、我々のプロジェクトを知ってもらう良い機会ととらえ、今回報告させていただくことにしました。

なお、報告の基となる論文は幸い関連学界の方々から一定の評価を得ることができました。
具体的には、論説資料保存会(http://www.ronsetsu.co.jp/)の方々の目に留めて頂いたことで、
『中国関係論説資料』の一つとして合本形式で今年12月に出版される運びとなっています。

また、報告後、どのようなレスポンスが得られたかなど、こちらのブログで報告をしたいと思います。






「日本事情」テキストの出版プロジェクト その2

2014年04月25日 17時50分28秒 | 中国での「日本事情」テキスト出版
来週から中国は労働節、いわゆるGWに入ります。
私は今学期、毎週木・金曜日に授業が集中しているので、明日から5月3日まで8連休となります!
5月上旬に学会発表が入っていたり、論文提出を予定しているので久々に研究だけに専念するつもり。
その間、仕事に関することは暫く脇に置く予定です。


今回は、前回初めてブログで紹介した「日本事情」テキストの出版計画に関する進捗状況を書こうと思います。
あれから、中国各地の大学に学生達が「日本事情」に対するどんなニーズを持っているのかを調査すべく、調査票を配布している段階です。
また、同じく教員にも「日本事情」を教える際の問題・課題を中心に、どんなテキストが求められているのかを把握するアンケート配布の段階です。

現時点で、教員の方から回収できた調査票は約20枚で、教員の所属する大学がある地域は上海市・安徽省・山東省・南京市など。
調査してみて意外だったのは、日本人教員は必ずしも「日本事情」を教えているわけではなかった点です。
先日の上海の日本人教師会で分かった事ですが、「日本事情」を教えている日本人教員の方のほうが少なく、教えていない教員が大半でした。
この結果を受け、当初は「中国で日本語・日本を教える日本人教員向けのテキストを出版しよう」との方針を変える必要性を強く感じました。
むしろ、中国で日本語・日本を教える日本人教員と限定せず、中国人教員にも向けたテキストの出版を目指す、という方針の転換です。
いや、もっとはっきり言えば中国人教員向けにテキストを作成・出版すると表現した方がいいかもしれません。

この方針転換については、共同メンバーの中で決定したものではありませんが、恐らく、今後の話し合いで転換していくと思われます。
(あくまでも個人的な考え方なので、今後の方針が実際に変わるか否かは未定)
しかし、こうした中国での「日本事情」の担い手の多くが中国人教員である実態は、今回の調査のより明らかになったものでした。
その意味で、今回の調査を行った意味は確かにあったと感じました。


そして、学生への調査に関してですが、学生対象の調査票作成をめぐり二つ問題が発生してしていました。
一つは、調査者の意図が学生にきちんと伝わりづらいものになっていたため、記入の際、様々な誤記が目立ったということです。
もう一つは、日本語のみしか準備していなかったので、日本語が初級レベルの学生を調査対象に出来ていなかったことでした。
これらは調査を始めて、徐々に明らかになってきた問題だったので、調査を行いながら、対応策を講じていきました。

具体的には、
1、中国語版も作成し、学生の日本語レベルに合わせて各教員に調査票の配布をお願いする。
2、調査票の各質問の中で誤読・誤解されやすい箇所を修正し、新しい調査票を配布する(結局、二度修正)。

これにより、何とかその後はきちんとして調査結果が得られるようになってきています。
ちなみに、現時点では回収できた調査票は300枚前後と少ないのですが、既に各地方の各大学に配布済みです。
具体的にこれまで調査をお願いし、快諾を受けた地域は、上海市・北京市・山東省・安徽省・河北省・蘭州市・南通市などです。
それらが一斉に回収されれば、学生からの調査票総数は1000枚を超える見通しです。
当初は「2000枚を回収」と目論んでいましたが、まあ1000枚を超えればまずまずではないかと思っています。


これらを回収し終えれば、次は整理・分析作業が待っています。
どこまできちんとした成果として残すのかが一つの問題ですが、この点については他のメンバーと話し合いながら考えたいと思います。
(活字化するのか、それともしないのか。活字化するなら、論文にするのか、それとも研究ノート程度のものにするのか)
ただ、やはり実際に現場で「日本事情」を教えながら、日々悪戦苦闘している私自身としては、こうした結果以上に、もっと実践よりの議論をより多く行ったり、授業実践などもより多く吸収しながら、テキストの作成へ一刻も早く向かって行きたいと考えているところです。

先日、ある元公立学校の教員の方と話す機会がありました。
その時彼が話してくれたのは、

「教育分野にも研究者がいるし、現役の時に彼らの話しを聞く機会が沢山ありました。しかし、現場と彼らの話は離れていて、ほぼ役に立たないです。」

さらに、

「私達(現場の教員)には、研究者の話してくれた講演会の翌日に現場で授業があります。そこで、何か役に立つ話がほしかったです。」

と言う内容で、非常に重要な指摘ではないかと私には思われました。
もちろん、理論的な研究は欠かせないですし、それを否定していのではありません。
むしろ、私もそのような研究成果を蓄積することに喜びを感じる人間だと思っています。
ただその一方で、実際に教壇に立つ教員と研究者との間に橋渡しする機会、組織、人間が不足していること、また、それにより研究成果が現場で生かされていないことは問題です。

現在は私も一人の日本人教員として教壇に立つ立場なので、「現場で役立つもの・成果」を出したいと思わずにはいられません。

今回のアンケート結果の活字化にそれほど積極的でないのは、上記のような理由があります。



とまあ、何とかゆっくりですが一歩一歩プロジェクトは進んでいます。
これも、日本人と中国人教員・学生をはじめとした皆さんの御協力があってこそです。


最後に、前回の日本人教師会での集合写真を載せます。
皆さん、各大学・高校・企業で奮闘されている素晴らしい教員の方ばかりです。
なお、先生方には掲載許可を頂いていないので、顔の部分を隠しました。
消し方が下手ですみません。



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「日本事情」テキストの出版プロジェクト

2014年02月28日 17時52分15秒 | 中国での「日本事情」テキスト出版
今日から新しい記事のカテゴリーを設けることにしました。

私は2009年中国に来て以来、「日本事情」という科目を担当してきました。
この授業では主に、日本語科学生を対象に日本の社会と文化に関わる様々な分野の内容を約半年、一年かけて教えます。
授業を通して、より深い日本理解や日本語理解に役立ててほしいというのが授業者のある程度共通した願いだと思います。

「日本事情」は各大学の日本語科の中で開講していない、というケースはほぼありません。
一方、この科目は「必須」となっていないケースがある、或いは「教授内容は教師の裁量」など、曖昧な形で教えられてきたのが現状でした。
加えて、中国国内では「日本事情」のテキストが相当数出版されていますが、それらは地歴科など比較的古めな日本の教科書からの引用が大半でした。
さらに、テキスト出版にあたってはほぼ中国人が担当してきたため、「中国人から見た日本」というテキスト構成・叙述内容ではないか、と感じられるものも散見されました。

こうした問題を中国で教えながら実際に目にしてきた私は「このままではいけない!何とかしたい!」と常に思ってきました。
しかし、そうした思いと裏腹に自身の博論作業や仕事に追われることを言い訳に、ここまで来てしまいました。


その間、2010年と2012年の「衝突」を経て、日中関係は相当程度悪化し、先行きは全く不透明のままです。
このような事態を心より望んでいる日中両国の人々は恐らくゼロと私は信じます。

国家関係がこじれにこじれてしまっている今、事態を切り開く一つのカギは民間の相互交流、相互理解を進めることにあると考えます。
昨今の事態を見た時、その意義が益々強まっているのは明らかだとほとんどの人が感じているはずです。
そうした貢献を私自身もささやかながら担いたいと考えた時、このプロジェクトを考えるに至りました。
確かに、「日本事情」は各大学日本語科で開講されている一科目にすぎませんが、この授業を通じ、日本の色々な側面を発信する大きな機会となります。
また、教える内容だけなく、教え方などに配慮したテキスト構成にできれば、より多くの中国人学生が日本に関心を持ってくれることも予想されます。
ですから、このプロジェクトに本気で取り組む価値は極めて大きいと私は考えています。

2009年、中国に来て以来、感じてきたジレンマから解き放たれるためにも、そして日中双方でどんどん悪化していく相手国の、相手国民の相互イメージに少しでもメスを入れるためにも、本プロジェクトを完成まで持っていきたいと思っています。


そんな思いで、今年1月に第一回会合を千葉大学で有志メンバーにて開催しました。
話合いにより、今後3~6月にかけてまず、中国全土の大学で日本語科の大学生達が「日本」のどんな内容を学びたいと思っているのか、一斉調査を行うことになりました。

調査対象者は、①日本語科の大学生、②「日本事情」を教える日本人教員の二者としました。
特にメイン対象とする学生に対しては、2000名程度の調査を実施予定です。
現在は、この調査が先日始まったばかりで本プロジェクトは一歩目を踏み出したばかりです。

今後、この記録を本ブログで紹介していくつもりです。



最後に、先日、三年学生W君からプレゼントをもらいました。




肝心の中身は美味しいチョコレートでした、…可愛い豚さんの。
どうして? W君??