中国西安で奮闘する大学教師Mの日々

日本人教員として中国の陝西省西安市の大学生・大学院生に対し、「日本文化・社会」や「卒業論文」などを教えています。

大学卒業後の進路をどうするか?(in中国)

2017年06月27日 00時25分49秒 | 中国の大学、大学生
本日で今学期の大学業務が全て終わりました。

中国では卒業シーズンで、済南でもここ1週間~10日は送別会が繰り返されていました。
加えて、学生指導した某作文コンクール(スピーチコンテストも)に出場した学生らが、
食事会やカラオケ(徹夜…)を企画してくれたため、ここ暫くはやや酒量が増えています。

各コンクールで指導した学生らが開いてくれた食事会(久々に学生に御馳走をしてもらいました)


カラオケ



さて本日の話題は、去年・今年とやってきた自主ゼミナールのこと。
これは課外活動として始めた学習活動で三テーマがあり、その内、一つが経済です(他は文化と言語)。
そのゼミ企画として考案した活動の一つが、

“済南の日系企業で働く日本人社員から、労働現場の生の声を聞き、卒業後の進路選択にいかそう!”

というもの。

大学を挟むと去年のスピーチコンテストのような諸問題が出ると考え、今回、全く自主的な活動として実施しました。
逆に言えば、日系企業の方には完全にボランティアでやって頂く形になったので、ただただ頭の下がる思いでした。

済南日本人会の関係者と連絡をとり、事前に趣旨説明を行った後、開催日一週間ほど前に学生らの質問を送りました。
ゼミの学生たちには、「調べれば分かるような質問はしないように。直接聞かないと分からない質問を準備してほしい」
と伝えていましたが、想像以上によく考えられた質問が手元に集まりました。

当日は、それらの質問事項に合わせて駐在員の方が回答をして下さり、途中で適宜、質疑応答を挟む形式で進められました。
市内の喫茶店で、時間は約2時間ほど。でもあっという間でした。

ボランティアでやって下さったにもかからず、非常に詳しい回答内容を準備して頂いただけでなく、
学生のことを考慮し、日中双方の言語で併記された資料を準備して下さった、駐在員Kさんには本当に感謝しかありません。

このゼミ後、参加学生たちに感想を書いてもらったのですが、そこに出てきた感想で一番多かったのは、

「当日の話で印象深かったのは、日系企業は自らの仕事にプライド(誇り)を持って取り組む企業が多いという話だ。
だからこそ、日本では老舗企業やブランドが形成されるのだと言う。これは私たちが学ばないといけない。」

という類の感想でした。
これこそが当日、Kさんがもっとも言いたかったことの一つで、中国の日系企業で働く中国人社員に伝えたかったことだと思います。
学生は柔らかい頭脳と持ち前の吸収力で、これを学びとってくれたのかなと思うと私も嬉しくなりました。

「どうすれば一流企業に入れるか」、「日系企業の面接でのポイント」など、「結果」や「上辺」の内容に関心を持ちがちですが、
そうではなく、この活動で日系企業の神髄を少しでも理解し、それに魅力を感じた学生がいたとすれば、まずは成功と言えるでしょう。

その時の様子



後日、これらの感想をKさんに送ると、Kさんも大変喜んでいた様子でした。
狭い大学という世界を時に離れ、それ以外の世界で暮らす人々との関りを持ちつつ広く深く学ぶ、そんな学生を育てていきたいです。

先日の日本語スピーチコンテストでの雑感

2017年06月05日 04時51分43秒 | 中国での外教職に関わること
5、6月は中国は各種コンテストの季節。
ということで、私の大学からも作文・スピーチコンテストと立て続けに学生が出場しました。

作文コンクールは日本僑報社・日中交流研究所が主催のもので、我が校からは10名が応募。
スピーチコンテストの方は二人の選手が参加しました。
一つは山東の大学生を対象にした大会、もう一つは中华全国日语演讲大赛という歴史ある大会です。
(なお、日本の某財団主催の大会も9月に予定されており、先日、その指導依頼が大学側から来る)


その内、山東の学生を対象にしたスピーチコンテストで、日本語科の学生が優勝を決めてくれました。

試合後、選手と先生方などとの集合写真。


賞品は5日間日本旅行をプレゼントという立派なもので、資金は山口県側が出してくれたようです。
今年は山東省・山口県の姉妹都市の関係が35周年目という節目で、大会には山口県知事も見えていました。
偶々、巡り合わせの良い年に山東省で日本語スピーチ大会が開催できたということでしょう。

試合後の選手、審査員の集合写真。


大会名は泰山杯济南地区高校日语演讲大赛で、内容はスピーチと即席スピーチの二部構成でした。
前半スピーチは「大きな差はつかない」との予測をしていましたが、上位と下位との間で差があったと感じました。
後半の即席スピーチでは、それがもっと開いていたというのが私の印象です。

特に、即席スピーチのテーマ「車窓からの風景」は、抽象題で学生には難しかったと思われます。
日本語の会話力だけでなく、スピーチの構成力、内容など全ての面で、選手の力を評価する良いテーマでした。
一部の学生を除いて、選手はきちんと発話こそできていましたが、テーマからずれている、構成がバラバラ、
何を言いたいのかがやや分かりにくい、など差が出ているのは見ていて感じました。

ただ我が校の選手は指導内容、助言をよく吸収しており、練習した型を応用した即席スピーチが出来ていました。
文法ミス、発音ミスは結構ありましたが、それでも何とか内容をまとめ上げた結果が今回の賞につながったかもしれません。


その二日後に行われた、中华全国日语演讲大赛でも同じく抽象題が出されていました。
引率して下さった先生の「学生の力を出し切れた」との評価がありながらも、こちらは惜しくも入賞は叶いませんでした。
後で出場した学生からのメールで分かったのですが、即席スピーチが「抽象題で構成を考えられず、失敗」したそうです。

テーマを聞くと、山東で出された抽象題と同類のもので、「あの学生なら何とかならなかったのかな」とも感じました。
ただ中国でも最大規模の大会ということで、レベルも高かったはずで、それに少し飲まれた可能性もあるかもしれません。
指導に少しでも携わった者としては、「もう少し何かできたこともあったかもしれない」と感じ、反省しています。


このように反省もたくさんありますが、その中でも良かったと感じていることは一つだけあります。

それはコンテストの中で、“指導教師の役割分担を明確化したこと”です。

具体的には私が日本語原稿の作成を指導し、発音・アクセントなどの指導をもう一人の先生が指導しました。
時折、両者の意見を交換もしましたが、基本的には相手の指導を尊重し、信頼をして任せてきました。
さらに、日本語科の副主任も時折、意見をくれたり、三人で選手を最終チェックする場面もつくるなど、
去年と比べて非常にやりやすい形で進められました(特に、泰山杯济南地区高校日语演讲大赛の方)。

逆に、中华全国日语演讲大赛の方は校内予選時から情報が直前までこないなど、バタバタしただけでなく、
日本語学科の先生方が情報をきちんと共有できていなかったことなども重なり、
学科全体での連携が十分にとれていない状況があったのは否定できません。
それでも、最後は何とか持ち直していったようにも感じていたのですが…。

当然、出場学生の日々の努力、授業を担当してくれている学科の先生方がいてこそですが、
指導者らの連携力を高めると同時に、役割分担の明確化により、各先生が担当箇所で全力を尽くす環境をつくる、
それが今回の結果につながった面は間違いなくあるだろうと感じています。

やはり何でも「一人ではダメ、皆の力が合せればこそ成功できる」ということなのでしょう。

指導者らの連携がとれていると、指導を受けた学生の結果にも結びつきやすい。
しかし、その逆であれば学生が力があっても結果が出にくい。


これを肌で感じられたのが、今回のスピーチコンテストだったと言えます。
その意味で、今後、コンテストを指導する上でよい経験となりました。

今後に生かしていきたいと思います。