23日(土)
中国から日本の尖閣諸島上空を含む東シナ海を「防空識別圏」に指定したとの報道を耳にしました。
きちんと情報確認をしたいので上海図書館に行き、中国の軍事関係紙・総合紙を見ると大抵はどの紙も一面で報じていました。
一方、同図書館内にある日本の新聞各紙では24日(日)の紙面の時点ではそれに関する報道はありませんでした。
(恐らく、翌日の各紙には報道があったのでしょうが、その後確認をしていません)
日本では特定秘密保護法案をめぐる報道が各紙の注目を集め、上記記事はそれと比べて注目度が低いのもあるかもしれません。
しかし、今回の中国の外交態度だけでなく昨今は中国側の対日姿勢の変化が明らかに確認できます。
(もちろん、「さきに日本の対中政策が変わった」との意見もあるでしょうが)
今回、特定秘密保護法案の成立を目指す日本政府には、そうした中国の対日姿勢に対抗する意識があるのは明らかです。
一言で言えば、国際環境の変化を踏まえ、日本の安全保障の体制が変わろうとしているわけで、その一つが今回の法案であるといえます。
こうした日本の安全保障の在り方を巡る議論は第二次大戦後何度もありましたが、今は特にその変化を求める意見が政府側に強いわけです。
一方、日本の国民も今回の法案をこのまま賛成できないとしながらも、その多くが現状維持を望んでいるとは私は考えていません。
何かしらの形で日本の安全保障を議論し、変化させる時期に来ていると感じている国民も少なくないと感じています。
最近、朝日新聞では一面に特集(「異議あり 特定秘密秘密保護法案」)を組み、毎回各識者にこの法案への異議を執筆させています。
その中で、私にはどうも一部賛同しがたい内容がありました。
それは安倍政権の政策課題と特定秘密保護法案との関連性を論じた、神戸女学院大学名誉教授の内田樹氏による記事でした。
氏は記事の中で、
「安倍政権は経済成長を最優先の政策課題に掲げ」ており、「その流れの中に特定秘密保護法案を位置づける必要」があると言います。
この法案を成立させれば、「国民が知ることのできる情報が制限」され、「政策決定はスピードアップ」し、「トップダウン」で決まるようになると言います。
そして、安倍政権がこの方針を重視する理由は、「集権的、非民主的なシステムの方が金もうけのために効率的だから」と説明しています。
氏はこの法案が施行されれば、「反政府的な言論人や労働組合は(略)抑圧され、メディアも政府批判を抑えることになる」と言います。
2009年以降中国で暮らし、2010年・2012年共に中国にいた私は、上記の氏の意見に対し、どうしても一部違和感を感じました。
もちろん、氏の大半の意見に対しては賛成なのですが、異議を感じたのはもっとも上に書いた氏の主張でした。
安倍政権が確かに経済政策を最優先課題の一つにしているとはいえ、それだけが特定秘密保護法案を成立させたい理由にはならないはずだからです。
私はむしろ、この法案は日本の安全保障を変化させ、現在の国際環境に対応するために成立させようとしている側面が強いと認識しています。
その理由は昨今の日本を取り囲む東アジア国際関係の状況をみれば、うなづけなくもありません。
(誤解のないように言えば、私は決して安倍政権の姿勢に手放しに賛成の立場ではない)
また、いくら「民主的」な社会が重要であるとはいえ、現在の日本政府はあまりにも権力が分散しており、物事の決定に時間がかかりすぎます。
「民主的」であることが社会の絶対条件であると考える一方で、あまりに物事が決まらず、国の方向性が定まらないのではそれも困ります。
特に、めまぐるしく変化していく現在の東アジアの国際環境に日本が対応していくためには、現状では不安が残るのは事実です。
そういうことを第二次大戦以降、きちんと議論していなかったことこそが、現在の日本社会の大きな問題になっていると私は考えています。
東アジアの国際関係をこれ以上緊張させないためにも、相手国と競合するように安全保障費に国家予算を費やすという形は望ましいものではありません。
それを行えばどんどん緊張関係を生み出すだけで、根本的な解決はおろか、一触即発という最悪の結果を招く可能性が極めて大きいと思われます。
ただ、日本の安全保障体制を何も変えない、何も対応しないというのでは現在の国際関係に対応できなくなってくる可能性は否めないと私は思います。
よって、日本の安全保障を変化させることが「戦争への道」と短絡的にとらえるのではなく、東アジア諸地域の安定のために今日本がどう行動すべきかを国民全体が真剣に考えるべき時期にきています。
ともかく、日本国内の事情やそこで優先される政策からのみ、今回の特定秘密保護法案との関係を論じる氏の記事には疑問を感じざるをえませんでした。
率直に言って、どうも安全保障という皮膚感覚が鈍感な内容の記事だと思わざるをえなかったからです。
その点、日経新聞などはこの点をきちんと把握していて、客観的な正しい評価をしていると感じました。
さて話題変わって。
最近は時間が出来れば上海図書館へ行って関係論文を読み、自身の論文を書き進めています。
寒くなり運動をするのも億劫になりがちですが、図書館周辺の並木道を歩くのは気分転換で最高です。
図書館周辺を走る衡山路
その衡山路の交差点
中国から日本の尖閣諸島上空を含む東シナ海を「防空識別圏」に指定したとの報道を耳にしました。
きちんと情報確認をしたいので上海図書館に行き、中国の軍事関係紙・総合紙を見ると大抵はどの紙も一面で報じていました。
一方、同図書館内にある日本の新聞各紙では24日(日)の紙面の時点ではそれに関する報道はありませんでした。
(恐らく、翌日の各紙には報道があったのでしょうが、その後確認をしていません)
日本では特定秘密保護法案をめぐる報道が各紙の注目を集め、上記記事はそれと比べて注目度が低いのもあるかもしれません。
しかし、今回の中国の外交態度だけでなく昨今は中国側の対日姿勢の変化が明らかに確認できます。
(もちろん、「さきに日本の対中政策が変わった」との意見もあるでしょうが)
今回、特定秘密保護法案の成立を目指す日本政府には、そうした中国の対日姿勢に対抗する意識があるのは明らかです。
一言で言えば、国際環境の変化を踏まえ、日本の安全保障の体制が変わろうとしているわけで、その一つが今回の法案であるといえます。
こうした日本の安全保障の在り方を巡る議論は第二次大戦後何度もありましたが、今は特にその変化を求める意見が政府側に強いわけです。
一方、日本の国民も今回の法案をこのまま賛成できないとしながらも、その多くが現状維持を望んでいるとは私は考えていません。
何かしらの形で日本の安全保障を議論し、変化させる時期に来ていると感じている国民も少なくないと感じています。
最近、朝日新聞では一面に特集(「異議あり 特定秘密秘密保護法案」)を組み、毎回各識者にこの法案への異議を執筆させています。
その中で、私にはどうも一部賛同しがたい内容がありました。
それは安倍政権の政策課題と特定秘密保護法案との関連性を論じた、神戸女学院大学名誉教授の内田樹氏による記事でした。
氏は記事の中で、
「安倍政権は経済成長を最優先の政策課題に掲げ」ており、「その流れの中に特定秘密保護法案を位置づける必要」があると言います。
この法案を成立させれば、「国民が知ることのできる情報が制限」され、「政策決定はスピードアップ」し、「トップダウン」で決まるようになると言います。
そして、安倍政権がこの方針を重視する理由は、「集権的、非民主的なシステムの方が金もうけのために効率的だから」と説明しています。
氏はこの法案が施行されれば、「反政府的な言論人や労働組合は(略)抑圧され、メディアも政府批判を抑えることになる」と言います。
2009年以降中国で暮らし、2010年・2012年共に中国にいた私は、上記の氏の意見に対し、どうしても一部違和感を感じました。
もちろん、氏の大半の意見に対しては賛成なのですが、異議を感じたのはもっとも上に書いた氏の主張でした。
安倍政権が確かに経済政策を最優先課題の一つにしているとはいえ、それだけが特定秘密保護法案を成立させたい理由にはならないはずだからです。
私はむしろ、この法案は日本の安全保障を変化させ、現在の国際環境に対応するために成立させようとしている側面が強いと認識しています。
その理由は昨今の日本を取り囲む東アジア国際関係の状況をみれば、うなづけなくもありません。
(誤解のないように言えば、私は決して安倍政権の姿勢に手放しに賛成の立場ではない)
また、いくら「民主的」な社会が重要であるとはいえ、現在の日本政府はあまりにも権力が分散しており、物事の決定に時間がかかりすぎます。
「民主的」であることが社会の絶対条件であると考える一方で、あまりに物事が決まらず、国の方向性が定まらないのではそれも困ります。
特に、めまぐるしく変化していく現在の東アジアの国際環境に日本が対応していくためには、現状では不安が残るのは事実です。
そういうことを第二次大戦以降、きちんと議論していなかったことこそが、現在の日本社会の大きな問題になっていると私は考えています。
東アジアの国際関係をこれ以上緊張させないためにも、相手国と競合するように安全保障費に国家予算を費やすという形は望ましいものではありません。
それを行えばどんどん緊張関係を生み出すだけで、根本的な解決はおろか、一触即発という最悪の結果を招く可能性が極めて大きいと思われます。
ただ、日本の安全保障体制を何も変えない、何も対応しないというのでは現在の国際関係に対応できなくなってくる可能性は否めないと私は思います。
よって、日本の安全保障を変化させることが「戦争への道」と短絡的にとらえるのではなく、東アジア諸地域の安定のために今日本がどう行動すべきかを国民全体が真剣に考えるべき時期にきています。
ともかく、日本国内の事情やそこで優先される政策からのみ、今回の特定秘密保護法案との関係を論じる氏の記事には疑問を感じざるをえませんでした。
率直に言って、どうも安全保障という皮膚感覚が鈍感な内容の記事だと思わざるをえなかったからです。
その点、日経新聞などはこの点をきちんと把握していて、客観的な正しい評価をしていると感じました。
さて話題変わって。
最近は時間が出来れば上海図書館へ行って関係論文を読み、自身の論文を書き進めています。
寒くなり運動をするのも億劫になりがちですが、図書館周辺の並木道を歩くのは気分転換で最高です。
図書館周辺を走る衡山路
その衡山路の交差点