中国西安で奮闘する大学教師Mの日々

日本人教員として中国の陝西省西安市の大学生・大学院生に対し、「日本文化・社会」や「卒業論文」などを教えています。

二年半ぶりの日中首脳会談(中国での反応)

2014年11月11日 00時56分30秒 | 中国の政治、経済
昨日、喜ばしい以下のニュースが流れました。

安倍晋三首相は10日昼(日本時間10日午後)、中国の習近平国家主席と北京の人民大会堂で会談した。
日中首脳会談は2012年5月に当時の野田佳彦首相と温家宝首相が行って以来、約2年半ぶりで、第2次安倍内閣では初めて。
安倍首相は沖縄県・尖閣諸島を含む東シナ海での偶発的な衝突を防ぐ防衛当局間のホットライン設置など「海上連絡メカニズム」の早期運用開始を提案。
両国が「戦略的互恵関係」の原点に戻って関係を発展させるよう呼びかけた。
(毎日新聞 11月10日(月)13時5分配信  http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20141110-00000039-mai-pol)


昨日、二年半ぶりに日中首脳会談が北京で開催されました。
2009年以降、ずっと中国で暮らしている立場としては、ここ数年の日中関係の悪化は多方面で支障が出ていました。
また、どちらの国民もこうした状況を望んでいないと言えるでしょう。
ですから、まずは関係改善の一歩を踏み出したという意味で大いに喜ばしいことと考えています。
さらに、危機管理メカニズム構築による不測の事態回避を両首脳が確認しあったとされていますが、これも非常に意義あることと思います。


このニュースに対する中国での反応ですが、当然と言うべきなのでしょうが、やはり喜ばしいと感じている人が多いようです。
例えば、本日、私が勤務する大学校内ではこんなことがありました。

午前の授業をしようと、教室へ向かう途中、大学事務員の男性(50代位)と会いました。
その方は私を見るなり、「中日の首脳会談が北京で行われましたね。」と嬉しそうに中国語で話しかけてきてくれました。
彼は日中首脳会談について少し話した後、日本の歌(北国の春)を少しだけ歌ってくれ、それを聞いた私も何か嬉しくなりました。

また、本日の授業では日中首脳会談が行われた、APECの会議について紹介してくれた学生達がいました。
昨日の首脳会談について触れると、多くの学生達の表情はやはり嬉しそうで、明るい笑顔が印象的でした。

なお、中国のネットで関係する記事を探すと、やはり日中首脳会談について注目度が高いことが伺えます。
例えば、APEC会議について集中的に報じた公式ページでは、「焦点新聞」の冒頭に日中首脳会談のことが掲載されています。
こうしたことからも、日本と同様に、今回の会談に対する中国側の注目と期待がうかがわれます。
(http://sh.qihoo.com/zt/apec2014/index.html)


もちろん、既に各ニュースが報じているとおり、楽観的にばかりも見ていられないのも事実です。

1 「歴史問題」(特に、靖国) 2 「領有権の問題」

この二つにおいては、現時点ではお互いの主張が一致していないことは明らかです。
よって、今回の会談直前に両国の立場が衝突しないような「妥協」文案が提案されたことで、今回の会談が実現した経緯があります。
ですから、上記二点は今後も常に焦点になる可能性が高く、火種は残されたまま、ひとまず一歩を踏み出したと考えるべきでしょう。

ただ、私から言わせれば2010年、2012年と最悪の日中関係が状況下であった頃を思えば、本当に幸せに感じます。
そんな気持ちが伝わったのが、今日の済南は久々に暖かい陽気で、太陽の日差しが眩しい一日でした。
この首脳会談を機に、両国関係が前進していくことを願ってやみません。

中国の「国際化」、日本の「国際化」との違い

2013年04月14日 19時26分06秒 | 中国の政治、経済
今週末、中国では大学院入試の結果が出ました。
私の現在の学生、また元学生共に数人が大学院へ進学を希望していました。
結果、今の教え子は華東師範大、元学生は上海師範大と共に上海の大学へ合格しました。

先日、そのお礼をいう電話やメールを学生達からもらい、私もほっとしました。
なお、現在教えている学生達は、既に推薦入試で数人が合格を決めていました。
以前教えていた学生達のなかで、大学院を目指していた他の学生がどうなったのか少し気がかりです。


さて、本日の話題は中国における「国際化」について少し書きたいと思います。
ここ数年、中国の経済力、軍事力の台頭により、その国力は国際的に大きな影響を与えています。
日本も例外でなく、日本の政治経済のために日中関係を無視することはできないと言えるでしょう。

これまでアジアを牽引してきた日本ですが、その担い手は確実に中国に変わろうとしています。
(「もはや完全に中国がアジアを牽引している」という意見も当然あるでしょうが)
こうした中国が、今後、国際的にいかに立居振る舞うかは注目を集めています。

そうした中、これまで、
「中国は国際ルールを守らない(守るつもりがない)」
という批判、或いは、
「中国を国際的なルールのなかに巻き込もう」
という議論がありました。

それは確かに、世界的なルールの「常識」においてその通りなのでしょう。
しかし、それがなかなかうまく進行しているとはいいがたい状況にあるのも事実でしょう。

今後、もし中国が既存のルールから外れていることがあまりに多い場合、ルール自体が変わっていくことも考えられます。


こうした時、我々の多くは、
「中国はルールを守らずに困った国」
と批判するかもしれません。
しかし、そうした批判だけでは意味がないと私は思います。

今、最も考えるべきことは、「中国の国際化」の本質をきちんと理解した上で中国と向き合うということではないでしょうか。
そう考えた時、「中国の国際化」とは一体どのような性格をもつものといえるでしょうか。
その点、私はこう考えています。

まず、それは中国が自身を国際標準(グローバルスタンダード)に合わていくというものでないのだろうと思います。
中国のなかに国際標準に自身が合わせるという発想自体がそもそも弱く、だからこそ、自国の価値観(チャイナスタンダード)を国際標準にしたい、或いは、そうした方向性を望むという考え方が根底にあるように私は思います。

ですから、この点で、近代以降、一生懸命に国際標準に従おうとしてきた、或いは、それを取り入れようとしてきた日本とは対照的であるといえるでしょう。

こうした中国における発想は中国の歴史からも確認することができます。
すなわち、中国においては歴史的にみて、異なる民族や文化を受け入れる経験を豊富にしながら、現在に至ってきました。
しかし、一方で、自分自身が外へ出てくことはあっても、海外のスタンダードに合わせる経験を積むことはあまりしてきませんでした。

日本では在日外国人と日本人との文化的摩擦がよく発生しますが、中国ではそうした話題はほぼ出ることがありません。
つまり、自分達の本拠地(ホーム)においては、他者や彼らの文化に大変寛容であるという点が中国の一つ特徴なのです。
(逆に、日本は本拠地において、他者や彼らの文化に寛容とはいえない部分があると言える)
実際、こうした指摘を、実際に中国で長期的に生活した日本人から聞くことは多く、私自身も同感です。

ただ逆に、世界へ出て行った中国人たちが現地社会の人々とトラブルになることは多く耳にすることがあります。
この例から、中国人がアウェーに出て行った場合、他の文化や慣習、つまり、海外の「スタンダード」に合わせるのが比較的苦手といえそうです。


こう考えると、中国にとっての「国際化」は以下のようにまとめられるかもしれません。

(1)外から中国に入って来るものとの関係では、「他者」を自らの社会に大変寛容に受け入れていく。
(2)逆に、中国から外へ出ていく際は、国際的スタンダードに自分達が従うという考え方は強くはない。
(3)よって、自ら作ったルール・常識、所謂、チャイナスタンダードに立って外でも生きていく姿勢・発想が根底にある。

これらは中国文明に始まる長い中国の歴史のなかで形成され、今に脈々と続いている考え方・思想であるように私には感じられます。
そして、これこそが日本の「国際化」のありかたと、中国の「国際化」の在り方を区分する一つの背景にあるように思うのです。
ちなみに、上記の(1)~(3)の内容を反対にすれば、それらが日本における「国際化」となり、両者の「国際化」は非常に対照的です。

それはともかく今後、世界と中国がどのように向き合い、国際化、国際的な融合を進めていくのか。
その動向に私も注目していきたいと思っています。

上海における新入社員の生活事情

2012年11月18日 03時04分19秒 | 中国の政治、経済
11月17日(土) 昨夜は深夜遅くに寝たので、ゆっくりと起床しました。
11時半に大学正門にて大学4年生達と待ち合わせ、地下鉄にて静安寺へ。
そこにあるデパート久光にて、予てから購入予定だったものを購入し、
その後は学生達と一緒に遅めのランチへ。



        

ランチを済ませ、静安寺周辺を散歩しながら陕西南路のデパートを見て回りました。
週末でどこも人人人でしたが、歴史的な建築物を横目に歩く散歩はなかなか楽しめました。
夕方になって4年生達と分かれ、そのまま地下鉄で肇嘉浜路のレストラン「小白樺酒店」へ。

今夜は2012年6月に卒業して、今も上海で仕事をしている元学生達と食事会を予定していたからです。



なお、このレストランは偶々見つけ、その際の味と雰囲気に魅かれ、最近はちょくちょく通っている場所です。
毎回、客で一杯なので常に予約が必要なので今回も予約をしておきました。
本来はもう少し来られる予定でしたが、土曜も仕事が入った元学生達もいて結局5人で食事を楽しみました。
(今夜来られなかった学生とは次回また会いたいです)



        

そこで一番印象的だったのは、彼女たちの社会人としての生活事情でした。
特に衝撃だったのは、彼女達は相手は違えども皆、一人でアパートを借りて生活していなかったことでした。
一人で部屋を借りると現在の給与ではとても生活できず、皆共同で部屋を借りるしかないというのです。
仮に、上海の出身者であれば自分の家から通勤するという方法しか経済的に選択肢がないようです。
(今夜食事会に来た一人は、4人で2DKのアパートで暮らしているとか)

確かに、会社によっては格安の寮(或いは、無料のそれ)を提供している場合もありますが、それは少数とのことでした。

ですから、それなりに名の通った会社に入社した彼女達の給与でも、一人暮らしはとても出来ないので、
大学時代の友人などと一緒にルームシェアをして暮らさざるを得ないのです。
彼女たちの話を聞きながら、

「中学や高校から大学までずっと寮で共同生活をしてきたのに社会人になっても同じなんだな…。一体、いつまでこうした生活を続けるのだろう」

と率直に思いました。
それにしても、社会人になっても部屋を自分自身の給与だけで借りるのが難しいとは、日本とは生活の事情が大きく違いますね。
社会人といっても、まだまだ完全に経済的に自立するには長い時間がかかるわけですから。
ま、こうした事情は上海のような大都市であればこそ問題となっているわけで、郊外や田舎では事情は変わってくるようです。

こういう話を聞くと、よく中国で耳にする結婚相手に求める条件の一つ、

「家を持っているか否か」

がいかに大切なことであるかを再認識します。
うーん、家を持つまでには日本も中国もなかなか厳しい・・・です。