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こんにちは江崎遊子です。

ちょっと言ってもいいですか。

『そこのみにて光り輝く』

2015年03月16日 | お山の映画館

 この冬観た日本映画の中ではナンバーワンだと思った。
 年の所為か、何でも近頃後を引かない。
 おばあちゃんに少しづつ近づいているかも知れない。

 でも、この映画、後を引くのである。
 何げに綾野剛が気に入っているし、人間臭い映画か、と思って録画しておいた。
 WOWOWはこのところ、最新作を放映する。
 新しい映画を観たいと思っているのであり難い。

 深夜に先に見た旦那が絶賛する。
 しかも、下の息子に綾野剛が似ているというのだ。
 「有り得んでしょ」
 
 わたしが観た綾野剛の映画の中では、これ群を抜いていい。
 暗い若者を渋く演じていた。
 このチャラオを演じた菅田将暉の存在感がとてもいい。
 映画の息抜きとでもいうか。
 
 キャスティングが見事にはまっている感じである。
 池脇千鶴もはまり役だ。素晴らしい。
 
 火野正平が俳優であることを忘れていた。
 吉永小百合の若い頃のドラマ『夢千代日記』にも出ていたお気に入りの脇役、伊佐山ひろ子も久しぶりに見た。
 さすが、って感じの演技だ。原作、脚本がいいと、俳優はいい演技が出来ると思う。
 
 原作がいいのだろうね。41歳の若さで自殺した佐藤泰志という作家だとか。
 芥川賞に何度もノミネートされながらも、落選していたとか。
 このタイトルが見事だと思った。『そこのみにて光り輝く』
 地獄を見た者だけが見える、わずかな光、
 そこに深い共感がある。ほんとの幸せ、というのもその辺にあるのかも知れない。
 久しぶりに心が震えた。

 監督は呉美保とか。最近女性の監督が活躍してきた。いい感じである。

 余談ですが、綾野剛の言葉の吐き方とか、アゴの感じとか確かに息子に似ていたかも知れない。
 しかし、これって親ばかだろうか。落ちぶれて、闇をみる青年に似ているって。
 まあいいや。
 画面は暗いけど、今のわたしの年の所為か、人間が生きている場が良く描かれている、と思った。
 そう言う意味では、決して暗い映画だとは思わなかった。
 人間がよく描かれていたし、1本、人間としての筋が通っているという所では安心して観られたと思う。
 まだ、心の奥に感動がある。
 

『グランドブタペストホテル』

2015年03月11日 | お山の映画館

 うーん。ホントに豪華なフルコースのディナーを食べたような、
 と言ったらいいのか、気分良く心底楽しめた。

 プロローグの次に出て来るシチュエーションが素晴らしい。
 惚れ惚れ。動きがパスターキートンの映画みたいだ、と思った。
 ドラメディというジャンルが流行っているとか。
 ドラマとコメディが半々とか、ドラマ風コメディとか
 言うらしいが、かなり可笑しい。
 主役のレイフファインズといつも一緒のロビーボーイがとてもいい。
 
 後に立っている小さい人がゼロと言う名前のロビーボーイである。
 エレベーターボーイもかなり可笑しい。
 こういう人の選び方がピンポイントで笑いを増す。
 笑いを出すか、シリアスさを出すか、暗さを出すか、
 作り手に依って全く違う映画になる。
 
 この映画を観た後の満足感は一体どこから来るのか。
 83歳の女性のお相手が出来ると豪語するレイフファイン扮するグスタヴ。
 お見事、としか言いようがない。
 配役は超豪華。
 ジュードロー、エドワートノートン、ハーベイカイテル、ウイリアムデフォー
 ビルマーレー、エイドリアンブロディなどなど。
 
 背景のセンスが大好きである。監督はウェスアンダーソンとか。
 もう一度観たいと思っている。
 展開が早いので、見逃した場面が沢山ありそうである。
 好きだな、この映画。
 お薦めです。

『愛と哀しみの果て』

2015年03月08日 | お山の映画館

 この映画は1985年公開で、メリルストリーブ36歳、ロバートレッドフォード49歳の時の作品である。
 
 シドニーポラック監督で原題は『アウトオブアフリカ』
 1937年出版のアイザックディネーセンの小説『アフリカの日々』が原作とか。

 それにしても、日本の興行側の邦題の付け方にがっかりするけど、恋愛ものはやはり観客に受けるのだろうか。
 前に観た筈なのに、ロバートレッドフォードがプロペラの飛行機に乗っている場面しか覚えていなかった。
 お陰で、初めて観たようだった。
 レッドフォードも容色が衰え始めたところだろうか。
 メリルストリーブは画面によって、時々とても美しい。美人ではない気がするけど内面が輝く感じだ。
 欧州がアフリカに侵略していた時代である。
 特権意識が高い英国の植民地だった時か。キクユ族という種族が、主人公のコーヒー園で働く。
 自信が招いた政略結婚をして、アフリカに移住する。
 ヒロインはお金持ちの娘なんだろう、夫は言わば、お金で買われているような感じだ。
 うまく行く筈がない、と思わせる所がある。

 アフリカが美しかった。
 最近のアフリカのイメージは、戦争で滅茶苦茶、という感じがする。
 もっとも、アフリカの大地は広大なので、美しい所は今でも沢山あるのだろう。
 そう言う意味で、アフリカの現実を知らない。
 サリフケイタの故郷、マリでもテロが頻発しているし、
 人口増加、エイズ、貧困、と暗いニュースが多い。

 撮影されたのが30年前だから、随分変わったと思われる。

 レッドフォードの役柄は、現実感がなくて、アフリカの風みたいな存在だ。
 メリルストリーブの存在感が、映画を締めている気がした。
 描き方がどちらかと言うと軽い。
 ぐぐっと、わたしに中へは入って来ない。
 人は誰のものでもなくて、自分のものなんだと、レッドフォードは言う。
 婚姻届け、という紙っぺらで自分のものになるなんて考え方を認めないレッドフォード。

 それにしても、アフリカの大地で、ひとりで生きていたヒロインて、なんて素敵な女性だろうと思った。
 コーヒーを育てながら、学校も作ったりと、孤独に耐えながら、ひたすらデニス(レッドフォード)を待つ。

 動物行動学の本(竹内久美子)を読むと、
 夫婦仲良く添い遂げるのは野鳥のつがいくらいだ。
 後はハーレムか、母子で暮らすか、雌のグループで助け合うか。
 雌と雄が別々に暮らす事が多い。
 一夫一婦制って、無理があるのかなあ。
 ともあれ、常識や制度で縛らなければ、とんでもないことになるのかもね。
 長く続いたら、拍手喝采でしょうか。

 先日、マリにフランスがマリ政府の要請で、軍事介入をしたニュースがあった。
 アフリカ北部では、何が起こっているのだろう。
 キナ臭いニュースが絶えないのはなぜだろう。
 
 充分に描かれていたとは思わないけど、アフリカが美しかった。

 
 
 

危ない夫婦。

2015年03月05日 | お山の映画館

 昨日、夕飯後に映画を観る事になった。
 題名は『Sideways』で2004年に公開された映画だ。
 我等のどっちが録画予約したか不明で、もめた。
 危ないね、自分のしたことを覚えてないのか。
 この場合、わたしじゃない、と言い切れないものがある。
 なぜならWOWOW放送だったから。
 我が家では、旦那はBSのチェックが厳しく、映画もBS放送のものが多い。
 わたしはNBAが中心なので、映画もWOWOW担当という感じが自然に出来ていた。
 しかし、この映画を予約した記憶がないのである。

 それはおいて、ともかく観る事になった。
 夕飯後はわたしにとっての映画タイムではないけど、
 どんな映画か知りたかった。で、一緒に観る事になった。
 途中、おばあちゃんがやって来て、なんやかや、犬のカンちゃんの夜のお散歩タイムもある。
 その度に一時停止となる。

 旦那は大盛りカレーを2杯も食べたし、絶対寝ると思っていた。

 映画は中年男が二人、旅に出るという所謂ロードムービーというタイプの映画である。
 中年になって、結婚を決意した男と離婚したばかりで、
 まだ別れた奥さんに未練タラタラで落ち込んでいるワイン好きの男の二人旅である。
 題名は寄り道という意味だろうか。
 演じるのは、ポール・ジアマッティ、という渋い俳優と、
 シュワルツネッガーに似ているけれど、存在感においてちょっと残念なトーマス・ヘイデン・チャーチ。
 
 監督はアレクサンダー・ペイン。
 ストーリーはともかく、中年の男女が出会う所が丁寧に描かれている。
 
 わたしは当然、旦那は寝ている、と思い込んでいた。
 しかし、起きている。
 ハハーン、さては自分に置き換えて考えているのか、と勝手に想像した。
 ポールジアマッティが演じる役は、英語の教師をしながら、小説を書いている。
 その小説が、出版社に認めてもらえず、作家の夢が遠い。
 女性との出会いが、トーマスへイデン役の男性のように簡単に一線を越えない。
 
 トーマスへイデンの方は、ともかく結婚前にアバンチュールを楽しんで後悔無く結婚したいと思っている。
 とても単純である。
 
 男の人は、女性関係については生涯現役らしい。
 女性との出会いの夢を捨てきれないのも、そうなんだろう、と思っている。
 そう言う意味で、この出会いの微妙な感じが面白く、
 だから、旦那も寝なかったのでは、と思った。
 しかしなあ、話に聞く所、女性でも生涯現役の人はいるらしい。
 それには、スーパーパッションエナジーの持ち主でなければね。

 ポールジアマッティは主演男優に置いて、色々な映画賞をとったみたいだ。
 でも、アカデミー主演男優賞はクリントイーストウッドににとられてしまったとか。
 素晴らしい演技だった。虚無の目なんか、中々出来ないよ。
 鏡を見て、真似してみたけど、ただ自分の顔が恐いばかりだった。
 

映画『ブルージャスミン』

2015年03月02日 | お山の映画館

 このところ、録画するのはNBAばかりだ。
 でも、録画しても、長時間見続ける事は難しい。
 早送りにして第4クォーターだけ観たりする。

 旦那は、仕事をするし、このところは読書三昧で、頭を休めるために映画を観たりする。
 映画なんかないか、というけど、映画の見方がわたしと全然違う。
 「ちょっとみてみようかな」と旦那が言う時は逃げる事にしている。
 わたしの場合、若い頃からの癖だろうか、頭がスッキリしている時間帯に
 これから映画観ます、と宣言して「邪魔しないで」と言って観るのである。
 
 最近は殆ど映画の情報がない所で観ている。
 あら、ウッディアレンが監督だったのか。とまず初めに思った。
 ケイトブランシェットは好きな俳優である。
 

 時々流れる黒人女性のブルースがジャズか、
 ウッディアレンの音楽センスは嫌いじゃないな、と思って観ていた。
 見終わって、音楽について調べたけれど、分からなかった。
 映画の中で「ブルームーン」という曲が出て来る。それなんだろうか。
 まあいいや。
 
 流石無駄な場面がない。
 セレブの暮らしは映画の中でしか分からないけれど、
 大富豪になった新聞王が広大なお城の中で、
 子供時代に遊んだソリの名前「バラの蕾」と言い残して亡くなったあの有名な映画『市民ケーン』
 を子供の時に観て以来、お金持ちって孤独なんだ、と思った覚えがある。
 
 日本の落語に出て来るような長屋住まいの庶民が気楽に見えてしまう。
 しかも、貧乏人てお互い助け合うんだよね。
 この映画に出て来る妹がそんな感じだ。
 
 『ブルージャスミン』の中で、将来政治家を目指している男性が落ちぶれた主人公の前に現れる。
 その場面を観ていて、セレブはセレブを選ぶんだ、と思った。
 それは、着ている服や身につけているもの、身のこなしなどだろうと思う。
 確かにね、そう言った暮らしにはそう言った暮らしが出来る才能がいるのかも知れない。
 しかし、虚しいなあ、と思うのである。虚飾だもの。
 
 ケイトブランシェットは素晴らしかった。
 テネシーウィリアムスの有名な映画『欲望と言うなの電車』の主人公、名前を忘れたけど
 その役を演じたビビアンリーの姿はよく憶えている。
 若い頃の美しさに執着する女性の醜さが壮絶だった。

 ケイトブランシェットの演技はその役に勝るというような絶賛の声が多いとか。
 ラストの顔は、何だろう、この先、彼女は立ち直るのだろうか、という暗示がまるでない。
 心を失ったボロ雑巾のような顔だ。

 そこから立ち直ったら、ウッディアレンの映画でなくなるかも知れない。
 しかし、わたし的には立ち直って欲しいなあ、と思った。
 変なプライドは捨てて、生き延びて欲しい。難しいのかな?

 この映画の中で、妹の存在が大きいね。
 
 妹を演じたサリーホーキングである。
 やっぱり楽しませてもらいました。78歳にしてハードなお話を作る元気な監督でした。