ならなしとり

外来生物問題を主に扱います。ときどきその他のことも。このブログでは基本的に名無しさんは相手にしませんのであしからず。

寄生虫博士は人類学にケンカを売るようです 血液型の科学 感想2

2010-04-24 22:36:19 | いい加減なモノ
 タイトルそのまま。寄生虫博士は人類学や集団遺伝学が積み上げてきた知見を完全に無視しています。長文の引用になりますがお付き合いください。

P152~153(引用はじめ)>ところで、民族の血液型構成にもっとも大きな影響を与えた感染症は梅毒だと私は考えています。梅毒の感染を受けた民族の血液型分布がどのように変わっていったのか、その変遷を見てみましょう。
 梅毒はもともとアメリカ大陸の地方病でした。一四九二年、コロンブス一行がアメリカ大陸からヨーロッパに持ち込んだことによって、梅毒は全世界に拡大しました。ヨーロッパからアフリカへと流行は拡がり、感染はアジアの最東端である日本にも及びました。
 梅毒の感染力のスピードは想像を絶するものでした。二十世紀半ばに特効薬であるペニシリンが開発されるまで、四百数十年間で世界中を流行の渦に巻き込んでしまったのです。
 梅毒の当初の感染力は凄まじいもので、人類が絶滅してしまうのではないかと危惧されるほどでした。なかでも梅毒に弱いAB型人間は壊滅的な被害を受けました。O型の人は梅毒に対する抵抗力があったため、O型以外の血液型の人が淘汰され、ほとんどO型人間だけが生き残ったというわけです。
 アメリカ先住民の九〇%がO型であるという事実や、北アメリカ、中央アメリカおよび南アメリカに住む人たちのうち、AB型の割合が常に二ないし三%にすぎないという事実がそのことを裏付けています。(引用終わり)

うん、だからね、アメリカ大陸のそれはボトルネック効果というものですから。というかね、それほどまでに梅毒がすさまじいならなんで日本にはABO全ての血液型がほぼ均等にあるんですか?寄生虫博士の言うことが正しいとしたら日本でもO型の割合が圧倒的多数でなければ説明がつかないでしょうが。遺伝的多様性ってのはそうそう都合よく回復してくれるものではないですよ?

>O型の人は梅毒に対する抵抗力があったため、O型以外の血液型の人が淘汰され、ほとんどO型人間だけが生き残ったというわけです。

ということは、梅毒がボトルネックの引き金となって遺伝的多様性に大きく偏りが出たとみるべきでしょう。そして、そういった遺伝的多様性の偏りは後々まで引き継がれます。アメリカ先住民のケースを例に挙げている以上、寄生虫博士もそこら辺は知っているはずでしょう。
では、どうして日本はアメリカ先住民の3,4倍もAB型の割合が多いのでしょう?さらに言うなら、日本赤十字のグラフを見る限り、O型はA型より少ないんですが、これはご自身の発言と矛盾しませんかね?
壊滅的な被害をAB型がうける、O型以外の血液型は淘汰されると言っている以上、日本も同様の割合にならなければおかしいでしょう。それにこの本のP53に日本をはじめとする数カ国の血液型の割合のグラフがあるんですが、それは確認したんですか?

あと、人によってはもしかしたら判断材料になるかもしれないので、この本の文中で論拠としてあげられていた本を抜粋しておきます。

梅毒、結核と血液型について 「The History and Geography of Human Genes」カバリ・スフォルザ 1994

病気と血液型の相関について 「人類遺伝学」 フォーゲル、モトルスキー著 朝倉書店

さらに、P127~128では東北大学農学部の齊藤忠夫教授が寄生虫博士の論に賛同しているという旨のメールが来たと言っています。

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