ならなしとり

外来生物問題を主に扱います。ときどきその他のことも。このブログでは基本的に名無しさんは相手にしませんのであしからず。

武田邦彦の「生物多様性のウソ」を読む2 追記あり

2011-07-02 09:56:27 | 武田邦彦
 シリーズその2でございます。くそまじめにやると1ページ丸々突込みが入りかねない本なんですがこれ。わかっていたことではありますが、生物多様性を微塵も理解していないなぁ・・・・・・。
愚痴はともかくはじめていきます。

P33
 この地上をあらゆる生物が覆い尽くすと、新しい生物は誕生しにくくなり、自然界は活気がなくなるかもしれません。たとえば、東京というところは、「ヒト」という生物が完全に支配してしまいましたので、そこにはヒトか、ヒトに飼われる生物はいても、自由に生活したり、新しい種ができたりすることは難しいのです。


え?病院での薬剤耐性菌の発生は?東京でも普通にあるんですが{参考:定点報告疾病 月報告分 推移グラフ(適当な薬剤耐性菌を選び、年数などのパラメーターを決めて更新をクリック)}。東京でも生物は進化していることの顕著な例ですよね。
このあとのページでこんなことを言っています。


P35
 よく、院内感染で「抗生物質の耐性菌」というのが話題に出ますが、それは「これまで存在しない細菌で、抗生物質を使うことによって新しく誕生した生物」です。つまりは新種というわけです。


自分が何を言ってるのか分かってるのかなぁ?よく話題になるというなら新種ができるのが難しいというその前の発言と矛盾しませんか?


P35
つまり、生物は常に変化しています。「進化」という言葉自体がそれを意味していますが、絶滅する種も生まれれば新種も生まれます。
 ですから、もし良心的に記事を書くとすると、「一日100種の生物が絶滅し、80種の生物が誕生しているので、差し引きすると一日20種の生物が減っていることになる」とか、「一日100種の生物が絶滅していますが、120種の生物が新しく誕生しているので、かえって生物多様性は高まっているかもしれません」と表現することになります。

中略
 
 おおよその見当をつけますと、現在の地球に3000万種ぐらいの生物がいるといっても、名前がついているのは200万種ほどで、アマゾンでは一年に1000種ぐらいが新しく見つかっているといわれます。


・・・・・・まさか新種なんてどれも薬剤耐性菌のようにすぐさま現れると思ってるわけじゃないですよね?
実験室レベルならともかく、野生化での新種の誕生というのは“早くても”数万年レベルなんですが。ヒトなんてチンパンジーとの共通祖先からわかれて約500万年近くたってようやく現在に至るわけなんですが。種が誕生するのは途方もなく時間がかかるものなんです。今現在、絶滅する速度が非常に早く、新種の誕生(発見じゃないよ)は非常に遅いということが分かっている中で何が良心的な書き方なのか意味不明です。詭弁のガイドラインの「自分に有利な将来を創造する」に当てはまるんじゃないですか。
ついでに言うと、現在発見される新種というのは、“もともと”いたんだけど発見、分類されていなくてその存在が知られていなかった種です。
つまり、開かれていない袋とじのようなもので、ハサミで切り開けば中身は見れるけど、袋とじの中身が突然降ってわいたわけではありません。
今日はこの辺で。

追記7/2
薬剤耐性菌の部分、論理がすっきりしていないので書き換えるかもしれません。明後日くらいにでも。