ならなしとり

外来生物問題を主に扱います。ときどきその他のことも。このブログでは基本的に名無しさんは相手にしませんのであしからず。

日本オオカミ協会は明らかに獣害問題の専門家でない

2011-05-04 12:47:12 | 再導入
 日本オオカミ協会(以下オオカミ協会)のQ&Aに突っ込みを入れていきます。キーストーンも知らないブログよりましかと思えば、大して変わりませんでした。

3.日本の生態系はオオカミがいなくても問題ないのでは?
各地でカモシカやイノシシがいなくなっているのはシカの増えすぎが原因です。
中略
最近では増えすぎたイノシシやサルによる人身害すら頻発しています。山口県ではイノシシに襲われて死者が出ています。神戸では高齢女性が指を食いちぎられる事件も起きています(原因は、イノシシが急増していることに加えて、不用意な給餌であろうと考えられます)。これらすべては、捕食者オオカミを絶滅に追いやったことから始まったのです。今や、シカやイノシシの増加を狩猟だけでは抑制できません。

ねぇ、矛盾って知ってます?イノシシがいなくなっているのはシカが原因で、増えすぎたイノシシによる人身事故があるんですか。ある地域で局所的に起こっているという解釈をすれば、一応矛盾は回避できますが、元の文章は条件を限定せずに断定形で書いているわけでして。矛盾を回避する解釈そのものが難しいですね。


5.駆除や狩猟、柵でシカやイノシシ、サルなどによる被害の防除はできないのですか?
中略
しかし、研究者たちはかつて大台ケ原にオオカミが生息していたことを知っていながら、それを頂点とする食物連鎖の復活を議論していないのは実に奇妙なことです。研究者たちは、オオカミの役割にまるで気がついていなかったか、気がついていてもオオカミの復活に触れるのは具合が悪いと考えてあえて口にしなかったのかどちらかでしょう。こうした態度は、真実に忠実であるべき誠実な研究者としては恥ずかしいことです。


はいはい、せめて公式ブログの人間にキーストーン種をきちんと理解している人間を据えてから専門家名乗ってください。しかし、武田邦彦といい、誠実や真実という言葉を持ち出す自称専門家ほど言葉が薄っぺらくなるのは僕の錯覚でしょうか。

7.日本に生息していたオオカミは日本だけの固有種なのではありませんか?だから、再導入オオカミはマングースやアライグマと同じように外来種ではありませんか?
中略
トキもコウノトリの復活も大陸に生息する個体群からの再導入によって行われています。オオカミの再導入も、トキやコウノトリとまったく同じことなのです。こうした理由から、オオカミの再導入を、もともと日本に生息していなかったマングースやアライグマ、ブラックバスの持込と同じだと考えるのは完全に誤りなのです。したがって、もともと日本に生息していたオオカミと同じ種である、再導入オオカミが日本の生態系に悪い影響を及ぼすという心配は根拠のない杞憂といえるでしょう。


いや、現在のトキもコウノトリも定義的には外来生物でしょう?トキ、コウノトリなんかはある意味で保全生態学設立以前の保護とそれ以降で捻じれた保全生態学のコンコルドでしょう。まぁ、僕はもともとメタ個体群でないのに再導入することに否定的です。それをやる前にやることがいくらでもあるだろうと。

分類学的差異はあっても、生態には違いは認められなかったということなのです。それゆえに、日本列島の隣接地域に生息する亜種であるタイリクオオカミの導入は日本の生態系の再生に貢献こそすれ、好ましくない影響を及ぼすという根拠は見出されないのです。


外来生物でおなじみのフランケンシュタイン効果はどう考えるの?

11.オオカミは人を襲うのでは?
人が、オオカミに正しく接しているならば襲われることはありません。もしもオオカミが人を日常的に襲う習性を持っているならば、北米やヨーロッパ、アジアなどオオカミが生息する地域では、毎日多くの人が襲われて、大きな社会問題になっていることでしょう(ちょうど、日本でクマやイノシシが日常的に人を襲っているように)。


日常的にクマやイノシシが人を襲っているってどういう知識の仕入れ方をしているんですか(呆)。クマの被害(人身事故)は多い年でも“全国で”100件前後ですよ?山に入る人間なんて事故件数以上にいるわけで、どう解釈すれば日常的に人を襲うクマ像ができるのか理解できません。クマによる事故は無視するわけにはいきませんが、必要以上に恐怖をあおる必要もありません。このようなそもそもの基礎知識が足りないことを公式見解として載せてしまうオオカミ協会は明らかに獣害問題の専門家ではありません。