日暮しの種 

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寒風と荒波にもまれ強くなる

2014-02-08 08:00:00 | 編集手帳
2月2日 編集手帳

目が覚めても、
部屋の空気が冷たくてなかなか布団から抜け出せない。
あと5分などと思っているうちに再び寝入り、
気がついたら1時間たっていたという朝もある。

春眠暁を覚えずというけれど、
一年で人がもっとも長く眠るのは今頃かもしれない。
断定的にいえないのは、
自分とは違う人々を知るからだ。

松下竜一著「豆腐屋の四季―ある青春の記録」に、
単車で豆腐を運ぶ情景を詠んだ歌が出てくる。
〈豆腐積み暁の闇ひらきゆく我が灯にかすかな氷雨きらめく〉。
肌を刺す雪片によって「生」を確かめることができるのだと、
自らの日常をつづって著者は語る。
半世紀近く前の手記だが、
豆腐店の朝が早いのは今も変わらない。

東北で三陸ワカメの収穫が始まった。
この仕事も朝が早い。
寒風吹きつける日の出前の漁港で、
刈り取りの道具を舟に積み、
明け方に出漁する。

三陸ワカメは肉厚で歯応えがあるといわれる。
リアス式海岸特有の荒い波にもまれるうちに、
分厚く、
強くなるのです――
地元の人の説明は、
彼ら自身のことでもあるように聞こえた。
そんな人々を思い、
おのが居ずまいを正す日もある。
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