11月16日 読売新聞編集手帳
1年半ほど前の本紙『よみうり時事川柳』に、予言めいた一句が載っている。
〈稀勢の里君(きみ)が何とかせにゃいかん 東京・後藤克好〉
きのうの午後6時前、どれほど多くの人の口から「ああッ!」の声が漏れただろう。
大相撲九州場所2日目、横綱・白鵬が稀勢の里に寄り切られ、
今年1月の初場所14日目から続けてきた連勝記録は「63」で止まった。
白星を重ねていけば7日目には“昭和の大横綱”双葉山の連勝記録「69」に並ぶ。
記録の達成が待ち遠しく、
立ちはだかる人が現れるのも待ち遠しく、
複雑に心みだれる「ああッ!」であったに違いない。
双葉山の連勝記録を止めた安芸ノ海に挿話がある。
師匠(出羽海親方)はさぞかし喜んでくれるだろうと意気揚々、部屋に戻ったが、
ニコリともしてくれない。
やがて口をひらいたという。
「節男(=安芸ノ海の本名)、勝って騒がれる力士より、負けて騒がれる力士になれよ」
負けて列島が騒然となるのは“平成の大横綱”たる証しだろう。
記録の重圧と、一人横綱の重圧に挟まれて、
不祥事つづきの土俵を白星の山で清めてくれた。
その人に拍手を送る。
1年半ほど前の本紙『よみうり時事川柳』に、予言めいた一句が載っている。
〈稀勢の里君(きみ)が何とかせにゃいかん 東京・後藤克好〉
きのうの午後6時前、どれほど多くの人の口から「ああッ!」の声が漏れただろう。
大相撲九州場所2日目、横綱・白鵬が稀勢の里に寄り切られ、
今年1月の初場所14日目から続けてきた連勝記録は「63」で止まった。
白星を重ねていけば7日目には“昭和の大横綱”双葉山の連勝記録「69」に並ぶ。
記録の達成が待ち遠しく、
立ちはだかる人が現れるのも待ち遠しく、
複雑に心みだれる「ああッ!」であったに違いない。
双葉山の連勝記録を止めた安芸ノ海に挿話がある。
師匠(出羽海親方)はさぞかし喜んでくれるだろうと意気揚々、部屋に戻ったが、
ニコリともしてくれない。
やがて口をひらいたという。
「節男(=安芸ノ海の本名)、勝って騒がれる力士より、負けて騒がれる力士になれよ」
負けて列島が騒然となるのは“平成の大横綱”たる証しだろう。
記録の重圧と、一人横綱の重圧に挟まれて、
不祥事つづきの土俵を白星の山で清めてくれた。
その人に拍手を送る。