11月11日、読売新聞編集手帳
「尖」という字は「小」と「大」の組み合わせで出来ている。
発生現場の地名にその字が含まれているせいか、
尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件からはいくつかの「小」と「大」が浮かび上がる。
その一。
日本の領海内で海上保安庁の巡視船に船体を故意にぶつけた船長がいる。
証拠のビデオ映像を、政府の意思に背いて世に流出させたと名乗り出た海保職員がいる。
人物二人の、どちらの行為がよりタチが悪いか――罪の大小は論をまつまい。
領海を侵したばかりか人命にもかかわりかねない危険きわまる振る舞いをした悪質なほうは、
おとがとがめもなく処分保留で釈放しておきながら、
もう片方だけを重く処罰することはできないだろう。
その二。
領土を守ることは「大」問題である。
日中首脳会談を実現させて外交成果に一項目を加えることは「小」問題である。
船長釈放といい、ビデオの非公開措置といい、
「大」を餌に「小」を釣るかのような姿勢を世間がどう見ているかは、
急落した内閣支持率が語っている。
その三。
内閣で存在感が最「大」であるべき人が補佐役よりも「小」さく映る。
奇観というほかない。