植物園「 槐松亭 」

バラと蘭とその他もろもろの植物に囲まれ、メダカと野鳥と甲斐犬すみれと暮らす

亀田鵬斎 孟彪孺皮  江戸時代に行く

2021年11月25日 | 書道
江戸の古典落語の中の登場人物で、実際の歴史上の人物が出て来るのはあまりいません。ほとんどが市井の庶民と、せいぜい武家やお奉行といったところです。その数少ない人名では最も有名なのが、「竹の水仙」「ねずみ」「木彫りの鯉」などの噺で登場する「左甚五郎」であります。だいたい、酒好きで一文無し、宿賃代わりに細工物を拵えるという筋書きが多いのです。

 また酒好きといえば出て来るのが「亀田鵬斎(ぼうさい)」であります。江戸中期の1700年後期から1800年代にわたって高名な書道家で、なかなかの頑固者、変わり者として、江戸の下町の長屋暮らし、貧乏しても、浅間山の噴火の折には家財をなげうって被災者を救ったとあります。書風も性格も豪放磊落、踊るような草書を書き、「蚯蚓流(みみずりゅう)と呼ばれたそうです。 あの贋作で有名な谷 文晁や良寛さんとも交友があったそうですが、幕府の文化政策で締め出され、奥さんにも先立たれ不遇でもあったようです。

 落語では、自分の孫を遊ばせて見失い、大騒ぎして探していると屋台で酒を飲ませる平次が孫を見つけてくれたお礼に、書を書き屋台の小障子に張ったのです。これが評判を呼びその書が高く売れ、しまいに屋台ごと25両で持っていかれました。おでん屋の平次さんも「一刻」な人物で、それまでも鵬斎さんにそのお金を持っていき、先生は受け取りを拒んで預かるだけとしていたので、「平次さんも50歳とお年だから、それではお店を出したらどうだ。預かったお金を元手にすればいい」と言います。平次さんは、貰うわけにはいかないので、借りるならいい、豆腐屋でも始めると言います。すると、鵬斎先生「では、店が出来たらわしが豆腐屋平次と書こう」、落ちは「それには及びません。それでは家が無くなります」となります。

 なんとも江戸前のきっぷがいい、話であります。「おでん 燗酒 平次殿」と書かれた書を見ると「飲みたくなる、飲みなさいっという文字だ」というのが良いですね。少し「おでん 燗酒」の文字を練習し、蚯蚓流で、そんな人を魅惑するような文字を書こうと思いました。

 すると、先日ヤフオクで落札した篆刻関連の書籍8冊が届きました。40年近く前に16,500円で出版された「字統」や字源字典など販売当時の価格で3万円近い書籍が6250円でした。篆刻の文字でまだ知識が浅くて読めない古代文字・甲骨文を学びたいと思ったからです。金文や小篆以前の「絵文字」然とした印を作りたいのです。

 ところが、中に小汚い冊子が出てきました。虫食いながら「漢篆千字文」と書かれております。
 源孟彪(もうひゅう)孺皮 さんの編纂であります。気になって調べたところ、本名は高芙蓉で、1722-1784に活躍した書画家・篆刻家で、日本の印章制度を確立して「印聖」と呼ばれたそうです。前述の鵬斎先生とは時代が少し重なっています。

 一応活版印刷のような体裁ですが、子細に見れば木版刷りの様です。手漉きの和紙に糸で綴じているので「復刻版」とは思えません。国立図書館にも収蔵されている全4巻の「字典」でありますが、裏表紙の由来や落款印などがおされていたはずの紙が剥がれているので真本でも大した値段にはなりますまい。(もしそうした関係者の落款印が残っていればたいした文書でありましょう)
 ワタシの書道関連資料としては、最も古いものでもあり日本の印章や篆刻の礎を作った人の字典なので、大事に保管しその印用の篆書体をじっくり学んでみたいと思います。

 この書籍たちは、実は200個以上の印材と一緒にヤフオクで出品されていたものです。ワタシの読みでは、(亡くなった)篆刻家さんの所有物の書籍であり、同時に出品されたのが刻印済みの印材なので、良材・プロの手になる彫りの落款印ではなかろうか、でした。これを逃す手は無かろうと一気に勝負に出て、「印材まとめて」の3件を落札したのであります。

その中身は・・・、予定の時間となりましたので続きはまた(笑)


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