松実ブログ

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サッカーと忘れらないあの日②

2008年06月12日 19時43分20秒 | Weblog
 177センチの大きな体は中学生の中では一際目立つ。しかし恵まれた体とは裏腹に、彼はへディングでほとんど相手に競り勝てない・・・。

 O君は中学までサッカーをやったことがなかった。


 一般的に中学のサッカー部に入部する生徒というのは、ほとんどが小学校のころに少年団でサッカーを経験している。そういった中で彼は自分の代になってレギュラーの座をつかむことができた。

 
 人一倍の努力と流した汗と涙は彼が一生誇りにできる勲章だろう。自分はそんな彼が大好きでいつも居残りで特訓した。


 彼の体格を生かしたへデイングを絶対に負けないようにしてあげよう。


 自分は毎日足が痛くまるまで彼にボールをあげてあげて、彼は頭が痛くなるまでへディングをした。


 しかし、いざ試合になると相手がいるスポーツである。体格がよくても簡単には勝たせてくれない。
 
 「経験がない分どうしたら相手に勝てるかその方法を考えるために人の二倍も三倍も頭を使いなさい、そして四倍も五倍も練習しなさい」


 自分はよく彼に言いました。ただ相手は中学生。厳しい言葉と自分に対するいらだちで、彼はみんなの前で涙を見せる場面がたびたびあった。その度に、自分も罪悪感に苛まれたが、それでも彼は練習をやめなかった。


 大会の前日彼に与えられた背番号は6番。ポジションは右のサイドバック。ミーティング終了後に自分に近づいてきた彼はこう言った。
 

 「先生。おれはこの大会で絶対へディングで1点とるよ!いままでありがとう!」ユニホームを手に満面の笑みを浮かべた彼の顔は今でも忘れることが
できない。


 大会中、準決勝までの彼のプレーは及第点であったが大きな仕事をするには至らなく、コーナーキックからのへディングも相手に先に触られることが多く、なかなか得点の雰囲気がなかった。あんなに練習したのに・・・。

 大会中、彼の自信は大きく揺らいでいた。


 この試合に勝てば県大会出場。
 

 この大一番で一番緊張していたのは、間違いなく初心者である彼であった。彼は、この大一番のキックオフをどんな心境で迎えたのだろうか。


 次回に続く



けんた