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風そよぐ部屋

ウォーキングと映画の無味感想ノート

映画/裸足の季節

2016年12月29日 | 映画



カンヌ映画祭で好評を博したと言いますが、私としてはイマイチと言います。
両親を交通事故で亡くした5人姉妹は、お祖母さんと叔父さんの家に引き取られます。
舞台はイスタンブールから約1000キロ離れた北トルコ・黒海沿岸のとても保守的な小さな村です。
しかし、いつの時代かは私にはわかりませんでした。
学校帰り、姉妹達は海で男子生徒の肩車で騎馬戦のような遊びをします。
導入のシーンはこの映画の一つの象徴的シーンでした。
監督で脚本のエルギュベン監督は若い女性で、彼女自身もこの遊びを経験したと言いますが、
ブラウス一枚の少女達が海水で濡れる様子は「性的」刺激が強すぎます。
この出来事以来、姉妹達は、家の中に監禁状態になります。
トルコでは、女性は常に「性の対象」としてしか捉えられていないと監督は言います。
それは、トルコの固有なことなのか、イスラームの教えそのものに由来するのか私はわかりません。
監禁された姉妹達が部屋でくつろぐ姿も、かなり性的に描かれています。

結婚もすべて大人の都合で決められ、初夜に出血しないと「処女かどうか」の検査もすると言います。
映像では描かれませんでしたが、その叔父は姉妹達に性的虐待もしているようでした。
三女は、精神的に追い詰められ、自死します。
四女と末っ子は意を決して、決死の脱出を行います。
映画は、イスタンブールに住むかつての女教師を無事訪れたところで終わります。
姉妹は、自由に向かって旅立ちましたが、中学生1年生ほどの彼女が今後無事生きていくことは簡単では無いはずです。
これ以降の物語は、この映画のテーマでは無いのかも知れませんが、これだけでは私には後味の悪い映画でした。
私は、女性が置かれている世界の実情・真実を十分に認識してはいません。
限られた情報の中で思うには、私は多くの女性が今日なお耐えがたい差別と虐待を強いられていることは、そうだと思います。
内戦下の若い男性兵士は、「俺たちは銃を撃ち人を殺し女は犯すこと」しか知らないと言うそうです。
男も女も教育を受け、まっとうな仕事に就けることがやはり大事なのだとつくづく思います。  【12月26日】
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映画/帰ってきたヒトラー

2016年12月20日 | 映画



原題は、"Er ist wieder da「彼が帰ってきた」"。
ティムール・ヴェルメシュが2012年に発表した風刺小説で、ベストセラーになったそうです。
私はコメディとして十分に楽しみましたが、映画の評価は、一口に言えない難しさと思います。
単純なコメディでは決してありませんし、ストーリーにリアリティがあるとは決して言えませんし、
社会風刺のシリアスな社会派的作品とも言えないからです。
1945年、遺体が発見されていませんがヒトラーはベルリンの地下防空壕内で自殺したと言われています。
そのヒトラーが、自殺の直前に現代にワープするという奇想天外の物語です。
ヒトラーに扮したマスッチとスタッフは、ベルリンやミュンヘン等の大都市を始めドイツ中を車で回り、
政治家や街を行き交う人々、近付いてくる人々と様々な交流する姿を撮影し、それらが映画の冒頭映し出されました。
生き返ったヒトラーをたまたま発見したのは、TV会社のリストラ直前の売れない社員ザヴァツキと言う男性でした。
彼は、帰ってきたヒトラーをメインにした制作を企画し、生き残りを託します。
ドイツでは、ヒトラーは口にしてはいけない絶対的禁句ですが、そのヒトラーを笑い飛ばすと言うストリーです。
多くの人々は、ヒトラーそっくりさんに会って、「ドッキリなの!?」みたいな感じで、「セクシーね」と言って、
ハグして一緒にカメラに収まったり、顔を見るのもイヤと拒絶したり……。
テレビ・インターネットの現代、ツイッターやフェイスブックやYOU-TUBEなど70年前と比較にならない宣伝媒体が豊富です。
それらは、人々の多様な考えの発表ツールとして大いに利用され、人々の多様な価値観と情報の拡散に貢献していますが、
あるサイトや出来事がいとも簡単に攻撃され、「炎上」したり、デマゴギーなども拡散したり、「煽動」の威力は、
ナチス時代をはるかに凌駕し、絶大です。
権力者がこの道具を巧妙に利用、操作していることは疑う余地がありません。
彼は、あっという間に「テレビ、マスコミ」の一大寵児になっていきます。

ザヴァツキがつきあい始めた女性は、ユダヤ人でした。彼女のおばあさんは痴呆症でしたが、本物のヒトラーと会うと、
彼女は、「正気」に戻り、彼を激しく拒絶し、攻撃するのでした。
この場面は、この映画最大のクライマックスで、私は大きな驚きと寒気を覚え、我に返えらされました。
ザヴァツキは、ヒトラーを殺そうと思うのですが、彼は捕らえられ、精神病院に送られるところで映画は終わるのでした。
そう現代のドイツでは、正気なのは少数者となってしまったかのようです。
ナチスは、ユダヤ人弾圧の前に、「精神障害者」や性的少数者、「身体的障害者」、「知的障害者」など社会的弱者と少数者を
捕らえ、人体実験や殺害を行いました。
この映画の最後は、まさに戻って来たナチスとヒトラーを暗示しているようです。
オーストリアではヨーロッパで初めての極右が大統領になりそうになり、アメリカでレイシストが大統領になり、
フランス・イタリアでも右翼勢力が台頭しています。
ドイツの哲学者ヘーゲルは、「1度目は悲劇として、2度目は茶番・喜劇として」の名言を残していますが、
ヒトラー・ナチス、ムッソリーニ・ファシズムは悲劇として、そして同じような悲劇は茶番では無く同じように悲劇として、
そして現代のソフトタッチのナチズム・ファシズムは、どんな化粧で現れるのでしょうか?
映画で、何かのSNSでアドルフ・ヒトラーのネームはすでに使われているとありました。何者かは?ですが。
   【12月12日鑑賞】
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映画/リトル・ボーイ 小さなボクと戦争

2016年12月15日 | 映画

メキシコ人の監督脚本のアメリカ映画、秀作とはいえませんが味わい深いです。

8歳のペッパー少年は背が低く皆から「リトル・ボーイ」とからかわれ、意地悪されています。
父親は、少年をとても大事に扱い、「相棒」と呼び合ってかわいがっています。
時代は、日米戦争の時代。少年の兄は「扁平足」を理由に徴兵検査をパスできず、父親が招集され戦地に向かいます。
強制収容所から戻って来た日本人のハシモトは、町民から迫害を受け、ペッパー兄弟も彼の家の焼き討ちを謀ります。
計画は失敗しますが、教会の司祭から次のリストの「良い行い」をすれば大好きな父が帰ってくるかも知れないと諭されます。

始めハシモトと敵対していた少年は、彼の手を借りてリストを実行し始めます。
少年は捕虜となった父のいる、日が沈む海の彼方の方向に"気"を送り続けます。
ヒロシマにリトルボーイ・原爆が落とされます。
町の人々は、小さな少年リトルボーイの起こした奇跡と喝采し讃えます。
死んだと思っていた父親が奇跡的に助かっていて帰国するというおとぎ話のような結末ですが、ちょっぴりいい話しです。
原爆が落とされアメリカ人が喜んだた映像が映し出され時、ドキッとしましたが、映画はとても抑制的でした。
原爆被災直後の壊滅された広島や被災した人々の映像を静かに流したからです。
アメリカには、今日もなお原爆は太平洋戦争を早く終わらせた功の方が大きいとする人々が多いと聞きます。
この映画は、反戦映画ではありませんがその考えなどに冷静になろうよと呼びかけているようでもありました。
アメリカ映画ですが、監督・脚本・制作はメキシコ人のアレハンドロ・モンテベルデ(39歳)さんです。
並のハリウッド・アメリカ作品ではありません。
今年9月彼の父親と兄弟がメキシコ東部で、何者かに誘拐され、遺体で発見されました。事件の詳細は不明だそうです。
折しも、日本の阿倍首相が真珠湾を訪れ、戦争被災者へ慰霊をします。
しかし、日本は中国・朝鮮・韓国を初めとするアジア諸国民への戦争犯罪を正しく公平に謝罪をしてはいません。
いろんなことを考えさせられた映画でした。                  【12月12日】
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映画/海よりもまだ深く

2016年12月04日 | 映画



可もなく不可も無く、と言った所です。
阿部寛と樹木希林の二人のおかしさだけがこの映画の取り柄です。
ストーリーは至って簡単、良太は十数年前に文学賞を受賞したがその後売れず、妻に捨てられ、今は取材と称して
探偵事務所に勤めていますが、息子への養育費の支払いもままならずギャンブルで一攫千金を狙ったり、
母親の家で金目のものを物色したり、捨てられた元妻・響子を忘れられず、ストーカーまがいの日々を過ごします。
台風のある日、母のもとに偶然集まった響子と息子と良太、良太は響子ににじり寄って彼女の股をタッチ、館内は爆笑でした。
これだけのお話です。

可もなく不可も無しの映画ですが、先に併映された何ともつまらない「リップヴァンウィンクルの花嫁 」を見た後なので、
落ち着いた気分で楽しむことが出来た次第です。 阿部寛のとぼけた味は好きです。   【11月28日】 
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映画/リップヴァンウィンクルの花嫁

2016年11月29日 | 映画



駄作・下作です。
原作・脚本・監督の岩井俊二は、主演の黒木華を最初からイメージして執筆したと言われます。
黒木華演じる七海は何とも生活感のない女で、黒木華のあのわざとらしいカマトト振りが3時間も続くウンザリです。
前半は七海が出会い系サイトで知り合ったマザコン男・鉄也と結婚し、離婚させられる話し。
鉄也の母親が、息子を取り返すために便利屋・安室を使って彼女の「浮気現場」をでっちあげるというもの。
いかに男と無縁の生活をしてきたと言っても教員を目指すインテリ女性が出会い系で男と簡単に知り合い結婚し、
披露宴の出席者の人数あわせを便利屋に頼んだり、鉄也の浮気相手というの女の男の話を鵜呑みし、家に上げ、
ホテルまで行く、とかもうばからしいストーリーのオンパレードです。
後半は、末期がんで一緒に死ぬ相手を探しているポルノ女優・真白と七海のカラミの物語。
この真白も全く生活感もなく、ポルノ女優という割には体も貧弱で…。
真白が依頼した便利屋が探した相手が七海。
いかに生活に貧していると言ってもメイドで一月100万円の報酬という胡散臭い話しに飛びつくなんて…。
いかがわしい便利屋を何の疑いも無く全面信頼するんです。
真白と七海が同性愛になって、便利屋と男を追い詰め、彼らを破滅に追い込むストリーなら良かったのに…。
岩井俊二は、一部高い評価を受け、女性ファンも多いそうですが、大いなる駄作・下作でした。  【11月28日】
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映画/これが私の人生設計

2016年11月20日 | 映画


とても面白かったです。
原題は「生きていてごめんなさい」と言うような意味らしいです。
ストーリーは至ってシンプル。軽快なコメディです。
セレーナは才色兼備の若手建築デザイナー、世界を股にかけて成功を収めていますが、故郷のローマに戻りました。
しかし、イタリア・ローマでは仕事に恵まれません。

男女平等を歌うイタリアですが、建前と本音は大違い、男性優位で、女性は男性の付属物・アシスタントでしかありません。
女性は妊娠を隠し、男性はゲイを隠し、ハゲはカツラを被り、アジア人、黒人はあからさまな差別を受けています。
セレーナは設計だけでは食えないのでレストランでのバイトを始めるのですが、そのオーナーに彼女は一目惚れ、
ところが何と彼は、子持ちのゲイでした。
彼女が乗り回す原動機付き自転車は懐かしくもあり、良かったです。

デザインのコンペ、女性名で申し込んでも見向きもされないので男性名で申し込むと採用されてしまいます。
面接や打ち合わせが必要なので、ゲイのオーナーに代役を頼み、そこから生じる様々なドタバタ騒ぎです。
このドタバタに特別新味や工夫はありませんが、「本音と建前」の乖離から生じるドタバタはまことに面白いものです。
デザイン会社は、イタリア社会の縮図で、権力を振る舞うワンマン社長は秘書がいなければなにひとつできないし、
ゲイを隠す男性社員、妊娠を隠す女性社員、ハゲの男性、インド人など皆憤りのやり場の無いストレスを抱えています。
この映画では、宗教がらみのことは出てきませんでしたが、それはちょっと複雑ですから…。
私に不思議に思えたのは、家賃を払えないセレーナがゲイの社長の家に潜り込んで彼と一つのベッドで寝たり、
頻繁にハグしたりキスをすることでした。

市のコンペで採用されたセレーナのデザインは、公共集合住宅の共有スペースのデザインでした。
商業施設を入れた方が良いという社長の案に対して、彼女の提案は、子ども達の勉強室や住民のおしゃべりスペースでした。
家が狭いので廊下で勉強する子ども、たまり場の無い青少年、どの階も同じで何階かわからない高層住宅など、
裕福では無い住民達の生活のストレスは同様に怒りのやり場がありません。
首を覚悟のセレーナの啖呵はちょっとありふれたものでしたが、それまでのストレスを吹き飛ばすには十分で、
堂々とその事務所を後にするのでした。        【11月14日鑑賞】
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映画/ブルックリン

2016年11月16日 | 映画



なんともつまらない映画でした。
アイルランド人のアメリカへの移民が背景にあると言うのですが、全くの期待外れ、単なるありふれた恋愛映画でした。
『ギャング・オブ・ニューヨ-ク』は、19世紀初頭のニューヨークのギャングの抗争を画いた下らない映画でしたが、
それでも、アメリカ建国の息吹とアイルランド移民を取り巻く問題が背景に描かれていました。
所が『ブルックリン』は、アイルランド移民のこと、ブルックリンのアイルランド移民コミュニティーの日常生活等、
ほとんど触れられていません。アイルランド移民でなくとも何の問題も無い、ただただありふれた恋愛映画でした。
ただ、第二次世界大戦後のアイルランドの閉塞感とその保守性は背景に描かれていました。
小さな村では、人々はお互いが顔見知り、噂話とゴシップが日常のすべてであるかのようで、息苦しいです。
主人公のエイリシュが、母親にも結婚したことを話さず、結婚リングを外してアイルランドに帰省し、独身を装い、
そこで新しい恋人を簡単に作ったりと「?」が多すぎです。おいおい、こんなのありかよって言う感じです。
彼女は結婚していることがばれなければ、そのままアイルランドに留まったのでしょうか。
何ともストーリーに無理がありすぎ、退屈でした。        【11月14日鑑賞】

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映画/ルーム

2016年11月07日 | 映画



文句なし 最高の秀作です。
アイルランド・カナダの映画は、日本では珍しいです。
、主演のブリー・ラーソンが88回アカデミー賞・主演女優賞を受賞しましたが、作品賞には選ばれませんでした。
作品賞を受賞したのは、「スポットライト 世紀のスクープ」、その他「マッドマックス 怒りのデス・ロード」、
「レヴェナント・蘇えりし者」などだそうです。アメリカのアカデミー賞とは所詮、そんなものですが…。
原作の小説も映画もフィクションですが、オーストリアで起きたフリッツル事件をベースに着想を得たと言われています。
私はその事件を知りませんでしたが、実の父に24年間も監禁され、性的虐待を受け、7人の子供を出産した事件だそうです。
この映画を見始めた時は、私は少し小馬鹿にして見ていました。奇をへつらう「際物」映画のような気がしたからです。
しかしその思いはすぐ消えました。女性が監禁された事情などを細々説明すること無く、監禁の「日常」を坦々・淡々と
テンポ良く、かなり無機質チックに描きます。
その坦々・淡々さが、二人が置かれた日常の「異常」さを見事に描いたからです。
それは、これから先のストリー展開の興味より、恐ろしい程の戦慄的恐怖を覚えさせました。
若い女性・ジョイは変質者に拉致され、納屋に監禁されます。
彼女は、そこで男の子・ジャックを産み、育てます。
二人の外界とのつながりは天窓しか在りません。

ジャックが5歳の誕生日を迎え、彼女は「決死」のしかし彼女にとっては絶望的脱出作戦を考えます。
絶望的というのは、脱出するのは息子だけで、彼女は脱出できないからです。
風邪を引き高熱で苦しんでいるからジャックを医者に診せてと言う嘆願作戦は失敗します。
その失敗で、部屋の電気が止められます。次の作戦は、ジャックの死、です。
男に、ジャックは死んだので彼を埋めて来てと頼みます。
この決断は、ジョイにとっては「永遠の別れ」になりかねない危険性を孕んでいます。
絨毯に包まれたジャックは、その隙間から初めて、世の中を見ます。
このシーンの描き方も、大袈裟すぎず、映画的にはかなり禁欲的描き方で出色でした。
彼は、ママから言われ練習した様に、トラックの荷台から逃げだし、助け出されます。
ここから登場する人々は、テレビのインタビュアーを除いて、善意の、良い人々でした。
ジャックの訴え、説明は普通なら、「何を訳のわからないことを言っているの」と、無視されるからです。
最初に彼を助けた男性、連絡を受けた女性警察官、この二人は特に素敵でした。
ジャッックの訴えをまともに受け入れ、的確に対応したからです。
ジョイとジャックの肉体ははこうして解放されますが、心の「解放」には大きな困難が待ち受けています。
ジョイの母親と彼女の新しいパートナーの優しさ、豊かさが、映画のこれまでの戦慄的恐怖を解放し、
私達に人の優しさ、暖かさを取り戻してくれましたが、映画の後半のこのテーマは前半よりはるかに難しく、
「息切れ」してしまい、残念ながら成功とは言えません。
それはカウンセリングやセラピー、旅や、時の流れだけで簡単に癒えるものではないでしょうし、
映画で描くのは簡単では無いからです。
この映画で、セックスシーンが無かったのはとても良かったです。
その後、二つのかなりショッキングなエピソードがありました。
一つは、テレビのワイドショウの格好の題材となり、何とも無神経なインタビューを受けたことと、
二つは、母親と離婚したジョイの父親がジャックと目を合わせることが出来なかったことです。
ジャックの「父親」は、その犯罪者なのですから…。
自由となったジョイですが、心の安寧を取り戻すのは簡単ではありません。
彼女は、自死を試みますが、一命を取り留めます。
ジョイは、ジャックに「父親はいない」と告げます。
この言葉には深く、いろんな意味が宿っていると私は思います。
過去と決別し、前を向いて生きようというジョイの静かだが強い思いが秘められています。
映画後半は、息切れしてテーマを十分掘り下げることは出来ませんでしたが、それでも文句なし 最高の秀作です。
「誘拐・監禁」をテーマにした映画は、古典的映画となった「コレクター」を始めいくつも作られています。
そしてこの種の犯罪は、今日でもなおしばしば行われ、つい最近も日本で起きました。  【10月31日鑑賞】
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映画/ロイヤル・ナイト

2016年11月01日 | 映画



「ローマの休日」の、柳の下の二匹目のドジョウをもくろんだのでしょうが、ドジョウはやはりいませんでした。
何ともつまらない駄作でした。
「ローマ」は、ヘップバーンの愛くるしさとグレゴリー・ペックの二人の強烈さだけでなく、
おとぎ話的ストーリーの卓越さを持っていましたが、
この映画には、ストーリー、エピソードに何の工夫もドッキリ感や新鮮さ、おかしさも全くないのでした。
護衛に付いた軍人の間抜けぶりにはただあきれるばかりで全く興ざめでした。
その護衛を巻いた二人が行った場所が"娼館"とは、もう何をかいわんやでした…。
英語で、それをWorking shop と言っていました。ワーキングガール、BG等の使い方は要注意ですね。
王室と聞くと「直立不動」してしまう人々の姿・シーンにはもう辟易、ヒトラーを連想しました。
現存しているエリザベス女王ですから、軽々に扱えないのかも知れませんが…。
実話を基にしているとのことです。第二次世界大戦・ヨーロッパ戦争の終戦の日に、王女が街にでたのが事実なら、
それは驚きの素晴らしさではあります。
しかし、私は、日本の天皇制を筆頭にすべての王族・貴族等の階級的身分的差別は嫌いです。 【10月31日】

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映画/すれ違いのダイアリーズ

2016年10月24日 | 映画


面白かったです。
原題は、KidTueng Wittaya(คิดถึงวิทยา)、「科学を考える」だそうです。珍しいタイ映画で、タイで大ヒットしたそうです。
昨年、私はタイを訪れたので懐かしかったです。わかったタイ語は「サワディ・カップ」(今日は)だけでした。
ストーリーはとてもシンプルです。
タイ、チェンマイ地方の湖上の小学校分校が舞台です。携帯も、パソコンも在りません。
 
4人~6人の子どもと先生がそこで月~金、共同生活をしています。
前任の若いが優れた女性教師が都会に戻ったため、若い男性の新米教師が新任してきます。
彼は、彼女が忘れていった日記が目にとまり、読み始め、時折感想を記していきます。
彼は、いつしかその女教師に恋心を抱いてしまいました。
映画の主人公は、その男性教師ですが、実は日記の書き手の女性こそ主人公です。

タイの教育も垣間見れて面白かったです。
小学校で一次方程式を学んだり、期末試験にパスしないと進級出来なかったり、校長の権限がかなり強そうだったり…。
一年後、男性教師は再契約とならず分校を去ります。
子どもの個々の生徒と密着しながら、その生活と経験を大切にしたいと願う彼女と、彼女の恋人との関係は揺れ動きます。
エリートコースに乗っている彼は、効率主義と画一的教育の考えの持ち主で彼女とはどうしてもあわないからです。
彼女が、そんな彼を恋人に選び、揺れ動くのかはわかりませんが、彼女はとうとう彼と決別し、分校に舞い戻ってきます。
作り物過ぎるストーリーですが、日本の名作・「二十四の瞳」を思い出させる映画で、心和みました。
子ども達の表情もとても良かったです。        【10月17日鑑賞】
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映画/神様メール

2016年10月19日 | 映画



予告編を見て、大いに期待したのですが、ちょっぴり期待以下でした。
私は、余命を知った人々が引き起こすパニック・たくさんの悲喜劇・大騒動コメディを想像していたからです。
ストーリーは、全くの作り事ですから当然リアリティはありません。
さて、原題は、Le Tout Nouveau Testament=The Brand New Testamentは、最新約聖書と言う意味だそうです。
神様は、なんと妻と死んだ一人息子[キリスト]と娘の家庭があって、ベルギーのブリュッセルに暮らしています。
キリスト教の神様の娘が、父親=神様に大反発して、人間に「余命幾ばくのメール」を送信してしまいます。

娘は、地上に現れ、新たに6人の使徒を見つけ出して、「新・新約聖書」を作ることになります。
神様は実はパソコンを通してしかその「全能」の力を発揮できません。
つまりパソコンがないと全くの凡人で、それ以外の「神的」能力は皆無なのです。
壊されたパソコンの修理のためには娘が必要で、彼女を追って地上に降りてきます。
彼は人間の俗物以下の悪態をつきます。霊力はないのですからなす術なく、まして天上に戻ることも出来ず、
あちこちでひどい目にあい、結局警察に逮捕され、イスラム教のウズベキスタンに強制追放されてしまいます。
さて、キリストには12人の使徒がいました。
その理由は、何と神様がアイスホッケーが好きでその人数だというのです。
娘は何故か新たに6人の使徒を選び「新・新約聖書」の作成を思います。
私は、キリスト教についての知識は詳しくありません。
使徒12人の12の数字の意味を知りませんでした。
ネットで調べたらイスラエルには12の部族があり、使徒はその普及のために送られたという説もあるようです。
仏教には「天」がいます。釈迦はインドの諸部族を折伏・帰依・統合させ、彼らの神を仏教の守護神=天としたと言う説があります。
似ているなと思いました。
少女に選ばれた新たな使徒は、ちょっぴりユニークです。
いずれも余命がわずかになった人々が、残りの時間を歩み始めます。
ターゲットの女性に惚れてしまった保険屋を辞めて殺し屋になった男性
 
雄のゴリラに恋した熟女とその彼氏のゴリラ

その他、鳥を追い求めて北極まで行ってしまった老人、セックス依存症の男性、女の子になりたい男の子、
そして、殺し屋と一緒になった、子どもの時左腕をなくしたモテモテの美女の6人でした。

以下ネタバレですが、女神が神様の部屋を掃除機をかけるためにパソコンの電源を切ってしまいます。
掃除が終わって、パソコンの電源を入れます。
野球が好きな彼女は娘が加えた6人の使徒を加えて18人とします。
そして再起動によって、それまでの余命寿命がリセットされてしまいました。
結果、「めでたし・めでたし」で終わります。
ここで私の疑問です。
余命がリセットされた時、彼ら・彼女らは、「ギリギリで選んだ」選択に悔い、やり直しはなかったのでしょうか?
制作者の結論は、殺し屋が彼女の子を宿し、熟女がゴリラとの赤ちゃんを産んだり、でした。
一番の悲劇は、余命100年と言われていた青年です。
彼は、それまで何度も自死的行為をして来たのですが、その度に偶然の奇跡で助かって来ましたが、
パソコンがリセットされた後は……でした。
キリスト教の伝統的教え=タブー、絶対的存在者としての神、つまり伝統的西洋文明の価値観をここまで茶化します。
ここには、神はどうして男なの?という根本的問も潜んでいるようにも思います。
原始宗教では、神は聖人では全くなく、「人間の欲望そのもの」の顕在的存在だったと思います。
だからこそ、釈迦やキリストやモハンマドのような「如来」が生まれ、新しい宗教が生まれたのだと私は思います。
12人に使徒では足りない、新たな6人の使徒が必要というのでしょう。
私は、現代ではそれではまだ足りないと思うのですが…。
今日では、パソコンと携帯・スマホが「神」のようになっていて、人々はそれに依存しきっています。
まさに新しい「ユーロ」的世界を垣間見たと言っては大袈裟すぎますか?  【10月17日】
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映画/レヴェナント(蘇えりし者)

2016年10月01日 | 映画

「レヴェナント(revenant)」とはフランス語から派生した「黄泉の国から戻って来た人、亡霊」といった意味だそうです。


舞台は、1823年、西部開拓時代のアメリカ北西部だそうです。
江戸時代末期の日本の社会も私達はほとんどイメージできないのですから、その当時のアメリカ社会がどんなだったか
全く想像できません。
この映画は、作品内容以前に、これまで再三アカデミー賞にノミネートされながら無縁であったディカプリオが、
主演男優賞を取ったこと、撮影の自然環境の厳しさ、出演者・スタッフがその厳しい自然と真っ向から向き合ったこと、
撮影・カメラワークの特筆さ・見事さ、などの方が話題になりました。
そして坂本龍一の音楽です。風の音のように重厚の低音がズンズンと響き、体を刺激します。
当初カナダでの撮影が予定されていたそうですが、地球温暖化の影響でしょうか雪不足のため、ロケ地が急きょ、
南アメリカ大陸の南端部のアルゼンチンのティエラ・デル・フエゴに変更されたそうです。

グリスビーに襲われるシーンはどのように撮影したのかわからないほど巧妙でしたし、
凍れる川の中にながされるシーンなどの撮影はどのようにしたのでしょうか、

それらはとても迫力の在るリアリティーさでした。
ストーリーは実話にベースを置いているそうですが特別工夫されているとは言えません。
余りに超人的生命力に作り物過ぎるとの印象がぬぐい得ません。
息子を殺した男への復讐への執念だけが彼の生の支え、源なのですが、その根底にはネイティブへの差別・偏見に対する
彼の怒り・抗いの精神性があると私は思います。
彼らが英語を話さず彼らの言語を使い、英語の字幕が付いたのはとても良かったと思います。
そこには、制作者の彼らへの優しさ・尊厳があると感じました。しかし、157分は長過ぎます。  【9月26日鑑賞】
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映画/サウスポー(Southpaw)

2016年09月27日 | 映画


予告編では、単純なスポ根・家族愛ものと感じ、是非見たいとは思ってはいなかったのですが、見てみると、
予想通りのありきたりのスポ根・家族愛ものでしたが、ホープが転落していく前半は小気味良いテンポでした。
どん底から這い上がって行く中盤はおなじみの「けなげにがんばる」で、息切れの感じでした。
終盤のボクシングシーンは長過ぎで退屈でした。でも、映像はとても上手に撮れていて実際にヒットしている感じでした。
再生のキーマンである、新しいボクシングジムのトレーナー・ディックが良い味でした。
ストーリーに新鮮味やリアリティは皆無でやはり単純なスポ根・家族愛でした。 【9月26日鑑賞】
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映画/最高の花婿

2016年09月17日 | 映画


現題は、Qu'est-ce qu'on a fait au Bon Dieu ?:「私たちがいったい神様に何をしたというの?」
傑作です。不謹慎・差別だと怒る人もいると思いますが、コメディですので御寛容を。
冒頭で、イスラエル人の息子の子が割礼の儀式を受けます。切り取った包皮は庭に植えるのが通例とか、
穴を掘っていて、その包皮をうっかり地面に落としてしまいます。その時、飼い犬がパクリ…、こんな調子の映画です。
かなりの金持ちのフランス人夫婦には4人の美人姉妹がいます。
夫婦の願いは娘達がカトリック教徒のフランス人と結婚することでした。
ところが、彼女たちは、アラブ人、ユダヤ人、中国人の男性と結婚します。彼らはフランス人です。
夫婦の建前は博愛主義で非差別主義ですので容認しますが、本音は反対です。
四女の結婚相手がカトリック教徒とわかった夫婦は神父に結婚式の予約に行きます。
神父は、「四人姉妹で良かったですね。五人目はロマかもしれないですから…」。
末娘の相手と会う段になって、三人姉妹とその婿達は、
気分を害する質問は全部しないようにするの、イスラエル、ダライ・ラマ、ブルカ…とかは禁句。
もし誰かがユダヤ人についてお決まりの文句を言っても、受け流して。
もし誰かが移民と犯罪を一緒にしても、何も言わないで。
もし誰かが中国人を侮辱しても、微笑んで。
そうか、中国人みたいにしてればいいのか。ははははは…。調子のいいやつめ…・
 
そして四女の恋人はカトリック教徒ですがコートジボワール出身の黒人青年でした。
これは、一発KOパンチ級でした。彼ら、彼女らの「建前」もちょっとぐらつき始めます。
ユダヤ、イスラーム、黄色人種まではまだ許容範囲なのですが…、アフリカ系となると…。
私達、日本人の多くはフランス人というと、目が青く、金髪でクリスチャンの白人と強固に思っていますが、
実際のフランスは他民族、他宗教の国です。
コメディ映画ですから、「偏見」・「イメージ」等はかなりカリカチュア化、ステレオタイプ化されています。
いかにコメディと言ってもちょっと間違えば、「差別」と厳しく「非難」されかれない問題を持っているテーマです。
ですから、私はこの種の映画制作者の勇気とセンスに大いなる尊敬を感じています。
不謹慎と思っても、笑ってしまいます。この日は、私の回りの観客の笑い声が聞こえてとても良かったです。
しかし現実の世界では、宗教、人種、国籍、「出自」、「体的障害」、「性的少数」、「精神や知的問題」、「普通でない」など、
"禁句"されている言葉=概念は実にたくさんです。
思うに、私達が今住んでいる世の中には何と多くの「ボーダー」があるのでしょうか。
シリアスに取り扱うのは難し過ぎるので、コメディ化せざるを得ませんが…。
この映画でも、4人姉妹と男子1人で、彼が選んだパートナーが男性だったり、
5人姉妹の末娘が女性のパートナーを選んで女6人になったりも笑えると思うのですが……。  【9月12日】


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映画/さざなみ

2016年09月13日 | 映画



結婚45年を迎える夫婦の夫・ジェフにかつて結婚を意識した恋人の死体発見の手紙が届きます。
ジェフと彼女は冬山登山中、彼女は滑落し、雪が溶けてその死体が発見されたというのです。
ジェフは、その後ケイトと結婚するのですが、死んだ彼女の写真などをこの年まで残していたというのです。
その知らせを受けた彼は、今でも彼女の心引かれ、まるで心ここにあらず、呆然のようなのです。
二人の間にはまさに「さざなみ」が立ち始め、二人の距離は決定的に開き、まさに「破局」を迎えようとします。
所が、結婚45年パーティでジェフの「愛している」で、「ハッピィエンド」と言う何ともつまらない結末でした。
それまでの「ハラハラ」感は、まさに"やらせ"=映画を面白くするための作り事の感じです。
ケイトは、そんな男を捨て去って残りの人生を一人で生きていく方がどれほど良かったでしょう。
シャーロット・ランプリングは70歳位ですが、美しかったです。

いくつか賞を取ったようですが、それほどの作品ではありません。 【9月12日鑑賞】
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